ウクライナ

2023年9月13日 (水)

大阪での講演会報告です ――前向きな質問と発言ばかりでした――

大阪での講演会報告です

――前向きな質問と発言ばかりでした――

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G7広島サミットとは対照的だった2008年のG8下院議長会議の一行

 

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加藤友三郎没後100年記念シンポジウムが成功裡に終り、9月9日の午後2時から、大阪の北区天神橋3丁目にあるPLP会館での講演会も終了しました。テーマは、「弄ばれたヒロシマ  前広島市長から見た「G7広島サミット」について」です。

講演内容は、一コマずつという感じで今後、問題提起をして行きますが、今年のG7広島サミットとを考える上で、問題点がはっきりするのは、2008年に開かれたG8下院議長会議と対比することだと思います。これも、問題提起の中で指摘する積りですが、慰霊碑前の写真が示しているのは、下院議長さんたちが、被爆者に向き合ってくれたことです。慰霊の気持を示すだけでなく、今後自分たちがどのように行動を取るのか、慰霊碑に向かった決意を示しています。

今日は会場からの質問や発言を要約しておきます。講演の後の質疑の時間は短くて消化不良になることが多いのですが、今回は実のある内容の発言が多く、勇気付けられました。またその後の小規模の情報交換会でも、元気の出るコメントを沢山頂き、とても嬉しい一日になりました。

主催は、憲法9条--世界へ未来へ近畿地方連絡会(9条連・近畿)です。連絡会の皆さんとはもう10年来のお付き合いになりますが、それ以来、何度も御一緒させて頂いている方々ができるほど考え方の似ている存在です。

最初の質問は、1979年から始まった、いわゆる「アキバ・プロジェクト」で広島・長崎を取材した記者たちのその後についてでした。広島国際文化財団が主催してくれることになったこの事業は、海外のローカル・メディアの記者を広島と長崎に招請して、被爆者その他の関係者に会って貰い、自分たちの目で見た広島・長崎を報告して貰うことが目的でした。始まったのが40年も前ですし、10年で一応終止符を打ったのですが、日本で言えば「原爆記者」のような仕事をしてくれた人も出ましたし、その後、教育者として活躍した人、平和活動を中心に頑張った人等々、いろいろな人生を送っている人たちですが、残念なことに時間の経過とともに絆は細くなっています。

ただ、最近のアメリカの動きからは、こうした視点からアメリカのメディアに働き掛ける必要性が増してきたような気がしています。その点については稿を改めて報告します。

また、長い間、核兵器廃絶の運動をしてきているが、日本政府が広島・長崎への原爆投下を国際法違反ではないと主張していることは初めて知った、という驚きの言葉もありました。そうなのです。まさか日本政府が原爆投下を「合法」だと考えているなどと想像だにできない人がほとんどだと思います。

でも、日本政府は原爆投下は国際法違反ではない、と言い続けているのです。つまり、合法だと言っているのです。この点が一番ハッキリするのは、1945年8月10に、日本政府がスイスの大使館を通してアメリカに送った、「原爆投下は国際法違反だ」という抗議文と、それを覆した1963年の下田判決の際の日本政府の言い分を対比することです。

幸いなことに、今回はかなり詳しいレジュメを作り、一番最後に、資料としてこの対比を掲げておきましたので、それをしっかり読み込んで頂くことで、さらに理解が深まるはずです。この対比も近い内に、このブログにアップしておきます。

もう一点、とても重要な指摘がありました。それと同じ趣旨のメールをアメリカの親しい友人からも貰っていましたので、ことによると世界的にもこの考え方は広まりつつあるのかもしれません。それは、戦争そのものの違法性を共有して、戦争を違法化していこうという考え方です。

ウクライナで、そしてウクライナ戦争を口実にロシアが核兵器を使うことは決して許されることではありません。ロシアだけではなく、その他のどこかの国が核兵器を使ったとしても許されることではありません。そして核兵器禁止条約は核兵器の違法性を国際法上認める、世界的な合意を示しています。

半面、ウクライナでの戦争は続き、その他の複数の場所では、通常兵器を使った戦争があたかも合法的な手段であるかの如く扱われ、メディアも世界の世論もそれに対する反応は鈍いのではないか。戦争そのものが許されない、つまり戦争そのものを非合法化しなくてはならないのではないか、という問題提起でした。

その通りです。またこの点については近い内に、アメリカの友人とともに行動を起せるかもしれません。

その他の発言や質問については、近い内にアップします。

 

最後に皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!  

 [2023/9/13 人間イライザ]

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2023年7月17日 (月)

防衛省を防災省に ――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう――

防衛省を防災省に

――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう――

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津波で破壊された家--浪江町

 
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今年もまた、大雨が続き、全国各地で大きな被害が生じています。南九州そして北九州と山口、北陸や東北と、「線状降水帯」という名称とともにいつどこで大災害が起きるのかさえ予測できない状態です。ということを裏返せば、全国どこで自然災害が起きても不思議ではない自然環境の中で私たちは生活しているのです。

にもかかわらず、政治はこのような深刻な、国民的課題には気付かないかのような対応です。危機的状況にある被災地には目もくれず海外の軍事同盟の会議で意気揚々としているのが、今の政治の堕落振りを示しています。

そんな政治を本来の姿に戻すために、事実を元にした提言を続けなくてはなりません。私の小さな貢献の一つとして、この何年間かこの問題についての構想をまとめてきました。何度言っても伝わらない相手なのかもしれませんが、それでも誰かが伝え続けないと、「ダメ」が「良いこと」になってしまいます。これまでこのブログで取り上げてきた原稿に加筆訂正を加えながら、再度のアピールを連続で始めます。

