岸田総理

2023年10月 1日 (日)

投下責任の「棚上げ」と米政府、広島市・市長そして外務省 ――「本音が出ると大問題」を回避――

投下責任の「棚上げ」と米政府、広島市・市長そして外務省

――「本音が出ると大問題」を回避――

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慰霊碑に向って恥ずかしくない言動を!

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9月26日のこのブログでは、次のようにお約束しました。

「広島市と広島市長も得をする側なのかもしれません。長くなりますので、この点は次回以降に回します。」

「得をする」人たちの最初にアメリカ政府と、「Good War」を信奉する人たちを挙げておきましょう。平和公園とパール・ハーバー国立公園の姉妹公園協定を提案した人たちですし、「パール・ハーバー ()⇒ 原爆()」というシナリオを存続させるためには、広島市がその点についての反論を「棚上げ」すれば、自分たちの言い分が通るからです。

もう一点今までは触れてきませんでしたが、とても引っ掛かるマスコミ報道の仕方に注意喚起です。ほとんどの記事では、「市の幹部」が棚上げ発言をしたと述べるだけで市長との関連には触れていません。一つだけ見付けましたが、それはヒロシマ平和メディアセンターの9月27日の記事で、「野坂課長は「棚上げ」発言は松井一実市長の了解を得ていたと説明。「米国の責任を免罪するものではない」と理解を求め、撤回は否定した。」

それでも、棚上げの主体は例えば野坂課長で、市長は単に「了解」しただけ、という図式になります。その後に、「これは単なる手続き上の行為で、その内容までには責任は持てない」といった言い訳が出て来てもおかしくない報道の仕方です。

何故、正直に、広島市の重要事項についての決定責任者である市長が、棚上げをすることにした、と報道し、市の幹部の責任ではなく市長の責任を問わないのでしょうか。この辺りの事情を究明するのも実はマスコミの役割ではないでしょうか。

そして、ある意味責任逃れを認められた市長にとってはこの報道は「得」の部類に入ります。

さて、市長と市がなぜ得をしたのかを考えて見ましょう。穿った見方だと思われる方もいるかもしませんが、そうだとすると、他の可能性について、外務省・日本政府の役割も含めてどんな説明になるのか、是非教えて下さい。

ここで再度、外務省の原爆についての見方を復習しておきましょう。

一言で表現すると、「原爆投下は合法だ」になるのですが、それは、23日のこのブログの記事――1963年の下田裁判での被告としての国の言い分――を読んで頂ければ明らかです。そして、24日のブログでは、広島市の平和行政が外務省の意のままになっていることを指摘しました。

となると、今回の「棚上げ」も、外務省の差し金だということになりそうなのですが、そうだと仮定して、何故もっと外務省の本音に近い表現にならなかったのでしょうか。例えば、「「パール・ハーバー ⇒ 原爆」については、国レベルではもう決着していることですので、それを踏襲しました」辺りはどうでしょうか。

でも、そう言ってしまうと、日本政府・外務省が有耶無耶にしてきた、原爆投下についての日本という国家の本音が分ってしまいます。さらに、「広島市・広島市長がそんな発言をすることは決して許せない」、という轟轟たる非難の嵐が起きても不思議ではありません。

「棚上げ」することで、その両者を避けられたのですから、「得」をしたのは、広島市・広島市長、そして日本政府・外務省ということになりますね。

G7広島サミットで、「被爆地広島出身の総理大臣」を名乗って、核兵器の容認と核抑止論賛美の最終文書を「ヒロシマ・ビジョン」としてまとめた裏切り行為を理解するためには、「棚上げ」のカラクリがその本質を見せてくれていると考えるのは、穿ち過ぎでしょうか。

 

最後に皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!  

 [2023/10/1 人間イライザ]

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2023年9月22日 (金)

今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない――

今、広島で起きていること

――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない――

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G7広島サミットでの「ヒロシマ・ビジョン」は、「ヒロシマの心」を蔑ろにしたものでした。

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もう10日も経ってしまいましたが、9月9日、大阪のPLP会館で「憲法9条--世界へ未来へ近畿地方連絡会」主催の講演会が開かれました。講師の私に与えられたテーマは、「弄ばれたヒロシマ  前広島市長から見た「G7広島サミット」について」でした。今回は、その報告の第4回目です。

テーマが、G7広島サミットですし、中でも、核兵器と安全保障が私たちの関心事です。この点についてG7サミットでどんな結果になったのかは、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」(略して「ヒロシマ・ビジョン」)としてまとめられた文書に全て盛り込まれていると考えて良いでしょう。

その要旨を一枚のスライドにまとめたのが、最初の画像です。もう4か月も前のことなのですが、記憶を確かめて頂ければ幸いです。でもそれだけでは、広島で何が起きているのか、と言うより、正確には「ヒロシマ」という触れ込みで、多くの人の目を眩ませている現実までは分りません。ましてやその点について、大多数の人が気付いていないという状況にも思いが至らないでしょう。

分って貰うためには、これまでの外務省・日本政府が核兵器についてどのような態度を取ってきたのかをお浚いしておかなくてはなりません。それが次のスライドです。

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当日の質問・コメントにあったように、この中でも、日本政府が「原爆投下は合法」だと考えているなどとは、ほとんどの人が知らないことらしいのですが、実は私はそのことにも吃驚しているのです。

その他の項目についても、皆さんは意外だと感じられているのかもしれません。時間は掛かりますが、そしてこれまでにも何度も繰り返してきてはいるのですが、改めて、説明して行きたいと考えています。

 

最後に皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!  

