被爆者

2022年10月10日 (月)

「行動」・「現実」を表す「言葉」の重み

「行動」・「現実」を表す「言葉」の重み

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言葉と現実との関係はかなり複雑です。でも、多くの場合、「現実」あるいは「物」が先にあって、それを表現するために「言葉」が発明されています。例えば、「リンゴ」は恐らく人類が言葉を持つ前から存在していたと思われます。それを、「ミカン」とは違うものであることを示すためという理由もあり、つまり多くの理由があって名前が必要になり、人類が言葉を獲得してから「リンゴ」という名前が付けられたのでしょう。

ヘレン・ケラー女史が「水(water)」という「言葉」が、冷たい、流れる物質を指していることを理解したエピソードも、まず「現実」があり、それを表現する手段としての「言葉」がそれに付いてくるケースです。

「座り込み」についても、抗議の意味を込めた言葉としては恐らく江戸時代には使われていなかったのではないでしょうか。戦前に今のような意味で使われていたのかどうかも疑問です。借金取りが座り込む、という場合はあったかもしれません。

私の記憶では、戦後に良く報道されたストライキの際の「座り込み」を覚えていますし、被爆者たちが核実験に反対して慰霊碑の前で行う行為も「座り込み」ですが、行為が先にあり、その後に名前が付けられたような気がします。

アメリカに目を転ずると、ベトナム戦争反対運動や公民権運動などで行われた「sit-in」があります。「座り込み」はその訳語として使われていました。カウンターの椅子を占拠する行為も入りますが、これも実質的には「座り込み」と同じ抗議行動です。語源的には、1941年の学生による抗議行動の際に使われていた例があるようですし、それ以前には労働運動でも「sit-in」は使われていたようです。

つまり、この言葉は様々な形の抗議行動とともに生まれ、その内容も変わりつつ成長してきた「生きた」言葉です。人権や平和、そして正義を貫くための行動を表している点が重要です。そうした行動を忍耐と情熱を持って行ってきた人たちが、その行動を共有し広げるために、そして目標を実現するための旗印として愛し使ってきたことを忘れてはならないのです。

言葉と現実の関係では、言葉が先にあって現実がそれに付いてくる場合も当然あります。例えば、日本国憲法と政治の場合です。憲法98条は「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と明言していますので、憲法は言葉として先に存在し、政治は憲法に従う形でしか行えないのです。

「言葉の意味が大事だ、現実がそれと乖離していてはいけない」と論じる場合、その一環として憲法と政治に思いを巡らせて欲しいと考えるのは、ないものねだりなのでしょうか。個人的には、憲法に違反して行われている死刑や、存在してはいけない軍隊を論じて欲しいと願っています。そのどちらも人間の生死に直接関わることなのですから。

憲法の言葉を文字通り素直に読むとどんな結論になるのか、拙著『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論――』では、「丁寧に」説明しましたので、御一読頂ければ幸いです。(とは言え、ちょっと難しいという声も聞こえてくるのですが――)

 

それでは今日一日が、皆様にとって素晴らしい24時間でありますように。

[2022/10/10 イライザ]

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2022年10月 2日 (日)

「横浜市非核兵器平和都市宣言市民のつどい」が終りました

「横浜市非核兵器平和都市宣言市民のつどい」が終りました

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左から小沼通二慶應義塾大学名誉教授、私、そして被爆者の和田征子さん

第18回 2022横浜市非核兵器平和都市宣言市民のつどいが盛会裡に終りました。主催者である実行委員会の皆様に心からお礼を申し上げます。

この会の中での柱の一つは、和田征子さんが被爆者として8月に開かれたNPT再検討会議に参加した報告でした。被爆証言も交えて、ニューヨークで精力的に活動された様子を熱っぽく語って下さいました。

私はというと、前日にはドライ・リハーサルをして、10分オーバーした分はスライドを減らして調整した積りだったのですが、60分には収まらず、残った3分の1ほどは、タイトルだけを5分ほどかけて紹介することになってしまいました。

久し振りに「対面」での講演でしたので、皆さんから返ってくる熱気に応えようと、ついつい言葉数が多くなってしまったようです。再訓練をして次回は時間通りに収まるようにしたいと考えています。

