トランプ関連

2018年7月 7日 (土)

北東アジア非核兵器地帯の創設と市民社会 ――米朝会談後、日本政府が「はぶてる」ことのないように――


北東アジア非核兵器地帯の創設と市民社会

――米朝会談後、日本政府が「はぶてる」ことのないように――

 

数十年に一度の災害が起きている、梅雨前線による大雨で亡くなられた方々にお悔やみを申し上げます。被災者の方々にはお見舞い申し上げます。そして多くの皆さんが影響を受けている今、気象庁や各メディア、自治体等からの情報に最大限の注意を行い、避難指示や勧告に従って身の安全を確保されるよう、祈っています。

 

さて、Jeju Forum for Peace and Prosperity 2018、つまり「平和と繁栄のためのチェジュ・フォーラム2018」で私が参加した分科会の一つは、「朝鮮半島の新たな平和パラダイムの形成と市民社会の役割」(司会は韓国国家統一研究所 (Korea Institute for National Unification) の上級研究員のチョー・ハンブン博士)でした。そこでの、私の発言を以下、簡単に報告させて頂きます。

 

Photo

 

米朝会談後すぐの韓国での会議ですので、当然、米朝会談を取り上げたいと思いました。その際、三つのポイントが実現できるよう内容にしたいと思っていました。

 

 米朝会談について、単なるオブザーバーとしての意見ではなく、会談の結果を生かせるよう積極的な姿勢を示す。

 日本政府がこれ以上「はぶてない」で、かつ孤立しないで済むようなシナリオを描く。

 国と国との関係が中心ではあっても、私たち市民が直接、何らかの形で関われるような具体的な提案を盛り込む。

 

そして、出発点は、米朝会談実現の暁にはこのようなシナリオで進めて下さいと、トランプ大統領に出した手紙、そして会談が実現することになってからトランプ大統領とキム委員長に出した手紙です。以下、箇条書きで、発言の内容の要点です。複数の固有名詞が並ぶところでは、アルファベット順で記します。

 

l キム委員長、トランプ大統領、ムン大統領のリーダーシップによって、南北会談、米韓会談、そして米朝会談が開かれ、朝鮮半島の非核化そして北東アジアの平和に向けた大きな扉が開かれたことを歓迎し、三人に心から敬意を示し感謝する。

l 核保有国のトップが話し合うことで、大きな進展が生れることを期待しても良いことは、1986年のレイキャビックにおけるレーガン・ゴルバチョフ会談の例がハッキリ示している。そこでは、両国が全ての核兵器を廃絶する合意が出来ていたのだ。

l それが実現しなかったのは、軍産複合体、冷戦時代を作り支えていた神職者であるかのような力を持っていたテクノクラートたちだが、もう一つ、世界の注目度が今回とは違っていた。

l 世界が見詰める中でのシンガポール会談の結果は、それほど簡単にはつぶせない。

l さらに、実現はしなかったものの、レイキャビックで両首脳が画期的な合意に至ったのは、世界の世論がそれを望んでいたからだ。それは、世界に存在する核弾頭数や、核実験の回数等の経年グラフを見れば明らかだ。

l この点については、2017年の原水爆禁止世界大会の分科会での発言に詳しいので、是非、お読み頂ければと思います。

l キム委員長、トランプ大統領への手紙で提案したのは、北東アジア非核地帯 (NEA-NWFZ) の創設だ。それは、この地域の中心になる南と北そして日本の三ヵ国は核兵器を持たない、そして米中ロの三ヵ国は、中心に存在する三カ国には核兵器を使わないという条約によって作られる。

l この枠組みこそ、北の非核化を推進する上で一番説得力があり合理的なシナリオだ。

l 昨年の分科会でも、核兵器禁止条約ができた背景には、世界の半分が既に核兵器禁止地帯になっている事実のあることを強調している。

l 米朝会談後の方向として、日本政府がリーダーシップを発揮してNEA-NWFZを主導することで、北東アジアの平和と繁栄に大きな役割を果すことができる。そんな役割に共感する外務省の官僚や保守派の政治家を育てるプログラムも必要かもしれない。

l 日本政府がそのような積極姿勢を持つことで、日本の孤立化、そして最悪の場合にはそれを口実にして日本の核保有にまで及ぶ可能性を回避できる。

l しかし、世界のNWFZの歴史を見ると、どの地域でも実現までには10年以上掛っているのが普通だ。核兵器を持たない国々がNWFZを実現するのに10年掛るのであれば、もう核兵器を持っている北朝鮮も一緒になってのNWFZにはもう少し時間が掛るかもしれない。でも、辛抱強くその実現のために努力することで、必ず目標は達成できる。

l そこで、大切なのが都市の役割だ。スコットランドの独立は、各兵器の廃棄とNATOからの離脱、そしてEUへの参加が目標だと言って良いのだが、核廃絶運動が国民投票という実定法上の制度を使って核廃絶のための意思を確認するまでに成熟しているのは、スコットランドの全都市が非核都市宣言をしていることの延長線上にある。

l それは応用問題として日本にも当てはまる。日本の自治体の多くは「非核自治体宣言」をしている。全ての都市が「非核自治体」になれば、それは核兵器禁止条約に反対している日本政府に対する強力な意思表示になる。既に宣言をしている自治体は再確認の決議を採択することで、運動を盛り上げることが可能だ。

l しかも、これは各自治体の中で、何人かの議員を巻き込めれば比較的、簡単に提案できることだ。選挙で政権をひっくり返す前段としてこのような行動は新たなエネルギー作りのために有効だ。

l さらに、日本の都市と韓国の都市の間には、姉妹都市の提携をしているところが多い。その関係を生かして、「非核兵器姉妹都市」関係を作って行くことで、NWFZへの道筋を作ることも可能だ。

l 朝鮮民主主義人民共和国でも韓国との融和が進み、統一の機運が高まれば、都市の存在が重要になる。そのときには、南北と日本の都市の間で、「非核兵器姉妹都市」関係が可能になる。

l これは、この分科会で他の発言者が予測していた北の都市の位置付けにピッタリ重なる考え方だ。

 

 

[2018/7/6 イライザ]

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2018年7月 5日 (木)

ジョゼ・ラモス-ホルタ氏の講演 ――スピーチの最後は佐々木禎子さんでした――


ジョゼ・ラモス-ホルタ氏の講演

――スピーチの最後は佐々木禎子さんでした――

 

今回のJeju Forum for Peace and Prosperity 2018、つまり「平和と繁栄のためのチェジュ・フォーラム2018」で聞くことのできた全体講演は、ラモス・ホルタ元大統領とアズレイ事務局長の二人の話でした。アズレイ事務局長の講演は、現在の世界情勢を分析し、未来創りのために私たちがどう考え何をして行ったら良いのかを、ユネスコの立場から、つまり教育、科学、文化そして環境という視点からのアドバイスでした。軍隊を持たないという点では、都市的な感覚での話でしたので、とても説得力がありました。

