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2023年2月

2023年2月28日 (火)

成田発言のおぞましさ検証 (3) ――1,000万人もの人をどう殺すのですか?――

成田発言のおぞましさ検証 (3)

――1,000万人もの人をどう殺すのですか?――

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成田悠輔氏の高齢者「集団自決」、「集団切腹」のおぞましさについて、これまでに回にわたって検証してきました。一回目はリアルな記憶を大切にというテーマでした。二回目は、「タイマーを埋め込む」というフィクションの話を成田氏は持ち出すのですが、でも高齢者を排除することは実現できないだろうという理由を説明しました。

今回は、少し具体的な数字を使って検証したいと思います。彼の提唱しているシナリオを「成田プラン」と呼ぶことにします。

実は数字には心理的なトリックが仕掛けられています。官僚たちはそれを良く知っていますので、人を騙すときに頻繁に使っています。例えば、小数点以下の数字など必要ない時にも小数点以下の数字を挙げるのが常套手段です。細部に注意を払い始めると、桁数など数字の持つ大きな意味が見失われる傾向があるのです。

ということで、概数で全体像を示して行きます。

日本の80歳以上の人口は1,000万人を少し超えています。「成田プラン」を実行するということは、少なくともこの1,000万の人たちに死を強いることになります。私は当然、その中の一人なのです。以下の議論は、私も「集団自決」をさせられる一人だということを忘れずに続けます。

同時に把握しておくべきことは、いま日本で年間何人の方が亡くなっているのかという統計です。約110万人なのですが、概数を取って100万と考えましょう。

対比するために、15年にわたる戦争、太平洋戦争だけでなくその前から数えての数字ですが、日本人の死者数は310万人以上だと言われれています。この中には、東京大空襲の10万人、広島の原爆による死者14万人や長崎の7万人も含まれます。

沖縄戦も含めると1945年の死者数は特に多いのですが、平均して一年間に20万人の方が亡くなっています。それが日本社会にいかに大きい悲しみと混乱を引き起こしたのかは言うまでもありません。

1,000万という数字は、その310万のおよそ3倍です。それだけの人を文字通り葬り去るとして、悲劇は数値化できませんが、太平洋戦争の3倍以上の悲しみと混乱が生じるはずです。

仮に、1,000万もの人を一年間で「殺した」として、今の10倍の火葬場を作るのでしょうか。お葬式はどうするのでしょうか。それとも原爆の後のように、野焼きをするのでしょうか。こんな非人間的な想像を強いることだけ取っても「成田プラン」の「異次元」性は明らかだと思いますが、そんなことを平気で子どもたちに勧める心の内を私にはとても想像だにできません。

成田氏は、いっぺんに1,000万ではなく、数年掛けるのだとでも言う積りなのでしょうか。でも、10年掛けたとしても一年100万人ですから、今の倍になり、程度の差こそあれ問題の本質は変わりません。それに、「80歳」以上の高齢者の数は毎年100万人くらい増えて行きますので、全体としての「80歳」以上の高齢者の数は変わりません。少子化と高齢化を防ぐ「成田プラン」では、高齢者の数が減らないことになるではありませんか。

次の問題に移りましょう。仮に、1,000万人もの高齢者が「自決」することに合意したとして、その手段はどうするのでしょうか。「集団切腹」という言葉も使っているので、赤穂浪士のように、脇差で腹を切り介錯する人が首を落すことになるのでしょうか。

でも、仮に「成田プラン」が「罰則」と同じ意味を持つとすると、憲法違反になってしまいます。

第36条では、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と憲法中、唯一「絶対に」という言葉を使って禁止している条文です。

憲法絡みの議論を始めれば、それこそ、「違憲」の山になってしまいます。例えば、第11条違反になります。

11条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる

第13条の「国民はすべて個人として尊重される」違反にもなります。

そして天皇制に反対する人もいるとは思いますが、第一条違反にもなります。

第1条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

それは、「成田プラン」が仮に80歳以上の「集団自決」を強いるものであれば、仮に天皇がその時点で80歳以上だったら、その中に含まれてしまうからです。「成田プラン」は国民の総意を超えることはできないのですから違憲になってしまいます。

切腹でないとすると、青酸カリを80歳以上の人すべてに配ることにするのでしょうか?1959年の映画『渚にて』では、第三次世界大戦で核爆弾により全世界でオーストラリア以外の地域は全滅し、残された人々が放射線で苦しむ代りに毒薬が配られ、それを飲んで次々に死んで行くというがシナリオです。つまり、想像の世界ではあり得ることです。

しかし、高齢者だけが自決を迫られるという状況で、青酸カリを自分用ではなく、殺人のために使う人は全く出て来ないのでしょうか。あるいは、高齢者の青酸カリを買ったり盗んだりして悪用するという可能性も出てきます。日本中を犯罪で埋め尽くす可能性を全く無視できるのでしょうか。

最後は、皮肉として通じて欲しいのですが、可能性として一つ残るのは、「笑い殺す」くらいしか思い付きません。自分自身を笑い殺すのも難しいですから、「成田プラン」を笑い殺すことにしましょう。

最後は唐突ですが、あまりにも非人間的なことばかり考えさせられてきましたので、せめて今日一日、正反対の良い日であることを祈りましょう。皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/28 イライザ]

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2023年2月27日 (月)

H君を偲ぶ会 ――没後3年、80人が集いました――

H君を偲ぶ会

――没後3年、80人が集いました――

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H君の人徳だと思いますが、コロナ禍でようやく開くことになった偲ぶ会には、会場一杯の80人以上の人が集い、H君の生前の人となり、思い出や、これから一緒にしたかったであろう仕事や余暇活動、それも彼の華やかな人生を再現するような様々なエピソードばかりでした。

例えば、最後の奥様が披露してくれた「遺産」は、H君を彷彿とさせるものでした。彼が残したスマホの電話番号は、レストランが一番多かったのだそうです。

食通の彼ならさもありなんですし、友人たちもIBMから始まり、アスキー、セガ、コロムビア、早稲田大学、東京都市大学等々の職場での同僚や部下たち、そして彼の後継者たちが「変人」としてのH君や、才能溢れる、あるいは人間的な存在として、惜しまれて早世したH君について時間がいくらあっても足りないくらい、語ってくれました。

私は、彼の思い出の中でも、英語が堪能でその上、詩を愛し数学にも強かったことを皆さんに聞いて頂きました。

一つは2015年、Emily Rolfe Grosholzというアメリカの哲学者(特に数学と科学についての研究が目立っています)、かつ詩人の「Childhood」という詩集を津田塾大学の早川敦子先生が日本語に訳され、その出版に際して、Emilyに日本に来て貰った時のことです。出版社はクルミド出版です。

早稲田大学で講演をして貰ったのですが、著名なアメリカの詩人の作品を、「大円」と「コンパクト化」という数学的概念との関連で分析するという内容でした。事前に、原稿を貰えましたので、日本語訳を付けましたが、英語の誌の批評ですので、日本語訳があってもそれほどは役立ちませんでした。事実、「チンプンカンプンだった」と正直に言ってくれた人もいたのです。

でもH君は熱心に講演を聞き、真っ先に手を挙げ、「素晴らしい講演だった。特に、数学的な概念が詩の本質を解き明かしているところ (その具体的な個所を挙げて説明--その部分は略します) で、目から鱗の思いをした」と述べてくれました。講演後は、H君とEmilyの話が弾んでいました。

もう一つは、このブログでも報告しましたが、彼のお見舞いに行った時に話題になったことです。ベッドで読むには、俵万智さんの短歌集より、夏井いつきさんの句集の方が良いと思って、一冊プレゼントしました。H君は夏井さんが着物を愛していることに感謝していること、自分でも捨てられる着物を集めて、再生利用するプロジェクトをしていることを話してくれました。

こんな時にも、「田舎の学問より京の昼寝」を思い知らされてしまいます。御家族が偲ぶ会の会場に持参されたものの中には、愛用のオーボエ (H君は若い時はオーボエの演奏者になりたかった) 万年筆、カメラ、彼を亀仙人に見立てた劇画があり、それらを前に私たちの思い出話が途切れることはありませんでした。

 

それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/27 イライザ]

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2023年2月26日 (日)

Change.orgへの投稿 ――これからももっと多くの皆さんに署名して頂くために――

Change.orgへの投稿

――これからももっと多くの皆さんに署名して頂くために――

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Bulletin of the Atomic Scientistsから

https://thebulletin.org/2023/01/press-release-doomsday-clock-set-at-90-seconds-to-midnight/

 

昨年、ウェッブ上の署名サイトChange.orgで、「核兵器を使わないと宣言して下さい」という署名運動を始めてから、ほぼ一年経ちます。その間、様々な取り組みを続けてきていますが、その全てをこのサイトで報告することはできなせんでした。

最近、G7広島サミットで岸田総理に期待することの申し入れを行ったこと等、このサイトで報告しておくべきだと考え、次のような文章を「お知らせ」として投稿しました。お読み頂ければ幸いです。

***************************************

最後のお知らせからずいぶん時間が経ってしまいましたが、その間、残念なことにBulletin of the Atomic Scientistsの掲げる終末時計は、90秒前という史上最悪の状態になってしまいました。

しかし、その後も核兵器を使わせない、そしてウクライナでの戦争を終らせることを目標にして、皆さんに賛同して頂いたメッセージを伝えるため様々な形でのアピールを続けてきました。

そのアピールが届いたのでしょうか、この度、アハマディア・ムスリム平和賞を頂くことになりました。大変名誉なことですし、被爆者の皆さんは勿論、Change.orgに賛同署名して下さった皆さん、そしてより幅広く、市民の皆さんの代理としてお受けすることに致しました。授賞式は3月4日にロンドンで開かれますが、このように国際的な場で「核兵器を使わせない、ウクライナ戦争を終らせる」という目標を再度、発信する機会を頂いたことになります。その機会を最大限活用したいと考えています。

この賞を創ったアハマディア・ムスリム協会や賞の歴史等は、2月20日に広島市で開かれた記者会見でのプレス・リリースに掲載されており、小生のブログで紹介していますので、御覧頂ければ幸いです。

ブログのURLはここをクリックして下さい。

(また厚かましいお願いですが、ブログの中の箱 広島ブログ をクリックして頂ければさらなる励みになります。)

署名運動の中で、広島を背負って立つ岸田総理大臣への要請も繰り返し行ってきました。「ヒロシマ」という大義を掲げて積極的に、私たちの願いを実現すべく責任を果すべきだという主張です。

G7広島サミットが迫りつつある今、岸田総理への要請をより具体的に発展させました。それは、「ヒロシマ」の力を信じて、ロシアとウクライナの間に立ち、停戦と終戦のための仲介役としての役割を果すことです。「異次元の和平工作」と名付けましたが、その意味は、核兵器の「先制不使用」を掲げ実行してきた中国との共同作業として、新たな展望を創り出すことにあります。

それをより詳しく説明した25日のブログもお読みください。

取り急ぎお知らせまで。

不一  秋葉忠利

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それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/26 イライザ]

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2023年2月25日 (土)

