独裁政治を繰り返すな 修正版
独裁政治を繰り返すな 修正版
二月前にお知らせしたように、「面白いプロジェクトを始めていますので、ブログとツイッターはしばらく休んでいます。」という状態なのですが、でも、社会的関心が「ゼロ」になったわけではありません。
我が国にとって歴史的な日となった12月16日、岸田内閣は安全保障関連3文書を閣議決定して、「戦後安全保障政策の大転換」を宣言しました。国民的議論が全く存在しない形で国の基本的な姿勢を変えてしまうことを宣言したのですから、「独裁」以外の形容詞でこの大転換を表現することはできません。
戦後の安全保障政策」を簡単にまとめると、最初の逸脱は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」そして、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定した憲法に反して、軍隊を保持したこと。
第二に、その言い訳として「専守防衛」という苦しい説明を続けてきたこと。つまり軍隊は日本という地理的な範囲から外には出さないことですが、それは「海外派遣」でいとも容易に破り捨て、最近の例を挙げると、それさえ踏みにじって「集団的自衛権」を認め「専守」を反故にしたことを挙げておきましょう。
そして、ウクライナ戦争で明らかになっているように、最近の戦争は敵国の軍事施設・民間施設を問わず、ミサイルで攻撃するのが主流になってきています。それを、取り繕うために、「敵基地」を攻撃しているのだというのが、何度もロシアの使った言い訳です。
それこそ「敵基地攻撃能力」なのですが、日本もその力を公然と使うぞと宣言したのです。つまり、ロシアのような攻撃ができるし、そうするぞと言ったのも同じです。それが今回の閣議決定です。
戦争を鼓舞する政策にはお金が掛かりますが、それを増税で賄うことになるのは好戦指向を持つ人たちにとっては当然の理屈です。税についての議論は回を改めて論じますが、今回は、政治の理非を論じる上で二つの重要な「事実」を指摘しておきます。
一つは、総理大臣が「独裁」的な行動を取った場合の決着の付け方です。1994年6月、自民党や新党さきがけと連立政権を樹立し、総理大臣になった村山富市氏は7月20日の衆議院本会議手、当時の社会党員にはほとんど相談もなく、当然、より多くの市民への説明や相談もなく、「自衛隊は憲法の認めるものだ」と断定しました。
私はこれを「独裁」的手法の一例だと考えています。総理大臣になったからといって国民的には多数の支持があった考え方を、数秒でひっくり返したのですから、そう言われても仕方がないでしょう。
そんな内閣を実現するために私も骨を折りましたので反省を込めて、その後、社会党の改革に取り組みました。詳しくは、機会を改めて説明します。
敢えて村山内閣の評価を続けると、総理大臣として、これほど大きなマイナス行動をした村山氏は、終戦後50年に当る翌1995年には、第二次世界大戦・太平洋戦争そして戦後の総括を行う「総理大臣談話」で、保守派から妥協を勝ち取り、それなりに意味のある内容に踏み込んだ文書を作っています。一方では「自衛隊合憲」と歩み寄り、もう一方では我が国の「戦争責任」について歩み寄らせたのだという解釈も可能です。この「取引」をどう評価するのかも大切ですが、岸田内閣で「総理大臣談話」に相当するものは何になりそうなのかについて、何方かに教えて頂ければ幸いです。
第二の点は「敵基地反撃能力」についての心配です。
この言葉を聞いたとき、何より先に私の頭に浮かんだのは「真珠湾攻撃」です。高校生の時にアメリカに留学して、アメリカ人の世界観の基本には、一つの国家が取り得る最悪の事例として1941年12月7日の日本による「真珠湾攻撃」が定着していることを何度も体で感じた経験があったからです。そしてそれは多くのアメリカ人の心の中に今でも生きています。
日本が経済的にアメリカの脅威であると恐れられていた1980年代とは違い、影の薄い我が国ではありますが、「Black Lives Matter!」と叫ばないと人権を守れないという側面も持つアメリカで、日本に対して無条件で突き付けることのできる謳い文句を与えるような施策をわざわざ声高に採用する意味も考えなくてはなりません。老人の杞憂に過ぎないことを祈りつつ。
次回は増税について取り上げます。
それでは今日一日が、皆様にとって素晴らしい24時間でありますように。
[2022/12/17 イライザ]
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投稿: 前田耕一郎 | 2022年12月21日 (水) 13時10分
「前田」様
コメント、有難う御座いました。また、拙いブログをお読み下さっていることにもお礼申し上げます。
年末ですので、一年を振り返って、皆様への感謝の気持をお伝えする積りです。
投稿: イライザ | 2022年12月22日 (木) 18時29分