 

対して、ラモス・ホルタ氏の講演は各国のリーダーの役割に焦点を合せつつ、未来への展望が明るいことを強調する内容でした。以下、要点をまとめて見ました。

 

Photo

 

まず、韓国の政治については勇気あるリーダーが行動し、市民たちが監視の目を緩めず、そして司法が決して妥協しない姿勢を取ってきたことが、現在の大きな動きの原動力だ。さらに、韓国民の英雄的な行動の一つとして挙げておきたいのは、1990年代後半のアジア金融危機において、IMFへの借金を、韓国民が、タンスの中の貴金属を初め自らの資産を銀行に持って行って返済に当った唯一の国民だった事実だ。

 

また、東ティモール独立に当っては、武力支配を続けていたインドネシアに対して、金大中韓国大統領が、アメリカのクリントン大統領と共に、日中のリーダーを説得して、独立への道を開いてくれたことに心から感謝している。彼の弟子であるキム・ジェイン大統領が今回大きな役割を果したことも、その延長線上のことだ。彼の仲介なしには今回の歴史的米朝会談は実現しなかった。

 

ノーベル平和賞には誰が相応しいかと問われれば、トランプ大統領やキム委員長ではなく、文大統領を強く推したい。

 

今後、北朝鮮の非核化は進むだろう。しかし、平和への「近道」はない。ことによると、セットバックもあるかもしれない。しかし、北と南のリーダーが今後も辛抱強く努力を続けることで必ず目標には達する。

 

文大統領は、これまでと同じように積極的に平和へのシナリオを描き関係者に働き掛けて行って欲しい。キム委員長には、北朝鮮の中の強制労働や拷問等の慣行を委員長のイニシャティプで止めさせて行く路線を取って欲しい。そして人権の分野においての主導者になって欲しい。

 

そのためには、中・日・米も協調関係を築きつつ、それぞれの役割を果して行くことが大切だ。それが一筋縄ではいかないかもしれないという指摘もある。アジアには第二次世界大戦の遺産が残っているからだ。

 

アジアは、日本の侵略によって多大な被害を被った。何よりも多くの市民が犠牲になった。しかし、アジアの国々も市民たちも、日本の天皇や首謀者たちを許した。それに対して日本のリーダーたちがどうしてもしなくてはならないことがある。それは若者たちに歴史の真実を教えることだ。

 

特に慰安婦問題について、日本は逃げずにこのことに真正面から取り組まなくてはならない。その上で、南北朝鮮と日本が揃って、アジアを21世紀という時代に引っ張り上げなくてはならない。

 

そして、日本の代弁もしておくと、日本も代価を払っている。広島・長崎の原爆による被害は、その一例だ。

 

今回の米朝会談の行き着く先は、やがて、中国、統一された朝鮮、そして日本が、これらの国々をつなぐ金の橋の上に立つことだ。その橋には、被爆し白血病に苦しみながら佐々木禎子さんが生きたいと願って折った千羽の折り鶴が飾られていることだろう。

 

とても感動的だったラモス・ホルタ氏の演説を、もっと詳しくそして心打つような形で再現できないことを申し訳なく思いますが、ランチの時間にお礼に伺った時、もう一度広島に行きたいとおっしゃっていましたので、広島で生の声をお聞き頂ければと思います。

 

ラモス・ホルタ氏へのお礼の内容ですが、一つは日本の責任についてきちんとした指摘をしてくれたことです。真実を曲げてはいけないのです。そしてもう一つは、被爆体験を理解してくれていること、そして被爆者のメッセージを佐々木禎子さんを通して、分り易く強力にアピールしてくれていることです。

 

こんなに素晴らしい仲間が「ヒロシマの心」を世界的に発信してくれているのですから百人力です。私たちも同じように頑張らなくてはなりません。

 

[2018/7/4 イライザ]

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コメント

慰安婦問題を明るみに出したのは韓国ではなく朝日新聞の捏造記事から始まった日本のメディア(=拉致問題をデッチあげだとしていたメディアや左派政党)であり韓国は未だにベトナム戦争などで韓国が行った問題については米国メディアが「韓国軍が数千人ベトナム女性を強姦し慰安婦にしていた」と報じているが韓国は自国にとって不都合な真実を無視し歴史と対峙することを拒否しておりこの点では(安倍政権は後退しているとしても)日本の方がマシ。

大東亜戦争は西欧の侵略と植民地政策からアジアを守り開放するための戦いでした。白人に寝返った中国共産軍を除き、日本軍として一緒に戦った韓国人をはじめ多くのアジア人は日本と共に戦いました。日本軍が戦った相手はアジア人ではなくアジアを植民地化していた西欧諸国でした。その後つぎつぎとアジアの植民地は独立し日本は自らは敗戦したもののアジアの開放という面では勝利したというのが事実です。戦争ですから理不尽なことはあるのは当たり前で、だから戦争はダメなのですが、小さなことばかりあげつらって大きな歴史を失ってはならないと思うわけです。

日本における最大の問題は安倍政権がこれほどダメダメだと分かっても他に選択肢がないということ。国会中継をみても山本太郎くらいしか感心するような質問はなく、野党はできもしない政権打倒ばかり掲げ、法案に対する是々非々の議論が全くないように思える。

「韓国通」様

コメント有り難う御座いました。

相対的には、日本の方がましという場合もあることは分りますが、政府としての歴史的責任は、事実に基づいて、相手の立場を尊重し、誠意をもってを果すというのが基本だと思います。

「日本男子」様

コメント有り難う御座いました。

戦争は駄目という点では、考え方が共通していますので、敢えてこのコメントも取り上げさせて頂きました。

このような歴史認識があるからこそ、ラモス・ホルタ氏は、「歴史の真実を教えるべきだ」と、日本の良き理解者として提言してくれているのです。

数行で、日本の近代史を正確に述べるのは無理ですので、それはきちんとした歴史書にお任せしますが、二点だけ指摘しておきましょう。

韓国、そして朝鮮半島は、日本の植民地だったのです。植民地からアジアの人々を解放するのが目的なら、「ダメな」戦争をするのではなく、まずは、朝鮮半島の主権を認めることから始めれば良かったのです。

日本の戦争目的が、アジアの人々を植民地から解放するというのであれば、何故、植民地主義・帝国主義の極限的な形を取っていたナチス・ドイツと同盟国になったのでしょうか。まさか、ヒトラーが植民地解放を目指して戦争をしていたと言うのではないでしょうね。