今回は、昨2022年7月5日にアップした記事に少し手を加えました。取り上げた事実は変わっていませんし、提言が有効であることも間違いありません。ただ政治状況は今の方が格段に悪くなっていますので、説得力は増しているように思えます。

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2022年7月5日アップ

防衛省を防災省に

津波で破壊され、そのままになっている家屋です。東日本大震災の遺構ですが、11年経って、あの時のショックは忘れ去られているのでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻以来、「リアル・タイム」で私たちが体験している戦争の様子に「ウクライナ・ショック」を受け、「日本でもこんなことが起きたらどうすれば良いのか」という危機感につながっています。それはそれで分るのですが、もう一つ、忘れてはならないことを忘れてはいませんか。

2021年7月3日には熱海で土石流災害が起きて26人の方が亡くなっています。2020年は、熊本での豪雨災害で、熊本だけで64人の方が亡くなっています。

最新ではありませんが、以前まとめた数字を再掲します。自然災害の結果、どれだけの犠牲を払わなくてはならなかったのかを再度、思い起すためです。

2018年に起きた災害だけを取り上げますが、

(i) 1月23日の草津白根山の噴火

(ii) 死者の出た2月の北陸豪雪をはじめとする各地での豪雪

(iii) 3月と5月の霧島山新燃岳と桜島の噴火 

(iv) 6月18日、死者4名、損壊家屋は3万戸近くになった大阪北部地震

(v) そして死者は200名を超えるであろう、7月の西日本豪雨と、半年ちょっとで大きな災害が目白押しです。

こうした数字を前に、「日本がウクライナと同じように攻撃された時に備えて、軍備を強化し、核武装までも必要なのではないか」、「敵基地攻撃能力が日本を守る」、「軍事費を倍にしないと日本の安全は覚束ない」という種類の主張に大きな違和感を持っています。

それは、自然災害の死者は毎年確実に私たちの目の前に現れているのに対して、日本が外国から攻められた、あるいは戦争で死者が出たという数字は「0」だからなのです。

比較のための数字を掲げておきましょう。

  • 2000年から2019年までの自然災害死者数は23,991です。
  • そして推計ですが、1945年から2019年までの自然災害死者数は90万人です。
  • 対して、1945年から2019年までの戦後75年間、外国からの侵略・外国との戦争で死んだ日本人の数は0です。

「ウクライナ・ショック」を端的に示すために、死者数によって考えることにしますが、ウクライナ戦争で命を落した日本人は「ゼロ」です。そして、戦後、自然災害によって亡くなった日本人の数は、100万人近くになるという事実から、そして恐らく今年も自然災害によって必ず犠牲者が発生することを考えると、今、私たちが懸念し、政府がお金を投じなくてはならないのは、自然災害対策なのではないでしょうか。

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それはこのグラフから明らかです。災害があると予算は増えますが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」で、「予防」のための予算はないのです。

予算が出てこない理由の一つは、「防災」を専門にする固定したお役所がないからです。それは、「防衛省」を「防災省」に変えることで解消されます。防災省を創設するメリットを、防衛省との比較でみてみましょう。

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「予算」のカッコ内で言及してるグラフは、その前の棒グラフのことです。この比較からの結論は、防衛省を防災省に変えても、多くのメリットはあってもデメリットはまず考えられないということです。

ここで「誤解」を避けるための説明ですが、自然災害そのものは「予防」できません。でもその結果犠牲になる命や財産は減らすことができるのです。例えば、急傾斜地にある住宅を安全なところに移設するとか、洪水の起きやすい河川の流れを変える、危険な盛土を移動する、避難訓練を徹底する等、予算を付ければ実行できるそして効果のある施策は山とあるのです。

つまり、今の時点で「倍増」すべきなのは、「軍事費」ではなく、「防災費」なのです。それは、国民の命を確実に守る「現実的」な選択です。

「憲法を改正して自衛隊を憲法内に明記する」などという、「改憲先にありき」という論法ではなく、日本国民の命を救うのが国家の最優先義務だという憲法の規定からの結論は、「防衛省」を「防災省」に変えることで全て「解決」という簡単・明解な素晴らしいシナリオです。

これからも暑さが続き、やがて台風も来襲します。皆様、くれぐれも御自愛下さい。

 

[2022/7/5 イライザ]

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 [2023/7/17 人間イライザ]

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2023年5月31日 (水)

広島で被爆者を裏切ってはいけない (9) ――「ヒロシマ」の意味を広げるため、ロンドンでスピーチ――

広島で被爆者を裏切ってはいけない (9)

――「ヒロシマ」の意味を広げるため、ロンドンでスピーチ――

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3月4日の授賞式で

 

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既に報告した3月4日のスピーチの中でも触れていますが、広島・長崎への原爆投下について、世界で最も早く非難し抗議してくれた団体の一つがアハマディヤ・ムスリム協会です。1945年8月10日ですが、これは、日本がスイス大使館を通して、アメリカに国際法違反だと抗議した日でもあります。日本はその後、被爆者による裁判中に公式にこの見解を撤回しましたが、アハマディア・ムスリム協会の考え方は一貫して核兵器の廃絶です。

この協会から平和賞を頂いたことは、既にこのブログで報告しましたが、授賞スピーチを日本語に訳している時間がなくて、英語のままでした。今回、訳すことができましたので、推敲の余地はありますが、アップします。

アハマディア・ムスリム協会のモットー「Love for all, hatred for none.」を信じる人は世界的に広がっていて、信者数は1,000万人から2,000万人と言われています。その全ての人がこの日、中継で見ることはないにしろ、世界各国でかなりの数の方々に聞いて頂いていますので、メッセージは広がったはずです。G7参加国の方々にも伝わり、その中に首脳に影響力のある方がいれば素晴らしいのですが---。

