「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました ――芥川賞受賞作家が14年も前に――
「成田プラン」の反論は米谷ふみ子さんがしていました
――芥川賞受賞作家が14年も前に――
大江健三郎さんが亡くなられて寂しい限りなのですが、こんな時の定番として、お元気な高齢者の言葉をもう一度聞くことには絶大の効果があります。たまたま今日は、1931年生まれの原田康夫先生と電話で話すことができて、元気が復活しました。元広島大学の学長でテノール歌手、5月14日には『椿姫』で、主役のアルフレードを演ずる予定ですが、何と92歳です。
もう一人は、1930年生まれの米谷ふみ子さんです。1986年に『過越しの祭』で芥川賞を受賞していますが、平和運動・市民運動にも長く関わってきたエネルギッシュな方です。私が最初に米谷さんを知ったのは、1972年に刊行された『わが子 ノア』を通してでした。この本では、米谷さん、米谷さんの夫で著者のジョッシュ、そしてお兄さんのカールの4人家族が、次男のノアさんの自閉症とどう付き合ってきたのかを感動的に描いていたのです。
この続きもあって三部作になっています。これもお勧めなのですが、今日御紹介したいのは、米谷さんが2009年に書かれた『年寄りはだまっとれ!?』です。とにかく読めば元気になること請け合いですが、このところ反論を書き続けている成田悠輔の『成田プラン』への見事な反論になっていることが何より痛快です。
しかも、「成田プラン」のような酷い考え方がいずれ出て来ることを14年も前から予想して、それに対する反論まで書いてしまっていることを重く受け止めて下さい。そのこと自体、高齢者には「集団自決」以外の役割はないと言わんばかりの「成田プラン」への反論になっているではありませんか。
この素晴らしい一書から三か所だけ引用しておきましょう。一つは、明白です。
「誰も年寄りだからといって私たちの命をとる権利はない!」 (ページ3)
もう一か所は、6ページから7ページにかけての部分です。
私の町の反戦グループ(パリセイディアンズ・フォア・ピース)のメンバーは、若くて50代半ば、 たいていは70・80代で、集会をする家の持ち主のマーサは94歳です。また、私が属し ているフォーク・ダンスのクラスの仲間は、先生が一番若くて65歳くらい、他は80代がざら、90、92、94歳というのが車をみずから運転して夕方やって来るのです。周り にも70歳でも働いている人はざらにいます。この間は私の友達の配偶者が現役で亡くなりま した。84歳でしたが、その年齢でも大学で教えていたのです。だから、それが通常の社会 だと思っていました。それで、かの編集者に「後期高齢者ってどのくらいの年齢の年寄り?」 と尋ねますと「75歳以上です」と言うのでまったく驚きました。私もその中に入っている ではありませんか!日本は年寄りを大切にする社会だと思っていたので、こういうカテゴリ —を設けたのは、もっとこの後期年寄りに国が資金を出して大事にするためだと思っていると、全く逆でしたので二度ビックリでした。
そして46ページ。
日本の政府は、年寄りのことを後期高齢者などと馬鹿にするものではない。私たちを殺してしまうと、若い人たちは生存手段が分からなくなるだろう。私たちは物資が無くなりかけるとどういう風に生き残れるかの手段を知っている。これを、このごろ、エコロジーと呼んでいるので。
つまり、年寄りを「殺す」のではなく、「生かす」ことが普通なのです。また若い人たちにはない経験やそこから生まれた「知恵」さえも持っているのです。そんな普通のことが普通であ続ける社会の有り難さをもう一度噛み締めつつ、高齢者の力をどう生かせば良いのかを考えて行きましょう。
最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/3/15 イライザ]
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