#大逆事件と #ドレフュス事件 ―― #裁判の実態は #事実とは関係なかった ――
#大逆事件と #ドレフュス事件
―― #裁判の実態は #事実とは関係なかった ――
#「社会」のない国、日本
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《フェイク・ニュース》
もう8年以上前になりますが、トランプ氏が大統領候補として活発に動き始めた頃から「フェイク・ニュース」という言葉が頻繁に現れるようになりました。
その後のトランプ氏の行動は、自分に都合の良い事は、それが嘘であっても、「真実である」と主張し続けました。他方、事実チェックを経て、「まともな」人々やメディアがそれに対する反論を述べても取り合わないことも続けました。
「フェイク・ニュース」、つまり嘘のニュースというラベルを貼って、それが嘘であっても何度も繰り返せば、あるいは嘘であっても多くの人たちが口に出せば、それが真実であると認めるという社会的行動規範を作り出してしまったのです。少なくとも一部の人たちの間では、これが新たな規範、そしてそれを元にしての言動が支配する社会状況を作り上げてしまったと言えるのではないでしょうか。
その影響を、そのままもろに日本社会が受けたと言う風には考えたくありませんが、東京都知事選挙が話題に上るころから問題視された小池都知事の学歴詐称の問題についても、知事側の主張はトランプ式そのものだったと言えそうです。
そして、昨2024年7月の都知事選挙でも、同じ傾向があからさまでした。石丸候補のSNSの使い方が、あたかもSNSそのものを上手く使ったという風に、マスコミも含めて「識者」と呼ばれる人たちの多くは論じていましたが、それ以上に大きな問題は、事実とは何か真実とは何かということ自体が物事の判断をする上での基準ではなく、トランプ流の「フェイク・ニュース」と同じように、多くの人が信じることが真実である、あるいは権威が押し付ければ真実である、何度も繰り返せばそれが真実であるといった判断基準が、これまで私たちが長い時間を積み重ねて勝ち取ってきた「真実」や「事実」の定義に取って代ってしまったことなのではないでしょうか。
兵庫県の斎藤知事の公益通報についての扱い、その対象になったパワハラ、あるいはその後の100条委員会のあり方、そして斉藤知事の罷免とそれに続く知事選挙等でも同じテーマが繰り返されました。
《「社会」のない国、日本》
たまたま私が手にした菊谷和宏さんが著した『「社会」のない国、日本』では、この点を中心に、永井荷風という文人を通して、フランスのドレフュス事件、そして日本の大逆事件の共通点と相違点、そして我が日本国、日本社会についての鋭い分析が行われています。
この本では、最初に大逆事件の被告を乗せていたと見られる馬車を見ての永井荷風の思いが、「花火」という文章から引用されています。
「明治四十四年慶應義塾に通勤する頃、わたしはその道すがら折々市ヶ谷の通で囚人馬車が五六台も引続いて日比谷の裁判所の方へ走つて行くのを見た。わたしはこれ迄見聞した世上の事件の中で、この折程云ふに云はれない厭な心持のした事はなかつた。わたしは文学者たる以上この思想問題について黙してゐてはならない。
小説家ゾラはドレフュー事件について正義を叫んだ為め国外に亡命したではないか。然しわたしは世の文学者と共に何も言はなかつた。私は何となく良心の苦痛に堪へられぬやうな気がした。わたしは自ら文学者たる事について甚しき羞恥を感じた。以来わたしは自分の芸術の品位を江戸戯作者のなした程度まで引下げるに如くはないと思案した。
その頃からわたしは煙草入をさげ浮世絵を集め三味線をひきはじめた。わたしは江戸末代の戯作者や浮世絵師が浦賀へ黒船が来ようが桜田御門で大老が暗殺されようがそんな事は下民の与り知つた事ではない---否とやかく申すのは却て畏多い事だと、すまして春本や春画をかいてゐた其の瞬間の胸中をば呆れるよりは寧ろ尊敬しようと思立つたのである」
荷風は、ドレフュス事件でペンを持って立ち上がったエミール・ゾラに我が身を引き比べて、何もしなかった、できなかった自分を江戸時代の戯作者の立場に置くと言う決意をしたことになっています。
その意味についての菊谷さんの解釈は、これは荷風個人の問題ではあるものの、荷風が何もできなかった、より大きな状況として、日本には「社会」というものが存在しないからだという説明をしています。
この「社会」とはどんなものなのか、菊谷論が始まるのですが、ドルフュス事件と大逆事件についても、簡単にお浚いする必要があります。それは次回に。
皆様にとって、きょう一日が素晴らしい24時間になりますよう!
[2025/2/25 人間イライザ]
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