 [2023/9/22 人間イライザ]

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2023年9月20日 (水)

岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?――

岸田外交の本質

――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?――

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本来なら先頭に立って世界を牽引しなくてはならない日本政府がこの体たらく

 

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何度、内閣改造を繰り返しても岸田内閣の外交は変りません。もちろん、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加も拒否し続けるでしょう。岸田内閣の本質は外務省の意向に従うだけだからです。

そのことがハッキリ分るように、核兵器禁止条約締結のための国連の動きを年表にまとめました。「OEWG」は、公開作業部会のことで、この部会で市民社会の代表も参加してほぼ理想的な形の核兵器禁止条約案をまとめました。

それを国連総会に提出して、今度は条約締結のための交渉を始めることになったのですが、一連の動きの中で、日本政府は、反対・棄権・不参加という形での対応しかしていません。本来なら、世界の先頭に立って、この条約を作るために「唯一の被爆国」として汗水垂らして働くべき立場の日本ですから、さすがに全部反対という訳には行かなかったのでしょう。そして、核兵器廃絶のためには最重要だったこの時期は、岸田外務大臣の任期とピッタリ重なるのです。

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これは偶然ではないでしょう。、G7広島サミットでは、恥も外聞もなく外務省・日本政府の本音を実現した「被爆地広島出身の総理大臣」なのですから、その前哨戦として、核兵器禁止条条約阻止という役割を担わされた外務大臣だった、と言ったら失礼過ぎるでしょうか。

外務大臣としての任期が一番長い岸田総理ですが、その内閣の外交政策が、これまでの外務省・日本政府の立場を超えて、真に日本国民・市民のためのものになることは、まず不可能だと考えるべきでしょう。

となると、私たちのなすべきことは、政権を変えることしかありません。あるいは、現政権でも耳を貸さざるを得ないほどの大きな国民的運動を展開することになるのではないでしょうか。

 

最後に皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!  

 [2023/9/20 人間イライザ]

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2023年7月17日 (月)

防衛省を防災省に ――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう――

防衛省を防災省に

――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう――

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津波で破壊された家--浪江町

 
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今年もまた、大雨が続き、全国各地で大きな被害が生じています。南九州そして北九州と山口、北陸や東北と、「線状降水帯」という名称とともにいつどこで大災害が起きるのかさえ予測できない状態です。ということを裏返せば、全国どこで自然災害が起きても不思議ではない自然環境の中で私たちは生活しているのです。

にもかかわらず、政治はこのような深刻な、国民的課題には気付かないかのような対応です。危機的状況にある被災地には目もくれず海外の軍事同盟の会議で意気揚々としているのが、今の政治の堕落振りを示しています。

そんな政治を本来の姿に戻すために、事実を元にした提言を続けなくてはなりません。私の小さな貢献の一つとして、この何年間かこの問題についての構想をまとめてきました。何度言っても伝わらない相手なのかもしれませんが、それでも誰かが伝え続けないと、「ダメ」が「良いこと」になってしまいます。これまでこのブログで取り上げてきた原稿に加筆訂正を加えながら、再度のアピールを連続で始めます。

今回は、昨2022年7月5日にアップした記事に少し手を加えました。取り上げた事実は変わっていませんし、提言が有効であることも間違いありません。ただ政治状況は今の方が格段に悪くなっていますので、説得力は増しているように思えます。

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2022年7月5日アップ

防衛省を防災省に

津波で破壊され、そのままになっている家屋です。東日本大震災の遺構ですが、11年経って、あの時のショックは忘れ去られているのでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻以来、「リアル・タイム」で私たちが体験している戦争の様子に「ウクライナ・ショック」を受け、「日本でもこんなことが起きたらどうすれば良いのか」という危機感につながっています。それはそれで分るのですが、もう一つ、忘れてはならないことを忘れてはいませんか。

2021年7月3日には熱海で土石流災害が起きて26人の方が亡くなっています。2020年は、熊本での豪雨災害で、熊本だけで64人の方が亡くなっています。

最新ではありませんが、以前まとめた数字を再掲します。自然災害の結果、どれだけの犠牲を払わなくてはならなかったのかを再度、思い起すためです。

2018年に起きた災害だけを取り上げますが、

(i) 1月23日の草津白根山の噴火

(ii) 死者の出た2月の北陸豪雪をはじめとする各地での豪雪

(iii) 3月と5月の霧島山新燃岳と桜島の噴火 

(iv) 6月18日、死者4名、損壊家屋は3万戸近くになった大阪北部地震

(v) そして死者は200名を超えるであろう、7月の西日本豪雨と、半年ちょっとで大きな災害が目白押しです。

こうした数字を前に、「日本がウクライナと同じように攻撃された時に備えて、軍備を強化し、核武装までも必要なのではないか」、「敵基地攻撃能力が日本を守る」、「軍事費を倍にしないと日本の安全は覚束ない」という種類の主張に大きな違和感を持っています。