「新たな制裁」ではなく「異次元の和平工作」を ――1945年、その時日本が求めたのは――

「新たな制裁」ではなく「異次元の和平工作」を

――1945年、その時日本が求めたのは――

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ロシアがウクライナへ侵攻してからちょうど一年、今日は成田悠輔氏を離れて、ウクライナについて考えました。

岸田総理は、24日夜開かれるG7首脳のテレビ会議で、ロシアに対する新たな制裁を主導するようですが、戦争を止めさせるために必要なのは仲裁役です。ここはかなり異例のアイデアを実行しないと不可能ですので、敢えて「異次元」という言葉を使います。日本がその仲裁役になる、あるいは「和平工作」を始めるくらいのことをしないと、事は収まりません。

「Those who cannot remember the past are condemned to repeat it.」 (過去を記憶できない者は、その過去を繰り返す運命を担わされる。) というのは、哲学者のジョージ・サンタヤーナの言葉ですが、それを今一度持ち出します。

日本が戦争に敗れた1945年を思い出しましょう。戦争の終結を模索していた日本は、日ソ中立条約を頼みの綱として6月にソ連に仲介を依頼しました。ソ連側は、1942年から対日参戦の意思を示していたくらいですから可能性はなかったのですが、教訓はそこにではなく、大局的には戦争で負けることが明らかだった日本側が戦争を終らせようと考えるだけではなく、実行に移すためには仲介が必要だったことです。

仮にこの時点で、ソ連、あるいは想像を逞しくしてその他の国でも良いとして、仲介の労を取っていれば、広島・長崎への原爆投下は避けられたかもしれないのです。我々だけに都合の良い、「歴史の”if”」だと言われればその通りです。同時に今のままの状況が続けば核兵器が使われ、第三次世界大戦になり、人類の滅亡さえ引き起こしてしまう可能性もあるのですから、和平の方にも少しの可能性さえがあれば、その可能性を大きくすることを考えたとしても罰は当たりません。誰かが、どこかの国が、しかも影響力のある国が、「戦争は止めよう」と言い続けること、そしてどちらが良い悪いではなく、とにかく戦争は止めて話し合いをしよう、という仲裁役として積極的に働くことが必要です。

1845年と今で違うのは、当時の和平工作が全て隠密裡に行われたことです。今回についても、水面下での交渉が必要な場面もあるかもしれません。でもインターネットとスマホとドローンの時代の今、全世界がウクライナとロシアの一挙手一投足に注目し、リアルタイムでそれを知ることができるのです。

そして、国際的な場で日本が「異次元」の発言をすることは許されています。それは、ロシアの核兵器使用の威嚇に対して、「唯一の」戦争被爆国としての立場があるからです。「どんなことがあっても核兵器の使用はさせない」、だから日本は仲介の労を取るのだ、という理屈には説得力があります。

しかも、その立場を取れる国として、中国にも注目すべきです。核保有国中で中国とインドだけが「核兵器の先制使用」をしないと宣言し、それを守ってきているからです。

幸いなことに、(それがいつ変わるのかは分りませんが)、中国はこの戦争に深くコミットはしていません。日本もまだ、深みにはまってはいないのですから、日中両国が協力して和平工作に乗り出すことは可能です。そしてそれが動き始めれば、日中関係を改善する上でも大いに役立つはずです。

被爆者のメッセージは世界に大きなインパクトを与えられます。「ピンポン外交」なんて出来る訳がないと笑われたピンポンが、米中、日中の関係改善に役立ちました。パンダの帰国に涙する人がこんなに多くいる日本から、ウクライナとロシアそして中国にも平和のメッセージを発信するという「異次元」の可能性を少しでも広げてみたらどうでしょうか。

 

それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/25 イライザ]

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2023年2月24日 (金)

成田発言のおぞましさ検証 ――立ち止まって考え始めたら、怒りで震えが止まらなくなりました――

成田発言のおぞましさ検証

――立ち止まって考え始めたら、怒りで震えが止まらなくなりました――

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By Diliff

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Palace_of_Westminster,_London_-_Feb_2007.jpg

成田悠輔氏の持論について、「酷いことを言う」と感じていたのですが、私の違和感を整理してみようと、ちょっと真面目に考え始めたのですが、あまりの恐ろしさに怒りで震えが止まらなくなりました。その全てをいっぺんに出し尽くすのは無理ですので、毎日少しずつ書き溜めて行きたいと思います。

とは言え3月4日にはロンドンでスピーチをしなくてはなりません。昨年2月24日のロシアのウクライナ侵攻と核使用の脅しから一年、「ヒロシマ」への期待にどう応えるのかもその一部にしたいと考えています。そのためには、皆さんのお知恵も拝借しなくてはなりません。

とにかく、しなくてはならないことが多く、時間は限られています。このブログもごく短くなる日もあるでしょうし、ツイッターだけの日もあり等、不規則な形になります。

さて、「集団自決」とは何を意味するのかを考えたいのですが、これで本当に高齢化の問題が解決するのでしょうか。

成田氏は、老人が自動でいなくなるシステムの可能性の一例としてある映画の紹介をしています。それも小学生を相手にです。

「みんな生まれた時に腕にタイマーが埋め込まれていて、何十年か経つとタイマーが作動して自動的に亡くなるようになっている。みんな等しく、寿命の上限が与えられていて、その時間になったら亡くなるっていうのが埋め込まれている社会」

(『YAHOO!JAPANニュース』2月21日号に掲載されている『女性自身』の記事)

こんなシステムが仮にできたとして、何時から始めるのでしょうか。例えば20xx年の一月一日からだとして、そんな人生を我が子に歩ませたくないと考える親は多いでしょうから、その日からの出産がほぼゼロになってもおかしくはないですね。

そして、このシステムは少子高齢化社会を変えるためという目的があるようなのですが、ますます少子化が進む結果になります。

さらに、仮にこのシステムが70歳を「寿命の上限」だと設定していたとして、その70年の一年前に69歳を迎えた人たち、その人たちが仮に100万人いたとして、それからの一年間を平穏の内に過ごせるものなのでしょうか。悟りを啓く人もいるかもしれませんが、地獄の思いの一年になる人もいるでしょう。

またその「タイマー」がどんなものなのかは分りませんが、仮に腕に埋め込まれているとしたら、外国の病院で腕切除の手術を受けて生き続けようとする人が増えて来るかも知りません。その前に、「タイマー」を無力化できる機械、あるいはソフトウエアが開発されてもおかしくはありません。

それを封じるために巨額の投資をするというような、無駄な行為があちこちで起きて来るでしょう。少し考えると、とても真面目に議論できる代物ではありません。そんなことを子どもに吹き込む代りに、社会改革に役立つ検討すべき案件は五万とあるではありませんか。なぜ、そちらに良い頭が回らないのでしょうか。

 

それでは皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/24 イライザ]

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2023年2月23日 (木)

集団自決や集団切腹のリアルな記憶を大切に ――成田悠輔氏の持論への違和感――

集団自決や集団切腹のリアルな記憶を大切に

――成田悠輔氏の持論への違和感――

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サイパンの「バンザイクリフ」周辺の慰霊碑と供養塔 Wikiwandから

https://www.wikiwand.com/ja/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%95

成田悠輔氏が持論として開陳しているのが、「高齢化し老害化しないために『人は適切な時期に”切腹”すべし』」(201929日、グロービスが主催した社会保障制度改革のパネル討論)であり、「結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないか。僕はこれを大真面目に言っていて、やっぱり人間は引き際が重要だと思う。別に物理的な切腹ではなくて、社会的な切腹でもいい。過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤーで多すぎる。これがこの国の明らかな問題だ」(20211217日放送の『ABEMA Prime』)なのです。

それぞれの引用は、孫引きですが、Wikiwandの成田悠輔のエントリーからです。

Wikiwandの記述は、十分に詳しくかつ上手にまとめてありますので、短時間で全体像をかなり具体的に把握できます。その中の「「集団自決」発言と騒動」という項目の中、2022年のリスト中には次の一節があります。

「2022年の元日、YouTubeチャンネル「日経テレ東経済学」での西村博之との生配信中に、成田は「(集団自決は)まったくメタファーではなくて、三島由紀夫とかリアルにそういうことをやって、しかもそれが日本人の死に様の1つの象徴みたいな感じで。」

つまり、成田氏にとって「集団自決」は「メタファーではなくて」、三島由紀夫にまで言及していますので、実際に自分で自分の命を終らせる行動を取れと言っているのです。しかしながら、2月28日になると、それが「メタファー」になってしまいます。

切腹自決は議論のためのメタファーで、肉体的なものだけでなく、社会的・文化的なものも含めた色々な形があり得ます」

言っていることが矛盾していて、何を言いたいのかが定かではありません。これ以上、相手にしなくても良いのかもしれませんが、子どもたちに誤った情報を「吹き込む」ことは許せません。

『YAHOO!JAPANニュース』2月21日号に掲載されている『女性自身』の記事から引用すると、

「生徒の質問に成田さんは、“老人は自害しろとは言ったことがないけど、切腹が社会保障改革への最短経路と言ったことはある”と説明していました。ですが、これまでの成田さんの発言を元に質問した生徒は、やや困惑している様子でした。

成田氏は「自決」とは言っているけれど「自害」とは言っていない、というすり替えをしたかったのでしょうか。そうとでも解釈しない限り、訳は分らないのですが、一流学者の言葉を素直に読み取った子どもへの責任くらい果す義務はあるはずです。

そして、「一定の年齢になると、その人が崖の上に上がっていって、飛び降りるのが風習になっている架空の村」の話をするのですが、「崖から飛び降りる」そして、「集団自決」というイメージを重ねると、私たちの世代には、サイパンの「バンザイクリフ」が頭に浮かびます。

米兵の投降勧告や説得に応じず、80メートル下の海に身を投じて「集団自決」した日本兵や民間人たちの最期の地です。そして、沖縄でも同じ悲劇が繰り返されていたことも、私たちは忘れられないのです。まさか、それが理由で私たち高齢者に「集団自決」をしろと言っているのではないでしょうね。

そして、「集団切腹」の典型的な例が赤穂浪士の討ち入り後の切腹でしょう。「忠臣蔵」として暮にはテレビの大型番組が必ず組まれていた「美談」ですが、司法制度の不備と封建制度という非人間的な体制によって多くの命が失われた悲劇としても記憶しておかなくてはならない事件です。

さらには、最近の「集団強盗」まで、連想が続きます。

「天才」「気鋭の」等々、多彩な形容詞の付く、しかも数十万のフォロワーがいるSNS上のスターの言葉を信じる人たちの方が圧倒的に多いでしょうし、これだけ何度も繰り返され、その通奏低音は変わらなくても、「メタファー」だったりそうでなくなったりと、情報操作に揺さぶられつつ何時の間にか洗脳されてしまう人がいてもおかしくはありません。

届く範囲は限られていても、せめて歴史上の悲劇は忘れずに、その時々に大いなる痛みを抱いて生き亡くなった方々に思いを馳せつつ、私たちは人間であり続けることを肝に銘じたいと願っています。

 

それでは皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/23 イライザ]

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2023年2月22日 (水)