「田中」様

コメント有り難う御座いました。

安倍政権が駄目なことには賛成です。こんな状態になったのは、小選挙区制という悪しき選挙制度を採用したからです。それを直すにも、その悪しき制度で当選し、多数派になった人々の反対で上手く行かないというジレンマに陥ってしまうのですが、明日のブログで報告するように、韓国の「ロウソク革命」は、その代議制民主主義の欠陥を、直接民主主義で救った良い例です。

日本でも、その顰に倣うことは可能だと思いますが。

大東亜会議における東条英機首相の演説は「強い国が弱い国から搾取を続ける植民地政策への批判」に始まり目指すところは欧米列強の植民地支配からアジアを解放することを目指していたと思います。満州国にしても日韓併合にしても、西欧の植民地とはまるで違っており、単純に白黒つけがたい非常に複雑な状況があったことはリットン調査団も認めている通りであり、数行で語られるものではないだけに、予断を持って議論するのではなく、時間をかけた科学的な検証が必要ということです。ドイツとの同盟はいわば現在の野党連合のようなものでしょうか。小選挙区という欠陥選挙制度のもとでやむを得ない現実的な行動ですが、中選挙区の復活だけに絞った共闘はできないものかと思います。

「日本男子」様

コメント有り難う御座いました。

日本に好意的だったリットン調査団の結論を蹴った事実が多くを語っていますが、予断を排して「科学的」、つまり事実を元に多様な反論に堪える結論を論理的実証的に行うことは大切だと思います。

一つの可能性は、日韓中など関係諸国の歴史と教育の専門家が集って、各国共通の教科書を編纂することですが、部分的には実現されているようです。そのプロセスも公開しながら、教育の場を広げてくれると良いのですが。

2018年6月13日 (水)

米朝首脳会談 ――当事者意識を持てなかった日本政府――


米朝首脳会談

――当事者意識を持てなかった日本政府――

 

今日はこの話題以外には考えられませんが、とにかく無事に終って良かった、というのが第一の感想です。

 

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二人が署名した共同宣言には、4項目の合意が盛られています。

 

(1)米国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国民の希望通りに、新たな米朝関係の構築に向けて取り組む。

 

 (2)米国と北朝鮮は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、力を合わせる。

 

 (3)北朝鮮は、2018年4月27日の「板門店(パンムンジョム)宣言」を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。

 

 (4)米国と北朝鮮は、戦争捕虜、戦闘時行方不明兵の遺骨の回収、すでに身元が判明している分の即時引き渡しに取り組む。

 

具体的ではないとか、CVID (complete, verifiable, irreversible denuclearization――完全、検証可能、不可逆的な核廃棄) への言及がない、等々の批判が早速出ています。

 

しかし、ほとんど言及がなされていないことが不思議なのが、昨年の夏や秋の米朝関係です。「米朝核戦争」とか、米朝が戦争を始めたらどちらが勝つか」と言った活字が躍っていたではありませんか。今日の米朝会談で真っ先に指摘されるべきなのは、それほどの危機が回避された事実なのではないでしょうか。

 

特に、「ミサイルが飛んで来たら」という想定の下、避難訓練が全国的に行われたほどの危機が回避されたことについて、政府から一言あっても良いのではないでしょうか。

 

そして朝鮮半島の完全な非核化までには時間が掛るかもしれません。でもそれは今回の会談のネガティブな側面ではなく、非核化には時間が掛るという現実を理解することの方が大切です。

 

我が国の立場を考えると、朝鮮半島の非核化だけではなく、日本も含めた北東アジアの非核化がを目指すのが一番合理的です。この点については、広島県原水禁がトランプ大統領とキム委員長に宛てた手紙の中で提案している通り、「北東アジア非核兵器地帯」の創設に向けて日本も積極的な役割を果すべき事柄です。

 

しかし、世界に現存する「非核兵器地帯」の歴史を辿ると、非核兵器地帯ができるまでには時間が掛っているのです。次の表を御覧下さい。

 

                                                                                   
 

条約名

 
 

地域

 
 

面積 km²

 
 

加盟国数

 
 

発効の日時

 
 

努力の始った年

 
 

トラテロルコ

 
 

ラテンアメリカ

 

カリブ海諸国

 
 

21,069,501

 
 

33

 
 

1969-04-25

 
 

1958

 

 

 
 

ラロトンガ

 
 

南太平洋

 
 

9,008,458

 
 

13

 
 

1986-12-11[1]

 
 

1972

 
 

バンコク

 
 

アセアン

 
 

4,465,501

 
 

10

 
 

1997-03-28[2]

 
 

1971

 
 

セメイ

 
 

中央アジア

 
 

4,003,451

 
 

5

 
 

2009-03-21[3]

 
 

1992

 
 

ペリンダバ

 
 

アフリカ

 
 

30,221,532

 
 

53

 
 

2009-07-15

 
 

1961

 
 

国連総会決議

 
 

モンゴル

 
 

1,566,000

 
 

1

 
 

1998-12-4

 
 

1992

 

 

10年くらい掛っても不思議ではないのです。アフリカの場合、半世紀近く掛っています。だから何もしなくても良いという訳ではなく、努力をしても、しかも元々核兵器を持っていない国々が非核地帯条約を結ぶのにも時間が掛るのですから、核兵器の廃棄そのものがかなり難しい問題であることは認識する必要がある、という点を指摘したかったのです。

 

それにしても、日本政府の当事者意識の欠如には驚きを通り越して呆れていますし、安倍政権には一日も早く退陣して貰う以外の選択肢がないことを改めて痛感しました。

 

拉致問題について米朝会談で発議して貰えたのは、多額の税金を費やして、要りもしない武器や軍用機や軍艦船等を買う約束をしたのですし、日本からの輸出品への関税も容認してしまい、トランプ大統領の言うことは何でも「Yes, yes」としか答えないのですから、最低限のお返しなのでしょうが、その結果、「日朝トップ会談」をしたいというのですから、何をか況やです。

 

日本にとって大事な問題であれば、それが拉致であれ、ミサイル攻撃であれ、国民を守るために総理大臣が強い意志を持って相手国に乗り込み、粘り強く交渉をするのが普通なのではないでしょうか。それが国民を代表するリーダーとしての責任なのではないでしょうか。

 

虎の威を借りて、「圧力だ圧力だ」と喚き散らし、対話の「た」の字話し合いの「は」の字も拒否してきた安倍総理はそんな勇気を持ち合わせていなかったということなのですが、そんな狐の言うことが今さら信用されるでしょうか。政権が変り、世界的にも信頼される人物が総理大臣として、真摯に交渉を始めるべきではないのでしょうか。

 