それは、自然災害の死者は毎年確実に私たちの目の前に現れているのに対して、日本が外国から攻められた、あるいは戦争で死者が出たという数字は「0」だからなのです。

比較のための数字を掲げておきましょう。

  • 2000年から2019年までの自然災害死者数は23,991です。
  • そして推計ですが、1945年から2019年までの自然災害死者数は90万人です。
  • 対して、1945年から2019年までの戦後75年間、外国からの侵略・外国との戦争で死んだ日本人の数は0です。

「ウクライナ・ショック」を端的に示すために、死者数によって考えることにしますが、ウクライナ戦争で命を落した日本人は「ゼロ」です。そして、戦後、自然災害によって亡くなった日本人の数は、100万人近くになるという事実から、そして恐らく今年も自然災害によって必ず犠牲者が発生することを考えると、今、私たちが懸念し、政府がお金を投じなくてはならないのは、自然災害対策なのではないでしょうか。

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それはこのグラフから明らかです。災害があると予算は増えますが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」で、「予防」のための予算はないのです。

予算が出てこない理由の一つは、「防災」を専門にする固定したお役所がないからです。それは、「防衛省」を「防災省」に変えることで解消されます。防災省を創設するメリットを、防衛省との比較でみてみましょう。

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「予算」のカッコ内で言及してるグラフは、その前の棒グラフのことです。この比較からの結論は、防衛省を防災省に変えても、多くのメリットはあってもデメリットはまず考えられないということです。

ここで「誤解」を避けるための説明ですが、自然災害そのものは「予防」できません。でもその結果犠牲になる命や財産は減らすことができるのです。例えば、急傾斜地にある住宅を安全なところに移設するとか、洪水の起きやすい河川の流れを変える、危険な盛土を移動する、避難訓練を徹底する等、予算を付ければ実行できるそして効果のある施策は山とあるのです。

つまり、今の時点で「倍増」すべきなのは、「軍事費」ではなく、「防災費」なのです。それは、国民の命を確実に守る「現実的」な選択です。

「憲法を改正して自衛隊を憲法内に明記する」などという、「改憲先にありき」という論法ではなく、日本国民の命を救うのが国家の最優先義務だという憲法の規定からの結論は、「防衛省」を「防災省」に変えることで全て「解決」という簡単・明解な素晴らしいシナリオです。

これからも暑さが続き、やがて台風も来襲します。皆様、くれぐれも御自愛下さい。

 

[2022/7/5 イライザ]

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 [2023/7/17 人間イライザ]

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2023年7月 8日 (土)

加藤友三郎の高潔さ ――名誉・権力・金・地位等とは無関係――

加藤友三郎の高潔さ

――名誉・権力・金・地位等とは無関係――

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中央公園の加藤友三郎像 (常広一信氏撮影)

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広島市出身の初の総理大臣加藤友三郎の偉大さについて紹介していますが、『麻田』では彼の政治スタイルを、「独断専行型」と呼んでいます。ややもすれば、それは「独裁者」とか「ワンマン」といった悪しきリーダーの姿と重なるのですが、友三郎はそれとは正反対の人物でした。『工藤』の264ページから265ページには、その姿が活写されています。

およそ友三郎は誰からでも愛されるような人間ではなかった。見るからに短気で、プライドが高く、近寄りがたい人間のように える。

ちなみに今日の政治家は、白い歯を出してにやけている。その政治活動といわれるものは、街の「御用聞き」とほとんど変わらない。選挙民におもね、「させていただきます」などと言い、過度にヘりくだる。しかし心からへりくだっているのではない。心の中では国民を馬鹿にしきっている。そんなことが、透けて見えてくる。

子弟の就職斡旋、進学幹旋、冠婚葬祭など、こまごまとした「御用聞き」の如きささいなことはあくせくするくせに、国家のグランドビジョンについては何も描こうとはしない。根本的にはグランドビジョンを描く能力がないのである。

これから日本がどのように進むべきであるのか、国家や社会の安全をいかにして図っていけばいいのかについてのビジョンを語れないのである。

言葉だけが虚しく飛び交っているだけである。

われわれが「政治家」(ステーツマン)に期待するのは、政治のプロとして日本のグランドピジョンを構想してくれることである。さまざまな補助金をつけて近視眼的な利益で国民を釣ろうとすることが見え見えの今日の政治家の姿に、心ある人間は憤慨している

こうした今日の政治家と対極にあるのが、加藤友三郎という人間である

およそこの男は、人におもねるということがない。口数は少ないが、自分の役割というものはきちんとこなす。功を上げてもそれをひけらかすことは一切しない。

出身閥を作ることは一切ない。こうしたことには、まったく関心かないのである。だから大衆的人気というものは、沸き上がりようがない。しかし友三郎がやってきたことを調べてみると、その慧眼の確かさに驚かされる。