以下、授賞スピーチの和訳です。

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アハマディア・ムスリム平和賞

受賞スピーチ

202334日 in London

秋葉忠利

 

アッサラム アライクム! カリフ様、アハマディア・ムスリム協会の皆様、来賓の皆様、平和活動家の同志の皆様、紳士・淑女の皆様

この平和シンポジウムに謹んでかつ新たな決意を持って参加し、広島と長崎の被爆者の代理人としてまた世界の平和活動家を代表して、この賞をお受け致します。

ロシアがウクライナに侵攻し、核兵器を使うぞとの脅しを一度のみならず、プーチン大統領が何回も繰り返してから一年が経ちます。そして、彼の言葉を聞いた被爆者の脳裏にはこの[長崎で被爆した少年の、黒く焼けた遺体の写真を掲げる]姿が浮かびました。小さな核兵器によって生き地獄に投げ込まれた長崎の少年です。私たちは、この悲劇を世界のどこでも、誰にでも、そしていかなる時にでも起こしてはならないのです。

一年前に、アハマディア・ムスリム協会の皆様も同じように感じたことを知っています。それは、1945810日に皆様は、世界で恐らく一番初めに、核兵器の非人間性と極悪性に気付き、それに抗議して下さったからです。その日に第二代のカリフは次のように述べています。

「このような虐殺が決して許されないことを、全世界に対して宣言するのは、私たちの宗教的かつ道徳的な義務である。」

遅蒔きながら、世界も同じ結論に達しました。それは、2021122日に、核兵器禁止条約 (TPNW) が発効したからです。

残念なことに、核保有国と核依存国はTPNWに反対し、署名も批准もしないと誓っています。彼らは、核兵器の保有と核使用の脅しとが、どの核保有国にも核を使わせない保証だと信じているのです。

でもこれは、幻想にしか過ぎません。誤った核抑止のパラダイムが、核兵器を使わせなかったのではないのです。核兵器を使わせない力を持つのは、被爆者です。1946年に、魂を揺さぶる本『ヒロシマ』を世に送った、ジョン・ハーシーは、2回目に広島を訪れた1985年に、その真実を確認しています。

都市と市長たちはこの見方に全面的に賛成しています。それは、どの国が核兵器意を使ったとしても、都市が核兵器の攻撃目標になっているからであり、また都市は過去の戦争の犠牲者でもあるからです。だからこそ、平和と核兵器廃絶のための活動団体である「平和市長会議」 (広島市長が会長) は、戦争と核兵器に対して強く「Never Again!」という意思表示をしてきたのです。

広島から選出され、従ってこのような声が体に染みついているはずの岸田総理が、G7の場でリーダーとしての役割を果して、プーチン大統領に核を使わせないように説得すべきだと願っています。

岸田総理とその他のG7のリーダーたちがそれ以上の目標を掲げるに足る動きも世界には生まれています。その目標とは、核兵器の「先制不使用」です。

その先鞭になったのは昨年11月のG20バリサミット宣言です。そこでは、「核兵器の使用ならびに核使用の脅しは容認できない」と述べていますし、G7のリーダーたちは全て、この宣言に署名しているからです。

中国は224日に、12項目からなる和平提案を行っていますが、その中で、「核兵器は使われるべきではなく、核戦争も避けなければならない。核兵器の使用にも使用するとの威嚇にも反対である」と述べています。

インドのモディ首相は「この時代は戦争の時代であってはならない」という言葉を発案し、それはバリ宣言の中で使われています。

もし日本とインド、中国が協力してウクライナ/ロシア戦争を終結させ、世界的に「核の先制不使用」を広げ、最後に核廃絶に至る道を創ることになれば、世界がこれら三国の英雄的かつ歴史的貢献を大歓迎することは間違いありません。

5万人もの人が大地震で亡くなり、トルコとシリアで何十万もの人が助けを求めているときに、私たち人類はなぜ、これらの人々を助けるためではなく、戦争のために、貴重な人的・物的な資源の無駄遣いをしているのでしょうか。

カリフ様の言葉が方向を示しています。「結果がどうであれ、平和と正義を実現するための努力を決して諦めてはならない」

最後に、もう一人の賢人の言葉を引用します。2年前に亡くなった坪井直氏の言葉です。「Never again, and never give up!

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そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/5/31 人間イライザ]

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2023年5月26日 (金)

広島で被爆者を裏切ってはいけない (4) ――「ヒロシマ・アクション・プラン」には被爆者が登場しない――

広島で被爆者を裏切ってはいけない (4)

――「ヒロシマ・アクション・プラン」には被爆者が登場しない――

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被爆者 故石田明先生

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最初の部分は繰り返しになりますが、2022年2月24日ロシアがウクライナに侵攻し、プーチン大統領が核兵器を使うぞとの脅しをかけて以来、ロシア(そして全ての核保有国)に「核兵器を使わない」と宣言するよう促すキャンペーンを始めました。2022年3月1日、Change.orgの署名運動です。(長いので、「第一キャンペーン」または「宣言キャンペーン」と呼びます。)」

そして、G7広島サミットの直前、2023年5月9日には、Change.orgを通して「これで核は使えなくなりましたね」と岸田総理の念押しを促すキャンペーンを始めました。(こちらは「念押しキャンペーン」と呼んでおきましょう。)

「宣言キャンペーン」には、アメリカ大使館から書簡を受け取った旨の返事がありましたが、その他の国々から直接のコンタクトはないまま、8月1日に岸田総理は、NPT再検討会議に出席して、「ヒロシマ・アクション・プラン」なるものを公表しました。国連での岸田演説の最初の山を紹介しておきましょう。