そのためにも、来年の参議院選挙、統一自治体選挙、(そして広島市長選挙も) が大切です。でも、その前にも私たちにできることがいくつもあります。その一つは、自治体毎に、「非核自治体宣言」を採択すること、既に採択している自治体ではそれを再確認する決議を採択し、姉妹都市や平和市長会議等の組織を通じて、韓国の都市と共同の日韓都市間非核地帯を設定すること等です。

 

この点については、改めて詳説したいと思います。

 

[2018/6/12 イライザ]

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コメント

今回の米朝会議が催されてのは、北朝鮮のアメリカへの核攻撃こ可能性が生じたからだと思います。アメリカに核攻撃するのは中国とロシアですか、そこに北朝鮮が加わった。しかしながら中国やロシアは驚異であっても実際に核攻撃の可能性は低いですが、北朝鮮は経済的な事もあり、核攻撃の可能性は低くなく、またアメリカに敵対するテロ組織にや敵対国に核兵器を渡す可能性も低くないですね、
今回の会議の第一目標は、アメリカは北朝鮮が核攻撃をしない事、北朝鮮はアメリカが軍事侵攻しない事だと思いますから、成功だったと思います。
それとあの短期間で、おおくのマスコミが言っているような事は無理でしょう。確かなら方向付けが得られたのが重要だと思います。
そして近いうちに、韓国と中国を交えて、韓国と北朝鮮の戦争の終結宣言を期待します。
政治家の二世三世として、のほほ〜んと大学生活をした人と、国のあり方について西側の最高教育を学び、国際政治や国際関係をしっかりと学んだ人のの差が、今回の米朝会議になったと思います。
北朝鮮の脅威を過激に印象付けて、戦争できる国を目指すために、拉致問題も全く行動しなかった。
トランプ大統領への要望は、アメリカの州知事がやるような事をしたのですから、あの人はアメリカの州知事だという事ですね。

「やんじ」様

コメント有り難う御座いました。

昨年は、核戦争は秒読みだという論調でマスコミが報道してきたのてすから、まずは戦争が回避され、話し合いで問題を解決するという方向性が確認できただけで、出発点としては大出来です。

アメリカの州知事の中には、後の大統領になった、カーターやクリントン、そして大統領候補にまで擬せられたバーニー・サンダースのような人たちがいますし、州の権限でトランプの違法行為を止めさせようとする知事もいますので、腰抜け宰相と一緒にするのは気の毒なような気がします。

2018年5月26日 (土)

Trump “Chickened Out” Again! ――人類を手玉には取らないで欲しい――


Trump “Chickened Out” Again!

――人類を手玉には取らないで欲しい――

 

トランプ大統領が、北朝鮮のキム・ジョンウン委員長との首脳会談をキャンセルしたとのニュースを見て、最初に頭に浮んだのは、英語の表現「You chickened out again!」でした。長い間アメリカに住んでいましたし、今でも英語の夢を見るくらいですので、最初に浮ぶ言葉は日本語のこともあり、英語のこともあるのです。

 

chickened out」は、元々「chicken」に由来しています。「臆病」という意味です。臆病風に吹かれた人の表情が鶏に似ている、というのが語源だとされています。それが動詞として使われるようになり、「chickened out」とは、「臆病風に吹かれて、(何かを) するのを止めた」という意味です。

 

Chickenout

 

そしてアメリカのメディアは、今年になってからほぼ毎月のようにこの表現を使ってトランプ大統領批判を繰り広げています。

 

一月には、ミュラー特別検察官による事情聴取から「chickened out」しています。選挙運動におけるロシアとの関係捜査のためなのですが、複数のメディアによると、トランプ大統領のアドバイザーたちが、自信たっぷりのトランプ大統領を説得した結果だとのことです。つまり、有能な法律家に囲まれても自分の潔白を証明できると過信している大統領の「虚言癖」や気まぐれが原因で、偽証罪その他の罪状で立件されてしまうことを恐れた側近が、ようやく事情聴取なしで済ます方向で調整したらしいのです。

 

2月には、フロリダの高校での銃乱射事件があり、アメリカ全土で悲しみに包まれていた時期ですが、トランプ大統領は銃規制について前向きな姿勢を示していました。しかし、3月になると前言を翻し、アメリカライフル協会の路線に沿った立場に方向転換をしています。その点についてはホワイトハウスでの記者会見で、「何故大統領は銃規制から「chickened out」したのか?」という質問が出たほどでした。

 

4月には、ペルーで開かれる南北・中央アメリカの首脳が集まる米州首脳会議への出席を突然キャンセルし、これも何故「chickened out」したのかという言葉が、例えばCNNの報道で使われています。

 

サウディ・アラビアや安倍総理大臣のように、トランプ大統領を王侯貴族のように扱い、トランプ大統領の言いなりになる「外交」は得意なのですが、本物の外交は手に余るようです。つまり、論理的一貫性が最低限必要とされ、かつ多様な意見の全てに配慮しつつ誠意ある発言をしなければ話に加われない多国間外交の場がその典型です。

 

「目立ちたがり」で「単純」な思考から、思い付きで受けを狙うことは口に出したがる、でもそれと矛盾する発言も平気で出てくる、という習慣からは抜け出すことはできず、でも大統領になる前のビジネスでは、その矛盾を「金の力」で捻じ伏せてきた経歴を忘れられない悲劇なのかもしれません。

 

キム委員長にすれば、とにかく「アメリカに自分の方を向いて欲しい」という願いが叶えば、それだけでも立派な成果なのですから、首脳会談は何としても実現させたい気持に変りはないでしょう。ただし「カダフィ大佐」と同列に論じられることは自らの命も関わってくるので、その点では一時的に冷静さを失ったのかもしれません。

 

しかし、世界が注目する中での首脳会談で、「力」だけに頼って、しかも「虚言癖」というマイナス要素はすぐには取り除けず、「単純」な思考回路しか持ち合わせず、中国やロシア、韓国等との関係も視野に入れて、最終的に「自己保身」ができるか、つまり中間選挙での勝利につなげられるかと考えた結果、側近たちによる「NO」という答になったのだとすると、今年に入ってからの「豹変」振りと平仄がピッタリと会うのですが--。


そして、一度「豹変」しても、世界が注目し続ければ、再度「豹変」する可能性ももちろんあります。

 

残念なリーダーたちによって、人類の未来が手玉に取られている事実には慨嘆せざるを得ませんが、それでも世界の良識ある人々が推進してきた合理的な解決策を実現するため、まだまだ諦めてはいけません。どうすれば良いのか、一緒に考えて行きましょう。

 

[2018/5/25 イライザ]

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2018年4月28日 (土)