そして『工藤』では、友三郎の人生を全て、次の言葉としてまとめています。

あと数年友三郎の命がもってくれれば、太平洋戦争は避けられたのではないだろうか。

『田辺』では、同郷で後に貴族院議員になった和田彦次郎に友三郎が語った言葉を引用しています。

「自分は有用の人物であれば同郷人であろうがあるまいが、推薦もしくは引き立てもするが、ただ同郷の人であるというのみで、特別に世話をすることは出来ぬ。自分は従来そういう主義で来ているのだから、同郷人の間での評判は定めし悪いであろうが致し方ない」

当然、自分の家族だからといって引き立てることなど飛んでもないと考える人物だったのです。

これほど優れた軍人・政治家だった友三郎から、私たち、そして未来の世代が何をどう学ぶべきなのでしょうか。難しいかもしれませんが、こんなに良いお手本があるのに、その存在は全く知らない、知っていても何も学ぼうとはしないのでは、我が国は勿論、世界も衰亡の一途を辿り、やがて、いや近い内に滅亡してしまっても不思議ではないとさえ言えるのではないかと、憂えています。

 

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 [2023/7/8 人間イライザ]

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2023年7月 6日 (木)

加藤友三郎の人となり ――政治家としての本質も――

加藤友三郎の人となり

――政治家としての本質も――

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加藤友三郎 (Public Domain)

http://www.lib.utexas.edu/photodraw/portraits/index.html

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広島「出身」の岸田総理が誕生した時に、広島市出身の初の総理大臣加藤友三郎についての記事を書きました。日本海海戦では東郷平八郎司令官の下、参謀長としてロシアのバルチック艦隊を破ったことや、4つの内閣で海軍大臣を務めたこと、また1921年のワシントン軍縮会議では、米英日の海軍力の比を5:5:3に抑えて、日本のみならず世界の軍縮の流れを作ったこと等が大きな功績として語られています。

『海軍大将 加藤友三郎と軍縮時代』(以下、『海軍』と略します)の著者である工藤美知尋・日本ウェルネススポーツ大学教授は、「あと数年友三郎の命がもってくれれば、太平洋戦争は避けられたのではないだろうか。」とまで評価しています。

その友三郎は、ワシントンの会議に当って、それまでは大日本帝国の仮想敵国であったアメリカとの関係を抜本的に変える上で、「加藤伝言」と呼ばれる貴重な文書を残しています。1921年12月27日、条約についての協議が終った後、当時の井出謙治海軍次官宛に、堀悌吉中佐に筆記させたものです。その中の主要部分を『海軍』から引用します。

「どうしても主義として米案に反対することは能はずと決心するに至れり。

先般の欧州大戦後、主として政治方面の国防論は、世界を通して同様なるが如し。

即ち国防は、軍人の専有物に非ず。 戦争も、軍人のみにして為し得べきものに在らず。 国家総動員して之に当たるに非ざれば目的を達し難し。

平たく言えば、金がなければ戦争ができぬと言うことなり。戦後露西亜と独逸が斯様に成りし結果、日本と戦争の起こる probability のあるは米国のみなり。

仮に軍備は米国に拮抗するの力ありと仮定するも、日露戦争後の時の如き小額の金では戦争は出来ず。然らば其の金は何処より之を得べしやといふに、米国以外に日本の外償に応じ得る国は見当たらず。而して其の米国が敵であるとすれば、此の途は塞がるるが故に、日本は自力にて軍備を造り出さざるべからず。此の覚悟のなき限り、戦争は出来ず。英仏は在りと雖も当てには成らず。 斯く論ずれば結論として、日米戦争は不可能といふことになる。 余は米国の提案に対して、主義として賛成せざるべからずと考えたり。」

世界の趨勢を見極め、国防とは軍人の専有物ではないこと、戦争をするのにはお金が必要だという分り易い視点から軍縮する意味を説いています。日本が戦争するためには外国に借金しなくては資金が調達できそうもない、しかし、貸してくれるだけの余力があるのはアメリカしかいない。そのアメリカとは戦争はできないだろう、そして、アメリカの金を借りないと戦争のできない日本がそのアメリカと戦争をしても、経済の面から勝ち目はないだろうという論理的帰結も見えて来る突っ込んだ主張をしています。

言わずもがななのですが、日本の国会に諮ったり世論に問い掛けたりする前にアメリカに行って、結局増税するしか手がないことは誰にでも分る軍事費の倍増を約束してくるような総理大臣に、爪の垢でも煎じて飲ませたいと思うのは私だけでしょうか。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2023/7/6 人間イライザ]

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2023年6月 4日 (日)

「念押しキャンペーン」の目指したのは ――鉄は熱いうちに打て――

「念押しキャンペーン」の目指したのは

――鉄は熱いうちに打て――

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慰霊碑前のG8下院議長たち

 

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G7広島サミットが近付くにつれて、マスコミからの取材が増えてきました。旧知の、中国新聞記者岡田さんからの取材があったのは、5月9日、もうサミットまで10日しかありません。サミットで実際にどのようなことが行われるのか、特に、資料館の視察がどのような形で行われるのか、被爆者の体験は聴いて貰えるのか等、少しずつ具体的な姿が見え始めてきたときです。