「被爆地広島出身の総理大臣として、いかに道のりが厳しいものであったとしても、「核兵器のない世界」に向け、現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなくてはならないと考えます。そして、その原点こそがNPTなのです。」 続いてNPTの説明があり、その後に「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容が披露されています。それは「五つの行動を基礎」としており、そのトップが次の一節です。

「まず、核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきであることを訴えます。ロシアの行ったような核兵器による威嚇、ましてや使用はあってはなりません。長崎を最後の被爆地にしなければなりません。」

昨日は、総理自身が、「被爆地広島出身の総理大臣」であることを強調しているからには、それに伴う責任として、最低限、「被爆者の気持を理解し、代弁する総理大臣」としての役割を果さなくてはならないことを指摘しました。今回はその続きです。

さて、次に進みましょう。「いかに道のりが厳しいものであったとしても、「核兵器のない世界」に向け」は、その通りです。しかし、それは次の言葉、「現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなくてはならない」を単に修飾しているに過ぎない表現なのです。つまり、「被爆地広島出身の総理大臣」が被爆者を代弁する第一の言葉が現実的に事を進めることなのです。

確かに現実的に事に当たらなければ何事も前に進みません。しかし、被爆者たちが言って欲しいと願ってきたことはそれではありません。被爆者の思いを代弁する立場であるなら当然、言及しなくてはならない言葉が欠けています。

被爆者の思いは、自分たちが生きている内に何とか核兵器を廃絶して欲しいということですし、そのためには、「被爆地広島出身の総理大臣」である「私」は、どんな苦労も厭わない、という決意を聞きたかったのです。その言葉があって、次に、しかし現実は厳しい、その現実を乗り越えるために、被爆者と涙を共にし、知恵を絞り汗を流して努力すると、被爆者に誓う言葉があって然るべきだったのです。

冒頭の部分で、「被爆地広島の総理大臣として、被爆者の皆さんの悲願である「核なき世界」を実現するため、全力を尽くすことをここで誓います」と言っても問題はなかったはずですし、それに続けて、「しかし、現実の厳しさも見詰めなくてはなりません」とつなげることは可能だったはずです。

なぜ、それくらいのことも言わなかったのでしょうか。「被爆者」という言葉を使いたくなかった、というのが大きな理由だったのではないでしょうか。「ヒロシマ・アクション・プラン」の中で、「被爆者」という言葉を使えば、被爆者の存在、歴史の重みから、アクション・プラン全体に影を落すことになるからです。

それは、五つの基礎の最初に掲げられている「まず、核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきであることを訴えます」にも及びます。核兵器が使われなかったのは、被爆者たちが自らの体験を世界に訴え続けてきたからだ、と多くの人が受け止めている事実を想起させることになってしまいます。

それを避けて、核兵器を持ち使うぞと脅すことで核は使われなかった、という趣旨の「核抑止論」が正しかったからだ、という結論に導くには、「被爆者」という存在をこの文書から抹殺しておく必要があったのです。

さらに、次の表現の「原点」には、もっと大きな違和感を持ちました。被爆者の立場から言えば、原点はあくまでも被爆体験です。8月6日と9日です。そしてその後の悲惨かつ苦しみに満ちた日々なのです。それを「省略」して、いきなり何故「NPT」なのでしょうか。「被爆者」という言葉を使わなかったのは、読み手をこんな疑問から遠ざけるためだったと考えると辻褄が合います。

さらに、五つの基礎の最初の項目で、「まず、核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきであることを訴えます」と強調していることと合わせて考える必要もあります。岸田総理は、他のスピーチ等で、「77年間」と言っていますので、ここでの「核兵器の不使用」は長崎以降の歴史を指しています。しかし、NPTが条約として効力を持ったのは、1970年ですし、その効力を無期限に延長することになったのは、1995年です。

つまり、1945年の長崎以降、1970年までの間の25年間、核兵器が使われなかったのはNPTがあったからではないのです。それは、NPTが「原点」ではあり得ないことの証明でもあります。

被爆者に取っての本来の「原点」には触れずに、論理的には「原点」とは言えないNPTを持ち出してくる意図はどこにあるのでしょうか。ようやく、前半の結論に近付いたのですが、長くなりましたので、今日はここで一休みして、明日に続きます。

 

「「核兵器を使わない」と、直ちに宣言して下さい!」キャンペーンは続けます。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/5/26 人間イライザ]

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2023年5月25日 (木)

広島で被爆者を裏切ってはいけない (3) ――「被爆地広島出身の総理大臣」とは?――

広島で被爆者を裏切ってはいけない (3)

――「被爆地広島出身の総理大臣」とは?――

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首相官邸のホームページから

https://www.kantei.go.jp/jp/rekidainaikaku/100.html

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最初の部分は繰り返しになりますが、2022年2月24日ロシアがウクライナに侵攻し、プーチン大統領が核兵器を使うぞとの脅しをかけて以来、ロシアに「核兵器を使わない」と宣言するよう促すキャンペーンを始めました。

Change.orgを通してのキャンペーンは、当然プーチン大統領に対する抗議の意味も込めて、「使わない」と宣言するよう呼び掛けました。さらに、ただ抗議するだけではなく、世界中の国々が同じ圧力を掛ける気持ちになるよう、全核保有国にも「使わない」宣言をするよう求めています。そうしないとロシアに対しても、核兵器廃絶のために活動してきた人たちに対しても説得力を持たないからです。

このキャンペーンを進めるための私自身の活動報告を、昨日は記憶だけに頼って記述しましたが、より正確には、昨日言及した皆さんの他にも、「憲法9条守ろう亀岡の会」や「こまえ平和フェスタ」、「パルシステム」、「ピースボート」、「横浜市非核兵器平和都市宣言市民のつどい」、杉並光友会、杉並区等に、発言の機会を頂いています。改めて感謝の気持を表します。そして多くの皆さんに共感して頂いたことも大きな力になりました。

