「新たな制裁」ではなく「異次元の和平工作」を ――1945年、その時日本が求めたのは――
「新たな制裁」ではなく「異次元の和平工作」を
――1945年、その時日本が求めたのは――
ロシアがウクライナへ侵攻してからちょうど一年、今日は成田悠輔氏を離れて、ウクライナについて考えました。
岸田総理は、24日夜開かれるG7首脳のテレビ会議で、ロシアに対する新たな制裁を主導するようですが、戦争を止めさせるために必要なのは仲裁役です。ここはかなり異例のアイデアを実行しないと不可能ですので、敢えて「異次元」という言葉を使います。日本がその仲裁役になる、あるいは「和平工作」を始めるくらいのことをしないと、事は収まりません。
「Those who cannot remember the past are condemned to repeat it.」 (過去を記憶できない者は、その過去を繰り返す運命を担わされる。) というのは、哲学者のジョージ・サンタヤーナの言葉ですが、それを今一度持ち出します。
日本が戦争に敗れた1945年を思い出しましょう。戦争の終結を模索していた日本は、日ソ中立条約を頼みの綱として6月にソ連に仲介を依頼しました。ソ連側は、1942年から対日参戦の意思を示していたくらいですから可能性はなかったのですが、教訓はそこにではなく、大局的には戦争で負けることが明らかだった日本側が戦争を終らせようと考えるだけではなく、実行に移すためには仲介が必要だったことです。
仮にこの時点で、ソ連、あるいは想像を逞しくしてその他の国でも良いとして、仲介の労を取っていれば、広島・長崎への原爆投下は避けられたかもしれないのです。我々だけに都合の良い、「歴史の”if”」だと言われればその通りです。同時に今のままの状況が続けば核兵器が使われ、第三次世界大戦になり、人類の滅亡さえ引き起こしてしまう可能性もあるのですから、和平の方にも少しの可能性さえがあれば、その可能性を大きくすることを考えたとしても罰は当たりません。誰かが、どこかの国が、しかも影響力のある国が、「戦争は止めよう」と言い続けること、そしてどちらが良い悪いではなく、とにかく戦争は止めて話し合いをしよう、という仲裁役として積極的に働くことが必要です。
1845年と今で違うのは、当時の和平工作が全て隠密裡に行われたことです。今回についても、水面下での交渉が必要な場面もあるかもしれません。でもインターネットとスマホとドローンの時代の今、全世界がウクライナとロシアの一挙手一投足に注目し、リアルタイムでそれを知ることができるのです。
そして、国際的な場で日本が「異次元」の発言をすることは許されています。それは、ロシアの核兵器使用の威嚇に対して、「唯一の」戦争被爆国としての立場があるからです。「どんなことがあっても核兵器の使用はさせない」、だから日本は仲介の労を取るのだ、という理屈には説得力があります。
しかも、その立場を取れる国として、中国にも注目すべきです。核保有国中で中国とインドだけが「核兵器の先制使用」をしないと宣言し、それを守ってきているからです。
幸いなことに、(それがいつ変わるのかは分りませんが)、中国はこの戦争に深くコミットはしていません。日本もまだ、深みにはまってはいないのですから、日中両国が協力して和平工作に乗り出すことは可能です。そしてそれが動き始めれば、日中関係を改善する上でも大いに役立つはずです。
被爆者のメッセージは世界に大きなインパクトを与えられます。「ピンポン外交」なんて出来る訳がないと笑われたピンポンが、米中、日中の関係改善に役立ちました。パンダの帰国に涙する人がこんなに多くいる日本から、ウクライナとロシアそして中国にも平和のメッセージを発信するという「異次元」の可能性を少しでも広げてみたらどうでしょうか。
それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい24時間でありますよう!
[2022/2/25 イライザ]
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