私の頭の中には、2008年のG8下院議長会議のときのことが強烈に残っていました。河野洋平衆議院議長の肝煎りで開かれたG8 (ロシアも入っていたことも、今回のG7との大きな違いです) の下院議長さんたちには、約一時間、資料館を丁寧に見て貰いましたし、その最後に、元資料館館長だった高橋昭博さんの証言を聴いて頂きました。

当時、市長として下院議長会議のお手伝いをした立場から、2日間の様子をメルマガ「春風夏雨」に二度にわたって書きましたので、それを今回も二日にわたって再掲します。長くなりますが、是非お読み下さい。そして、今回のG7広島サミットとの違いを確認して下さい。

違いの一つは、資料館の視察の仕方です。議長さんたちが丁寧に、本館も含めた管内を上田館長の案内で回って最後に高橋さんの感動的な証言になったのです。その場での議長さんたちの立ち居振る舞いからは、これ以上付け加えることはない、この感動を必ずそれぞれの国に帰ってから、政治の場で生かして貰える、という確信さえ持てたのです。

しかし、念のため、その後の市主催の昼食会でのスピーチで私は、次の3点を強調しました。

  • 被爆体験から生まれた最も大切なメッセージは「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」である。
  • 私たちは今、岐路に立っている。ここ数年の内に私たちは、核兵器のない世界か、あるいは開発能力のある国はすべて核兵器を持つ世界か、何れかを選択する羽目になるはずである。
  • 皆さんは、2020年までに核兵器を廃絶する力を持ち、義務を負っている。

 

今回のG7サミットで、「被爆地広島出身の総理大臣」と言えども、これほどの発言はできないかもしれない。となると、岸田総理に何を期待したら良いのか、を考えた末に、出てきたのが、資料館の出口での念押しです。

資料館の視察にどのくらいの時間を取って貰えるのかは分りませんでしたが、オバマ大統領の時よりは長時間になるはずですし、資料館での時間が短くても大きなショックを受けるのが普通だという経験をしてきましたので、今回も同じことが起きるという前提です。

そのショック、あるいは感動といっても良いでしょうが、を首脳の皆さんが一「人間」として受け止めたとき、そして政治家の立場に戻って、核保有の正当化が当然だという枠組みに戻る前に一言、「これで核は使えなくなりましたね」と岸田総理が念押しすることで、首脳の皆さんの資料館での視察は、「人間」レベルでの一つのまとまったパケッジとして皆さんの胸に残るはずなのです。「鉄は熱いうちに打て」なのです。

ということで、Change.orgのキャンペーンをその日から始めましたが、それを後押ししてくれた中国新聞の平和メディアセンターは、動画を含めてこのことをサミット直前にアップして下さいました。リンクを貼っておきますので、御覧下さい。

https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=132027

また、Change.orgのキャンペーン・サイトはこちらです。

 

以下、2008年9月10日アップのメルマガ、「春風夏雨」の100回の記事を貼り付けておきます。

(中に、佐村河内守氏のことが出てきますが、まだ真相が表に出ていなかった頃ですので、お許し下さい。)

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春風夏雨第100回 (2008年9月10日号)

秋葉忠利

2008年9月7日(日)執筆

 

大成功に終ったG8下院議長会議(1)

――「ヒロシマ」の持つ不思議な力から、新たな希望が生まれました――

 

このコラムも100回を迎えました。第一回は2003年の4月6日でしたから、それから5年半近く、お読み頂いた皆さんに心からお礼を申し上げます。『市民と市政』に連載している「市長日記」も今年の初めに100回になりました。

今後とも、海外出張その他、市民の皆さんの目に触れることの少ない事柄、マスコミの報道だけでは全体像や詳細が伝わらない事柄等について、「楽しくてためになる」を目標にトピックを選びたいと思います。

今回は、9月1日と2日に広島市で開催されたG8下院議長会議について報告をしたいと思います。

結果は一言で表現すれば大成功でした。ここまでは、新聞やテレビの報道で御存知の通りです。河野衆議院議長からも、会議が成功したこと、そして関係者や広島市民の皆さんに感謝の気持を伝えて欲しい旨の電話を頂きました。

私からも多くの皆さんに感謝したいと思います。そもそも、わが国で初めて開かれるG8の下院議長会議を広島でと提案して下さったのは河野議長です。各国の議長さんたちにも働き掛け、広島開催を決めて頂いた行動力そして英断に心から感謝しています。続いて、会議を成功に導くための陣頭指揮も見事でした。会議の関連行事が始まった1日、そして会議そのものが開かれた2日の両日、ホスト役としての河野議長の身近で開催地市長としての役割を果たしながら、改めて議長の広島ならびに平和に対する深い理解、そして最年長の議長としてのリーダーシップと余裕とが、会議を成功に導いた大きな理由であることを実感しました。

