物価高

2023年2月 5日 (日)

日本が壊れて行く? (5) ――車内閉じ込めと春闘――

日本が壊れて行く?  (5)

――車内閉じ込めと春闘――

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出典: 財務省「法人企業統計」

 

前回の最後は、次のような言葉で締めました。

 守るべき時に守らない、守らない方が良い時でも守らせる――誰が「ボス」なのかを示すために規則はあるのでしょうか。こんな日本社会を変えるために、私たちは何をすれば良いのでしょうか。一緒に考えましょう。

念のために、「守るべき時に守らない、守らない方が良い時でも守らせる」事例をもう一度復習しておきましょう。

時系列的に最初の二つの事例、それは「守らない方が良い時でも守らせる」事例です。(心理学者、島崎敢氏の記事、「JR西の長時間閉じ込め 「乗客を線路へ」なぜ即断できないのか」から要約・引用。

1969(昭和44)年、北陸トンネルを通過中の列車で車両火災が発生した。この時、「トンネル内では消火活動は困難」だと判断した乗務員は、トンネルを抜けるまで列車を走らせ続け、犠牲者を出さずに済んだ。しかし、機転を利かせた乗務員は「即時停止の規定に違反した」として処分されてしまったのだ。

1972年、くしくも同じ北陸トンネルを通過中の列車で、再び車両火災が発生した。

過去にマニュアル通りに列車を止めなかった乗務員が処分されていたこともあり、この時の乗務員はトンネル内で列車を急停車させた。その結果、煙が充満して消火活動ができなくなったトンネル内で、30人の犠牲者を出す大惨事となってしまった。

「過去に処分されていた」のは、停車しないで乗客の命を救った乗務員ですし、ここでは触れられていないのですが、1972年に規則を守り停車した乗務員が、その後この時のことをどう捉えていたのか、そして乗務員に対してJRがどう対応したのかが気になります。

次に、「守るべき時に守らない」の典型例が、1月のポイント事故による乗客の10時間社内閉じ込めです。(『PRESIDENT Online』の鉄道ジャーナリスト、枝久保 達也氏による記事、「乗客の「10時間車内閉じ込め」は十分に避けられた…JR西日本が犯した「3つの判断ミス」」から引用)

26日のJR西日本東京定例会見で長谷川一明社長は、本来は「1時間が経過して復旧できない場合は徒歩誘導を検討する社内基準がある」としながらも、「夜間、大雪の中で歩くのはリスクが大きいため、列車の運転再開を優先してしまった」

ここで私の抱いた違和感は、そのリスクがどの程度のものかについての現場での判断が正しかったのか、という点です。分岐器の除雪と解凍をして運転再開のために多くの人手が投入されたようなのですが、その人手を使って乗客を近くの駅舎に誘導することはできなかったのでしょうか。

「大雪の中で歩くリスク」について、『東洋経済ONLINE』の大坂直樹記者による「JR西「大雪で車内閉じ込め」、なぜ防げなかったか 計画運休の判断は?危機回避できた4つの節目」を元に考えて見ましょう。

一番の疑問は、降車と駅への誘導の始まったのが、23時だということです。停車したのが、20時前ですから、一時間の停車が続いた時点つまり、21時に降車・駅への誘導が始まっていれば、乗客の苦しみは2時間短縮されていた筈だからです。その後の退避に要する時間も6時間掛かっているようなのですが、乗客の疲れも視野に入れると短縮できたと考えられるでしょう。

こう強く感じるのは、分岐器の凍結はバーナーを使っても融かせなかったとという報道が元になっています。一時間バーナーで熱を加えても解凍できないほどの状態なら、解凍は諦めませんか。

線路を歩いて退避するにしても、照明のないところは、乗客のスマホの照明を使うことで、乗客同士助け合いができそうですし、降車についても、航空機の非常口の使い方を飛行機に乗る度に見ているであろう多くの乗客たちの中の身体的に強い人たちがボランティアとして助けの必要な人に手を貸すことも可能だったのではないでしょうか。

その場にいなかった私が、想像だけでこんなことを言うのはおこがましいと思います。もしここで指摘しているようなことが実際に行われていたのであれば、私の不明を恥じてお詫び申し上げます。あるいは、状況がそんなことさえ許さないほど悪かったのであれば、再度、現場を知らない人間が出過ぎた発言をしたことについてお詫び致します。

しかし、仮にそうだったとしても、2時間の空白は必要なかったのではないでしょうか。

さらに不思議なのは、極端な表現を使ってきてはいますが、最長10時間も閉じ込められた人たちが、その間の非人間的な扱いについての正式の謝罪を求めたり賠償を求めたりしていないことです。私の感じ方が被害妄想に近くて、実際に閉じ込められた方々はそれほどの苦痛だとは感じていなかったのでしょうか。

こんなことを考えてしまうのは、春闘と関連があるからです。今年はなぜか、「賃上げ」をするぞ、素晴らしいことだろうという雰囲気作りが積極的に行われているのですが、それがもう一つの「異次元」の違和感の元なのです。

