「平和には戦争以上の努力と忍耐が必要」 (中村哲) (*1) ――『はのねくさのね』の巻頭言――
「平和には戦争以上の努力と忍耐が必要」 (中村哲) (*1)
――『はのねくさのね』の巻頭言――
『はのねくさのね』とは、ODH草の根歯科研究会が年二回発行している会報ですが、その巻頭言は、いつ読んでも頭がすっきりしますし勉強になります。この研究会は、歯科職の皆さんが多く参加されているようなのですが、会が主催するイベントには、社会や政治問題なども取り上げる「勉強会」、患者と歯科職を結ぶための「患者塾」、そして歯医者さんの応援をする「歯医者さん探検隊」などがあるようです。
私がファンになったのは、この会報の巻頭言の筆者、岡田弥生さんの「歯に衣着せぬ」鋭い指摘とそこで教えて貰える知識の質からです。今回は、第54号ですが、丁度選挙の真っ最中です。
杉並の岸本、参議院の大椿、広島市中区の門田、そして「はのねくさのね」の岡田と次々に女性の活躍が目立ちます。女性の頑張りがないと消えてしまいそうな日本社会や政治ですが、今回はその岡田さんの言葉から選挙や政治を考えてみましょうというお誘いです。
****************************************
時々、親知らずが痛くなる。体調を崩して寝込んだ後 遺症か、ケアが難しい部位の歯周ポケットが深くなり、手入れを怠ると思い出したように疼く。加齢と共に、口の中にも種々の不具合が出る。古希を前に、歯周病の怖さを改めて実感する。その進行を阻むためには、リスクを抑え込むことが唯一最大の対策だ。定期受診し、耐え難い痛みになれば抜歯と、納得し覚悟はしているが、なるべく平和を保ちたい。現状維持には抜歯以上の努力と 忍耐が必要だ。
歯の平和を脅かす小さな予兆に、適切に対応しなければ、破滅的な結果を招く。いつの戦争でも、攻撃を始める指導者は、国民を鼓舞し団結を図るために、情報統制した上で被害者性を強調する。「自分は被害者だ。悪いのは相手だ」と異口同音に言い張るDV男と同じだ。敗戦直後、日本人の大多数が、戦争に至った経緯や敗戦の理由を全く知らず、原爆のせいで負けたと思っていた。ノーム・ チョムスキーの言う「合意の捏造」システム(*2)は今も続 く。私も侵略や植民地支配を知らないまま大人になった。
情報統制の背景にある自己規制(*3)を読んで、里子死亡事件で受けた警察の事情聴取を思い出した。直前の3歳児検診での虐待徴候を訊かれた。口腔内所見では逆に食べる機能が気になった。しかし、里親を殺人で起訴したい警察の見立てに反することを言っても無駄だと、同席した上司に発言を止められた。痛ましい事件だった。私自身も摂食機能を考え直すきっかけになった。だが、発言できなかった自分が情けない。
「トルストイも言ったたことだが、多数者の側に身を置くことはど楽なことはない。大脳作用から生じる意見や行為ほど、対人関係を損ない、自分自身に苦痛を与え、昇給と出世を損なうものはない」(*4)。今、防衛予算の増額に賛成する日本人の大多数は、自分の頭で冷静に考えて判断しているのか。「俺は持つ お前は持つな 核兵器」(*5) の論理は、DVの論理そのものだ。二重規範を容認することで甘い汁を吸う魂胆は卑しい。大軍拡と安全保障政策の大転換を手上産に、バイデンに媚びる岸田首相はその最たるものだ。努力や忍耐なしの敵基地攻撃能力は怖い。
(* I)アフガニスタンで人道支援に尽力した医師。作家・半藤一利氏との対談での言葉。
(*2)『記者クラブ 情報カルテル』 アン・フリーマン 緑風出版2011年
(*3) 『報道の自己規制 メディアを蝕む不都合な真実』 上出義樹 リベルタ出版2010年
(*4) 『満足の文化』 J.Kガルブレイス ちくま学芸文庫2014年
(*5) 『「核兵器も戦争もない世界」を創る提案』 大久保賢一 学習の友社2021年
***********************************
最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/4/3 イライザ]
[お願い]
文章の下の《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 職責を果たす広島市の職員 ――基礎自治体では、信頼関係を作り易い―― | トップページ | 「議員定数を減らす」目的は何? ――社会の「空気」に騙されないために―― »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 4年振りの敬老会に参加しました ――高齢化社会の現実についても考えさせられました―― (2023.09.18)
