日本が壊れて行く? (6) ――岸田・荒井発言の根っこには憲法についての根本的読み違いがある ――
日本が壊れて行く? (6)
――岸田・荒井発言の根っこには憲法についての根本的読み違いがある ――
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今回は性的少数者(LGBTQなど)や同性婚についての岸田・荒井発言を取り上げます。この問題だけでも岸田内閣は退陣すべきだと考えています。しかし、仮に内閣が変わっても自民党・公明党の基本的な考え方が変わらなければ、そしてそれ以前の問題として、日本社会の憲法そのものについての基本的な理解が変わらないと同じことの繰り返しになると思いますので、それを説明します。(以下敬称は略します)
まず、岸田・荒井発言とその背景について、整理をしておきます。マスコミの報道を概観すると、一連の発言についての政府側の対応は、 ①荒井発言は個人としてのものである。 ②その責任は秘書官を止めさせることでけりが付いている。 ③この発言は、岸田総理にとっては「言語道断」であり岸田内閣の方針の対極にある、くらいにまとめられます。そしてそれに対する批判も、問題の本質を突いていないように思えるからです。
それに対しての反論の前提を確認しておきましょう。
(A) 荒井発言は、岸田発言の説明としてなされたものであり、この両者を切り離して論じてはいけない。だから、その一体性を明確にする「岸田・荒井」発言と呼ぶべきである。
(B) 荒井発言は、岸田発言についての説明を求められた秘書官が、オフレコとは言え公的な立場での説明を行う場でなされたのだから、公的な発言であって「個人」の発言という限定や、かつ岸田内閣の立場と関係のないものだと解釈することは許されない。
(C) より具体的には、岸田総理は参議院本会議の代表質問に対して、同性婚制度は「わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものだ」と答え、かつ衆議院の予算委員会では「国民にとって生き方や家族観、社会が変わっていく課題だ。社会全体の雰囲気にしっかりと思いをめぐらせた上で判断することが大事だ」と述べた。この発言について質問された荒井秘書官が、述べた言葉は次の通り。
(D) 性的少数者(LGBTQなど)や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」、そして「秘書官室は全員反対で、私の身の回りも反対だ」と述べ、同性婚が導入された場合は「社会のありようが変わってしまう。国を捨てる人、この国にいたくないと言って反対する人は結構いる」
(E) 繰り返すと、これは、「同性婚について荒井さん個人はどう考えているのですか」という問いに対する答えではない点が重要なのだ。総理大臣の発言「(家族観や価値観)社会が変わってしまう課題だ」の真意はどこにあるのか、という確認のための質問に対して、総理を公的に代弁する立場の役職からの発言なのだ。
(F) その文脈で、荒井発言を、総理の好きな言葉を使えば「丁寧に」読み解くと、[同性婚に反対の人が社会には多い。その人たちの価値観まで変えることになるから、社会が変わると言っている。その人たちの価値観を尊重すれば、同性婚は認められない。事実、私だって見るのも嫌だ――――]とつながると納得の行く発言になります。
(G) 岸田・荒井発言はこの文脈で解釈されなくてはならないのです。となると、単に荒井「個人」の発言として撤回したとしても、論理的には、岸田発言が性的少数者や同性婚否定の言葉であるという「説明」の部分を否定したことにはならないのです。その説明の中の特別な場合の具体例は否定されましたが、それだけで荒井発言の持つ一般的な意味を否定することにはならないからです。
(H) つまり、憲法が高らかに掲げている人権の無視ですし、旧統一教会が政治の世界で実現しようとしてきた主張そのものが、岸田・荒井発言としてハッキリ姿を現しているという事実がここに見えてきました。
さて、このような人権無視の考え方が岸田内閣、自民党、公明党等に染みついているとすると、内閣が変わっても、同じことの繰り返しが起きるだけです。それにストップを掛けるために必要なのは、再度憲法の根本原理に立ち返り、社会全体でそれを骨の髄から共有することです。
前口上が長くなって本論に到達するのに時間が掛かる悪い癖が抜けまません。これに続く本論は次回、「丁寧に」論じます。
最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!
[2022/2/7 イライザ]
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