『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?――

『はだしのゲン』の何が問題なのか

――本当は松江市の先例と同じ理由?――

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中沢啓治さんの『はだしのゲン』で、原爆の悲惨さや戦争をしてはいけないことを学んだ人は多いと思います。広島市でも、平和教育の教材の中に、『はだしのゲン』の一部を引用したり絵を使ったりしていました。

ところが、突然、教材中の『はだしのゲン』を削除するという決定を市の教育委員会が下したというニュースが飛び込んできて、多くの市民は吃驚しています。

今日、広島県の被団協理事長の箕牧智之氏と事務局長の前田耕一郎氏が教育委員会に申し入れを行いました。申し入れ書を読んで頂くことで、削除することの問題点が良く分りますので、被団協のお許しを頂いて、以下、全文を紹介します。

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2023年222日 

 

広島市教育長

糸山 隆 様

広島県原爆被害者団体協議会

理事長 箕牧智之

「ひろしま平和ノート」からの「はだしのゲン」削除について

かねてから、教育全般にわたり尽力されていること、そして、被爆地ヒロシマとしての平和教育に力を注いでおられることに敬意を表します。

さて、現在、大きく取り上げられている「はだしのゲン」を「平和教育ノート」から削除することについてですが、私たちは「はだしのゲン」は中沢啓治さんの実体験に基づいた反核・反戦の強い願いと、わかりやすく人々、特に子どもたちに伝えたいという思いにあふれたものであると認識しています。そして、「はだしのゲン」は佐々木禎子さんの折り鶴とともに、広島の惨禍とそれが繰り返されてはならないことを世界中に伝えており、ヒロシマの象徴ともなっています。

今回の「平和教育ノート」からの「はだしのゲン」削除について、多くの反応があったことはそれを如実に物語っているのではないでしょうか。

そこで、お尋ねとお願いとを申し上げます。

1 まずお伺いします。

  • 「はだしのゲン」を「平和教育ノート」から削除するに当たって、これほどの反応がある重いものであることを想定されなかったのでしょうか。

広島市は、中沢さんの作品・活動を評価して名誉市民とし、また、一連の中沢作品の原画の寄贈を受けて、貴重なものとして平和記念資料館で管理していると我々は認識しています。

その中沢さんの作品の扱いについてより慎重な判断があってしかるべきではなかったかと思いますがいかがでしょうか。

(2) 新聞報道によって経緯を見ると次のとおりです。

識者や学校長たち13人の会議でプログラム全体の内容を検証。うちゲンの場面(1)(2)について「児童の生活実態に合わない」「誤解を与える恐れがある」との意見が出た。作中の別場面を引用する案も出たが、「漫画の一部を取り上げるだけでは、被爆の実態に迫りにくい」として、場面(3)も載せず、(被爆者の体験談に)差し替えることにした。」217日中国新聞。( )部分と下線は被団協で挿入)

別場面の引用をせず差し替えることにしたとの結論に至る過程で、どれほどの検討がなされたのでしょう。会議録や決裁過程を示して議論の経緯と内容を教えてください。私たちは「はだしのゲン」には様々なエピソードがあり、切り口を変えることによって「はだしのゲン」を残す対応ができたのではないかと考えています。削除せず今回予定の体験記を加える方法もあったのではないかとも思います。どうでしょうか。

2 次に、外すことについての市側の対応についてです。

先にも触れたとおり広島市は中沢さんから作品原画の寄贈を受けて管理しており、広島市は事前に遺族の了解を得て原画を無償で利用できるようになっていると承知しています。

平和教育ノートに原画を使用するに当たって、広島市は遺族に了解を得たのでしょうが、使わなくなることについて報告したのでしょうか。

削除を決めたのであれば遺族に経緯の説明と感謝の意を込めて連絡するべきだったのではないでしょうか。それが無償で掲載を承諾している遺族への礼儀だと思いますがいかがでしょうか。

3 もうひとつ重要なことがあります。

ご承知のとおり原爆の使用がもたらす結果は酷いものです。多くの人が一時に死に、傷つき、後々まで苦しみます。そして、戦争も多くの酷い死をもたらします。

私たちはその酷さを子どもたちにしっかり認識して欲しいと思っています。そのことによって原爆・戦争はいけないとの考えを身につけることができると考えるからです

その点において私たちは「はだしのゲン」の果たしている役割を高く評価しています。

広島の子供たちには私たち原爆で被害を受けた者たちが肌身で感じた悲惨さ、酷さを知った上で「平和」を口にし、訴えて欲しいと思っています。

教育は本当に大切なものです。かつて我が国は、国民を、そして子どもたちを戦争に協力させ渦中に巻き込んでいきました。その反省から現在の憲法があり、それに基づいた教育があります。過ちを繰り返さないため、「平和」についての根本を子どもたちに理解させるよう力を尽くして頂きたい。それを心から願っています。

核、力による支配の脅威が大きくなっている今、広島の平和教育の重要性はますます高まっていると感じています。このことに心を致しながら教育を進められるよう強く念じ、申し入れます。

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御記憶の方もいらっしゃると思いますが、10年前、松江市でも『はだしのゲン』を小中学校の生徒たちに見せないための閲覧制限がありました。制限を要請したのは教育長でした。

多くの市民からの抗議があり、閲覧制限は撤回されましたが、広島市の場合はどうなのでしょうか。なぜ、今という時点での削除なのでしょうか。

『中国新聞』の2月22日付ウェッブ版によると、「プログラム改訂の必要性を議論した2019年6月~20年2月の「検証会議」(13人)と、新教材の内容を話し合った20年8月~22年7月の「改訂会議」(7人)の議事録。計約70枚に及ぶ」を検証した結果が報告されています。それによると、賛否両論があり、教育委員会の説明が必ずしもこれらの会議の内容を忠実に反映していないことも分ります。

改訂会議から半年以上も経った今、削除の発表があるのも不思議なのですが、G7がらみの理由が隠されているのか、その他、最近の広島市役所の中の何らかの動きと連動しているのか等も含めて、市民に分り易い説明が必要です。

 

皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/22 イライザ]

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2023年2月21日 (火)

アハマディア・ムスリム平和賞 ――ロンドンで3月4日に授賞式があります――

アハマディア・ムスリム平和賞

――ロンドンで3月4日に授賞式があります――

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「アハマディア・ムスリム協会」について御存知の方はあまり多くないと思いますが、「誰も憎まず、すべての人に愛を」をモットーに19世紀後半にパンジャブ地域を中心に起きたイスラム教の中の復興運動組織です。この協会が2009年に平和賞を創設しました。2016年には、カナダ在住のサーロー節子さんがこの賞を受けています。

そして2022年度の賞を私に下さるとの大変名誉な知らせが、かなり前にありました。本部のロンドンでは昨年8月にこの決定をされていたようなのですが、日本支部の部長であるアニース・レイスさん(写真の左)は、ロンドンで3月4日に行われる授賞式に合わせて広島での記者会見を2月20日に開くことにしました。

ロシアによるウクライナ侵攻とプーチン大統領による核使用の脅しに対して、ヒロシマが期待されているのと同時に、私たちの責任の重さを痛感しています。より詳しい説明は、以下のプレス・リリースからお読み下さい。

また中国新聞のデジタル版にも掲載されています。

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2022年度アハマディア・ムスリム平和賞を秋葉忠利氏に授与

(プレス・リリース)

日本アハマディア・ムスリム協会

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2022年度の「アハマディア・ムスリム平和賞」を前広島市長・秋葉忠利氏に授与することになりました。来月の授賞式を前に、この度、日本アハマディア・ムスリム協会としてお知らせすることに致しました。

アハマディア・ムスリム協会はこの賞を2009年に創設、世界平和に貢献した方々に毎年お受け頂いています。今年度の授賞は、202334日にロンドン郊外のthe Baitul Futuh Mosque で開かれる平和シンポジウムで執り行われます。コロナ禍で昨年と一昨年はこのシンポジウムが開かれなかったため、2020年度の受賞者Adi Roche(アイルランド)2021年度のCheng Yen(台湾)への授賞式も同時に行われます。

[これまでの受賞者]

2016年度の受賞者であるサーロー節子さんを含む、これまでの受賞者については次のサイトを御覧下さい。

さらに、次のWikiwandのサイトも参考にして下さい。

[アハマディア・ムスリム協会(the Ahmadiyya Muslim Community)]

アハマディア・ムスリム協会とは、「誰も憎まず、全ての人に愛を」というモットーの下、19世紀後半にパンジャブ地域を中心に興ったイスラム教内の復興運動組織です。平和シンポジウムとアハマディア・ムスリム協会についてのより詳しい説明は、次の日本語のサイトを御覧下さい。

また、平和シンポジウムを中心にしたサイトもあります。英語です。

加えて、Wikiwandによる英語の解説も参考にして下さい。

日本国内におけるアハマディア・ムスリム協会の活動は1935年に始まり、阪神淡路大震災後、また東日本大震災後等、災害時の支援活動や各地におけるテロ事件反対の活動に力を入れています。特に、1945810日に、つまり長崎への原爆投下の次の日には、人道的立場から、子どもや女性など罪のない人々が犠牲になる原爆投下は決して許されるものではないことを宣言しています。

[サーロー節子氏]

2017年に開催されたシンポジウムでのサーローさんへの授賞とスピーチの部分を御覧下さい。(17:35からです)

[2022年受賞者発表ビデオ]

最後に、202288日にロンドンで行われた、今年の受賞者についての発表の動画です。

 [本件についての連絡先]

霊主 アニース ||  Anees Reisu

Ahmadiyya Muslim Association Japan

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Mobile: (+81)-80-67029500  Office:(+81)-567-559322 Fax:(+81)567-559323

Twitter name:   Aneesnadeem

http://www.ahmadiyya-islam.org/jp/   ,     https://twitter.com/Islamforjapanes

 [参考]

御参考までに、受賞の知らせを受け取った秋葉忠利氏のコメントを以下に掲げておきます。

「大変名誉なことですので、被爆者の皆さんやこれまで平和のための活動をともにしてきた多くの皆さんの代理としてお受けすることにしました。また2022年という年の意味は、ウクライナの戦争が続いており、核兵器の使われる可能性が高くなったことにあります。そんな状況下、戦争の終結そして核兵器使用の阻止のために、また最終的には核廃絶のために、日本という国(政府も国民も)に対しての期待がいかに大きいのかを痛感しています。世界の都市や市民社会全体の役割も重要です。さらに、私個人としてもまだまだ果さなくてはならない責任があることを示して下さった点も重く受け止めています。」

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皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/21 イライザ]

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2023年2月20日 (月)

『日刊ゲンダイ』をラジオで聞こう ――RCCラジオの土曜日「松ちゃん・大ちゃんのふくふくサタデー」です――

『日刊ゲンダイ』をラジオで聞こう

――RCCラジオの土曜日「松ちゃん・大ちゃんのふくふくサタデー」です――

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皆さん、『日刊ゲンダイ』は御存知ですよね。安部・菅・岸田と続いた反憲法・独裁政権の力で捩じ伏せられてしまったようにさえ見える、多くのマスコミの中でも鋭く真相を究明し、読後には「スカッと」、新たなエネルギーで問題に立ち向かえる気にしてくれるのが『日刊ゲンダイ』です。