さて、私たちの声とは関係なく、日本政府は広島でのG7サミット開催に向けての準備に怠りなく、国際社会もそれなりの動きを見せていました。

岸田総理は、8月1日、NPT再検討会議に出席して、「ヒロシマ・アクション・プラン」なるものを公表しました。岸田総理の決意は次のように述べられています。

「被爆地広島出身の総理大臣として、いかに道のりが厳しいものであったとしても、「核兵器のない世界」に向け、現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなくてはならないと考えます。そして、その原点こそがNPTなのです。」 続いてNPTの説明があり、その後に「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容が披露されています。それは「五つの行動を基礎」としており、そのトップが次の一節です。

「まず、核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきであることを訴えます。ロシアの行ったような核兵器による威嚇、ましてや使用はあってはなりません。長崎を最後の被爆地にしなければなりません。」

ここまで、一まとめにしたのには理由があります。これを読まれた皆さんの多くは (過半数という意味ではありません。英語で言えば「many」です)、それほど違和感なく受け止められたのではないかと思います。広島出身の総理大臣が核なき世界を目指すのは当然ですし、そのために現実的なステップを踏むということも、「夢」を追うことが政治家の仕事ではないのですから当たり前です。そしてNPTという、長い間核保有国を縛ってきた唯一の国際条約を「原点」と言っても問題はないと考える人も多いでしょう。さらに、これまで核兵器が使われなかったという事実を今後も踏襲する、つまりこれからも核兵器が使われないように皆で協力しましょう、と言わなければかえっておかしなことになってしまいます。過激な表現で、「核廃絶」と叫んではいないけれど、それなりに「良いことを言っている」と感じた方がかなりいたことは理解できます。

しかしながら、私はこれを読んだだけで、この文章の執筆者の意図は全く違ったところにあるのではないかと心配しました。丁寧に読むと、その通りでした。多くの人に、「良いことを言っている」と思わせてしまうような表現を使いながら、実質的には「ヒロシマ」を裏切る内容が盛り込まれているのです。「詭弁」と言っても良いでしょう。

いくつもありますので、一つずつ取り上げましょう。長くなりますが、お付き合い下さい。最初は「被爆地広島出身の総理大臣」です。首相官邸のホームページでは、「出身地 東京都」 ( https://www.kantei.go.jp/jp/rekidainaikaku/100.html  2023年5月24日閲覧) と書かれているにもかかわらず、「被爆地広島出身の総理大臣」と自ら名乗っているのですから、相当な思い入れがあってのことだと解釈すべきだと思います。

勿論、「出身」の定義にはあいまいなところがあり、出生地だけではなく、本籍の所在地や育った場所、自分のアイデンティティーを最も的確に表しているところ等を採用しても、許されるだけの幅はあると思います。しかし、「被爆地広島出身の総理大臣」と自ら名乗ることには、当然それに付随する責任が生じます。

その責任を一言で表すと、「被爆者の代弁を最優先する総理大臣」だと規定して良いのではないでしょうか。少し譲ったとしても「被爆者の気持を理解し、代弁する総理大臣」くらいの責任は果さなくてはならないのでないでしょうか。

仮に自らの意識としてはそうではないとしても、少なくともそう解釈する人が大多数になることは想定しての名乗りなのではないのでしょうか。もしそれ以外の意味で「被爆地広島出身の総理大臣」と名乗っているのであれば、多くの人たちをミスリードしていることになりますし、良心的に言葉を使う立場の政治家であれば、それに対しての「丁寧な」説明をするはずです。

中途半端ではありますが長くなりましたので、今日はここで一休みして、明日に続きます。

 

「「核兵器を使わない」と、直ちに宣言して下さい!」キャンペーンは続けます。

 

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 [2023/5/25 人間イライザ]

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2023年5月24日 (水)

「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」 ――被爆者の願いを実現するのは「広島出身」の総理大臣の使命――

「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」

――被爆者の願いを実現するのは「広島出身」の総理大臣の使命――

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http://www.kremlin.ru/events/president/news/67568/photos/67359

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%D0%92%D0%BB%D0%B0%D0%B4%D0%B8%D0%BC%D0%B8%D1%80_%D0%9F%D1%83%D1%82%D0%B8%D0%BD_(10-01-2022)_(cropped).jpg

 

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2022年2月24日ロシアがウクライナに侵攻し、プーチン大統領が核兵器を使うぞとの脅しをかけて以来、広島・長崎の被爆者たちが叫び続けてきた言葉、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」が頭から離れません。

それは被爆者のみならず、「ヒロシマの心」を共有してきた全ての人、戦争その他の大きな悲劇を体験して来た人たち、そして平和を願い愛するすべての人たちが感じていることなのではないでしょうか。その中でも特に、「広島出身」の岸田総理大臣には特別の思い入れがあるものと信じてきました。

そう考えている内に、岸田総理が「核兵器を使わせてはならない」という圧倒的多数の世論を背に受けて、被爆者とともにモスクワまで飛んでプーチン大統領を説得する、というシナリオが頭に浮かびました。圧倒的多数の世論があることを示すには、Change.orgを通しての署名運動が効果的です。

昨年の3月1日にキャンペーンを立ち上げましたが、多くの皆様の賛同を頂くことができました。心から御礼申し上げます。そしてほぼ一月で、10万人を超える皆様の署名として実現しました。

送り先は、岸田総理大臣、プーチン大統領、そしてすべての核保有国の首脳とそれらの国の在日大使です。ロシアに対して、「ロシアの核使用は許せない。でも自分たちの核は使うぞ」と言ったのでは、全く説得力がありません。ですから、全ての核保有国が「核兵器は使わない」と宣言することしか選択肢はないのです。