今年突然そんなことが可能になったのでしょうか。そんなことはありません。株主配当や社内留保の増加を経年的に振り返るだけで、企業の「価値観」が原因であることは明らかです。

そして最初に掲げたグラフで分るように、給与は20年間全く増えていないのです。さらに驚くべきことは、これだけの低賃金を強いられているにもかかわらず、一度のストライキも行われていないことです。

江戸時代だって、我慢ができずに命を懸けて一揆を起していたではありませんか。外国では航空機のパイロットやみなし公務員までストライキをしています。

「権力に対して従順だ」と言うと、権力の横暴に対して闘って来られた多くの皆さんに失礼なのかもしませんが、そのような少数の方々がいるにせよ、日本社会全体として、権力に対して余りにも寛容過ぎてはいせんか。社会全体がストライキを労働者の当然の権利として認め、「何故ストライキをしないの」という声が巷間から出て来るような社会への大転換ができないものでしょうか。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/5 イライザ]

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2023年1月27日 (金)

日本が壊れて行く? (1) ――「異次元」の違和感が広がっている――

日本が壊れて行く?  (1)

――「異次元」の違和感が広がっている――

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『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論――』では、「憲法マジック」という言葉を創って憲法解釈の矛盾を指摘しました。それは、憲法には「○○は××である」と書いてあるのに、その正反対の「○○は××ではない」が、巷間では正しい解釈だと考えられている状態を表す言葉でした。

憲法は言葉で綴られていますので、このような表現でその矛盾を指摘できるのですが、毎日のように報道される事件や事故、政治や経済の場でのできごとは、まだ完全には言語化されていないものが多く、どんな言葉で「何かおかしい」と言えば良いのかすぐには頭に浮かびません。とりあえず「違和感」という言葉で括りますが、それも普通の違和感では納まらない感じですので、皮肉を込めて「異次元」と形容しておきます。

この言葉が広まったのは、2013年に始まり今も続いている日銀の「異次元緩和」あるいは「異次元金融緩和」からです。ここで使われている「異次元」という単語の意味をGoo辞典で再確認しておきます。

1  異なる次元。また、次元の異なる世界。「空間」

2 (比喩的に)通常とは全く異なる考え方、また、それに基づく大胆な施策。「―の金融緩和」

そして、日銀の「異次元緩和」については、三菱UFJ国際投信のmattocoLifeというサイトに分り易い解説があります。それをさらに要約すると、次のように2013年から2016年まで、少しずつ改善を加えながらの緩和策を指しています。

2013年4月:量的・質的金融緩和

2016年1月:マイナス金利付き量的・質的緩和

2016年9月:長短金利操作付き量的・質的緩和

もっと大雑把にまとめると、「金融緩和」策として、何を指標とするかを変えたり、従来の施策を拡大したり柔軟化するといったことが中身です。その中で、特に注目に値するのは、常識では考えられなかった「マイナス」金利を導入した事でしょう。でも、目標としての「物価上昇率2%」は、普遍でした。

極端に単純化すると、「異次元緩和」とは「マイナス金利を導入して、物価の上昇率を2%にする」ことだったのです。

ここで、私個人の大きな違和感は、「プラス」を「マイナス」にする政策を「異次元」と呼ぶことです。皆さんは、どこかで「数直線」という言葉に出会っていると思います。その真ん中あたりに「0」という印があります。その右側が「プラス」の範囲で、左側が「マイナス」です。プラスからマイナスに移るということは、この数直線上の方向で示せますので、次元で言えば「一次元」の話なのです。それを「異次元」と言ってしまうのは、一種の「誇大広告」になるような気がしたのです。

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そして、経済や金融についての詳細な知識のない私たち市民から見ると、「異次元」という大袈裟な言葉で、凄いことをするという印象作りをしていることは分っても、その目標としての「2%の物価上昇率」にはマイナスのイメージしか湧かなかったのではないでしょうか。

何故なら、毎日の生活の中で、物価が上がっているということは感覚的に経験していましたし、賃金が上昇しないことは20年も続いていて、生活の苦しさも続いていたからです。感覚としては、もう物価はかなり上がっているのですから、それを目標にするという意味が理解できなかったからです。

それだけではなく、円安が続いて物価はさらに上がり続けたのですから、なお訳が分りません。

そんな状況をまとめると、結局、「異次元」という言葉にまつわる雰囲気として、感覚的には混乱と理解不能、でも大層なことをしているという自己宣伝が伝わってきました。

追い打ちを掛けるように、「異次元の少子化対策」です。「自己宣伝」、「理解不能」そして「混乱」というイメージを引き連れての政策ですから、それに期待して子どもを産もうと考える女性が出て来るとは思えません。そんなマイナス・イメージを避けるために、その言い換え、「次元の異なる」を使って済むなんて考える程、私たち国民は馬鹿にされているということなのではないでしょうか。この時点で、「国民・市民を舐めるな」と言いたくなりますよね。

実はここまではまだ「前振り」の積りでした。「異次元の違和感」は、本格的な違和感は次回から始まります。

 

最後に、まだ1月中ですので、今年一年が皆様にとって素晴らしい365日でありますように!