元国会議員の私たちが国葬反対の狼煙を上げたときも、取り上げてくれました

その『日刊ゲンダイ』をラジオで聞くことができるのです。しかも、全国で広島だけの特権なのです。RCCの素晴らしさです。

それは、RCC中国放送のラジオ放送でだけ、『日刊ゲンダイ』の記者が登場する番組があるからです。

毎週土曜日 13:00~「松ちゃん・大ちゃんのふくふくサタデー」という番組で、13:25分ごろから20分間程度、「ふくみみ情報局~教えてデスク~」というコーナーがあり、日刊ゲンダイの記者が気になるニュースを取り上げ、両パーソナリティーと話をしてくれるのです。

25日には、元議員の国葬反対を取り上げてくれた生田記者が出演予定です。

私は大切な会合に出席していますので、聞けないのですが、皆さん、ぜひ感想を聞かせて下さい。私も、ラジコのタイムフリーで聞く積りです。

 

皆さんにとって、今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

 [2022/2/20 イライザ]

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2023年2月19日 (日)

日本が壊れて行く? (x) ――192ページの教科書に1200もの誤り、そして車中閉じ込め事故の新たな事実判明――

日本が壊れて行く? (x)

――192ページの教科書に1200もの誤り、そして車中閉じ込め事故の新たな事実判明――

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「異次元」の出来事が次々と起き続けています。あまり数が多くて、シリーズの何番目かも分らなくなってきましたので、(x)回ということにしました。

一つ目は、教科書最大手の東京書籍発行の「新高等地図」という200ページ足らずの地図帳の中に1200もの誤りがあったというものです。文科省検定にも合格していたというのですから、検定のいい加減さも問われます。『共同通信』のオンライン記事から要約します。

最大の600か所ほどは、索引と地図とでは標記が違っていたりしたもののようです。400か所ほどは、索引のページや記号が間違っていたとのことです。地名変更など、誤りの起きやすい箇所での誤りは150か所あり、誤記や位置の誤りが50か所とのことです。

在宅勤務が理由として挙げられていましたが、例えば索引と本文との照合作業は、仮に委託先のプロダクションで最初に行われるはずですが、二人一組で隣に座ってチェックするのが普通ですよね。こんなに大切な作業をそもそも在宅の作業にするという感覚が分りません。

もう一つは、2週間も前に二度ほど取り上げた、「ポイントの凍結事故と車内の閉じ込め10時間」についての新事実です。JR西日本の中村圭二郎副社長が、立ち往生の事実を知ったのは、2時間も経ってから、しかも車内からの連絡ではなく、知人からの知らせだったというのです。こちらは『京都新聞』のサイトからです。

以前より、混乱の様子が良く分りますので、一読をお勧めします。そして驚きの言葉は、乗客の証言です。現場では車掌さんが頑張っていたのです。

「立ち往生した列車では、車掌らが運行指令に対して悲痛な訴えを何度も繰り返していたのを、乗客たちは証言する。湖西線の列車に乗り合わせた会社員の50代男性は「車掌は『前にいる貨物列車を移動させ、山科駅のホームに近づけないかとお願いしているが、返事がありません』と泣きそうな声でアナウンスしていた」と話す。」

解決策はあったのに、「上」の人たちがそれを抑えていたのです。

それでは、皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

[2022/2/19 イライザ]

 

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2023年2月18日 (土)

フェラーリからの調査結果が届きました ――お詫びの言葉は一言もありませんでした――

フェラーリからの調査結果が届きました

――お詫びの言葉は一言もありませんでした――

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2月6日のこのブログで報告したように、好物のスパークリング・ワインであるFerrariの味が酷くて、購入した近くの店まで往復1時間近く掛けて返品に行きました。店の人の勧めで、何が原因なのかが分ったら、メールで知らせて貰うことになっていました。

昨日そのルールが届きました。以下、主要な部分のコピーです。

1_20230217220801

「ブショネ」という現象が原因らしいのですが、その説明もありました。

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でも大きな違和感が残りました。客である私が不愉快な思いをしたこと、さらに自分の時間を使って返品に行かなくてはならなかったこと、それ以上に、こちらの「味がおかしい」というクレームについて、「確認する」という明らかに人を信用していない態度だけはハッキリと押し付けるって「お客様」に取る態度ではないでしょう。

そして最後に「危害はございません」とくると、もういけません。「危害のある」物を売っていたら、それは犯罪ではないですか。そうではないことはモノを売る以上は必要最低限のことであり、こんな風に威張って、顧客に「通達する」のは物売りとして、いや一個の社会的存在として大変失礼極まりないやり方です。

Ferrariの大ファンだっただけに本当に残念です。

 

最後に、皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

[2022/2/18 イライザ]

 

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2023年2月17日 (金)

気球の危険性 ――アメリカでもトランプ時代から気球が飛んでいました――

気球の危険性

――アメリカでもトランプ時代から気球が飛んでいました――

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図作成はosunpokenによる。Date: 2023-02-04 License: Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0  View file on Wikipedia

掲載URLは、https://www.wikiwand.com/en/2023_Chinese_balloon_incident

昨日の続きですが、アメリカとカナダで撃ち落された気球4個の内、1個は偵察用の機器が搭載されており、「中国のスパイ気球」とアメリカ政府は断定していますが、その他の3個については、詳細が分っていないというのが現状です。

より詳しい情報を探したのですが、今のところ英語版のWikipediaと、『Scientific American』の記事「Why We’re Suddenly Spotting Spy Balloons (なぜ私たちは突然スパイ気球を見付けるようになったのか)」が、分っていること分らないことを整理してくれています。

以下、これら二つの情報源から、関心があると思われるところを抜粋・要約したものを掲げます。

まず、中国製だと思われる気球がアメリカ国内で「発見」されたのは、2018年頃に遡ります。これは事後的に分ったことで、当時は全く問題にされていませんでした。

その理由の一つは、空中を飛んでいる気球の数が多いからなのです。例えば、全国に100か所近くある国立気象台からは気温や湿度の観測用に、一日2回気球を飛ばしています。その他の政府機関も自分たちのレーダーシステムの基礎的足場として気球を飛ばしています。観光用の気球や趣味等の目的での気球も含めるとその数は非常に多くなります。常時、100個の気球がアメリカの上空を飛んでいる勘定になります。

それらの気球をレーダーで捕捉することは可能です。しかし、それらの全てをモニターするとなると、信号量が大きくなり過ぎて、どれが脅威になるのかを把握するのが難しくなります。そこで、北米航空宇宙防衛軍 (NORAD) は、小さい気球やそれに似た物体がレーダーでは捉えられないようにシステムを作ってそれを使って監視しています。

同時に、アメリカの連邦航空局(FAA)は、民間航空が飛行する30,000フィートから40,000フィートを飛ぶ大きな気球を追跡しています。それを効果的に行うためには、気象台や大学等が気球を飛ばすたびに、FAAに報告しなくてはならないことになります。

こうした状況で、中国の気球問題が浮上し、政府関係機関が精細な分析を行った結果、かなりの数の中国のスパイ気球だと思われるものが存在し、それはアメリカだけではなく、全世界の40か国にまで広がっていることが分ったとのことです。

こうした気球がスパイ行為を行っているなら、撃墜すれば良いではないかという解決策もありそうですが、それも簡単には行きません。一つには、気球が大きいからです。最初に掲げた図を見て頂くと分りますが、気球の直径は20メートルから30メートルあります。

F-22戦闘機と同じくらいの大きさで、積載されている機器もかなりの重さになりますので、撃ち落とした後で、地上にどのくらいの被害が生じるのかも考えなくてはなりません。また、最近撃墜された4個の内の3個については、その正体が分っていません。招待の分らないものをやみくもに撃ち落とすことは必ずしも賢明ではありません。

といった辺りが、今分っていることの概略ですが、日本の事情も似たり寄ったりだとしてもおかしくはありません。しかし、現在進行中の「閉鎖的」議論では、対象が分らないままに、気球の撃墜を認めようという方向が固まりつつあるようです。つまり、「空路を飛行する航空機の安全確保と、地上の国民の生命や財産の保護を目的とした武器使用を認める」という案が有力視されているとのことです。

拙速に結論を出す前に、国民全体が気球についての事実を理解し、どのような危険性についての議論をしているのかも共有した上で、合理的そして何よりも、国民の命最優先の方向性を出すようにして貰いたいものです。

国民的議論の必要性について考える際に参考になるのは、アメリカで今回中国気球が問題視されるようになったのは、民間のジャーナリストであるChase Doak氏が気球の写真を撮り、それを公開したからでした。我が国では、2020年6月に宮城県角田市の遠藤茂さんや天文台の職員等が撮影して、SNS上で話題になったとのことです。そのニュースを日本政府が、人命尊重の立場から受け止めていたら、2020年の段階で議論が起きていたと思うのは私だけでしょうか。

皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

[2022/2/17 イライザ]

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2023年2月16日 (木)

またまた人命軽視? ――3年以上も前に気球が日本の空を飛んでいました――

またまた人命軽視?

――3年以上も前に気球が日本の空を飛んでいました――

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アメリカとカナダでそれぞれの国の上空を飛んでいた気球が撃ち落されました。中国のスパイ気球だとも言われ、安全保障の観点から警鐘が鳴らされています。そして、我が国にも気球が飛来していたことが、防衛省の発表で分っています。NHKのネット配信「どうする"気球"」では、

防衛省によりますと、気球型の飛行物体は、国内では、

▽2019年11月に鹿児島県薩摩川内市などで、

▽2020年6月に仙台市などで

▽2021年9月に青森県八戸市などで確認されているほか、

▽2022年1月には海上自衛隊の哨戒機が九州西方の公海上で所属不明の気球を確認していたということです。しかも、中国の無人偵察気球だと強く推定される、とまで言明しています。

本当に中国の物なのか、その目的は何なのか、そうだとしたら中国はけしからん、という議論も大切ですが、それは機会を改めて論じることにして、今回注目したいのはこれからの対応です。15日の報道によると、今後の対応について、次のような方向になるとのことです。

今のルールでは、自衛隊が撃墜のために武器を使うのは、領空侵犯した機体による攻撃から身を守るための正当防衛や緊急避難に該当する場合に限られているため、政府は、内容を見直す方針です。

具体的には、無人の気球については、ほかの航空機の安全な飛行を阻害する恐れがあるなど、国民の生命や財産を守るために必要と認められれば、正当防衛などの要件を満たさなくても、武器による撃墜を可能にする方向で調整に入りました。

ここで思い出す (と言うほど昔ではありませんが) のはポイントが凍って、その結果、JRの判断ミスで10時間も車内に閉じ込められていた7,000人もの人たちのことです。「人命軽視」と言うと大袈裟になってしまいますが、悪くすればそうなっていたかもしれないのですから、「abuse of language」(不正確な言葉の使い方ではあっても、コミュニケーションを円滑にするための方便として使う簡便な言葉の使い方)で、そう呼ばせて下さい。