核保有国の政府を動かすのですから、メッセージは少なくとも英語で世界的に発信しなくてはなりません。そのために、かつては英文毎日と呼ばれたThe Mainichi, ロンドンの専門誌The World Financial Review、国際NGOであるNoFirstUseGlobalのブログ等に、寄稿またはインタビュー記事を掲載して貰いました。

岸田総理に影響力を行使できるのは主権者である私たち、特に彼に一票を投じた有権者たちですが、国会議員もより身近な存在でもあります。また、議員外交を展開してプーチン大統領説得の一翼を担うことも考えられます。

現役の国会議員である舩後靖彦さんや阿部知子さん、元議員の喜納昌吉さんたちの人脈を使わせて貰って、国会議員、そしてNGOや市民の皆さんにもアピールをしました。でも、「国権の最高機関」である国会内の議員たちの動きは、私には歯痒く思えました。そんな時に、社民党から参議院選挙に出馬する可能性についての打診がありました。それまでは全く考えてもいなかった可能性ですが、もし当選すれば国会のレベルで「核兵器を使わない」宣言運動のために動けますし、選挙運動を通してより多くの皆さんに直接働きかけることもできますので、熟慮の末、全国比例区の候補になりました。

選挙戦を通じて、全国の有権者の皆さんに、「核兵器を使わない」宣言の意味を説き、そのサポートをしてくれるようアピールしました。当然、「核共有」といった核兵器を容認するどころか戦争を誘発する策動には絶対反対の論陣を張りました。

当選はしませんでしたが、「核兵器は使わない」宣言を全面的にサポートしてくれた社民党は一議席を確保することができました。この議席を活かして、国会内でのネットワークが維持できます。

さらに、9月には「国葬」反対の元国会議員のグループとともに活動し、それとともに、「核兵器を使わない」宣言運動も広げることができました。特に、この時に取材して下さったマスコミの皆さんにはその後も、私たちの運動について、様々な形で応援して貰えることになりました。

あまり長くなると、読むのに時間が掛かりますので、二回目はこれまでにして、「これで核は使えなくなりましたね」キャンペーン開始までの経緯のまとめは続きます。三回以降も是非御覧下さい。

「「核兵器を使わない」と、直ちに宣言して下さい!」キャンペーンは続けます。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/5/24 人間イライザ]

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2023年5月23日 (火)

「ヒロシマ」を弄んだG7広島サミット ――「核廃絶」という「目標」達成のため再度決意しましょう――

「ヒロシマ」を弄んだG7広島サミット

――「核廃絶」という「目標」達成のため再度決意しましょう――

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岸田総理は「G7広島サミットは成功だった」と自画自賛していますし、マスコミの論調も一部の批判はありますが、今一です。成功の反対の「失敗」というのも、G7主催者側の視点での評価ですから、私たちがこんなことを言ってはいけません。私たちの感覚で一番近いのは「「ヒロシマ」が弄ばれた」ではないでしょうか。

「弄ばれた」実態を一つ一つ挙げて、それが事実なのだと納得して貰いたいのですが、スペースもありませんし、これからの活動計画を立てて行く中でも明らかになりますので、一つ二つに限って指摘しておきましょう。

一つは、昨日も指摘したように19日に公表された、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」 (略して「広島ビジョン」と呼びます) の中の言葉、そして使われなかった言葉です。

「我々は原子爆弾投下の結果、広島や長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を長崎とともに想起させる広島に集った。」を再度読んでみて下さい。ごちゃごちゃしていますので、「長崎」の部分を割愛してみましょう。

「我々は原子爆弾投下の結果、広島や長崎の人々が経験したかつてない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を想起させる広島に集った。」です。

「我々は、原子爆弾の結果、人類がかつて経験したことのない壊滅と極めて甚大な非人間的な苦難を受けた広島に集った」の方が事実に即していますし、意味は明快です。

もう少し短い例で比較してみましょう。皆さんが、卒業したことを誇りに思っている学校についてどう紹介しますか? 「私が卒業したことを想起させる学校です」と言いますか、それとも「私が卒業した学校です」でしょうか。

「被害を受けた」という表現を避けて、被害を「想起させる」土地として広島を位置付けたのです。アメリカへの忖度かもしれませんが、実際にその被害を受けた被爆者や、都市としての広島に対して大変失礼な言い方ではありませんか。

仮にアメリカがこのような表現を求めたとしても、「被爆地出身の総理大臣」なら、あるいは広島市長なら、「この点は譲れない」と主張すべきなのではないでしょうか。あるいは主張したけれども、拒否されたのでしょうか。

二点目は、「被爆者」という言葉が使われていないことです。それぞれの国内での反応が心配だから、首脳一人一人が小倉桂子さんの体験談にどう反応したのかは、仮に書かないことにしたとしても、「本サミットは岸田総理の強い要請により被爆者小倉桂子さんとの対話から始まった」と書くことは出来たのではないでしょうか。客観的な記述ですし、もし、アメリカの保守的な人たちからの批判が出て来たとしても、被爆者が存在することは事実なのですから、そこはバイデン大統領が事実として説明すべきところです。

それに、小倉さんがテレビのインタビューに笑顔で答えて、首脳たちに向かって思わず、「夢が叶った」と言ったことを加えれば、被爆者がバイデン大統領やアメリカという国を憎んではいない、敵意を持っていないことまで伝わるのですから、これだけでも多くのアメリカ人の心を開かせるための一言になります。

そして他の国々の人々にも、これからの世界平和を築く上での出発点としてこれ以上相応しい言葉はないほどの価値があったはずです。加えて、首脳の皆さんには「Thank you for coming.」と「Welcome to Hiroshima!」とおっしゃったとのことですので、それを付け加えても良かったかもしれません。

