「公共の良心の要求」とは ――国際法的にも重要です――
「公共の良心の要求」とは
――国際法的にも重要です――
国際司法裁判所
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:International_Court_of_Justice.jpg
Public Domain
今回のタイトルに、「公共の良心の要求」という言葉を使っていますが、昨日のブログでは、最初「民衆の良識の指針」という訳を付けました。元々は英語で「Dictates of Public Conscience」ですが、1899年のハーグ平和会議で最初に使われ、その訳としては「公共の良心の要求」が定着していますので、そちらを使うことにします。
ハーグの平和会議では、戦争と平和についての画期的な取り決めが採択されたのですが、合意に至らなかった事柄もありました。例えば、軍事的に占領された国の民間人が武力で抵抗した場合に、それらの人々の国際法上の立場はどうあるべきかという問題については、合意ができなかったのです。詳しくは、国際赤十字社の「The Martens Clause and the Laws of Armed Conflict」あるいは黒崎将広氏による「戦争法秩序の誕生――総加入条項とマルテンス条項の機能的連続性」を御覧下さい。
このような問題を根本的に解決するには至らないものの、包括的な枠組みとして、ロシアの法律学者かつ外交官のフェドロビッチ・マルテンスが提案し、ハーグ陸戦条約の前文に採択されたのが、マルテンス条項と呼ばれる一文です。
「一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ルハ,締約国ハ,其ノ採用シタル条項ニ含マレサル場合ニ於テモ,人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ存立スル慣習,人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スル」
簡単にまとめると、この条約で明文化されていないような事柄についても、諸国は国際的な慣習や人道の法則、そして公共の良心の要求に縛られる、という大原則なのです。
ここで、「公共の良心」とは、世界の世論と言い換えられますが、それに従う立場にある各国が「世界の世論」の中で何が「公共の良心」を表現していると解釈するのかが、次の問題になります。そこで、NoFirstUse Globalが提唱している、「公共の良心の宣言」が意味を持ってきます。
1996年に、国際司法裁判所が、核兵器が国際法上違法かどうかの判断を行った際に、市民社会から600万以上の署名とともに、核兵器の違法性を訴える「公共の良心の宣言」が提出されていました。そして国際司法裁判所は勧告的意見の中で、「公共の良心の要求」に言及しているのです。つまり、私たちの署名は無視しても良い「戯言」として存在するのではなく、国際法上に位置付けのある意思表示として認められているのです。
この立場を強化するためには、機会あるごとに私たちがこのメカニズムを使って「公共の良心」とは何かを示し続ける必要があります。G7広島サミットは、そのためにも「使える」機会です。是非、皆さんの署名をお願いします。
再度、署名サイトを掲げます。
そして皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう祈っています!
[2023/5/1 人間イライザ]
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コメント
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世界が核兵器の脅威から解放される未来を望みます。核兵器の廃絶と世界の恒久平和を実現してください。
投稿: 山崎幸治 | 2023年5月 1日 (月) 08時21分
「山崎幸治様」
コメント、有難う御座いました。世界を最後に動かすのは私たち市民一人一人ですが、私たちの声を汲み実現のために奔走する政治家がいてくれれば、私たち市民の幸福度は高くなります。
そんな政治家に届けたい声ですね。一緒に頑張りましょう。
投稿: 人間イライザ | 2023年5月11日 (木) 17時21分