事務レベルでは、衆議院の事務局と広島市の担当者が中心になって今年の初めから準備をしてきました。県と経済界、出席する各国との友好協会等から構成するG8下院議長会議支援推進協議会の皆さんにもお世話になりました。県警の皆さんにも万全の警備をして頂きました。改めてお礼を申し上げます。

さて1日の夕方、広島空港から市内到着後、議長さんたちにはまず上田宗箇流の御点前で寛いで頂き、続いて歓迎コンサートを30分楽しんで頂きました。聞いて頂けたのは、コンサートの第二部、モーツァルトのバイオリン協奏曲第5番、秋山和慶氏指揮の広島交響楽団の演奏でソリストは岡崎慶輔氏でした。因みに第一部は大瀧賢一郎氏の独唱、第三部は35歳で聴力を失った被爆二世で世界的な作曲家佐村河内守氏作曲の交響曲第一番を、広響が演奏しました。

2日目は朝8時半から平和記念公園の慰霊碑前で献花、その後平和記念資料館を見て頂き、途中、元資料館長で被爆者の高橋昭博氏に御自分の体験を語って頂きました。休む暇もなく、本題である議長会議。テーマは河野議長の発案で「平和と軍縮に向けた議会の役割」でした。広島で開く会議のテーマとしては最適ですが、同時に重いテーマでもあります。しかし、議長さんたちの熱の籠った発言が続いて、終了時間は予定をかなり過ぎていました。

広島市主催の昼食会では、冒頭で皆さんへの歓迎の言葉と共に、被爆体験の意味と2020年までの核兵器廃絶を目指して頑張っている平和市長会議の活動についてのスピーチをさせて頂きました。最初に、スピーチの要点として、しっかり理解し記憶して欲しいと私が願っている3点を強調しました。それは

(1)   被爆体験から生まれた最も大切なメッセージは「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」である。

(2)   私たちは今、岐路に立っている。ここ数年の内に私たちは、核兵器のない世界か、あるいは開発能力のある国はすべて核兵器を持つ世界か、何れかを選択する羽目になるはずである。

(3)   皆さんは、2020年までに核兵器を廃絶する力を持ち、義務を負っている。

です。スピーチの概要は、広島市のホームページで御覧頂けます。

昼食会の最後近くになって、議長会議が卵を産んでくれました。広島で「子どもサミット」を開くという提案です。その背景も、河野議長から説明されましたーー中国新聞の一部として月に2回の頻度で発行されている『ひろしま国』という10代の子どもたちが作っている新聞があるのですが、その子ども記者が河野議長をインタビューしたときに、「子どもサミット」を広島で開くことを提案したのだそうです。

河野議長は会議の間を縫って、参加した議長さんたちに「子どもサミット」の開催提案を皆でしましょうと話し合ってくれていたのです。その結果が、広島市で子どもサミットを開きましょうという正式提案になったのです。「卵から雛がかえって、その雛にどんな餌を食べさせるのかは広島市にお任せしましょう」という言葉も付けられていました。子どもたちの発想の素晴らしさ、またその提案を真剣に取り上げてくれた河野議長に感謝したいと思います。当然、市としては前向きにお受けする積りです。

夕食会でも予定にない、フランスのアコワイエ議長からのお礼の挨拶がありましたが、昼食会でもカナダのミリケン議長からお礼の挨拶がありました。他の議長さんたちの気持を代表しての感謝の言葉でしたが、どの議長さんも異口同音に感謝してくれたのは、広島の「ホスピタリティー」でした。特に米国のペローシ議長は「感謝してもし切れない」と河野議長に話していますし、私にも「広島市民の歓迎に心から感謝する」と言われました。

それは正に全市・地域一丸となっての歓迎の気持が9人の議長の皆さんに伝わったからです。

改めて、上田宗箇流の関係者の皆様、コンサートの演奏者である秋山先生と広響、独唱者と伴奏者、ソリスト、そして作曲の佐村河内氏、コンサートを支えて下さった多くの関係者やボランティア、また、恐らくは議長さんたちが一番多くの時間を過したホテルと素晴らしい食事の担当の皆様、歓迎の旗やメッセージで議長さんたちを感激させた多くの子どもたち、平和記念公園で平和の歌声で歓迎してくれた合唱団、ライトアップ・イベントや子どもたちのイベント、その他のイベントを企画してくれた青年会議所並びに参加した子どもたち、その他にもここには書ききれないくらい多くの皆さんの献身的な協力が議長さんたちに伝わったことをハッキリと感じることができました。万一、ここに漏れている方がいらっしゃったらお詫び申し上げます、と共に私まで御連絡頂けますでしょうか。

皆様に改めてお礼を申し上げます。有難う御座いました。また、このような形で世界の議長さんたちを歓迎できる広島市そして市民の力を心から誇りに思っています。

次回は、議長さんたちと交わした会話の内容や、予想外の出来事、そして私の感想等をお伝えしたいと思います。

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そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/6/4 人間イライザ]

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2023年6月 2日 (金)

