WFRの対談記事・その4 ――核兵器禁止条約の目標は生存である――
WFRの対談記事・その4
――核兵器禁止条約の目標は生存である――
今回は4回目です。The World Financial Reviewに掲載された、Joseph Mazur氏と私の対談記事の和訳 (山田達也氏による) を掲載します。
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ジョセフ・メイザー
北朝鮮が高度先進発射装置の実験を繰り返している今、北東アジアに非核兵器地帯を創設する計画は、困難を極めるに違いありません。
秋葉忠利
僕たちが今議論している条約は、北東アジアを非核兵器地帯にします。北朝鮮・ロシア・アメリカに重い責任が圧し掛かることになります。日本と韓国は核兵器を保有していません。中国はかなりの間、NFU政策を堅持してきています。北朝鮮は核兵器を放棄しなければならなくなり、ロシアと米国はこの地域でNSAを保証しなければなりません。
ロシアとアメリカ合州国にとってNFU政策は、全核兵器の完全放棄政策を採用するよう求めるより交渉の可能性が高くなります。そして米国内には、NFUという考えを承認する十分な数の政治勢力があります。北朝鮮は最も厳しい譲歩をしなければなりませんが、6カ国合意は国際的枠組内に北朝鮮の存続を保証するものでもあります。
ジョセフ・メイザー
世界の核弾頭保有数13,000個余りのうち、米国とロシアはそれぞれ5,600発と6,200発を保有していますが、北朝鮮は50発未満です。ならず者組織が、万が一とは言え、数発の取得に成功するかもしれません。そのような統計上の数値を考えれば、第1の懸念は、アメリカとロシアの膨大な核弾頭保有量です。にもかかわらず、核弾頭を少数しか保有していない国に、あらゆる開発計画を放棄するよう、説得する可能性のある論拠は何なのでしょうか?それは合理的な対話を通してもたらされるのでしょうか?
秋葉忠利
最も難しい課題を解決する唯一の手段は対話です。合理的な戦略は、非人道的な核兵器で脅し合うのではなく、礼儀を弁えたやり取りによって、相互に受入れ可能な解決策を見いだす国際舞台に、北朝鮮を引き込むことです。
ジョセフ・メイザー
2018年に当時のトランプ大統領が離脱した、2015年イラン核合意の復活を目指す交渉が、ウィーンで現在進行中です。この3年、イランは核爆弾の製造を可能にするウラン濃縮において大きな進歩を遂げました。将来の核兵器保有に取り組んでいる国々、国際舞台でより大きな力を求める独裁主義に支配された国々に、私たちはどのように対処すべきでしょうか?
秋葉忠利
君の言う状況は、国際的な政治的指導力の重要性を実感させてくれます。市民社会は、責任ある政治指導者が効果的に影響力を行使できる環境を作らなければなりません。また、国内政治の変革にも集中して取り組むことで、核兵器保有国や核依存国が、核兵器禁止条約を拒否するのではなく受け入れるよう、努力すべきです。
北東アジア非核地帯を創設した後、中東に新たな非核地帯ができればと願っています。その実現はもっと難しいかもしれませんが、北東アジア非核兵器地帯条約を策定するプロセス全体が、こうした困難を克服するのに役立つ雰囲気と能力を生むでしょう。この種の交渉は、近隣諸国が貿易、人と文化の交流、科学技術協力などを互いに拡充する、豊富な機会を提供することが明らかになるはずです。
このような考え方をまとめて一つのパッケージにして、「2040年ビジョン:核兵器禁止緊急キャンペーン」、と呼ぶべきなのかもしれなません。その目標は、2040年までに核兵器を廃絶することであり、2030年までに核兵器保有国がNFU政策を採用するという中間目標も掲げます。
僕たちの世代は2040年まで生きられないかもしれませんが、どこかで始めなければなりません。「2040ビジョン」という目標は、期限のある夢であり、若い世代が僕たちの遺産を引き継ぐための出発点になることを願っています。
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[対談は続きます]
[2022/5/4 イライザ]
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