その他に、「広島ビジョン」の中での問題を三つ加えておくと、

  • 「核兵器禁止条約」という国際法上効力を持つ条約に全く触れていない。
  • 「広島」で、「核兵器の先制不使用」に触れていない。
  • 「広島」で、核抑止論の強化を主張している。

どの点も重要ですので、数回に分けて一つずつ説明しますが、今回はもう一つ、別の問題点を取り上げます。「語るに落ちた」の典型例になりますが、岸田総理と日本政府、特に外務省の本音が出てしまった点です。

各紙が取り上げていますが、21日午後2時過ぎ平和公園で記者会見を開いた岸田総理の言葉です。

「核兵器のない世界という理想に向けた基礎を確保し、核軍縮に向けた国際社会の機運をいま一度高めることができた」そして最後に、「夢想と理想は違います。理想には手が届くのです。我々の子どもたち、孫たち、子孫たちが、核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から、今日から一人ひとりが広島の市民として一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう」

ここで問題なのは「理想」の使い方です。日本政府は長い間、核兵器の廃絶を「核兵器の廃絶を究極的目標とする」という形で表現してきました。「究極的」というと難しい言葉ですので誤魔化されることが多いのですが、感覚的には「ずっと先」という意味です。「突き詰めて行くとそこに行き着く」という意味ですから、突き詰めないと永遠に到達できない場所です。日本政府は、努力もせずに「究極的目標」と言い続けてきたのですから、これを別の言葉で言うと「夢想」になります。

岸田総理の記者会見では、自らこれまで言い続けた「夢想」を否定して「理想」にしたのですが、それこそ、より実態に使い言葉になったとも考えられます。「Investigate Blog」(https://g2015graman.top/archives/19344.html) による、分り易い説明がありますのでお読み下さい。

それが最もよいと思う状態が「理想」。

ただ「思う」ことであり、実現しようとすることではありません。
 
 
ある物事をする時に目指して進んで行く目印が「目標」。

「目標」は、そこを目指して進もうという意識をしなくてはいけません。
 

岸田さんにとって、核兵器のない世界は「思う」ことであり、実現しようとすることではないという位置付けがハッキリ分って頂けたでしょうか。

今回のG7サミットがこんな結果になることは、事前に予測できたのではなかったか、というお叱りを受けると思いますが、その予測は当然していました。それを元に、日本政府と岸田総理にいくつもの提案をし、それでもギリギリになって、居ても立っても居られない思いで、「岸田さん、資料館の出口で「これで核は使えなくなりましたね」と念を押して下さい」と促すことにしました。そこに至る経緯も、何回かに分けて説明します。続きも是非御覧下さい。

G7広島サミットは21日午後に閉幕しましたので、Change.orgでのG7に期間を絞った署名キャンペーンも閉じたいと考えています。御協力下さった皆様への説明と御礼の一環として、第一回のこの稿を投稿します。しかし、「「核兵器を使わない」と、直ちに宣言して下さい!」キャンペーンは続けます。

 

そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!

 [2023/5/23 人間イライザ]

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2023年4月15日 (土)

アレクセイ・リュビモフ ピアノ リサイタル ――引退宣言を撤回して再度来日してくれました――

アレクセイ・リュビモフ ピアノ リサイタル

――引退宣言を撤回して再度来日してくれました――

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昨夜14日は、アレクセイ・リュビモフさんのピアノ リサイタルに行ってきました。廿日市のウッドワンさくらぴあが会場でした。

御存知の方も多いと思いますけれども、リヒテル亡き後「最後の巨匠」と呼ばれるピアニストです。それも、古典派のモーツァルトからロマン派の演奏は勿論、現代音楽まで広い範囲の楽曲に積極的に挑戦してきた芸術家です。

国境を越えての音楽活動と平和に対する思い入れの強い人で、特に広島にこだわって日本での演奏の機会があると常に広島で、という希望が出てきたそうです。

「自分の満足の行く演奏ができている内に引退したい」という気持から、一度は2019年に引退宣言をしたのですが、その後の世界情勢にいたたまれず、特に「ウクライナを広島、長崎に続く被爆地にしてはならない」という思いで、しかし「自分が今できることは演奏すること」と決めて、演奏活動を再開しています。(「アレクセイ・リュビモフ “No More HIROSHIMA”への想いを込め、シルヴェストロフを弾くために再び 東京 広島のステージに_ タワーレコード渋谷店にて特設コーナーも」(『シアターテインメントNEWS』 2023415日閲覧))

今回の来日でも「今回は広島で弾きたい。広島の人であれば今迫る危機に声をあげてくれる。」と信じての、414日、廿日市さくらぴあでのリサイタル実現になりました。

演奏曲目の目玉は、リュビモフの盟友であり、ウクライナ出身のヴァレンティン・シルヴェストロフの作品でした。

そしてアンコールはシューマンの即興曲90-2でした。その曲は20224月にシルヴェストロフの作品を含むリュビモフのコンサート中に、警察官が会場に入ってきて演奏を中止させようとしたとき、最後まで弾き切った楽曲でした。

 (5分くらいから警官が登場します)

アンコールにはリュビモフの広島への強い思いが込められていたのです。私たちもそれに応えて行かなくてはなりません。

 

最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/4/15 イライザ]

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2023年4月 3日 (月)

「平和には戦争以上の努力と忍耐が必要」 (中村哲) (*1) ――『はのねくさのね』の巻頭言――

「平和には戦争以上の努力と忍耐が必要」 (中村哲) (*1)

――『はのねくさのね』の巻頭言――

 