整理すると、

① 自衛隊は、日本の上空を恐らく中国の物であろうと思われる気球が飛んでいることを3年以上前から知っていた。

② しかし、日本国民が乗っている飛行機と衝突する可能性があるとは考えなかった。あったとしても国民の命が関わることにはならないと思っていなかった。

③ 従って、撃墜することは勿論しなかったし、国民に気球飛来の事実を公表することもなかった。

④ 今回、アメリカでの撃墜が起きて初めて、国民の命に関わるかもしれない問題であることに気付いた。つまり、数年間にわたって、国民の命に関わるかもしれない事態を、その認識もなく調査もせずに放置していた。

⑤ あるいは、認識は以前のままで、国民の命に関わるとは思っていないが、世論やマスコミが煩いのでその対策としての方針を出した。

この内、④なのか、⑤なのかは分りませんが、そのどちらかしか選択肢はありません。どちらにしても、「人命軽視」の誹りを免れません。そのどちらなのか、そしてその理由は何なのかを説明するのが「説明責任」ですし、その説明も「丁寧に」してくれないと、私たちには分りません。

 

皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

[2022/2/16 イライザ]

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2023年2月15日 (水)

G7広島サミットについて岸田総理に申し入れをしてきました ――その後、記者会見を開きました――  

G7広島サミットについて岸田総理に申し入れをしてきました

――その後、記者会見を開きました――  

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記者会見の模様

広島で開かれるG7サミットまで、約3カ月になりましたが、広島で開かれる以上、核兵器と平和についてどのような話し合いが行われ、どんな結論に至るのかは私たちの一大関心事です。

最近のわが国の政治は、全てのことを何の議論も経ずに内閣が決めて、それを否応なしに国民に押し付ける、そして国民の側と言えば (恐らく諦めてしまって) それに大きな文句も言わずに従っている、という図式のように見えるのですが、皆さんはどう御覧になっているのでしょうか。

しかしながら、憲法に従えば、主権者は私たち国民であり、内閣を始め公務員は「全体の奉仕者」として私たちの意思に従わなくてはなないのです。

あらゆる機会にあらゆる手段で、内閣にも、それ以前の問題でもありますが、国会議員にも、自治体の首長や議員にも私たちの意思を伝えなくてはなりません。

となると、G7広島サミットについても、私たち市民、そして被爆者の皆さんが何を期待しているのか、率直な声を岸田総理に伝えて、その実現のために頑張って貰う、という筋書きの下、今日申し入れを行ってきました。

内容は、1月27日に広島県原水禁の総会で採択された申し入れ書です。日本原水禁の考え方も当然、同じですので、県原水禁を代表して私と大瀬事務局長、日本原水禁からは藤本共同議長と谷事務局長が申し入れを行いました。内閣府との仲介をして下さった、立憲民主党の近藤昭一衆議院議員にも同席して頂きました。

内閣府からは請願等調整担当官と専門職のお二人が申し入れを受けてくれました。

具体的内容については、申し入れ書を御覧頂きたいのですが、①被爆体験や被爆者の存在を否定するようなことがあってはならない。②昨年11月のG20で合意され岸田総理も署名した「核兵器の使用と核を使用すると脅迫することは許されない。」から後退することは許されない。③広島初の総理大臣、加藤友三郎の故事に倣って、G7三カ国以外の国々も含めた軍縮・平和実現のリーダーになりウクライナ戦争の終結に向けたリーダーシップを発揮すること、を強調しておきます。

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広島選出の岸田文雄総理大臣への申し入れ

――G7サミット広島開催に当って――

2023年1月27日

広島県原水禁

今年5月に開催されるG7サミットが、貴職の働き掛けによって広島で開催される運びになったことは評価されます。広島選出の総理大臣としてG7サミットを、「ヒロシマ」に込められた被爆者や市民の思い・祈りならびにこれまでの歴史を踏まえて、「ヒロシマ」の意味を世界に広める場にしたいという貴職の強力な意思表示だと受け止めています。

その貴職の思いと、主権者としての私たち市民レベルでの「ヒロシマ」理解に齟齬なきことを期するため、改めて「ヒロシマ」の意味を確認し、「全体の奉仕者」(憲法15条)のトップとしての貴職と共有すべくここに申し入れを行います。

⓪ 「ヒロシマ」の意味は、被爆の実相を我がこととして理解し、被爆者のメッセージを謙虚かつ真摯に受け止め、核兵器のない平和な世界を実現することにある。仮初にも、その「ヒロシマ」の意味を蔑ろにしたり、力による支配正当化のための免罪符として利用したりするようなことがあってはならない

① 例えば、長崎以降は核兵器が使われなかった事実は大切だが、それは、『ヒロシマ』の著者、ジョン・ハーシーが1985年に述べたように、被爆者が自らの体験を証言し世界に訴え続けてきたからである。つまり被爆者が「核抑止力」を持つ。それを認めずに、核兵器の所有や使用の脅しが核兵器使用を思い留めさせているという「核抑止論」を容認する口実に使うことは決して許されない。

 

② 今こそ、被爆者亡き後の世界で核兵器を使わせないために何をすべきなのかを議論するときである。そのためには法的手段である核兵器禁止条約に頼る以外の道はない。

③ その第一歩は、核保有国が「核の先制使用と使用するとの脅迫はしない」と宣言することである。核保有三か国の首脳が同時に広島後に集うという歴史的な意味はこの宣言以外にはあり得ない。昨年11月のG20バリ宣言で特筆すべきなのは、貴職を含むすべてのG7メンバーが次のように述べていることだ。「核兵器の使用と核を使用すると脅迫することは許されない。」あらゆる場で、この前提を再確認することが、喫緊の世界的課題の一つ、プーチン大統領による核使用と核使用の脅迫を止めさせるよう他の核保有国が説得する上で、必要不可欠である。

④ 今年没後100年を迎える初の広島出身総理大臣だった加藤友三郎は、ワシントンで軍縮条約をまとめる中心的な役割を果した。当時の軍部を抑えて我が国の軍拡路線を軍縮路線に大転換させ、日米敵対から協調の方向を打ち出しただけでなく、会議には参加していなかった中国やソ連との関係も改善し、世界全体の未来を明るくした。同じく広島出身の総理大臣として、貴職もその故事に倣って、今こそ我が国が日本の軍縮のみならず、G7には参加していない国々も含めた世界の軍縮と協調のためのリーダーシップを発揮する機会として今回のサミットを意義あらしめるべきである。就中、ウクライナ戦争を一日も早く終らせるため、「ヒロシマ」の力と権威に依拠した和平工作を始めるべきである。

以上、「ヒロシマ」の意味を再確認し、G7サミットを「ヒロシマ」の意思実現のための新たな出発点とするため、貴職が断固たる決意の下、世界のリーダーとしての力を余すところなく発揮されんことを期待しています。 

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皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間でありますよう!

[2022/2/15 イライザ]

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2023年2月14日 (火)

バレンタイン・デーの由来 ――チョコレートの他にも大切なことがあります――

バレンタイン・デーの由来

――チョコレートの他にも大切なことがあります――

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2月14日は、バレンタイン・デーですが、2004年に上梓した『報復ではなく和解を(旧版)』 (岩波書店刊) の中で、その由来に触れています。再録してみましたので、お読み頂ければ幸いです。

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バレンタイン・デーというと今では義理チョコまで登場するような大変日本的な習慣になってしまいましたが、起源を見ると意味がかなり違います。

いろいろな説があるのですが、通説としでほぼ定着しているのは、西暦三世紀、ローマ皇帝のクラウディウス二世、大変過酷な悪政を布いた、しかも戦争が好きだったということで不人気だった皇帝です。

彼の治下、戦争に行きたくない若者が多かった。なぜ若者たちが戦争に行きたくないか、皇帝が考えたら、家族とか愛する人たちがいるからだという結論になりました。そこで皇帝クラウディウス二世は結婚を禁止しました。そのときローマのキリスト教司祭だったパレンチーノという人がいたのですが、英語の名前はバレンタイン、彼は秘密裡に若者たちの結婚を執り行なっていました。秘密が漏れない間は良かったのですが、皇帝にばれて投獄され、遂に二月十四日に処刑されたという歴史があって、それがローマ時代のずっと長い間続いていた二月のお祭りと一緒になってバレンタイン・デーになったという説があります。

だとすると、バレンタイン・デーというのは、本当は反戦の日ではないか、戦争に反対をするとはどんなことなのか、あるいは戦争の意味について、家族について、愛の意味について考える日なのではないでしょうか。

その愛の意味を非常に表面的なレベルで捉えているバレンタイン・デー、表面的なレベルといってしまってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、もっと深い意味があることに心すべきなのではないでしょうか。

時代的に近いことで思い出すのは、ギリシャ時代のアリストパネースの『女の平和』という戯曲です。これまた、女性と平和についての非常にいい問題提起をしていると思います。芸術と平和の聞には切っても切れない関係がありますし、平和な世界を実現する上で女性の役割にもさらなる期待をしたいと思います。

皆様にとって今日一日が素晴らしい24時間になりますよう!

[2022/2/14 イライザ]

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2023年2月13日 (月)

『老害の人』と『すぐ死ぬんだから』 ――最高に面白い内館牧子さんの小説――

『老害の人』と『すぐ死ぬんだから』

――最高に面白い内館牧子さんの小説――

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Amazonの『老害の人』のページから

 

堅苦しい話が続きましたので、ちょっと息抜きを。

『老害の人』と『すぐ死ぬんだから』。両方とも内館牧子さんの小説です。実は内館さんが小説を書いていることは全く知りませんでした。脚本家だと思い込んでしまっていましたし、横綱審議委員会の委員ということも知ってはいたのですが、その他の面は全く知らずにいたのです。その人がこんなに面白い小説を書いていたとは!

ネタバレになるといけませんので、Amazonの紹介文を引用します。

迷惑なの! と言われても。

昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。

そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。

双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、娘婿に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。

彼の仲間も老害の人ばかり。素人俳句に下手な絵をそえた句集を配る吉田夫妻に、「死にたい死にたい」と言い続ける春子など、老害五重奏(クインテット)は絶好調。

「もうやめてよッ」福太郎の娘・明代はある日、たまりかねて腹の中をぶちまけた。

『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く著者「高齢者小説」第4!

定年、終活、人生のあとしまつ……

自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。

「最近の若い人は……」というぼやきが今や「これだから『老害』は」となってしまった時代。

内館節でさらなる深部に切り込む!