マスコミに関心を持って頂き感謝しています ――お陰様で、G7広島サミットの全体像が浮き彫りになってきました――

マスコミに関心を持って頂き感謝しています

――お陰様で、G7広島サミットの全体像が浮き彫りになってきました――

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昨日は、G7広島サミットの総括についての、記事を載せて下さった『日刊ゲンダイ』へのお礼の言葉の積りだったのですが、広島では、今日6月2日に発売になりますので、是非お読み下さい。

加えて、これまで取材して下さった他のメディアへも一言お礼の言葉を載せさせて頂きます。

何人かのチームで取材して下さったメディアもあるのですが、お名前は代表して一社一人ということにしました。また、時系列に沿っていますが、老化現象も進んでいますので、順不同です。

まず、どのメディアの皆さんも全く同じなのですが、とても「熱心に」私の言いたい放題を聞いて頂き感謝に堪えません。

『読売新聞』の三島浩樹さんは、早くから声を掛けて下さり、長広舌になりがちな私の話の中で、どうバランスを取れば伝わるのか、上手くリードして頂けたように感じています。

北海道新聞の松下文音さんは、忙しいスケジュールの中、ピンポイントで取材して下さいました。私がG7についての注文を付けて行く中で、一見、G7とは関係のない事柄でも、背景をきちんと伝え、さらに文脈を整理しながら聞いて頂きました。ちょっと時間は掛かっても、より正確に私の言いたいことが伝わったような気がします。

中国新聞の岡田浩平さんとは、ずいぶん長いお付き合いですので、私の考えやこれまでの活動等については、説明するまでもなく御存じなのですが、そうした点も含めて改めて今の私の言葉として語ることの大切さに気付かせて頂きました。さらに、中国新聞という、原爆や平和の問題を長い間、社是として掲げてきたメディアの記者としての問題意識から、鋭い気迫を感じました。

実は、この時の岡田さんとのやり取りの中から、Change.orgの署名キャンペーン、「岸田さん、資料館の出口で、「これで核は使えなくなりましたね」と念を押してください」、を始めなくてはならないと、背中を押されたのです。

香港フェニックステレビのLi Miaoさんも、中国や台湾へのニュースを配信しているテレビ局の東京支局長なのですが、G7についての報道のほとんどには、中国についての言及あまりなく、あっても「敵国」扱いが目立ちました。そんな中、「核の先制不使用」政策を採用している中国とインドの役割を考えようと提起している私の考え方を中国の皆さんに伝えて頂けたのは、とても有り難いことでした。Liさんは日本の大学を出ていて、日本語で取材して下さったので、それも助かりました。

朝日新聞の副島英樹さんも長時間お付き合い下さいました。特に、岸田総理の発信した言葉の中で、昨年8月の国連で発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」や、G7広島サミットでの「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」で、「ヒロシマ」あるいは「広島」という冠が付けられている意味についての鋭く深い理解と位置付けには、感謝しかありません。副島さんとの対話から、新たなChange.orgのキャンペーンが生まれるかもしれません。

次の世代の皆さんに、私たち世代からのメッセージを伝え引き継いで貰うことが、日本社会だけでなく人類全体にとっても大切なのですが、私一人で伝えるだけでは当然、限界があります。マスコミの皆さんが、貴重な時間を使って丁寧に取材をされ、それを分り易い言葉で、しかも世代を超えた枠組みを作りながら報道して下さっていることに、この一月ほどの活動の中で改めて感謝したいと強く感じた次第です。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/6/2 人間イライザ]

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2023年6月 1日 (木)

今日発売の『日刊ゲンダイ』を御覧下さい ――私論・G7広島サミットの総括が掲載されています――

今日発売の『日刊ゲンダイ』を御覧下さい

――私論・G7広島サミットの総括が掲載されています――

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これまで、数回に分けて、G7広島サミットの総括をしています。

昨年始めたChange.orgのキャンペーン「「核を使わない」とただちに宣言して下さい」 (「宣言キャンペーン」と略します) を出発点に、5月9日に始めた「岸田さん資料館の出口で、「これで核は使えなくなりましたね」と、念を押してください」キャンペーン (「念押しキャンペーン」と略します) までの道筋を辿りながら、平和運動に携わる若い世代の人たちへの参考になりそうなことを記録しておけたらという思いから書き綴っています。

先日、そんな思いが通じたのでしょうか、『日刊ゲンダイ』の生田記者がインタビューのため広島に来てくれました。その結果が、今日発売の夕刊に載ります。皆様、是非、お読み下さい。広島では、明日、6月2日の発売です。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/6/1 人間イライザ]

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2023年5月31日 (水)

広島で被爆者を裏切ってはいけない (9) ――「ヒロシマ」の意味を広げるため、ロンドンでスピーチ――

広島で被爆者を裏切ってはいけない (9)

――「ヒロシマ」の意味を広げるため、ロンドンでスピーチ――

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3月4日の授賞式で

 

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既に報告した3月4日のスピーチの中でも触れていますが、広島・長崎への原爆投下について、世界で最も早く非難し抗議してくれた団体の一つがアハマディヤ・ムスリム協会です。1945年8月10日ですが、これは、日本がスイス大使館を通して、アメリカに国際法違反だと抗議した日でもあります。日本はその後、被爆者による裁判中に公式にこの見解を撤回しましたが、アハマディア・ムスリム協会の考え方は一貫して核兵器の廃絶です。