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『はのねくさのね』とは、ODH草の根歯科研究会が年二回発行している会報ですが、その巻頭言は、いつ読んでも頭がすっきりしますし勉強になります。この研究会は、歯科職の皆さんが多く参加されているようなのですが、会が主催するイベントには、社会や政治問題なども取り上げる「勉強会」、患者と歯科職を結ぶための「患者塾」、そして歯医者さんの応援をする「歯医者さん探検隊」などがあるようです。

私がファンになったのは、この会報の巻頭言の筆者、岡田弥生さんの「歯に衣着せぬ」鋭い指摘とそこで教えて貰える知識の質からです。今回は、第54号ですが、丁度選挙の真っ最中です。

杉並の岸本、参議院の大椿、広島市中区の門田、そして「はのねくさのね」の岡田と次々に女性の活躍が目立ちます。女性の頑張りがないと消えてしまいそうな日本社会や政治ですが、今回はその岡田さんの言葉から選挙や政治を考えてみましょうというお誘いです。

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時々、親知らずが痛くなる。体調を崩して寝込んだ後 遺症か、ケアが難しい部位の歯周ポケットが深くなり、手入れを怠ると思い出したように疼く。加齢と共に、口の中にも種々の不具合が出る。古希を前に、歯周病の怖さを改めて実感する。その進行を阻むためには、リスクを抑え込むことが唯一最大の対策だ。定期受診し、耐え難い痛みになれば抜歯と、納得し覚悟はしているが、なるべく平和を保ちたい。現状維持には抜歯以上の努力と 忍耐が必要だ。

歯の平和を脅かす小さな予兆に、適切に対応しなければ、破滅的な結果を招く。いつの戦争でも、攻撃を始める指導者は、国民を鼓舞し団結を図るために、情報統制した上で被害者性を強調する。「自分は被害者だ。悪いのは相手だ」と異口同音に言い張るDV男と同じだ。敗戦直後、日本人の大多数が、戦争に至った経緯や敗戦の理由を全く知らず、原爆のせいで負けたと思っていた。ノーム・ チョムスキーの言う「合意の捏造」システム(*2)は今も続 く。私も侵略や植民地支配を知らないまま大人になった。

情報統制の背景にある自己規制(*3)を読んで、里子死亡事件で受けた警察の事情聴取を思い出した。直前の3歳児検診での虐待徴候を訊かれた。口腔内所見では逆に食べる機能が気になった。しかし、里親を殺人で起訴したい警察の見立てに反することを言っても無駄だと、同席した上司に発言を止められた。痛ましい事件だった。私自身も摂食機能を考え直すきっかけになった。だが、発言できなかった自分が情けない。

「トルストイも言ったたことだが、多数者の側に身を置くことはど楽なことはない。大脳作用から生じる意見や行為ほど、対人関係を損ない、自分自身に苦痛を与え、昇給と出世を損なうものはない」(*4)。今、防衛予算の増額に賛成する日本人の大多数は、自分の頭で冷静に考えて判断しているのか。「俺は持つ お前は持つな 核兵器」(*5) の論理は、DVの論理そのものだ。二重規範を容認することで甘い汁を吸う魂胆は卑しい。大軍拡と安全保障政策の大転換を手上産に、バイデンに媚びる岸田首相はその最たるものだ。努力や忍耐なしの敵基地攻撃能力は怖い。

 

(* I)アフガニスタンで人道支援に尽力した医師。作家・半藤一利氏との対談での言葉。

(*2)『記者クラブ 情報カルテル』 アン・フリーマン 緑風出版2011年

(*3) 『報道の自己規制 メディアを蝕む不都合な真実』 上出義樹 リベルタ出版2010年

(*4) 『満足の文化』 J.Kガルブレイス ちくま学芸文庫2014年

(*5) 『「核兵器も戦争もない世界」を創る提案』 大久保賢一 学習の友社2021年

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最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/4/3 イライザ]

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2023年3月22日 (水)

英文毎日 (The Mainichi) への投稿がアップされます ――「核の先制不使用」実現のため、海外に拡散して下さい――

英文毎日 (The Mainichi) への投稿がアップされます

――「核の先制不使用」実現のため、海外に拡散して下さい――

Youtube

岸田総理がウクライナを電撃訪問しましたが、5月のG7広島サミットとの関連が注目されています。

そのサミットで、G7の首脳たちが資料館をじっくり見ることで被爆の実相を知り、時間を掛けて被爆者の証言に耳を傾けることで被爆者のメッセージを内面化することは最低条件として、私たちが強く要求し続けなくてはなません。

それ以上に大切なのは、ロシア/プーチンに核兵器を使わないと宣言させることです。そのためには、米英仏の三つの核保有国首脳が揃って、初めて広島を訪れる機会を「核兵器の先制不使用」宣言をする場として活用することが重要です。ロシアには使うな、自分たちは使うぞ、では説得力がないからです。

加えて、広島では平和教育の場から『はだしのゲン』や第五福竜丸が消されるという大事件も起きています。広島だけではなく、日本だけではなく、世界中で核について関心を持っている人たちの協力が必要です。

そのために、毎日新聞の電子的英文版であるThe Mainichi に寄稿しました。3月22日の午前7時にアップされます。下線をクリックして下さい。

念のため、ここにも貼り付けておきます。

https://mainichi.jp/english/articles/20230321/p2g/00m/0op/024000c

またそこから、原水禁のYouTubeで、私が世界に向けての被爆者や原水禁、そして核兵器廃絶のために活動している皆さんの代弁をしている動画にも辿り着けます。ここも下線をクリックして下さい。そしてそのURLを、拡散して頂ければ幸いです。ここにも貼り付けておきます。

https://youtu.be/1n-GuwnZEm8

世界中の仲間たちと力を合わせて、G7広島サミットが「核兵器の先制不使用」の出発点にするために岸田総理頑張れ、というメッセージを世界に広めましょう。

 

最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/3/21 イライザ]

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