それでも最後のパネル・ディスカッションで、コーディネーターの小沼通二先生が時間を下さって、補足することができました。小沼先生は著名な物理学者であるだけではなく、各廃絶運動のリーダーとしても長い間活躍されていた方でしたので、お会いできて、しかもいろいろ気を遣って下さり、大変光栄な一時でした。

また、2014年にやはり横浜で、神奈川生協の皆さんにお話したことがあったのですが、その皆さんからの後押しもあって今回声を掛けて下さったという背景も伺い、感激一入でした。

夜は、Zoomで「《社会と数学の関わり》を話し合う数学人の集い――「準備会」」も大変盛り上がりました。こちらの報告も追ってさせて頂きます。

 

それでは今日一日が、皆様にとって素晴らしい24時間でありますように。

[2022/10/2 イライザ]

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2022年9月27日 (火)

「国葬儀」とは、「棄民」政策の成れの果て

「国葬儀」とは、「棄民」政策の成れの果て

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この稿を書いているのは926日ですが、それは国連の定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」です。明日27日は安倍元総理の「国葬儀」です。今回は、この二つの日を本質的に結ぶ文書を再度紹介します。最初に紹介したのは、416日の本ブログでした。タイトルは、「無辜の民間人の命と生活 ――かつては顧みられなくて当然でした――」です。

そうなのです。「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」と安倍元総理の「国葬儀」とをつなぐ文書は、198012月に「原爆被爆者対策基本問題懇談会」、略して「基本懇」が発表した意見報告書です。略して「基本懇答申」または「答申」と呼びます。

この答申のキー・ポイントは、

  • 戦争は国が始める。(これが大前提でないとこのような答申は書けません)
  • でも、戦争による犠牲は、国民が等しく受忍しなくてはならない。
  • ただし放射能による被害は特別だからそれなりの配慮は必要--「お情け」的福祉観。
  • しかし、一般戦災者とのバランスが大切。
  • 国には不法行為の責任や賠償責任はない。

このような、戦争肯定とその被害に対する開き直りを、恥じることなく言語化した人たちが誰だったのかも記憶し続けなくてはなりません。委員(全員故人)7人います。

茅誠司・東京大名誉教授(座長)

大河内一男・東京大名誉教授

緒方彰・NHK解説委員室顧問

久保田きぬ子・東北学院大教授

田中二郎・元最高裁判事

西村熊雄・元フランス大使

御園生圭輔・原子力安全委員会委員

茅、大河内の二人は東大の総長を務めた人たちです。日本政治を動かしてきた官僚組織・制度や日本の思考の元となる学問の世界、その他にも財界や産業界等、いわゆるエスタブリッシュメントを構成するエリートたちを育ててきた人たちです。

そのエリートたちの答申ですから、問題の多いことは当然なのですが、改めて整理しておきましょう。 

  • 国が市民の上位にあり、市民に「犠牲」を強いている。
  • 支配/被支配関係でしか人の命を捉えていない ⇒ 国民主権を否定していることになる。
  • 再度、戦争をするという前提でものを言っている--絶対に戦争をしないのであれば、何年掛かっても犠牲に対する補償はできるし、する。
  • 憲法の精神も、戦争放棄の決意も否定している。

「国」が国民をこれほど粗末に扱っている状態は、「棄民」という言葉が一番ピッタリ来るように思えます。

その上で、26日と27日の意味を考えて見ましょう。「核兵器の全面廃絶」を、命を懸けて訴えてきたのは被爆者です。被爆者援護法とは、本来であればその被爆者の訴えに耳を傾け、彼ら/彼女らの命と生活を支援するために、「国」の戦争責任を認めて、その結果生じた原爆の被害についての補償をする手段なのです。ところが、その援護法についての諮問を受けた基本懇の答申が、「受忍論」だったのです。

つまり「国」は、戦争の犠牲は国民に押し付け、責任も取らず補償もしない。国民はそれを「受忍しろ」という内容です。ただし、被爆者が亡くなったらせめて線香の一本くらいは国が立てて欲しいという被爆者の気持は、「葬祭料」という形で援護法に含まれています。でも、戦争で亡くなった一般戦災者の場合、そのような最低限の形さえないのです。

「国葬儀」とは、戦争の犠牲まで「国民」に押し付ける「国」が、これまた「国民」に押し付ける「葬儀」なのです。亡くなった方への弔意の示し方は個人によっていろいろでしょうが、「国葬儀」を断固否定しなくてはならない理由がもう一つ増えました。

[2022/9/27 イライザ]

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