この協会から平和賞を頂いたことは、既にこのブログで報告しましたが、授賞スピーチを日本語に訳している時間がなくて、英語のままでした。今回、訳すことができましたので、推敲の余地はありますが、アップします。

アハマディア・ムスリム協会のモットー「Love for all, hatred for none.」を信じる人は世界的に広がっていて、信者数は1,000万人から2,000万人と言われています。その全ての人がこの日、中継で見ることはないにしろ、世界各国でかなりの数の方々に聞いて頂いていますので、メッセージは広がったはずです。G7参加国の方々にも伝わり、その中に首脳に影響力のある方がいれば素晴らしいのですが---。

以下、授賞スピーチの和訳です。

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アハマディア・ムスリム平和賞

受賞スピーチ

202334日 in London

秋葉忠利

 

アッサラム アライクム! カリフ様、アハマディア・ムスリム協会の皆様、来賓の皆様、平和活動家の同志の皆様、紳士・淑女の皆様

この平和シンポジウムに謹んでかつ新たな決意を持って参加し、広島と長崎の被爆者の代理人としてまた世界の平和活動家を代表して、この賞をお受け致します。

ロシアがウクライナに侵攻し、核兵器を使うぞとの脅しを一度のみならず、プーチン大統領が何回も繰り返してから一年が経ちます。そして、彼の言葉を聞いた被爆者の脳裏にはこの[長崎で被爆した少年の、黒く焼けた遺体の写真を掲げる]姿が浮かびました。小さな核兵器によって生き地獄に投げ込まれた長崎の少年です。私たちは、この悲劇を世界のどこでも、誰にでも、そしていかなる時にでも起こしてはならないのです。

一年前に、アハマディア・ムスリム協会の皆様も同じように感じたことを知っています。それは、1945810日に皆様は、世界で恐らく一番初めに、核兵器の非人間性と極悪性に気付き、それに抗議して下さったからです。その日に第二代のカリフは次のように述べています。

「このような虐殺が決して許されないことを、全世界に対して宣言するのは、私たちの宗教的かつ道徳的な義務である。」

遅蒔きながら、世界も同じ結論に達しました。それは、2021122日に、核兵器禁止条約 (TPNW) が発効したからです。

残念なことに、核保有国と核依存国はTPNWに反対し、署名も批准もしないと誓っています。彼らは、核兵器の保有と核使用の脅しとが、どの核保有国にも核を使わせない保証だと信じているのです。

でもこれは、幻想にしか過ぎません。誤った核抑止のパラダイムが、核兵器を使わせなかったのではないのです。核兵器を使わせない力を持つのは、被爆者です。1946年に、魂を揺さぶる本『ヒロシマ』を世に送った、ジョン・ハーシーは、2回目に広島を訪れた1985年に、その真実を確認しています。

都市と市長たちはこの見方に全面的に賛成しています。それは、どの国が核兵器意を使ったとしても、都市が核兵器の攻撃目標になっているからであり、また都市は過去の戦争の犠牲者でもあるからです。だからこそ、平和と核兵器廃絶のための活動団体である「平和市長会議」 (広島市長が会長) は、戦争と核兵器に対して強く「Never Again!」という意思表示をしてきたのです。

広島から選出され、従ってこのような声が体に染みついているはずの岸田総理が、G7の場でリーダーとしての役割を果して、プーチン大統領に核を使わせないように説得すべきだと願っています。

岸田総理とその他のG7のリーダーたちがそれ以上の目標を掲げるに足る動きも世界には生まれています。その目標とは、核兵器の「先制不使用」です。

その先鞭になったのは昨年11月のG20バリサミット宣言です。そこでは、「核兵器の使用ならびに核使用の脅しは容認できない」と述べていますし、G7のリーダーたちは全て、この宣言に署名しているからです。

中国は224日に、12項目からなる和平提案を行っていますが、その中で、「核兵器は使われるべきではなく、核戦争も避けなければならない。核兵器の使用にも使用するとの威嚇にも反対である」と述べています。

インドのモディ首相は「この時代は戦争の時代であってはならない」という言葉を発案し、それはバリ宣言の中で使われています。

もし日本とインド、中国が協力してウクライナ/ロシア戦争を終結させ、世界的に「核の先制不使用」を広げ、最後に核廃絶に至る道を創ることになれば、世界がこれら三国の英雄的かつ歴史的貢献を大歓迎することは間違いありません。

5万人もの人が大地震で亡くなり、トルコとシリアで何十万もの人が助けを求めているときに、私たち人類はなぜ、これらの人々を助けるためではなく、戦争のために、貴重な人的・物的な資源の無駄遣いをしているのでしょうか。

カリフ様の言葉が方向を示しています。「結果がどうであれ、平和と正義を実現するための努力を決して諦めてはならない」

最後に、もう一人の賢人の言葉を引用します。2年前に亡くなった坪井直氏の言葉です。「Never again, and never give up!

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そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/5/31 人間イライザ]

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