私も「老害の人」の一人だからでしょうか、こちらもそして『すぐ死ぬんだから』も同じように楽しめました。「高齢者小説」第四弾ですので、後二冊残っています。これも楽しみに読む積りですが、垣谷美雨さんの『老後の資金がありません』等々の小説との共通点がたくさんあることにも気付きました。

その一つが、会話の面白さです。そして、普段は口に出しては言えないけれど、心の中で思っていることを著者が代弁してくれていること。

全部買って読むには数が多過ぎますので、図書館で借りようとしたのですが、人気があるのですね。片っ端から「貸し出し中」でした。順番が回ってくるのを心待ちにしています。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/13 イライザ]

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2023年2月12日 (日)

なぜ、憲法が機能していないのか ――矢部宏治氏によると憲法より上の安保法体系が原因――

なぜ、憲法が機能していないのか

――矢部宏治氏によると憲法より上の安保法体系が原因――

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矢部宏治著『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』の43ページから

沖縄に象徴される日本の政治の歪と醜さは、昨211日のこのブログで紹介した前泊博盛氏の言葉が分り易く表現しています。

「アメリカ軍はアメリカ国民を守ろうとしているんです。アメリカ国民ですから。犯罪者であろうと(自国の)国民を守ろうとしている米政府に対して、被害者すらも守ろうとしない日本政府の姿が、浮き彫りになった気がします。米軍は大事にするけれども、日本国民である被害者は大事にしない。そして、再発防止にも後ろ向きであると」

なぜこんなことになってしまったのかについては、矢部宏治氏が『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』の43ページの図で説明してます。本来であれば、図の右側にあるように、憲法が最上位にあり、それに従って日米地位協定も安保条約もその内容が決められ、憲法の許す範囲での解釈が行われるべきなのです。

しかし現実は、一番上の憲法がその役割を果せずに、安保を中心としたアメリカとの条約群(その中には密約も多く含まれます)が、憲法以上の力を持ってしまっています。そんなことになってしまったのは、再び矢部氏の力作から引用すると、「政府のあらゆる部門に対して、憲法によるコントロールが欠けており」、その結果、「国民の意思が政治に反映されず、国民の人権が守られない」ことなのです。

この問題を解決するために矢部氏はまず、フィリピン・モデルを日本でも採用すべきだと提案しています。それは、憲法を改正して自衛隊の存在を認めることと、外国の基地は日本国内に置けないという条項を加えるという内容です。その方法でフィリピンからはアメリカの基地がなくなったのです。

もう一つの矢部提案は、ドイツが戦後一貫して取り組んできたように、ソ連・ロシアも含めて、周辺諸国に対する謝罪を真摯に行い周辺諸国との信頼関係を作ることです。日本であれば、韓国・北朝鮮そして中国との関係がまず頭に浮かびます。

さて、憲法改正ということになると、私も一言、付け加えておきたくなります。一つには、改正する前に、どの部分で憲法違反が行われているのかをできるだけ正確に認識・確定しておく必要があるのです。

つまり、憲法が存在する以上、それを遵守しなくてはならないという原則そして義務を再確認する必要があるのです。憲法違反を認めたままでさらなる改正をすることは、改正された憲法についても「違反をして良い」というパターンを認めることになり兼ねないからです。

どんな憲法違反が行われているのかを調べる上で出発点になるのは、憲法がどんなことを規定しているのかを知ることです。当り前のことをなぜ改めて述べるのかというと、実は多くの皆さんが憲法を書かれている通りに読んでいないからなのです。

例えば、憲法の教科書の定番として知られている芦部信義著の『憲法 第六版』では、「法律によっても、さらに憲法改正によっても、侵してはならい権利として、絶対的に保障する考え方を取っているが、それは人権が無制限という意味ではない」と述べています。

つまり、人権という権利に踏み込んではいけないが、制限するのは問題ないと解釈しているのです。こんな矛盾を許せば、論理的には、後は何でもありになってしまってもおかしくありません。

実は、憲法にはその他にも矛盾のあることは皆さん御存知だと思います。うっかり改正してしまうと、それらの矛盾をさらに大きくしてしまう可能性もあるのです。それも含めてもう一度、素直に文字通り読んでみる、しかも論理を透徹させることを優先して読んでみることが、憲法議論の出発点であるべきだと思います。

そこから、矢部提案をどう考えるべきなのかについてのヒントも得られます。

詳しくは拙著『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論――』をお読み下さい。(何度も拙著の宣伝をしていますが、他の書物で同じような読み方をしているケースがありませんので、お許し下さい。図書館で借りて頂ければ幸いです。)

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/12 イライザ]

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2023年2月11日 (土)

「建国の日」にこそ本当の独立国を目指そう ――そのために、憲法を文字通り読むことから始めよう――

「建国の日」にこそ本当の独立国を目指そう

――そのために、憲法を文字通り読むことから始めよう――

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岸田・荒井発言から始まった人権についての考察ですが、当然、憲法をどう解釈するのかが中心にならなくてはなりません。同時に、「空理空論」に陥り易い傾向に歯止めを掛けるために、憲法無視をそのまま現世に実現した感さえある、沖縄における米軍とそれに従属する日本政府、日米間の取り組みを文字化した日米地位協定について、憲法や歴史そして平和という多角的視点からの本質的な理解が必要です。

そのための教科書として、前号では元参議院議員で弁護士の大脇雅子さんの近著、『武力に寄らない平和を生きる――非暴力抵抗と平和的生存権』を紹介しましたが、加えて、前泊博盛編著の『本当は憲法より大切な日米地位協定』(2013年、創元社)と矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』をお勧めしておきます。これだけ読めば、私たちが何をなすべきかについて考え行動する上での、出発点が良く分ります。

国の関係では、当然日米関係が主題なのですが、その関係の捩れと政治の矛盾を端的に表している大問題を一緒に考えて行きましょう。

沖縄では米兵による多くの凶悪犯罪が起きていますが、その捜査を日本側は自由にできないのです。それは日米地位協定があるからです。Yahoo!Japanニュースの2016818日号によると、

「日米地位協定を一言でいえば、<在日米軍と軍人、軍属、家族らは日本の法律に縛られないで自由に行動できる>という取り決めである。締結から56年間、一度も改定されることなく、今日に至っている。」

これは米軍基地内に逃げ込んだ容疑者を日本の警察が逮捕したり拘束したりできないという結果を生んでいるのです。

これについて、アメリカ側の専門家、かつて沖縄の米海兵隊で顧問をしてきたロバート・エルドリッヂさんは日本の司法制度に不備があるからだと次のように説明しています。

「(日本の刑事訴訟法によると)基地の外で逮捕されたアメリカ人は、日本の警察署、留置所に送られて、取り調べを(最長で)23日間ずっと受けること(が可能)になっている。弁護士が(取り調べに)立ち会えるといった世界の常識を、なぜ日本は求めないのか。もし、地位協定の改定そのものを目指すのであれば、まず日本は、そのことを改善しなければいけないと思います」

日本側が日本人のみならず、国籍に関わらない形で犯罪者の人権を尊重する立場に立てば解決する問題なのですが、日本政府にその気はないのです。前泊氏は次のように述べています。

「今回の事件を見ても分かるように、アメリカ軍はアメリカ国民を守ろうとしているんです。アメリカ国民ですから。犯罪者であろうと(自国の)国民を守ろうとしている米政府に対して、被害者すらも守ろうとしない日本政府の姿が、浮き彫りになった気がします。米軍は大事にするけれども、日本国民である被害者は大事にしない。そして、再発防止にも後ろ向きであると」

ここではっきりしたのは、日本がいまだに「独立国」ではないということです。そして国内では国民に対して、また国際的にも結局、日本政府にとって「人権」は無視しても良い対象だということなのではないでしょうか。

アメリカに対しての属国としての態度は、主権者としての国民を認めていないことから派生する、「主権国家」という意識がないからでしょうし、国民の「人権」を蔑ろにするのは憲法が何たるかを感じても理解してもいないということなのではないでしょうか。

つまり、力関係だけを元に物事の判断をしている力の支配を信奉しているからだとしか見えません。敢えて付け加えれば、それを日本社会が許してしまっていることこそ最大の問題なのではないでしょうか。日本社会をこの病から救うためには、憲法を再度、読み直すことから始めよう、というのがタイトルの意味です。

社会が大人しくなっている例としては、20年間も給料が上がらないほど労働条件が悪くても、「ストライキ」という声さえ起らない我が国の状況を上げました。これは、「日本社会が壊れて行く」シリーズの5回目の問題提起ですが、その他の回でも大切な点を取り上げています。

これ以上、日本社会が劣化しないよう共に考え行動できれば思います。

以上、中途半端の感を拭えませんが、それはこのシリーズがまだ続くからです。次回は、このような事柄を全て包括している矢部宏治氏による憲法についての問題提起を取り上げ、それに対しての一つの答を示します。

   

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/11 イライザ]

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2023年2月10日 (金)

平和への権利宣言 ――国連は、平和への権利を個人の権利として認めている――

平和への権利宣言

――国連は、平和への権利を個人の権利として認めている――

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岸田・荒井発言を考えるに当って、前回は、性的指向や性自認が「人権」として重要な意味を持つことを確認した上で、人権を守る義務を課されている内閣や日本政府が、その義務を蔑ろにして傍観者としてしか関わっていない現状を指摘しました。

今回は、元参議院議員で弁護士の大脇雅子さんの近著、『武力に寄らない平和を生きる――非暴力抵抗と平和的生存権』の中から、平和への権利も人権の一部なのだという点を強調しておきます。沖縄、憲法、平和という重いテーマを分り易くかつ重層的、法的、歴史的観点から詳細に分析した上で、これから私たちがどのような運動を展開すべきなのか、そして政治をまともなものに創り直して行くためには何をすれば良いのかについて、説得力のある展望を示している力作です。

是非、お読み頂きたいのですが、その中から一項目だけを抜粋して紹介しておきましょう。国連は20161219日に、「平和への権利宣言」を131か国の賛成、34か国の反対で採択しました。その概略は次の通りです。

平和とは、紛争のない状態だけでなく、対話が奨励され、紛争が相互理解及び相互協力の精神で解決される積極的で動的な参加型プロセスを追求し、並びに社会経済的発展が確保されることである。

1           すべての人は「平和を享受する権利」を持つ。

2           国家は、恐怖と欠乏からの自由を保障する。

3           国家、国際連合、専門機関、ユネスコは、実施するための持続可能な手段をとり、すべての市民社会はこれを支援援助する。

4           対話、協力及び連帯を強化する教育を促進する。

5           この宣言は、国連の目的と原則に反するものと解釈しない。

日本政府は、反対票を投じたのですが、その理由を大西健介衆議院議員の提出した質問主意書への答弁の中で述べています。それは、「平和の権利宣言の理念については賛同できるものの、十分な審議を経ずに採択された」からだと言うのです。

平和の定義の中では、「積極的で動的な参加プロセス」が一つの柱ですので、もし十分な審議が行われていないのなら、それなりの理由にはなるのですが、それ以上の重みを持っています。

日本政府として「十分な審議を経ずに」という理由が国際的に通用する、しかも理念については賛成している事柄についても通用すると主張しているのです。だったら、理念そのものに疑問符が付いているようなことについては、当然「反対」しなくてはならないという主張です。

となると、日本政府、少なくても外務省は安保三文書に反対しなくてはならなくなります。国会での審議を経ずに(つまり、十分以下です)アメリカに約束した軍拡も、増税してまでアメリカのミサイルを買うという決定も皆、反対しなくては筋が通りません。「十分な審議を経」ていないのですから。

誰が見ても「矛盾」でしかあり得ない主張を繰り返しても、それは、岸田内閣の決まり文句、「丁寧な」説明とは到底言えませんし、「国民を舐めるな」という声がますます大きくなるはずなのですが--。

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/10 イライザ]

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2023年2月 9日 (木)

日本が壊れて行く? (7) ――「公共の福祉」を、人権無視の口実に使うな――

日本が壊れて行く? (7)

