気球の危険性 ――アメリカでもトランプ時代から気球が飛んでいました――
気球の危険性
――アメリカでもトランプ時代から気球が飛んでいました――
図作成はosunpokenによる。Date: 2023-02-04 License: Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 View file on Wikipedia
掲載URLは、https://www.wikiwand.com/en/2023_Chinese_balloon_incident
昨日の続きですが、アメリカとカナダで撃ち落された気球4個の内、1個は偵察用の機器が搭載されており、「中国のスパイ気球」とアメリカ政府は断定していますが、その他の3個については、詳細が分っていないというのが現状です。
より詳しい情報を探したのですが、今のところ英語版のWikipediaと、『Scientific American』の記事「Why We’re Suddenly Spotting Spy Balloons (なぜ私たちは突然スパイ気球を見付けるようになったのか)」が、分っていること分らないことを整理してくれています。
以下、これら二つの情報源から、関心があると思われるところを抜粋・要約したものを掲げます。
まず、中国製だと思われる気球がアメリカ国内で「発見」されたのは、2018年頃に遡ります。これは事後的に分ったことで、当時は全く問題にされていませんでした。
その理由の一つは、空中を飛んでいる気球の数が多いからなのです。例えば、全国に100か所近くある国立気象台からは気温や湿度の観測用に、一日2回気球を飛ばしています。その他の政府機関も自分たちのレーダーシステムの基礎的足場として気球を飛ばしています。観光用の気球や趣味等の目的での気球も含めるとその数は非常に多くなります。常時、100個の気球がアメリカの上空を飛んでいる勘定になります。
それらの気球をレーダーで捕捉することは可能です。しかし、それらの全てをモニターするとなると、信号量が大きくなり過ぎて、どれが脅威になるのかを把握するのが難しくなります。そこで、北米航空宇宙防衛軍 (NORAD) は、小さい気球やそれに似た物体がレーダーでは捉えられないようにシステムを作ってそれを使って監視しています。
同時に、アメリカの連邦航空局(FAA)は、民間航空が飛行する30,000フィートから40,000フィートを飛ぶ大きな気球を追跡しています。それを効果的に行うためには、気象台や大学等が気球を飛ばすたびに、FAAに報告しなくてはならないことになります。
こうした状況で、中国の気球問題が浮上し、政府関係機関が精細な分析を行った結果、かなりの数の中国のスパイ気球だと思われるものが存在し、それはアメリカだけではなく、全世界の40か国にまで広がっていることが分ったとのことです。
こうした気球がスパイ行為を行っているなら、撃墜すれば良いではないかという解決策もありそうですが、それも簡単には行きません。一つには、気球が大きいからです。最初に掲げた図を見て頂くと分りますが、気球の直径は20メートルから30メートルあります。
F-22戦闘機と同じくらいの大きさで、積載されている機器もかなりの重さになりますので、撃ち落とした後で、地上にどのくらいの被害が生じるのかも考えなくてはなりません。また、最近撃墜された4個の内の3個については、その正体が分っていません。招待の分らないものをやみくもに撃ち落とすことは必ずしも賢明ではありません。
といった辺りが、今分っていることの概略ですが、日本の事情も似たり寄ったりだとしてもおかしくはありません。しかし、現在進行中の「閉鎖的」議論では、対象が分らないままに、気球の撃墜を認めようという方向が固まりつつあるようです。つまり、「空路を飛行する航空機の安全確保と、地上の国民の生命や財産の保護を目的とした武器使用を認める」という案が有力視されているとのことです。
拙速に結論を出す前に、国民全体が気球についての事実を理解し、どのような危険性についての議論をしているのかも共有した上で、合理的そして何よりも、国民の命最優先の方向性を出すようにして貰いたいものです。
国民的議論の必要性について考える際に参考になるのは、アメリカで今回中国気球が問題視されるようになったのは、民間のジャーナリストであるChase Doak氏が気球の写真を撮り、それを公開したからでした。我が国では、2020年6月に宮城県角田市の遠藤茂さんや天文台の職員等が撮影して、SNS上で話題になったとのことです。そのニュースを日本政府が、人命尊重の立場から受け止めていたら、2020年の段階で議論が起きていたと思うのは私だけでしょうか。
皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/2/17 イライザ]
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