広島で被爆者を裏切ってはいけない (6) ――「ヒロシマ」が核抑止論にお墨付きを与える?――
広島で被爆者を裏切ってはいけない (6)
――「ヒロシマ」が核抑止論にお墨付きを与える?――
折り鶴
ブログ激励のために、上のバナーをクリックして下さい
2022年8月1日のNPT再検討会議で岸田総理は「ヒロシマ・アクション・プラン」を披露し、NPTこそ、その「原点」だと強調しました。5月19日の「首脳広島ビジョン」では、「原点」ではなく、「礎石」に代っていましたが、意味は変わりません。念のため、「アクション・プラン」の冒頭部分を再度掲げます。
「被爆地広島出身の総理大臣として、いかに道のりが厳しいものであったとしても、「核兵器のない世界」に向け、現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなくてはならないと考えます。そして、その原点こそがNPTなのです。」
目的は、核抑止論を正当化するだけではなく、それこそ、「現実的な」政策であり、今後も堅持されなくてはならいという主張のためです。その理由は、NPTが核保有国の利害関係を守るための手段に貶められ、「三本柱」と呼ばれてきた三つの原則は実質的に二つになってしまっているからです。三本柱とは、
- 全面的かつ完全な核軍縮が、厳重かつ効果的な国際管理の下に行われることになるような条約締結のために誠実な交渉を行うこと
- 米・英・ロ・仏・中以外の国に核兵器を拡散させないようにすること。
- 原子力の平和利用は推進すること。
この内の第一の柱は、NPTの第6条です。その意味は、分り易く言えば、核兵器禁止条約のような条約を作りなさい、ということなのですが、核保有国はこの6条を全く無視し続けてきました。核兵器禁止条約が、「ヒロシマ・アクション・プラン」の中にも「G7首脳広島ビジョン」の中にも使われていないのは、そのためです。と言うことは、NPTとは、安保理の常任理事国である5つの核保有国が核兵器を持つことは認め、その継続を前提として、その他の国々が核兵器を所有することは認めず、原発は推進するという内容の条約です。
原発の推進は、別建てで論じますが、NPTとは、核保有国の核を正当化し、その体制を持続する上での「法的正当性」を主張するための道具にされてしまっているのです。
「その原点がNPTなのです」の後に続くのは、「NPTは、軍縮・不拡散体制の礎石として、国際社会の平和と安全の維持をもたらしてきました。NPT体制を維持・強化することは、国際社会全体にとっての利益です」なのですが、それと、「ヒロシマ・アクション・プラン」の第一の基礎として挙げられている命題は同じことを述べています。
「核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきであることを訴えます」
ロシアによる脅しは非難していますが、その裏では、その他の国についての言及はないのですから、ロシアは使うことも脅しもダメ、他の核保有国はどちらもできる、という主張なのだと考えても矛盾ではありません。実際、その通りなのだという説明は、ここでは省きます。
これほどあからさまに、核保有の正当化と、核抑止論の効果、そして、それが世界平和のためになっている、だからその体制を保持するのが正しいと言われると、それが、2023年5月のG7広島サミットのテーマであることも見えてきます。
それ以上に問題なのは、「被爆地広島出身の総理大臣」を強調し、演説中には「被爆者」という言葉は一切使わなかったにもかかわらず、演壇から折り鶴を指示して、あたかも「ヒロシマ・アクション・プラン」が被爆者の思いそのものであるかのような印象を与える演出をしていることです。
G7サミットを広島で開く目的は、「ヒロシマ」がこうした主張にお墨付きを与えているのだ、という印象作りではないのかと思われても仕方がありません。
事実、5月21日に終ったG7広島サミットではその通りのことが行われたのですが、昨年秋の時点では、まだ一縷の望みがありました。それは、11月にバリで開かれたG20サミットです。長くなりましたので、この項は次回に。
「「核兵器を使わない」と、直ちに宣言して下さい!」キャンペーンは続けます。
そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!