歴史的南北首脳会談 ――緊張緩和からより平和な世界への転機に――


歴史的南北首脳会談

――緊張緩和からより平和な世界への転機に――

 

歴史的な首脳会談が開かれた427日、やはり、この日の意味について一言コメントしておきたいと思います。

  

Photo


南北軍事境界線上のパンムンジョムで開かれた韓国のムン・ジェイン大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の会談は大きな成果を挙げました。

 

それは、「朝鮮半島の完全な非核化」と、現在は「休戦」している朝鮮戦争(1950~53年)を年内には終戦宣言によって終らせることを目指すとの合意をしたからです。「南と北は、完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」と明記、さらに、1953年に締結された朝鮮戦争の「休戦協定」を、一時的な「休戦」に限らずに、戦争を最終的に終結し平和な関係が日常になる「平和協定」に転換するため、南北米の三者、あるいは南北米中の四者会談を勧めることにも言及されています。

 

さらなる詳細はマスコミが報道していますので、今回の会談についての私的な感想を二三述べておきたいと思います。

 

嘘を嘘とも認識できない安倍政権に反論するのも大人気ないのですが、「対話のための対話は意味がない」と国会でも答弁した安倍総理の言葉とは正反対の結果になりました。その安倍総理はまたもや前言を翻し、今回の板門店宣言を歓迎しています。

 

でも安倍総理がどう言おうとも、対話を続けることは大切なのです。対話のための対話でも、その他の形の対話でも、対話がなければ平和的な解決はあり得ません。ですから、今後、二か国から、3ヵ国、四カ国の間での「対話」や「会談」が開かれることになったのは大きな成果です。

 

でも、その「対話」や「会談」に日本が参加できるのかどうかが心配です。対話には反対、圧力を掛け続けろ、と言ってきた安倍政権に取っては計算済みの結果だと思いますが、私たち国民にしてみればとても残念なことだと思います。しかし、それで諦めてはいけません。

 

安倍政権にはできないと思いますが、新たな平和を目指す「対話」に日本が参加するためには、日本の平和政策をもう一度しっかりと世界に向って発信することから始めるのが順序です。例えば、朝鮮半島の非核化には大賛成、しかし、それだけでは十分ではなく、日本も含めて北東アジアの三国、つまり南北朝鮮と日本は核兵器を持たないという宣言に広げたいと、改めて日本の立場を確認すれば良いのです。

 

それが一つの出発点になって、以前にも言及した北東アジア非核地帯創設につながるためには、5月か6月に開かれる米朝会談が重要ですが、それについても、日本政府が積極的に関与できるようには見えません。「圧力を掛け続けろ」という立場は、「北風」に頼る考え方です。今「南風」が吹いてようやく南北会談が開かれたのですから、日本政府も「南風」の恩恵に預かり、かつ米朝の信頼関係構築に役立つよう、「対話」路線に乗り換えての提言を始めるべきでしょう。

 

南北の首脳は相当の勇気を奮って今回の首脳会談を実現させました。安倍政権には、到底それだけの勇気は期待できませんので、この際、解散総選挙という自民党・安倍シナリオに乗って、日本の政治を振り出しに戻してから、少し時間的には遅れても、平和な世界を目指す政治創りを私たち市民の立場から目指したらどうかと思うのですが――。

 

[2018/4/27イライザ]

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この期に及んでも『ウミを出しきって...』。
もとよりうすっぺらな見識と認識の持ち主だもの、
これらはまったく驚くにあたらない。
「犯罪じゃないし」(朝日4/15橋本治)←と思っているうえに、
「行政の長の自覚がない」(朝日4/28読者)←資格ともにあろうはずもないのだし。
それよりも情けないのはメディアの多くがいまもって大甘なこと。
先週NHKBS 『大統領の陰謀』1976 再見。
おおそうだった All The President's Men が原題だった。
All The king's Men『オール・ザ・キングスメン』 1949(日本公開1976)もあった。
All The バカ殿's Men ばっかりの国、美しいはずだ。

朝鮮半島の非核化には、具体性が無いと言う人もいますが、このような目標を口にし文書にする事は大切だと思います。
また、非核化には在韓米軍が韓国内に配備しているであろう核兵器の撤去も含まれるでしょうから、米国が賛同しないといけませんね。
そして今回の会談で良かったと思う事は、今までのような交換条件をつけるような事でなく、両国の代表が平和への共通の目標と終戦です。特に終戦をしようとした事は、とても良い事だと思います。
拉致被害者の方達には残念ことになりましたが、朝鮮戦争の終戦が問題解決の早道かもしれませんね。
日本はアメリカにリードを持たれているよく吠える犬としか見られていないような気がします。

今回の共同宣言には
「朝鮮半島の非核化」とかかれているようですが、
それは
韓国内にある米軍基地に保有されている核もふくまれることになりますね。
そうなると、それは米軍の韓国からの撤退を意味することになるのではないでしょうか。
アメリカにとっては、軍事費の削減にもなることでしょうから、歓迎でしょうね。
でも、それによって日本は危険な状態に置かれると解釈するでしょうから、
日本国政府は韓国の非核化はすべきでないと反対するのではないでしょうかね。

「されど映画」様

長い間、時代を共にした政治家の中で、ニクソンが最悪だと思っていましたが、それを凌ぐ存在が日本に現れるとは思ってもいませんでした。

自分で言っていることの意味が全く理解できない人間 [註を付けると、勝手に脳内変換が行われていて、自分に取ってはそれなりの意味があるであろうことが怖いです。] が行政府の長として「君臨」している状況を何とかして変えたいですね。

「やんじ」様

コメント有り難う御座いました。

今回の共同宣言には歴史的意味があると思います。

トランプに取っては、紐も付けていないのにすり寄ってきて、口笛一つで何でもする犬、叩いたりしてもすり寄ることは止めない犬くらいの存在なのではないでしょうか。

「ヒカクカ」様

コメント有り難う御座いました。

日本政府は、私たちとは異次元の発想で朝鮮半島の非核化に反対するかもしれない、という予測は正鵠を射ているように思います。「朝鮮半島からは核がなくなった、でも日本は持っている」、と嘯くのでしょうか。安倍という個人による自衛隊の私物化と合わせて日本の核保有を考えると、末恐ろしいシナリオが現れてしまいます。

これで、
金正恩、文在寅、トランプの3氏がノーベル平和賞を受賞したら、
日本から、お笑い大賞、Rー1グランプリを授章しましょうね。

日本政府は拉致問題の解決=拉致被害者の救出と考えているようですが、時間を戻すことはできないわけで、日本より北朝鮮で多くの時間を過し生活を築いている拉致被害者に、日本か北朝鮮かという二者択一を迫ることも苛酷であり、その解決は日朝の国交正常化以外にはないだろうと思います。