――「公共の福祉」を、人権無視の口実に使うな――

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岸田・荒井発言について、海外では同性婚の法的位置付けがどうなっているのか、広く報道されています。G7の加盟国7か国中、同性婚を法的に認めていないのは日本だけという事実を前に、日本政府や自民・公明の与党は何を考えているのでしょうか。

それだけではありません。東京弁護士会LGBT理解増進法案に関する会長声明」では、

国連人権理事会における普遍的定期的審査(2008年、2012年、2017年)においても、性的指向及び性自認に基づく差別を撤廃するための措置を講じることが日本に対して勧告されている。また、経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、LGBTに関する法整備状況を比べると、日本は35カ国中34位ということである。

と、世界における日本の特異性が際立っていることを指摘しています。

ここで国際比較が大切なのは、岸田・荒井発言で、「国を捨てる人、この国にいたくないと言」う人がかなりの数いるという形で、日本以外の国に移住する人のことを心配しているからです。私も心配です。例えば、同性婚を希望している人たちの中には、それを認めない日本に住み続けたくない、法律も社会も自分たちを人間として扱ってくれる国に移住しようと考える人が出て来るかも知れないではないですか。その人たちに日本に留まって貰うために、まずはLGBT理解増進法を制定するのが順序なのではありますまいか。

なぜ、そんなことになっているのか、その根本原因はどこにあるのかを考え、何とかこんな状態を改善したいという思いから以下、「日本社会における憲法の解釈が甘すぎるから」という私の「診断」を説明します。

詳しくは、拙著『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論――』(法政大学出版局)をお読み頂きたいのですが、性的指向や性自認は一人の人間という存在そのものに関する欠かすことのできない重要なの一部です。それを尊重しなくてはならないことは人権の尊重から当然です。

憲法の13条は「すべて国民は、個人として尊重される。」と、その点を強調していますし、この権利を侵してはならないことも11条と97条が保障しています。

11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

97 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

大切なのは、人権が憲法上、「侵すことのできない永久の権利」であるという点です。しかも二つの条文で繰り返し強調しているのですから、それに反する解釈が正しいということにはもっと慎重であるべきだと思います。

憲法を良く御存じの方からは、それでは、第13条の後半はどう考えれば良いのかという疑問が出されるはずです。その点こそ、『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論――』が問題にした点なのです。

13条の後半は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」です。その解釈は、定説・通説では、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利そのものが、公共の福祉に反しない場合には、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする、という命題だということになっています。

詳しくは、拙著の第三章と第四章、そして付論3を読んで下さい。簡単に結論だけ述べておくと、性的指向や性自認も含めた人権を侵してはいけないのです。それも「永遠に」なのです。さらに、尊重されるべき個人を守るために、政府は最大限の努力をしなくてはならないのです。まず行動しなくてはならないのです。

では何が制限されているのかというと、政府の行動です。最大限の努力をした積りになっていても、それが「公共の福祉」に反する場合が出てくるかもしれない。それが明らかであれば、政府はその行動を変えることにする、という規定です。

そして、ここで重要になる「公共の福祉」とは、拙著を読んで頂けると、「憲法の総体から導き出される結論・価値」であることが分ります。

憲法99条では、内閣に憲法遵守義務を課していますから、個人を尊重するために、最大の努力をすることは義務なのです。内閣はLGBT理解増進のために、誰よりも先に努力する必要があるのです。総理の8日の国会答弁のように、議員立法を見守る、あるいは議論を否定しないなどというのは、傍観者の言うことであって、憲法を守る義務のある内閣の姿勢としては許し難いものなのです。

繰り返しますが、そんな姿勢が許されてしまう背景にある、人権そのものが「公共の福祉」というお題目で制限できるという憲法解釈が問題なのです。しかも、ここで使われる「公共の福祉」の定義はないのですから、結局、「何でもあり」になって行くことは目に見えています。教育勅語や旧統一教会の教えなどがそこに顔を出しても、それが「公共の福祉」に沿ったものだという言い訳が準備されていれば、自らの人権についての意識を省みることもなく、岸田・荒井発言が「当然の」流れで出て来ることになるのです。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/9 イライザ]

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2023年2月 8日 (水)

日本が壊れて行く? (6) ――岸田・荒井発言の根っこには憲法についての根本的読み違いがある ――

日本が壊れて行く? (6)

――岸田・荒井発言の根っこには憲法についての根本的読み違いがある ――

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今回は性的少数者(LGBTQなど)や同性婚についての岸田・荒井発言を取り上げます。この問題だけでも岸田内閣は退陣すべきだと考えています。しかし、仮に内閣が変わっても自民党・公明党の基本的な考え方が変わらなければ、そしてそれ以前の問題として、日本社会の憲法そのものについての基本的な理解が変わらないと同じことの繰り返しになると思いますので、それを説明します。(以下敬称は略します)

まず、岸田・荒井発言とその背景について、整理をしておきます。マスコミの報道を概観すると、一連の発言についての政府側の対応は、 ①荒井発言は個人としてのものである。 ②その責任は秘書官を止めさせることでけりが付いている。 ③この発言は、岸田総理にとっては「言語道断」であり岸田内閣の方針の対極にある、くらいにまとめられます。そしてそれに対する批判も、問題の本質を突いていないように思えるからです。

それに対しての反論の前提を確認しておきましょう。

(A) 荒井発言は、岸田発言の説明としてなされたものであり、この両者を切り離して論じてはいけない。だから、その一体性を明確にする「岸田・荒井」発言と呼ぶべきである。

(B) 荒井発言は、岸田発言についての説明を求められた秘書官が、オフレコとは言え公的な立場での説明を行う場でなされたのだから、公的な発言であって「個人」の発言という限定や、かつ岸田内閣の立場と関係のないものだと解釈することは許されない。

(C) より具体的には、岸田総理は参議院本会議の代表質問に対して、同性婚制度は「わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものだ」と答え、かつ衆議院の予算委員会では「国民にとって生き方や家族観、社会が変わっていく課題だ。社会全体の雰囲気にしっかりと思いをめぐらせた上で判断することが大事だ」と述べた。この発言について質問された荒井秘書官が、述べた言葉は次の通り。

(D) 性的少数者(LGBTQなど)や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」、そして「秘書官室は全員反対で、私の身の回りも反対だ」と述べ、同性婚が導入された場合は「社会のありようが変わってしまう。国を捨てる人、この国にいたくないと言って反対する人は結構いる」

(E) 繰り返すと、これは、「同性婚について荒井さん個人はどう考えているのですか」という問いに対する答えではない点が重要なのだ。総理大臣の発言「(家族観や価値観)社会が変わってしまう課題だ」の真意はどこにあるのか、という確認のための質問に対して、総理を公的に代弁する立場の役職からの発言なのだ。

(F) その文脈で、荒井発言を、総理の好きな言葉を使えば「丁寧に」読み解くと、[同性婚に反対の人が社会には多い。その人たちの価値観まで変えることになるから、社会が変わると言っている。その人たちの価値観を尊重すれば、同性婚は認められない。事実、私だって見るのも嫌だ――――]とつながると納得の行く発言になります。

(G) 岸田・荒井発言はこの文脈で解釈されなくてはならないのです。となると、単に荒井「個人」の発言として撤回したとしても、論理的には、岸田発言が性的少数者や同性婚否定の言葉であるという「説明」の部分を否定したことにはならないのです。その説明の中の特別な場合の具体例は否定されましたが、それだけで荒井発言の持つ一般的な意味を否定することにはならないからです。

(H) つまり、憲法が高らかに掲げている人権の無視ですし、旧統一教会が政治の世界で実現しようとしてきた主張そのものが、岸田・荒井発言としてハッキリ姿を現しているという事実がここに見えてきました。

さて、このような人権無視の考え方が岸田内閣、自民党、公明党等に染みついているとすると、内閣が変わっても、同じことの繰り返しが起きるだけです。それにストップを掛けるために必要なのは、再度憲法の根本原理に立ち返り、社会全体でそれを骨の髄から共有することです。

前口上が長くなって本論に到達するのに時間が掛かる悪い癖が抜けまません。これに続く本論は次回、「丁寧に」論じます。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/7 イライザ]

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2023年2月 6日 (月)

好きなものが消えて行く ――「一つの物にこだわらない」が答かも――

好きなものが消えて行く

――「一つの物にこだわらない」が答かも――

Ferrari  

「日本が壊れて行く」シリーズはまだ途中ですが、「日本」に帰するべきかどうか良く分りませんので、独立編として取り上げます。

蕎麦が好きなので、何年間か昼には蕎麦で通した時代がありました。その他にもマカデミア・ナッツやグレープフルーツ・ジュース、エビスビールにもこだわってきました。マカデミア・ナッツについては6年前にこのブログでも取り上げましたし、昨年も取り上げています

もう一つ好きなものとしては、お祝いの時などには登場していたフェラーリがあります。

自動車ではなく、イタリア産のスパークリング・ワインです。「シャンパンを超えるスパークリング・ワイン」という評価もあるくらいの味ですので気に入っていました。価格も私の手に入る範囲でしたので、文句なしに愛用していました。

最近、お祝いしたい出来事が重なりましたので、もちろんFerrariの登場です。いつもはコストコで買っていたのですが、今度は近くの酒屋さんでした。

「乾杯」の後、一口飲んだ時です。少量を舌の上で転がした時点で、何とも不快な味だったのです。Ferrariの味の良さの一つはその安定感なのですが、2リットル数百円のワインでもなんとかワインと言える味なのに、今回は、黴でも混じっているような酷い味でした。

買った店に持って行き、返品をしましたが、これで当分の間Ferrariは買えません。喪失感は大きいのですが、二つの教訓を貰ったような気がしています。

一つは、レストランでワインを注文したときに、ソムリエが勧める「ホスト・テイスティング」の大切さが分ったことです。もう一つは、こんなことが起きたときに、好きなものの代りになるもう一つの好きなものを作っておくことです。

Ferrariの代りは何にするのかを今、検討しています。

 

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[2022/2/6 イライザ]

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2023年2月 5日 (日)

日本が壊れて行く? (5) ――車内閉じ込めと春闘――

日本が壊れて行く?  (5)

――車内閉じ込めと春闘――

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出典: 財務省「法人企業統計」

 

前回の最後は、次のような言葉で締めました。

 守るべき時に守らない、守らない方が良い時でも守らせる――誰が「ボス」なのかを示すために規則はあるのでしょうか。こんな日本社会を変えるために、私たちは何をすれば良いのでしょうか。一緒に考えましょう。

念のために、「守るべき時に守らない、守らない方が良い時でも守らせる」事例をもう一度復習しておきましょう。

時系列的に最初の二つの事例、それは「守らない方が良い時でも守らせる」事例です。(心理学者、島崎敢氏の記事、「JR西の長時間閉じ込め 「乗客を線路へ」なぜ即断できないのか」から要約・引用。

1969(昭和44)年、北陸トンネルを通過中の列車で車両火災が発生した。この時、「トンネル内では消火活動は困難」だと判断した乗務員は、トンネルを抜けるまで列車を走らせ続け、犠牲者を出さずに済んだ。しかし、機転を利かせた乗務員は「即時停止の規定に違反した」として処分されてしまったのだ。

