「記憶が不確かだから記録を残す」の意味を葬り去った自民党政治 ――それでも過去の記録を忠実に残す努力をし続けよう――
「記憶が不確かだから記録を残す」の意味を葬り去った自民党政治
――それでも過去の記録を忠実に残す努力をし続けよう――
TBSニュースのディジタル版によると、3月10日に開かれた参議院予算委員会の理事懇談会で総務省は行政文書の正確性についての調査結果を報告したとのことです。その中で、特に注目されたのは、2015年2月13日に行われたという、当時の高市総務大臣への「大臣レク」(お役人言葉で、大臣や議員な出への「説明」を「レク」、つまり講義してやると表現しています。)が実際にあったのかどうかについては、 「確認できない」と答えたのだそうです。
「確認できない」の意味は、その文書を作成した人の記憶があやふやになっていて、今の時点の記憶ではどうとも言えない、と解釈するのが普通でしょう。しかし論理的には他の可能性も存在します。
「できない」の意味を、「可能だけれども何らかの理由で、そうすることができない」と解釈すると、高市経済安保担当大臣の力に屈服しているので「できない」、という可能性も考えなくてはなりません。
まず、最初の可能性ですが、8年前の出来事について、今唐突に聞かれて即座に答えることのできる人は限られているでしょう。そして、「記憶」はそれより短い時間ではも頼りにならないことは心理学の常識です。この点については、世界的権威であるエリザベス・ロフタス教授の研究を池袋の暴走事故についての記事で紹介しました。
科学的検証は最近になって行われたのかもしれませんが、人類はこの事実を良く知っていました。文字のない時代でさえ、口伝という形で過去の記録をできるだけ正確に残そうとしたのです。さらに文字ができてからは、記憶を文字化するという作業が社会的営為の基本として確立されました。それを最も尊重し、徹底してきたのが官僚組織なのです。そして官庁の中では総務省がその元締めです。
そして、2月13日の文書には、大臣レクの記録係が誰であるのかもきちんと記録されています。「西がた(記)」がそれです。そして、このような記録が作られるのは、当日か遅くても次の日です。間違いの起る可能性はほとんどありません。
特に、お役人の基本的価値観に照らすと、上長、特に組織のトップについての記録は丁寧に間違いのないように扱わなくてはなりません。事実、私が市長を務めていたときでも、事務方の記録の正確さに助けられたことは一度や二度ではありません。
ですから、高市大臣が何と言おうと、総務省は「この記録は正確です」と主張すべきなのです。
それができないのは、高市大臣が、この文書が「捏造だ」と言ってしまったからでしょうし、そうでなければ「辞任する」と言ってしまったから以外の可能性は考えられません。
思考実験をしてみれば、明らかです。仮にこの文書が「捏造」だとして、総務省内の誰がそんな捏造をしたのでしょうか。動機は何でしょうか。「大臣にとって良かれ」が忖度文化の最優先事項になるのですが、わざわざ今の時点で、「捏造」することで官僚たちの中の誰がどのような得をするのでしょうか。
逆に安倍総理が力を持っていた2015年なら、安倍総理の意を受けた高市大臣がその意を実現するために奔走しているという内容を「捏造」したとしても、問題はないどころか、褒められる結果になってもおかしくはありません。でも今の時点でそれは考えられないのではないでしょうか。
ここまで書いて気付いたことがあります。森友学園事件です。振り返って考えると、今起きていることは、正に、安倍総理がマスコミの追及を受けて「私や妻が関係していたなら総理大臣も国会議員も辞める」と発言し、その後財務省の理財局の佐川宣寿局長が森友学園との交渉記録を廃棄したと国会答弁をした後、文書の改竄や一部の削除、廃棄等が明らかになったにもかかわらず、開き直って辞任をしなかったという過去の流れと軌を一にしているではありませんか。
安倍学校の優秀な生徒であった高市大臣が先生の行いをそっくりそのまま真似していると考えると、全部辻褄が合うのですが、そこまで踏み込んだ追及はできないものなのでしょうか。自問自答になりますが、それは無理かもしれません。自民党・公明党政権が正確な記憶を残すのではなく、時の権力者に阿る記録を残す官僚制度を作ってしまったのですから。
そして記憶と記録という点からも、3月10日と11日は、私たちが忘れてはならないことが起きた日でもあります。1945年3月10日は、東京大空襲で10万にも市民が亡くなった日です。そして3月11日の東日本大震災も忘れてはならない教訓の日です。
サンタヤーナの「Those who cannot remember the past are condemned to repeat it. (過去を記憶できない者はその過去を繰り返す運命を背負わされる) 」ことにならないよう、教訓と共に過去の記憶を記録として残しましょう。そして、最も頼りになるべきお役所が正確な記録さえ残せないのであれば、憲法を基に、私たち主権者が行政の監視を強める仕組みを何としてでも創らなくてはなりません。
最後に今日一日、皆さんにとって、素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/3/5 イライザ]
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