[2022/1/27 イライザ]

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2022年8月17日 (水)

多摩のミステリー

多摩のミステリー

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東京の多摩市にある京王プラザホテルですが、友人が近くに住んでいるため良く利用します。料金やサービスを含めて、ホテルとして満足しています。

今月13日まで宿泊した家人なのですが、関東地方が豪雨の影響を受けて新幹線も航空機も影響を受け始めていたため、もう一泊しようとネットで検索した際の経験です。13日の朝6時ころチェックした時には、13日から14日までの一泊が約12千円。それまでの一泊が約8,000円でしたので、他も調べようといったんサイトから離れて、9時近くにもう一度同じサイトに戻ると、何と「6万円」になっていたとのことでした。

実は、4年前の西日本豪雨の時にも家人は同じ経験をしています。豪雨の結果、新幹線が停まっていた日に広島市内のホテル料金が軒並み上がっていたのです。需要と供給の関係をコンピュータが把握して、それに従って料金を調整するシステムなのかもしれませんが、結果として、災害弱者を相手に儲けている、という印象を与えてしまっています。

現場では、災害弱者を助けるために特別の対応をしているホテルがあるという指摘も関係者から頂きましたので、ネットだけの数字から全てを決めつけてはいけないのですが、今回は、料金が何と「6万円」です。

他のホテルを調べたところ、これほどの高騰はしていなかったので、雨のせいで乱れた交通機関の影響による高騰ではなさそうです。13日にもう一度、調べた結果はこちらです。

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京王プラザホテルは、14日から一泊で25千円、そして次の日からはまた上がって5万円を超えています。

なぜこんなに高騰するのか、いろいろ考えて見ましたが、「ミステリー」という結論しか出てきません。何方か御存の方がいらっしゃれば、御教示のほどお願いします。

 

豪雨の被害はまだ続いています。被災者の皆さんに心からお見舞い申し上げます。さらに、コロナについてもまだ油断はできません。皆様、くれぐれも御自愛下さい。

それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい日でありますよう。

[2022/8/17 イライザ]

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2022年6月30日 (木)

社民党の主張は、財務省・厚労省のデータに裏付けられています

社民党の主張は、財務省・厚労省のデータに裏付けられています

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物価の高騰は、皆さんが日常的に体験されていることですので、言うまでもありません。それが特別響くのは、私たちの給料や年金が下がり続けているからです。これは、厚労省の公表している数字を元にグラフ化したものですが、これ以降も名目賃金は横ばいです。

こんな不公平な状況から一歩でも抜け出すために社民党が提案しているのが、消費税を3年間「ゼロ」にすることです。10%の消費税がなくなれば、支出はそれだけ減りますので、賃金がほぼ10%上がったことと同じになります。

しかしながら、政府・与党から常に出てくる反対論は「その財源がないからできない」です。しかし、財源はあります。大企業の「内部留保」つまり、貯金です。内部留保に5%の税金を掛ければ、それが財源になるのです。

内部留保が増え続けていることも次のグラフから分かります。それも財務省の数字を元にしています。

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しかも、企業に課される税金は、減り続けているのです。これも財務省のデータを元にしたグラフです。

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それだけではありません。企業の経営が苦しくなったから税金が低くなったということではないのです。逆に大企業の利益は増え続けているのです。NHKのネット版から引用します。(https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/468273.html)

 (今年5)11日までに公表された622社のまとめでは、前の年度と比べて83.6%の増益と利益が2倍近くに増えています。過去最高益をあげた企業の数は、226社と3社に一社を超え、全体としても、コロナ前の水準を上回り、過去最高益となる見通しです。(下線は筆者)

これらの数字を合わせて考えてみましょう。大企業は過去最高の利益を上げています。それに対して課される税金は減って、内部留保、つまり貯金は増えています。にもかかわらず、その利益や貯金の中から社員に払われる給料はこれまでと同じなのです。

 正規・非正規を問わず、給料は変わらない、それだけではなく実質賃金、つまりその給料の本当の価値は減っているのです。企業が最高利益を上げ企業の貯金は増え、企業の税金は下がっているにもかかわらずです。

実は、このことを一つのグラフで分り易く示しているネット上の記事があります。講談社の「マネー現代」中の「会社の利益は増えても「日本人の給料」が20年間増えなかった「本当の理由」」(京都大学大学院の藤井聡教授のインタビュー)です。その中のグラフを御覧下さい。

 寅さんが良く口にした言葉で表現すると、「労働者諸君」、こんな状況に対して怒っても良いのではないでしょうか。いや、怒るべきなのではないでしょうか。その怒りを、社民党は国政の場で代弁し、公正・公平な賃金を確保するため、獅子奮迅の働きをします。

炎暑が続くようですので、くれぐれも御自愛のほど祈り上げます。

 なお関連の動画は、ホームページやYouTube公式チャンネルを御覧下さい。

https://www.t-akiba.jp/

https://www.youtube.com/channel/UCNOCvMp5EfcUTqCYU6jgf0Q/videos

それでは今日が、皆さんにとって素晴らしい一日でありますよう。

[2022/6/30 イライザ]

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