「言葉」カテゴリの記事
- 加藤友三郎の高潔さ ――名誉・権力・金・地位等とは無関係―― (2023.07.08)
- 断酒の障害が分りました ――甘い言葉でした―― (2023.07.04)
- メモワール作成のためのインタビューでした ――30年も前を思い出して懐かしく楽しい一時になりました―― (2023.07.02)
- 採決は本当にあったのか ――6月8日の参院法務委員会採決に30年前の「採決」が重なりました―― (2023.07.01)
- WordのDictation機能を使っての、即時書き起こしです ――手直しをするのに1ページ15分掛りました―― (2023.06.17)
「平和」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 「即時行動」への共感 ――大阪から新たな動きが生まれそうです―― (2023.09.16)
「アメリカ」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 総理大臣としての加藤友三郎 ――戦争回避の「預言者」でもあった―― (2023.07.14)
- 軍縮とは単なる数合わせではない ――友三郎の眼は要塞化や、中国ソ連にも向けられていた―― (2023.07.10)
- 総理就任以前に二度もわが国を救った友三郎 ――命日は8月24日です―― (2023.07.09)
「日本政府」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 被災地に人を送り込むな ――5年前の教訓は生きているのでしょうか?―― (2023.07.18)
「選挙」カテゴリの記事
- (喝!!) マスコミは何をしているのだ!! ――女性が3自治体議会の過半数というニュースは一面記事だろう―― (2023.05.03)
- 明日が投票日です ――三地区で三人の候補を応援しています―― (2023.04.08)
- 議員からの発信手段を多様化できないか ――それなりのお金がないとできません―― (2023.04.06)
- 多様性を尊重するには ――一定の議員定数が必要―― (2023.04.05)
- 「議員定数を減らす」目的は何? ――社会の「空気」に騙されないために―― (2023.04.04)
「ウクライナ」カテゴリの記事
- 大阪での講演会報告です ――前向きな質問と発言ばかりでした―― (2023.09.13)
- 防衛省を防災省に ――自然災害を黙殺する政治をひっくり返そう―― (2023.07.17)
- 広島で被爆者を裏切ってはいけない (9) ――「ヒロシマ」の意味を広げるため、ロンドンでスピーチ―― (2023.05.31)
- 広島で被爆者を裏切ってはいけない (4) ――「ヒロシマ・アクション・プラン」には被爆者が登場しない―― (2023.05.26)
- 広島で被爆者を裏切ってはいけない (3) ――「被爆地広島出身の総理大臣」とは?―― (2023.05.25)
「ロシア」カテゴリの記事
- 「即時行動」への共感 ――大阪から新たな動きが生まれそうです―― (2023.09.16)
- 大阪での講演会報告です ――前向きな質問と発言ばかりでした―― (2023.09.13)
- 総理大臣としての加藤友三郎 ――戦争回避の「預言者」でもあった―― (2023.07.14)
- 軍縮とは単なる数合わせではない ――友三郎の眼は要塞化や、中国ソ連にも向けられていた―― (2023.07.10)
- 総理就任以前に二度もわが国を救った友三郎 ――命日は8月24日です―― (2023.07.09)
「核兵器」カテゴリの記事
- 原爆の責任議論を「棚上げ」したのは何故か ――一つは、外務省が広島の平和行政を仕切っているから―― (2023.09.24)
- 今、広島で起きていること (2) ――大阪講演報告5・「原爆の責任議論は棚上げ」した広島市―― (2023.09.23)
- 今、広島で起きていること ――大阪講演報告4・外務省や日本政府抜きには語れない―― (2023.09.22)
- 岸田外交の本質 ――核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバ参加さえ拒否する理由は?―― (2023.09.20)
- 「即時行動」への共感 ――大阪から新たな動きが生まれそうです―― (2023.09.16)
« 職責を果たす広島市の職員 ――基礎自治体では、信頼関係を作り易い―― | トップページ | 「議員定数を減らす」目的は何? ――社会の「空気」に騙されないために―― »
コメント