勉強してから出席すべきだったNPT再検討会議
勉強してから出席すべきだったNPT再検討会議
官邸公表の写真
どのような条約もそうなのですが、我が国が批准した条約は誠実に遵守しなくてはなりません (憲法99条第2項)。さらに、ここで条約の遵守義務を定めている我が国憲法を、総理大臣や国会議員が遵守しなくてはならないという義務も明確に示されています (99条第1項)。
そして、「再検討会議」とは、条約の運用について批准国が検討をする場です。「運用」とは、条約の条文がどのように実行されているのかという意味です。
中でも、重要なのは第6条なのですが、核保有国、そして日本のような核依存国は長い間、この「誠実な交渉義務」を無視してきました。まず第6条をお浚いしておきましょう。
第六条
各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。
簡単に言ってしまえば、核保有国も含めて締約国は、「核兵器禁止条約」を作るための交渉をしなくてはならない義務を負っているのです。しかし、核保有国はその義務を果たさなかったのです。この点については、苦り切ったマーシャル諸島共和国が、2014年に核保有9か国を「条約違反」の廉で、国際司法裁判所に提訴したことからもはっきりしています。(この提訴は管轄権を理由に却下されましたが、裁判記録を読むと、「理由」の酷さに憤りを感じるほどです。)
核保有国がその責任を果そうとしない頑なな姿勢に業を煮やして、「志を同じくする」非核保有国が市民社会と協力して作ったのが、「核兵器禁止条約」です。核保有国・核依存国は第6条違反を認め、謙虚に非核保有国有志に感謝の気持を表明することくらいしなければ罰が当たります。
唯一の戦争被爆国の総理大臣、しかも爆心地も原爆ドームもその選挙区内にある岸田総理大臣がNPTの再検討会議に参加するのであれば、まず条文を読み理解し、課されている義務を我が国が果たしているのかを謙虚に、かつ客観的に検証し、その結果として次に何をしなくてはならないのかを、選挙区の歴史的使命と重ね合わせてからにすべきではなかったかと、感じています。
「ヒロシマ」という名前を、疎かに使ってはなりません。
炎暑とともに豪雨も各地を襲っています。皆様、くれぐれも御自愛下さい。
それでは今日が、皆さんにとって素晴らしい一日でありますよう。
[2022/8/3 イライザ]
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