1972年、くしくも同じ北陸トンネルを通過中の列車で、再び車両火災が発生した。

過去にマニュアル通りに列車を止めなかった乗務員が処分されていたこともあり、この時の乗務員はトンネル内で列車を急停車させた。その結果、煙が充満して消火活動ができなくなったトンネル内で、30人の犠牲者を出す大惨事となってしまった。

「過去に処分されていた」のは、停車しないで乗客の命を救った乗務員ですし、ここでは触れられていないのですが、1972年に規則を守り停車した乗務員が、その後この時のことをどう捉えていたのか、そして乗務員に対してJRがどう対応したのかが気になります。

次に、「守るべき時に守らない」の典型例が、1月のポイント事故による乗客の10時間社内閉じ込めです。(『PRESIDENT Online』の鉄道ジャーナリスト、枝久保 達也氏による記事、「乗客の「10時間車内閉じ込め」は十分に避けられた…JR西日本が犯した「3つの判断ミス」」から引用)

26日のJR西日本東京定例会見で長谷川一明社長は、本来は「1時間が経過して復旧できない場合は徒歩誘導を検討する社内基準がある」としながらも、「夜間、大雪の中で歩くのはリスクが大きいため、列車の運転再開を優先してしまった」

ここで私の抱いた違和感は、そのリスクがどの程度のものかについての現場での判断が正しかったのか、という点です。分岐器の除雪と解凍をして運転再開のために多くの人手が投入されたようなのですが、その人手を使って乗客を近くの駅舎に誘導することはできなかったのでしょうか。

「大雪の中で歩くリスク」について、『東洋経済ONLINE』の大坂直樹記者による「JR西「大雪で車内閉じ込め」、なぜ防げなかったか 計画運休の判断は?危機回避できた4つの節目」を元に考えて見ましょう。

一番の疑問は、降車と駅への誘導の始まったのが、23時だということです。停車したのが、20時前ですから、一時間の停車が続いた時点つまり、21時に降車・駅への誘導が始まっていれば、乗客の苦しみは2時間短縮されていた筈だからです。その後の退避に要する時間も6時間掛かっているようなのですが、乗客の疲れも視野に入れると短縮できたと考えられるでしょう。

こう強く感じるのは、分岐器の凍結はバーナーを使っても融かせなかったとという報道が元になっています。一時間バーナーで熱を加えても解凍できないほどの状態なら、解凍は諦めませんか。

線路を歩いて退避するにしても、照明のないところは、乗客のスマホの照明を使うことで、乗客同士助け合いができそうですし、降車についても、航空機の非常口の使い方を飛行機に乗る度に見ているであろう多くの乗客たちの中の身体的に強い人たちがボランティアとして助けの必要な人に手を貸すことも可能だったのではないでしょうか。

その場にいなかった私が、想像だけでこんなことを言うのはおこがましいと思います。もしここで指摘しているようなことが実際に行われていたのであれば、私の不明を恥じてお詫び申し上げます。あるいは、状況がそんなことさえ許さないほど悪かったのであれば、再度、現場を知らない人間が出過ぎた発言をしたことについてお詫び致します。

しかし、仮にそうだったとしても、2時間の空白は必要なかったのではないでしょうか。

さらに不思議なのは、極端な表現を使ってきてはいますが、最長10時間も閉じ込められた人たちが、その間の非人間的な扱いについての正式の謝罪を求めたり賠償を求めたりしていないことです。私の感じ方が被害妄想に近くて、実際に閉じ込められた方々はそれほどの苦痛だとは感じていなかったのでしょうか。

こんなことを考えてしまうのは、春闘と関連があるからです。今年はなぜか、「賃上げ」をするぞ、素晴らしいことだろうという雰囲気作りが積極的に行われているのですが、それがもう一つの「異次元」の違和感の元なのです。

今年突然そんなことが可能になったのでしょうか。そんなことはありません。株主配当や社内留保の増加を経年的に振り返るだけで、企業の「価値観」が原因であることは明らかです。

そして最初に掲げたグラフで分るように、給与は20年間全く増えていないのです。さらに驚くべきことは、これだけの低賃金を強いられているにもかかわらず、一度のストライキも行われていないことです。

江戸時代だって、我慢ができずに命を懸けて一揆を起していたではありませんか。外国では航空機のパイロットやみなし公務員までストライキをしています。

「権力に対して従順だ」と言うと、権力の横暴に対して闘って来られた多くの皆さんに失礼なのかもしませんが、そのような少数の方々がいるにせよ、日本社会全体として、権力に対して余りにも寛容過ぎてはいせんか。社会全体がストライキを労働者の当然の権利として認め、「何故ストライキをしないの」という声が巷間から出て来るような社会への大転換ができないものでしょうか。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/5 イライザ]

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2023年2月 2日 (木)

日本が壊れて行く? (4) ――ポイント凍結事故と車内の閉じ込め10時間――

日本が壊れて行く?  (4)

――ポイント凍結事故と車内の閉じ込め10時間――

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シリーズでお届けしている「異次元」の違和感についての、次のトピックです。簡単にお浚いをしておくと、第二回では護衛艦と巡視艇の事故についての疑問、そして第三回ではなぜ巡視艇が岸に近付かなくてはならなかったのかについての疑問を取り上げました。

今回は同じく移動手段ですが、鉄道です。

10年に一度と言われる寒波の襲来で、1月24日から26日にかけて全国各地で大雪になりました。そんな中、1月24日の夜から25日朝にかけ、JR琵琶湖線・京都線(東海道本線)の山科―高槻間で15本の列車が駅間で立ち往生し、約7000人が最長9時間50分もの間、車内に閉じ込められるトラブルが発生しました。

このトラブルについての分り易いネット記事日本を紹介しておきます。一つ目は『東洋経済ONLINE』の大坂直樹記者による「JR西「大雪で車内閉じ込め」、なぜ防げなかったか 計画運休の判断は?危機回避できた4つの節目」です。

二本目は、『PRESIDENT Online』の鉄道ジャーナリスト、枝久保 達也氏による記事、「乗客の「10時間車内閉じ込め」は十分に避けられた…JR西日本が犯した「3つの判断ミス」」

この二本の記事でも問題にしているのは、乗客数千人が、最長10時間近く車内に閉じ込められていたことです。マスコミとしての節度だと思いますが、この点についての問題意識はもっと強烈であって良いというのが、私の「異次元の違和感」だったのです。

仮にあなたが、電車の中に10時間閉じ込められていたと考えて見て下さい。老化現象で私にとっての最大の問題はトイレです。7000人の中には高齢者もいたはずですね。トイレはどうしていたのでしょうか。そして10時間も閉じ込められていれば、お腹も空きます。食べ物はあったのでしょうか。さらに、満員電車の中で10時間立ちっ放しを強制されたとしたら、ほとんどの人には耐えられないはずです。

思考実験を続けて、これがあなたの書斎で起きたと仮定して見て下さい。10時間、書斎に閉じ込められて、トイレにも行けない、食べ物もない、座れないとしたら、これは立派な虐待です。

「ポイントが凍結して、電車が動かない。我慢して下さい」で済まされる問題ではありません。そして、バーナーを使ってもポイントの凍結を融かすことはできなかったことも当然報告され共有されてたでしょうから、大目に見て、1時間立ったくらいの時点で、「電車から降りて貰って近くの駅まで歩いて貰う」という結果にならないのは非人間的です。

しかしながら、こんな結果になってしまったのは、現場と上層部との認識が違っていたからなのだ、という考え方もあるようです。『YAHOO! JAPANニュース』に掲載されている渥美 志保氏の記事「【JR西日本の立往生問題】「上の判断に逆らえば損をする」...?倫理観が麻痺することの「ヤバさ」について」が参考になります。

私が言うまでもなく乗客の方たちはみんな「さっさと降りて、近くの駅まで歩かせてくれ」と思っていただろうし、Twitterには「乗務員はその判断で一致している」という車内アナウンスもありましたが、上が許さなかったとか。

たやすく想像できる「列車外を歩いて何かあったら」という責任問題に対し、「どんな人がどんなふうに閉じ込められているのか」には頭がいかない、というの日本の官僚的な組織の縮図のようにも思えました。この一件に関しては、もちろんこれが一番の問題。

とはいえ私がより驚いたのは別のことーー「上の判断に逆らうと私たちが処罰されてしまう」というような車内放送があったという乗客のツイートを見たことです。

なぜそうなってしまうのかを知りたいところなのですが、その前にJRでは、長期間にわたって、「上の判断」に服従することが金科玉条になっていたようなのです。それを詳述しているのが、『YAHOO! JAPANニュース』にアップされている心理学者、島崎敢氏の記事、「JR西の長時間閉じ込め 「乗客を線路へ」なぜ即断できないのか」です。

2011(平成23)年に北海道・石勝線の第1ニニウトンネル内で起きた脱線火災事故では、乗客に対して外に出ずに列車内で待機するよう指示が出されたまま、その後の避難誘導が行われなかった。

それは、事故があれば「即時停車」という規則があるからなのです。しかし身の危険を感じた乗客が自らの判断で逃げ始めたため犠牲者は出なかったそうなのです。乗務員の機転で犠牲者を出さずに済んだケースもあるのです。

1969(昭和44)年、北陸トンネルを通過中の列車で車両火災が発生した。この時、「トンネル内では消火活動は困難」だと判断した乗務員は、トンネルを抜けるまで列車を走らせ続け、犠牲者を出さずに済んだ。しかし、機転を利かせた乗務員は「即時停止の規定に違反した」として処分されてしまったのだ。

この3年後の1972年、くしくも同じ北陸トンネルを通過中の列車で、再び車両火災が発生した。過去にマニュアル通りに列車を止めなかった乗務員が処分されていたこともあり、この時の乗務員はトンネル内で列車を急停車させた。その結果、煙が充満して消火活動ができなくなったトンネル内で、30人の犠牲者を出す大惨事となってしまった。

規則を守ることが何より優先され、その結果として乗客が10時間も「虐待」に等しい状況に置かれることは、二の次になっていることが良く分かるではありませんか。

それをさらに裏付けているのが、JR西日本の長谷川一明社長の言葉です。枝久保氏の記事から引用します。

26日のJR西日本東京定例会見で長谷川一明社長は、本来は「1時間が経過して復旧できない場合は徒歩誘導を検討する社内基準がある」としながらも、「夜間、大雪の中で歩くのはリスクが大きいため、列車の運転再開を優先してしまった」と説明する。

こちらは、「社内基準」を守らないことで乗客の苦痛を増す決定を正当化しています。「大雪の中を歩くリスク」を軽減することは可能です。それを十分に検討もせずに、苦しみは弱者に負わせる姿勢しか見えてこないことに怒りを感じますし、絶望的な思いにさえなりかねません。

守るべき時に守らない、守らない方が良い時でも守らせる――誰が「ボス」なのかを示すために規則はあるのでしょうか。こんな日本社会を変えるために、私たちは何をすれば良いのでしょうか。一緒に考えましょう。

 

最後に、今日一日が皆様にとって素晴らしい24時間でありますように!

[2022/2/2 イライザ]

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