そして核問題も北朝鮮としては米国との国交正常化さえあれば核を持つ理由もなくなるはずで、北朝鮮も、かつての日本やベトナムのように、反米国家から親米国家へ転換すれば、何もかも解決するというのはあまりに楽観的でしょうか。

「グランプリ」様

コメント有り難う御座いました。

先ずは米朝会談がどうなるかですが、期待したいですね。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

国交の正常化が基本的だという御指摘、その通りだと思います。さらに、世界は非暴力的・平和的になってきていますので、その延長線上で物事は変って行って当然です。もちろん、その方向への努力は続けなくてはなりませんが。

2018年4月 9日 (月)

 中垣顕實法師から ――4月1日の質問に、ニューヨークからの返信です――

 

中垣顕實法師から

――41日の質問に、ニューヨークからの返信です――

 

「グローバル・ヒロシマ」というテーマで41日に開かれた中垣顕實法師と私の対談では、最後に会場の皆さんから興味深い発言がありました。そこで取り上げる時間のなかったものについては質問用紙に書いて頂いたのですが、中垣法師を指名しての質問が二つありました。ニューヨークに戻られた師から丁寧な回答がありましたので、二回にわたってアップします。

  

Photo


以下、中垣師の回答を引用します。

**********************************

 

「浄土真宗では自らの内の愚かさとそれに対する慈愛を説くとお聞きしました。それを説く時、その教えはどのような力になるのでしょうか。」についての私のからの答えです。

 

質問ありがとうございます。短い質問ではありますが、仏教的平和構築という上では、とても大切なことの質問ですので、少し答えが長くなることをお許しください。

 

まず、内に愚かさということは、常に欲、怒り、愚痴といった煩悩を持ちながら生きているということの自覚です。これは聖徳太子の『憲法十七條』の第十條に書かれている、「ともに凡夫ならくのみ」という言葉にも置き換えられると思います。私は近年この「皆凡夫なんだ」「皆愚かさを持って生きているんだ」という言葉が平和を考える中で一番大切なのではないのだろうかと思うようになってきました。第十條には、愚かさを知ることには、私はいつも正しいのでもなく、聖者のように悟りきっているわけでもない、ということがあるわけで、だからこそ、自分だけが正しいと思っても、相手の意見を聞こうという姿勢がそこに出てくるべきだ、という趣旨のことが説かれています。白黒をハッキリさせるというより、白でもなく黒もないグレーの世界を人は生きているのだから、双方ともに理解し合い、その上で共に何かを作り上げていく努力がなされねばならない。その根底の力が「内なる愚かさ」の自覚から生まれます。

 

100%の善人もいなければ、100%の悪人もいない。それは自分自身もそうだから、常に学び、少しでも真理に近づこうとする力にもなります。ただ完璧な人間はいない、といってどうしようもないから何もしないということではないと思っています。完全でないから、そこ共に語り合い、聞き合い、話し合うことによってより真なる平和な社会を目指す方向にむかう力が内なる愚の自覚であると思うのです。自分が完全な人間であるなら、他人の言うことなどに耳を傾ける必要がないのです。よって、そこには対話は生まれません。白黒をはっきりさせ、二分化してものを考える西洋思想とは異なるものです。誰でも間違いはあるが、そこから学び、過去を許していくところも、愚かさの自覚に他ならないと思います。

 

私は「凡夫の知恵」、「愚者の知恵」と呼びたいと思います。この知恵が力となって平和が構築されていくべきだと私は思い、新たなNPONY平和ファウンデーション)を今年3月から始めましたが、まさにこの「愚の自覚」から始める対話による平和構築を推進するものです。 平和の第一歩は自分の声を聞き、他人の声を聞くことからはじまります。自分はこれが正しいと信じて、相手を悪と決めつけ、自分が正義だと思い上がるところに大きな悲劇をもたらし、正義の名の下でなされた戦争は多くの尊い命をうばってきました。これらの悲劇を繰り返さない道を選択する「二度と過ちは繰り返しません」という言葉にも呼応していくものだと考えています。

 

またそのような凡夫に如来の慈愛は向けられているのだと阿弥陀仏の本願には説かれている。ただ可哀そうだから慈悲がかけられているということだけでなく、その愚かな命は同時に仏になるべき尊い身であるいうことを意味しています。阿弥陀如来の本願には「一切衆生」すなわち、すべての生きとし生けるもの、という言葉ですべての人間、生命、が悟りへの可能性を秘めた存在として語られています。そこにすべての命がかけがえのない存在として、共に平和を作りあげる同志としての存在となっていくのだと考えます。平和は平等なる仏さまの慈愛の眼を通して生まれる世界だと思います。私も貴方も凡夫であるけれども、慈愛につつまれた存在としてお互いに敬い、ともに真理に近づけるように対話を続けるならば、人種、国境を越えた平和の道が開かれていく力になるのだと思っています。他人を恐れ、敵対するのではなく、互いに信頼して、理解し合えるのだという思いを持ち続けることができるのは、浄土真宗においては如来の慈愛がかけられた存在であるというところから出てくる力といえましょう。

 

以上です。

 

[ニューヨーク平和PRFファンデーションの創始者・会長 中垣顕實]

  

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2018年3月28日 (水)

 トランプ大統領とキム委員長への手紙 ――5月のトップ会談を成功させるための提案――

 

トランプ大統領とキム委員長への手紙

――5月のトップ会談を成功させるための提案――

 

2018327日に開かれた広島県原水禁の常任理事会で、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮のキム労働党委員長宛に手紙を出すことが決りました。

                           

Photo

 

手紙の中身は、310日にも言及したように、昨年トランプ大統領に提案したものを元にさらにブラッシュアップしたいと思っています。完成時には記者会見を開いて、このブログにもアップする予定ですが、今回は、キム委員長とトランプ大統領に提案の手紙を出す意味を「趣意書」としてまとめたものをお読み頂ければ幸いです。

 

**************************************

トランプ・キム会談を成功させるために(趣意書)

――両首脳に、「北東アジア非核兵器地帯」を設定するよう提案する――

 

広島県原水禁

 

本年5月を目途として、ドナルド・トランプ米国大統領とキム・ジョンウン朝鮮民主主義人民共和国労働党委員長の両首脳による会談の行われることが決りました。本来であれば、このような会談を提案し、場所を設定しその議題についても被爆者や世界の市民の意思を代弁して行動することで、日本国憲法の意思を実現する役割を果すべきであった日本政府は、周回遅れの世界観しか持てず、この役割を果していません。そればかりではなく、今起きている世界のパラダイム転換が全く見えず、米朝会談を妨害するような安倍政権の言動が世界の笑いものになっています。

 

