多様性を尊重するには ――一定の議員定数が必要――
多様性を尊重するには
――一定の議員定数が必要――
前回の結論の一つは、議員定数を少なくすると害が生じることでした。逆に議員定数を増やすと、民主主義という視点からは望ましい結果になるけれど、お金と時間が掛かるということでした。
そのどちらを取るのかという決定をするに当って、選挙の目的は何なのかを明確にした上で多くの人たちが、それを共有する必要があることも、理解して頂けたのではないかと思います。
私は、社会の多様性を議会に反映させることが選挙の目的だと考えています。それを理解して貰うために、単純なモデルで、定数が少なくなると多様性が損なわれることを説明しておきましょう。
有権者の総数が1,000人で、議員総数 (それが定数です) が100人というA国があったとしましょう。選挙の制度は比例代表制、つまり政党の獲得した票数に従ってその党から当選者が選ばれるという制度です。しかも投票率は100%だとします。
少しは現実的な感触を保つために、その内の40人は保守党、30人は中間党、20人は革新党、6人は少数党、4人は零細党という政党から選ばれていると仮定しましょう。つまり、それぞれの政党の得票率が、40%、30%、20%、6%、4%であるという仮定です。
さて、議員定数を100人から80人に減らすと、確かに議員の給与等も下がります。20%下がるかどうかは分りません。議会そのものの維持費等、固定費がありますし、その他議員数が減っても短期間に自動的には減らせない費用もあるからです。
しかし、多様性は確実に失われます。新たな議員の所属政党は、5政党から3政党に減り、少数党と零細党の議員はゼロになり、革新等の議員数は半分の10人になります。
これだけで、「多様性」が議会に反映される度合いが減ったことは明白です。少数党や零細党の意見は、巷には残るかもしれませんが、国会という場で反映されることはなくなるのです。
それ以上の問題もあります。仮に、今の日本国憲法がそのまま適用されたとして、定員100人の時には、保守党と中間党の半分、合わせて55人が憲法改正に賛成、残りの45人は反対だったというもう一つの仮定を加えてみましょう。
新しい勢力分野では、改憲賛成派は55人と同じですが、反対派は25人です。80の3分の2は、53.3ですから、55は、3分の2以上です。
大切なのは、有権者の間で考え方に違いが生じた訳ではないのに、改憲をするかしないかという国家にとっての一大事が、定数を変えることで簡単に変わってしまうことです。
それは、政治的に大切な他の問題についても当てはまります。「議員定数削減」を声高に唱えている人たちの隠された目的が、現状を変えるまでもなく、独裁政治(というと語弊があるかもしれませんので、強権政治にしておきましょうか)に近付こうとしていることにある、と考えてもおかしくないことはこれでお分り頂けたのではないでしょうか。
最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/4/5 イライザ]
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