AI盲信に警鐘を鳴らしたMIT教授 ――ワイゼンバウムの『コンピュータ・パワー』を読み直そう――
AI盲信に警鐘を鳴らしたMIT教授
――ワイゼンバウムの『コンピュータ・パワー』を読み直そう――
このところ、急速に発展しているAI (人工知能) ですが、最近最も話題になっているのがChatGPTと呼ばれる「オリジナルのテキストを生成することができる人工知能ツール」です。(OpenAIに登録してアカウントを作ればすぐに使えますので、説明は省略します。)
「AIの新時代が始まった」、「教育の意味や内容が大きく変わる」等々、世界的に注目され話題になっています。
こうした評価を聞いて、私は1960年代から70年代にかけて、同じように話題になったAIのプログラムを思い出しました。「イライザ」です。そして私のハンドル・ネームもこのイライザから取ったものです。
MITのジョセフ・ワイゼンバウム教授が1960年代に開発したプログラムで、心理学のロジャーズ学派の原則を用いて、精神医療医の真似のできることが特徴でした。このプログラムを使って、コンピュータと対話をした多くの人々は、あたかも一人の人間と話しているかのような気持ちになったと報告しています。
その結果、「精神医はもう必要なくなった」というような過大な期待を寄せられるようになったのですが、まずは、一人の若い女性と「イライザ」との対話の記録を御覧下さい。最初が女性の、そしてイタリックは「イライザ」の言葉です。
男ってみんな同じ。
どのように。
男って、いつもあれをしろ、これをしろって、うるさくてしようがないんですもの。
何か特別な例をあげてください。
そうね、ボーイフレンドがここに来るようにって言ったの。
ボーイフレンドがあなたを、ここに来させた。
彼は、私がいつでもふさぎ込んでいるって言うんです。
ふさぎ込んでいるとは、お気の毒に思います。
ほんとなんです。私は幸福ではありません。
ここに来ることによって、不幸せから逃れるための、助けがが得られると思いますか。
何か助けが必要,それだけは確かです。
助けを得るということは、あなたにとってどういう意味がありますか。
たぶん、母との折合がよくなると思います。
あなたの家族について、もっと話してください。
母は私の面倒をみてくれます。
お母さんの他に、誰があなたの面倒をみるのですか。
父です。
お父さん。
あなたは私の父にちょっと似ています。
どのような類似点がありますか。
それほど積極的でないところ、でも、私にそれを気づいてほしくないのだと思います。
どうして私が積極的でないと思うのですか。
私に議論をしかけないから。
私があなたと議論をしないのは、なぜだと思いますか。
私が恐いから。
私があなたを恐いのだと思うことで、満足ですか。
父は誰でも恐いのです。
お父さんのことを考えるとき、他にどんなことを思いうかべますか。
弱い者いじめ。
それと、あなたのボーイフレンドが、あなたをここに来させたことと、何か関連がありますか。
ワイゼンバウム教授が驚いたこととして報告しているもう一つの身近な例は、彼の秘書についてのエピソードです。彼女は教授が何か月もこのプログラムの研究をしてきたことを知っているにもかかわらず、このコンピュータとほんの二言三言交わしただけで、教授に「部屋を出て行って欲しい」とまで言ったことです。つまり。コンピュータと彼女との間のプライバシーを尊重して欲しいという気持になったのです。
その他にも現れた様々な反応を元に、ワイゼンバウム教授は、AI研究と、人間が人間であることの意味との関係を深く考察して、警鐘を鳴らすための一書としてまとめました。タイトルは『Computer Power and Human Reason』 (W. H. Freeman and Company, 1976) です。日本語版は、私が訳し1979年にサイマル出版から刊行された『コンピュータ・パワー その驚異と脅威』です。
写真の下の方にある言葉がこの本の意味を的確に表現しています。「人間が機械の犠牲にならないために」、そして「コンピュータの世界的権威が、新しい文明症の予防を痛切に警告」です。
AIを考える上で欠かせない本質的な事どもについて、詳細かつ分り易く論じている現代の必読書です。ChatGPTが大きく取り上げられている今、このブログで、要点だけでも紹介したいと考えています。(続きます)
