ベトナムでの焼身自殺
ベトナムでの焼身自殺
ホーチンミン市にあるティック・クアン・ドックの像
(Ngô Trung撮影・Public Domail)
首相官邸の近くで70代の男性が焼身自殺を図ったというニュースが入ってきました。国葬に抗議しての行動か、という注釈も付いていました。ネット上では「焼身自殺」を「自爆テロ」だと断定するコメントもあるようですが、私の頭に浮かんだ歴史的事実との差に、時代の変化を感じています。
この男性が仮に「国葬反対」への思い入れが強かったために焼身自殺という手段に走ったのであれば、その手段は間違っていることに気付いて欲しいものです。命を懸けてまで反対しようという思いなら、その思い実現のために取るべき他の手段がまだまだ残っています。その際の絶対条件は、人の命はもちろんですが、自分の命を捨てることも許されない行為だという人間としての基本命題です。
また、「焼身自殺」を「自爆テロ」だと断定するのも意味不明ですが、この点については、「カミカゼ」についての日本国外での認識の違いと合わせて、別の機会に論じます。
今回は「私の頭に浮かんだ歴史的事実」です。それは、1963年6月11日に、ベトナムの僧侶、ティック・クアン・ドック師が、当時の南ベトナムのゴ・ディン・ジエム政権による仏教徒弾圧に抗議して、カンボジア大使館前で自らガソリンをかぶって焼身自殺したことです。詳細はWikiwandの記事をお読み頂きたいのですが、この事件が結果としてジエム政権を倒し、ベトナム戦争を経てベトナム独立へとつながったことは、私たちの世代では共有されています。
なぜそれほど大きな結果につながったのかという問には、二つの答があります。一つは、ジャーナリストのマルコム・ブラウンの撮った写真が世界中に衝撃を与えたことです。もう一つは、ゴ・ディン・ジエムの弟の妻であったマダム・ヌーが、この焼身自殺を「あんなのは単なる人間バーベキューよ」だと言ったことが世界的に顰蹙を買ったという事実です。
私たちの世代の人間が仮に「焼身自殺」と聞いたときに、「自爆テロ」を思い浮かべることはまずないと思いますが、若い世代の人たちの中には歴史を良く知らない人もいるでしょうから、その違いは「時代の変化」だと考えることも可能です。
私は、ベトナムの事件のように、宗教的な対立があり同時に宗教的な確信のある場合でも、改めて「焼身自殺」は否定しなくてはならないと信じていますが、歴史的事実としてこのような出来事があったことは、知っていて貰いたいのです。
それでは今日一日が、皆さんにとって素晴らしい24時間でありますよう。
[2022/9/26 イライザ]
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