それと呼応して、疑心暗鬼でこの会談の意味を考えている人も多くいます。しかし両首脳が、人類史的な立場から今後の世界のあり方についての画期的な成果をもたらすかもしれない可能性についても、真剣に向き合う必要があります。

 

もし、このような可能性が少しでもあるとすると、それを生かして、被爆者たちの願ってきた核なき世界実現のために、私たちができる限りの努力をすべきことも自明の理です。

 

そこで、被爆地広島の被爆者と市民を代表して私たち広島県原水禁は、両首脳に「北東アジア非核兵器地帯」を実現して貰うべく、次のような提案書を送りたいと思います。その中で、このような提案がイデオロギーとは無関係であること、現在の世界情勢、特に北東アジアの置かれている状況を考えると最も合理的な選択肢であること、またこの提案を実現することで、両首脳が世界史的に類稀なリーダーとして後世から評価されるであろうことなどを強調したいと思っています。

 

この提案は、昨年の1月に、ドンプ大統領就任直前に、代表委員秋葉が個人名でトランプ新大統領に向けて発信し、アメリカのメディア『ワシントン・ポスト』紙や『ボストン・グローブ』紙で取り上げられたたものを元にしています。また、今回他の団体・個人等からも同様の発信がある場合、または賛同を得られた場合には、協力し合ってより強力な運動体に育て、さらなる努力へとつなげられればと考えています。

 

[2018/3/27イライザ]

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[北東アジア非核兵器地帯]は、街頭に出るたびにわたしも繰り返し、訴えています。あちこちでの取り組みの積み重ねが世界を動かすことになれば、と思います。

「hiroseto」様

コメント有り難う御座いました。

このような構想のあることさえ知らない人の方が多いと思います。これなら、合理的だし、双方にメリットがかあると納得した人たちが増えて、その声が両首脳に伝われば、良い結果につながると思います。

頑張りましょう。

2018年3月10日 (土)

トランプ大統領とキム委員長の会談 --北東アジア非核兵器地帯条約に結び付くか?――


トランプ大統領とキム委員長の会談

--北東アジア非核兵器地帯条約に結び付くか?――

 

韓国のムン・ジェイン大統領特使として北朝鮮を訪問してキム・ジョンウン労働党委員長との会談を行った韓国大統領府のチョン・ウィヨン国家安保室長は、その後訪米し、ワシントンでトランプ大統領と面会しました。その際、キム委員長がトランプ大統領と早期に会談したいとの意向を持っていることを伝え、トランプ大統領は、その提案に同意、5月までにはトランプ・キム会談が実現することになりました。

 

Photo

                             

 

世界平和実現のためには大歓迎すべきことですが、その会談の内容がどうなるのかが気になります。

 

それに関しては、一昨年のアメリカの大統領選挙中にトランプ候補は「北と会っても良い」との意向を示していましたので、大統領に選ばれた後、北と会う場合にどんなシナリオが考えられるのか、合理的に双方が合意できる点はどの辺りなのかを考えて見ました。その結果、北東アジア非核地帯条約こそ、この二人がお互いを尊重しつつ、対等な立場で合意するのに最も説得力があると考えられましたので、その趣旨をトランプ大統領への手紙として、ホワイト・ハウスに送りました。

 

この手紙がトランプ氏の目に留まる可能性は少ないだろうとは思いましたが、世界平和のために、また暴力が社会の指導原理になることを防止するために、少しでも可能性のあることを最後まで諦めずに実行することも大切だと考えたからです。幸いにもアメリカのメディアでも一部を取り上げてくれました。

 

そして今回は、この手紙の中で提案しているシナリオの最初の部分が実現したということですので、残りの部分についても少しは期待をしても良さそうです。その手紙を再度御披露した上で、皆さんにもこのシナリオが合理的かつ現実的であることを御理解頂ければと思います。

 

なお、この手紙の中で提案している「北東アジア非核地帯」という考え方は、ピース・デポ、非核議員連盟、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)核兵器のない世界を目指す議員連盟(民進党非核議連)、民主党、立憲民主党、長崎市、世界宗教者平和会議等、多くのNGOや平和活動家の皆さんが提唱し広めてきたものです。トランプ氏そしてキム氏が合理的、現実的な選択肢を選んでくれることを祈りつつ、昨年のブログの記事を以下紹介します。

 

  トランプ新大統領への手紙

  トランプ新大統領への手紙・続

  トランプ大統領への手紙を米紙が取り上げてくれました

 

[2018/3/10イライザ]

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コメント

今年の元旦、わたしは「2018ノーベル平和賞は穴馬はトランプだ!」と予想し、街頭でもその見解を披露していましたが、本当になるかもしれません。びっくりしています。

「hiroseto」様

コメント有り難う御座いました。

そんなことになると良いのですが--。

もしそうなると、トランプ大統領だけではなくキム委員長も一緒かもしれません。

2018年1月 6日 (土)

黒人差別に抗議したフットボール・スター ――キャパ―ニック選手の投げ掛けた波紋――


黒人差別に抗議したフットボール・スター

――キャパ―ニック選手の投げ掛けた波紋――

 

2003年、マンハッタンビル・カレッジの女子バスケットボール・チーム選手、トニー・スミスはゲームの始まる前の国歌の吹奏の際にアメリカ国旗に背を向け、イラク戦争反対の意思表示をしました。それから10年以上経っていますが、20168月には、サンフランシスコ・フォーティ・ナイナーズのクォーターバック、コリン・キャパ―ニック選手が黒人差別に抗議する行動を取りました。国旗掲揚・国歌吹奏の際に起立はしないで最初は座り込んでいたのですが、後にスタイルを変えその後、地面に膝を着く姿勢を貫いたのです。

 

これは、相続く白人警察官による黒人射殺事件、そしてその後警官が不起訴になったり、仮に裁判になっても、白人警官に有利な結果になっていることに端を発しています。

 

こうした事実は、2014年にホルダー米司法長官が公表した報告書に盛り込まれています。

 

産経ニュースの報道によると、「ホルダー長官が4日発表したクリーブランドの警察に関する報告書は、過剰な発砲など「不合理かつ不必要な武器使用」があったと認定。また、「過剰な権力行使は散発的なものではない」として組織の体質自体に問題があると指摘した。

 

同報告書に記載された事例は、201013年の約600件。この中には、警官が1211月、丸腰の黒人住民2人が乗る車と約35キロにわたってカーチェイスを繰り広げた後、車両に約140発の実弾を撃ち込み、2人を死亡させたという事件も含まれている。同警官は訴追された。

 

その他、この地図が示すように、アメリカの南西部や山岳部の州では特に、警察官による殺人事件の率が高いようです。

 

               

Map_of_killings_by_law_enforcement_

             