最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/4/7 イライザ]
[お願い]
文章の下の《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 議員からの発信手段を多様化できないか ――それなりのお金がないとできません―― | トップページ | ワイゼンバウム教授が受けたショック ――コンピュータが人間と同等かそれ以上に扱われたこと―― »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- マウスを快適に使うために ――ドンピシャの「リスト・レスト」は百均で売っていました―― (2023.09.21)
- お気に入りのキーボードを使い続けるために ――SetPointというソフトが起動するための対処法を講じました―― (2023.09.17)
- iPadもカメラとして使える! ――目から鱗とはこのことです―― (2023.06.23)
- 父の日の夕焼け ――気を遣う仕事が増えているので、ブログは息抜きの場に―― (2023.06.20)
- WordのDictation機能を使っての、即時書き起こしです ――手直しをするのに1ページ15分掛りました―― (2023.06.17)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- WordのDictation機能を使っての、即時書き起こしです ――手直しをするのに1ページ15分掛りました―― (2023.06.17)
- もう6年前にAIを使っていました ――そのときには、もうスマホの時代だということを再認識しました―― (2023.04.17)
- 新プロジェクトと新ツール ――そしてAIにも関連しています―― (2023.04.14)
- AI盲信に警鐘を鳴らしたMIT教授 ――ワイゼンバウムの『コンピュータ・パワー』を読み直そう―― (2023.04.07)
「言葉」カテゴリの記事
- アメリカを見ずに広島は語れない ――「パール・ハーバー」⇒原爆という「岩盤的」信念を守りたい人々―― (2023.09.25)
- 加藤友三郎の高潔さ ――名誉・権力・金・地位等とは無関係―― (2023.07.08)
- 断酒の障害が分りました ――甘い言葉でした―― (2023.07.04)
- メモワール作成のためのインタビューでした ――30年も前を思い出して懐かしく楽しい一時になりました―― (2023.07.02)
- 採決は本当にあったのか ――6月8日の参院法務委員会採決に30年前の「採決」が重なりました―― (2023.07.01)
「社会」カテゴリの記事
- AI盲信に警鐘を鳴らしたMIT教授 ――ワイゼンバウムの『コンピュータ・パワー』を読み直そう―― (2023.04.07)
- 社民党の大椿裕子副党首が繰り上げ当選 ――社民党の参議院議員は福島党首と二人になります―― (2023.03.31)
- 「建国の日」にこそ本当の独立国を目指そう ――そのために、憲法を文字通り読むことから始めよう―― (2023.02.11)
- この一年(2022年)を振り返る (4) ――読んで良かった本―― (2022.12.31)
- 《社会と数学の関わり》を話し合う数学人の集い 「準備会」のご案内 (2022.09.29)
「AI」カテゴリの記事
- WordのDictation機能を使っての、即時書き起こしです ――手直しをするのに1ページ15分掛りました―― (2023.06.17)
- 余りにも無防備過ぎます ――かつては煙草も無害だと信じられていました―― (2023.04.29)
- AIがベルギーの男性を死に追いやった? ――半世紀以上前のワイゼンバウム教授の警告が生かされませんでした―― (2023.04.28)
- もう6年前にAIを使っていました ――そのときには、もうスマホの時代だということを再認識しました―― (2023.04.17)
- 新プロジェクトと新ツール ――そしてAIにも関連しています―― (2023.04.14)
« 議員からの発信手段を多様化できないか ――それなりのお金がないとできません―― | トップページ | ワイゼンバウム教授が受けたショック ――コンピュータが人間と同等かそれ以上に扱われたこと―― »
コメント