[2023/5/28 人間イライザ]
[お願い]
文章の下の《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 広島で被爆者を裏切ってはいけない (5) ――G7首脳が広島まで来てくれたことは、当然評価に値します―― | トップページ | 広島で被爆者を裏切ってはいけない (7) ――一歩踏み出したG20サミット・バリ宣言―― »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #災害を #ネタにする? ――#今更ですが シリーズ 2―― (2024.06.28)
- #企業・団体献金禁止 に #反対する #小沢一郎議員 ――文字通り #語るに落ちた―― (2024.05.23)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
- #なぜ今 #公費負担 なのか ―― #公私混同 を #止めさせるため―― (2024.05.18)
「言葉」カテゴリの記事
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #駐日大使 の #式典招待は ――#知って貰うため #友達になって貰うため―― (2024.08.31)
- #当事者意識は #なぜ広がらないのか ――#同級生の投票行動から考える・第9回―― (2024.08.20)
- #詭弁は #詭弁だと言おう ――#同級生の投票行動から考える・第8回―― (2024.08.19)
「平和」カテゴリの記事
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #駐日大使 の #式典招待は ――#知って貰うため #友達になって貰うため―― (2024.08.31)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #慰霊の夕べコンサート ――#8月9日18時から #廿日市市のさくらぴあ小ホールで―― (2024.07.30)
「アメリカ」カテゴリの記事
- #トランプ #返り咲き ――#8年前との比較から #何が見えるのか―― (2024.11.07)
- #危機感の違い #世代を超えて共有できるか ――#キューバ危機に比肩する危機的状況―― (2024.10.30)
- #ヒロシマの使命を #再確認しておこう ――#その時々の流れに押し潰されないように―― (2024.08.29)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
「日本政府」カテゴリの記事
- #中間目標として採用するための条件 ――#締約国会議へのオブザーバー参加では?―― (2024.12.04)
- #排除ではなく #説得を ――#式典まで待つのではなく #行動を―― (2024.09.02)
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #ユニオンショップ は #建前 ――#同級生の投票行動から考える・第10回―― (2024.08.23)
- #大本営発表 が #狼少年 に ――#建物の中に避難・地下に避難 と #絶叫―― (2024.05.31)
「ロシア」カテゴリの記事
- #2045ヒバクシャ・ビジョン #公表は来年 ――#目標年・2045年を合言葉にしよう―― (2024.11.24)
- #危機感の違い #世代を超えて共有できるか ――#キューバ危機に比肩する危機的状況―― (2024.10.30)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- 「即時行動」への共感 ――大阪から新たな動きが生まれそうです―― (2023.09.16)
- 大阪での講演会報告です ――前向きな質問と発言ばかりでした―― (2023.09.13)
「核兵器」カテゴリの記事
- #中間目標として採用するための条件 ――#締約国会議へのオブザーバー参加では?―― (2024.12.04)
- #2045ヒバクシャ・ビジョン #公表は来年 ――#目標年・2045年を合言葉にしよう―― (2024.11.24)
- #危機感の違い #世代を超えて共有できるか ――#キューバ危機に比肩する危機的状況―― (2024.10.30)
- #被団協に #ノーベル平和賞 ――#核廃絶運動に弾み #歴史的にも大きな意味―― (2024.10.11)
- #平和記念式典への招待基準 (2) ――#何故、特定の日だけ排除するのか―― (2024.09.13)
「被爆者」カテゴリの記事
- #何故2045年なのか #補強説明 ――#抑止力を持つのは #被爆者―― (2024.12.03)
- #数学人の集い #話題提供 ――#生きることを選んだ #被爆者―― (2024.12.02)
- #報復ではなく和解を ――#中国新聞 #11月28日付け ―― (2024.11.29)
- #ノーベル委員会も #自らの存在意義を示さなくてはなりません ――#人種・性別等々、 #多様性を尊重する賞になっているのか #も問われます―― (2024.10.16)
- #被団協に #ノーベル平和賞 ――#核廃絶運動に弾み #歴史的にも大きな意味―― (2024.10.11)
「G7サミット」カテゴリの記事
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
- #被爆地広島出身の総理大臣 #メッキが剥げた ――#G7広島サミット では #利用するだけ利用 したのに―― (2024.01.12)
- #明けましておめでとうございます ――旧年中はお世話になりました。本年も宜しくお願い申し上げます。―― (2024.01.01)
- #広島のメディア が #一面トップで報道 すべき ―― #リーパーさん の #谷本清平和賞受賞―― (2023.12.19)
- 投下責任の「棚上げ」と米政府、広島市・市長そして外務省 ――「本音が出ると大問題」を回避―― (2023.10.01)
「岸田総理」カテゴリの記事
- #排除ではなく #説得を ――#式典まで待つのではなく #行動を―― (2024.09.02)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #被爆79周年原水爆禁止世界大会 #広島大会 #開会総会(2024.08.06)
- #上意下達とは #こんな意味なのでしょうか ――#総理大臣 #国務大臣 #都道府県知事 #市町村長―― (2024.07.20)
« 広島で被爆者を裏切ってはいけない (5) ――G7首脳が広島まで来てくれたことは、当然評価に値します―― | トップページ | 広島で被爆者を裏切ってはいけない (7) ――一歩踏み出したG20サミット・バリ宣言―― »
コメント