By Lauren Thibert (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons

 

さて、キャパ―ニックがこの行動を始めてすぐ、2016年の9月にオクラホマ州で起きた白人警官による黒人射殺事件も引き金になり、多くのプロフットボール選手がキャパ―ニックを支持して、国旗掲揚・国歌吹奏の際に座り込むか、膝を着くといった行動に出るようになりました。その他のスポーツでは、サッカー、野球、バスケットボール、バレーボール、アイスホッケー等の選手が同様の行動を取るようになりましたし、プロ以外の場でも、大学生や高校生のアスリートたちがそれにジョインしました。

 

マスコミや企業でも、キャパ―ニック支持の声は多くありましたが、同時に選手たちの中にも、また市民の中にも「国旗や国歌に対する侮辱だ」と考え、キャパ―ニック批判の声も広がり、支持か糾弾かという分裂が至る所で見られるようになりました。

 

しかし、キャパ―ニックと共に闘おうとする声は一向に収まらず、トランプ大統領は就任後の9月に、「国歌吹奏の際に起立しないプレーヤーは首にすべし」という趣旨のツイートを何度も発しました。それに対して、プロリーグNFLの選手たち、それもほとんどのチームのプレーヤーたち少なくとも200人は、抗議のために、国歌吹奏の際には膝を着いたり、ロッカールームに止まってその場には参加しないという行動を取る結果になりました。

 

フットボールチームのオーナーたちの中には、トランプ大統領に巨額の寄付をした人もいますので、トランプ支持派も多いのですが、選手たちの表現の自由を認めるオーナーもいて、ここでも両極端に分れることになりました。

 

さて、キャパ―ニック選手に戻ると、彼は、2016-2017のシーズンを終えてフリー・エージェントになりましたが、その後、どのチームからもオファーがなく、NFLのチーム・オーナーたちが談合によって彼を排除していると見られても仕方がない状態が続いています。キャパ―ニック選手は、NFLを談合により彼自身の働く権利を奪った廉で訴えています。

 

今年になって早々、その訴訟の手続きが始まっています。シャバーニっくとともに行動する多くの選手たちの熱は収まらず、同時にキャパ―ニックをシンボルとする人権派、リベラル派に対する攻撃も一層激しさを増してきています。

 

経済的格差によってアメリカという社会が分断されていることは周知の事実ですし、独裁政治か民主主義かという抗争も激しさを増しています。人種を初めとして様々な線で区分けをした結果、少数派としての立場に追いやられた人々の切り捨ても容赦なく行われています。

 

そんな中、「政治とは一線を画す」が金科玉条であるとされてきたスポーツの世界でも、その考え方そのものが実は非常に重い政治性を持つ事実に気付いた人々が声を上げ始めているということなのではないでしょうか。そして既得権を持つ人々はそれを守ろうと躍起になり、その結果としての分断が起っています。その中で良識派が闘い地歩を固め、多くの人に勇気とエネルギーを与えています。今後の展開がどうなるのか予断を許しませんが、トランプ政権そのものに大きな打撃を与え得るほどの影響力をスポーツ界は持っています。

 

それと対照的に日本の状況を考えると、安心する気持にはなれませんが、スポーツ界そのものの体質も問われているような気がするのは私だけでしょうか。

 

 

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2018年1月 5日 (金)

トランプ大統領を窮地に追い込むのは ――フットボール選手その他のアスリートかもしれません――


トランプ大統領を窮地に追い込むのは

――フットボール選手その他のアスリートかもしれません――

 

暮に御紹介した、デーブ・ズィリンの著書『アメリカのスポーツと抵抗運動』は2005年に出版されていたのですが、そのオーディオ版がつい最近リリースされ、それを聞くことで新たな展望が開けてきました。そこで学んだことを復習しながらお伝えしてきたのですが、この本は10年以上前までしか触れていません。最後の方で取り上げられている2003年の出来事とその後のアメリカスポーツ界はどうなっているのかにも興味を持ちましたので、調べて見ました。

 

その結果、私にとっては驚くべき発見がありました。我が国のマスコミは取り上げていませんが、今でもアメリカのスポーツ界はアメリカ社会全体を動かすほどの大きな運動を展開しるのです。それに真っ向から対峙しているのがトランプ大統領なのですが、ことによると最後のジョーカーをつかまされるのは大統領かもしれないと思えるほどの広がりを持ちつつあります。

 

何回かに分けて、その動きを御紹介します。その前に、それに至る歴史から始めましょう。

 

2001年のアメリカ同時多発テロ以後、スポーツ界そしてアメリカ中で大きなニュースになったのは、NFLのスター・プレーヤーだったパット・ティルマンがフットボールとその後の巨額の契約を捨てて軍に志願し、イラク戦争に従軍したことでした。(残念なことに2004年には、友軍の弾に当って、ティルマンは戦死します。)

 

しかし、アメリカのメディアは、ティルマンの行動を英雄的なものとして褒め称えました。そして、2004年の戦死も同様の扱いで取り上げられました。

 

でも、アメリカのスポーツ界も多様です。2003年には、ニューヨークにあるマンハッタンビル・カレッジという小さな大学の女子バスケットボール・チームのシニアだった、トニー・スミスはゲームの始まる前の国歌の演奏の際にアメリカ国旗に背を向けました。彼女はイラク戦争は正義に反していると感じ、そんなことをしているアメリカという国家の国旗そして国歌に敬意を表すことはできないと考えたのです。

 

             

Toni_smith_from_daily_news

               

ニューヨーク・デイリー・ニュースから

 

両隣の二人の選手も手をつないで頭を垂れ、国旗に背は向けてはいませんが、スミスを支持しています。

 

この行動を心配した大学の学長は、言論の自由・表現の自由という立場からスミスを守ろうとしますが、マスコミは徹底的に彼女と学長の批判に明け暮れました。「この行動はゴミだ。アメリカよ消えてしまえと言っているに等しい。そしてこれから国のために命を捧げようとしている人たち、そして既に国のために究極の貢献をした人たちに背を向け、彼らを愚弄する行為だ」といった調子の言葉が二人に浴びせられました。

 

そんな批判が起ることなど全く考えてもいなかったスミスは傷付きますが、それでも自分の考え方を変えることはありませんでした。その後彼女はマンハッタンの、子どもたちを犯罪に向わせ兼ねない環境を改善する仕事に現場で関わっています。

 

同時に彼女の行動は、1968年のメキシコ・オリンピックの際のトニー・スミスとジョン・カーロスの勇気と重ねて語られることも多く、多くの若者の間に浸透したことも事実です。そして2003年から10年以上経った2016年に、再び、彼女の勇気の再来だと言われる事件が起ります。

 

 

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