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2022年4月 2日 (土)

署名運動のもう一つの意味 ――被爆者の人生ストーリーを共有する――

署名運動のもう一つの意味

――被爆者の人生ストーリーを共有する――

 

ウクライナの紛争で核兵器を使ってはならない、という声が世界的に広まっています。そのための署名運動も世界的に展開されています。例えば、AVAAZという署名サイトで、核戦争防止国際医師の会 (IPPNW) はじめ、16のノーベル平和賞受賞者や団体が賛同している署名運動が展開され、既に100万以上の署名が寄せられています。その日本語のサイトはこちらです。(こちらを「IPPNW署名」と呼びましょう)

Avaaz  

趣旨の全文は、サイトでお読み下さい

 どのサイトでも一人でも多くの方が署名することで、核兵器を使わせないという意思表示になりますので、御協力をお願いします。

 もちろん、私がChange.orgで始めた「「核兵器を使わない」と、ただちに宣言して下さい!」署名 (長いので「被爆者署名」と略します) にも、より多くの皆さんに賛同して頂きたいと願っています。

 そのために、「IPPNW署名」と「被爆者署名」との違い、特になぜ私が「被爆者署名」を始めたのかを「解説」します。自分で書いた趣意書を自分で「解説」するのもおかしな話なのですが、224日と27日の、プーチン大統領による脅しに対して何かしなくてはという危機感が先行して書いたものですので、それを少しでも分り易く書き換えるのも私の責任です。戦争そのものについても言及したいのですが、スペースがありませんので、核兵器の使用に焦点を合わせます。

 

(A) 「IPPNW署名」の趣旨――科学的説得

① ウクライナ侵攻は大規模核戦争を引き起こす可能性がある。

② それは、人類の滅亡につながる可能性がある。

③ ロシアとNATOどちらも、核兵器を使わないことを求める。

④ 全世界が核兵器禁止条約を支持するよう求める。

この全てに私は大賛成ですし、皆さんも同じ考えのはずです。短い趣意書ですからこれ以上のことを盛り込むのは無理ですし、簡単明瞭に趣旨が伝わる「意見書」ですが、世界的に展開されてきた、核戦争によっていかに非人間的な結果が生じるのかという科学的知見に裏付けられた説得力を持っています。

それに対して私の「被爆者署名」の趣意書は、被爆体験と被爆者の辿ってきた人生を元にしての考察をしています。

 

(B) 「被爆者署名」の趣旨--被爆者の人生ストーリーを共有する

① 脅しが現実になると、攻撃された都市では被爆者が実際に体験した「生き地獄」が現実になる。

 

(B 1) 大規模核戦争になり、人類は滅亡する場合――この場合は、「IPPNW署名」と同趣旨のシナリオになる。

 

(B 2) 「限定」核戦争で止まり人類は滅亡しない場合――この可能性も検証しておく必要がある。

  ② 核兵器によってもたらされた結果は、ドローンとインターネットで瞬時に世界に共有され、高画質画面で数億、数十億の人たちの居間に届けられる。(B 1)の場合もこれに準じたことが起きる。

  ③ その結果、「こんなに悲惨で惨い兵器は即座に廃絶しなくてはならない」という世論が世界を覆い、核兵器は廃絶される。(B 1)の場合もこれに準じたことが起きる。

  ④ 同時に、そのような結果をもたらしたロシアとプーチン大統領は、(もし人類が滅亡しないとすれば) 永遠に「極悪人」として記憶される。(B 1)の場合もこれに準じたことが起きる。

  ⑤ このシナリオ通りに核兵器が廃絶されても、核兵器の使用が前提なので、数万、数十万あるいは億単位の犠牲が出ることになる。

  ⑥ そのような犠牲者を一人たりと雖も生んではならないというのが被爆者のメッセージ、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」である。

  ⑦ 犠牲なしで核兵器を廃絶させる道がある。その第一歩は、今回の紛争でロシアが核兵器を使わないと宣言し、他の核保有国も不使用宣言を行うことである。

  ⑧ 続いて、すべての核保有国が核の先制不使用を宣言し、それに続いて核兵器禁止条約批准の準備を始めることである。

  ⑨ 上記の④が、今回の核使用を止まらせる可能性がある。

 

 (B 3) 根源は、被爆の実相を知らないこと――より長期的に考える

  ⑩ 今回の核使用は回避できたと仮定する。その先を考える。

  ⑪ 人類滅亡は避けなくてはならないことは言うまでもない。しかし、人類全体の運命如何にかかわらず、被爆者の言葉「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」は、その前の段階、つまり核兵器によって作り出される「生き地獄」が瞬時であっても存在してはいけないという意味だ。つまり、(B) の①があってはならないということである。

  ⑫ にもかかわらず、核兵器を使うぞという脅しが元になっている「核抑止論」が生き続けているのは、核保有国のリーダーたちが、広島・長崎の被爆の実相を知らないからだ。

  ⑬ リーダーたちは、できるだけ早い時期に広島・長崎を訪問すべきだ。

  ⑭ プーチン大統領に「常識」が通用すると仮定して、核のボタンを押す前に広島・長崎を訪問できないのであれば、岸田総理がモスクワに飛んで、被爆地選出の総理大臣として、プーチン大統領に被爆の実相を伝えた上で、核使用をしないと宣言するよう説得すべきだ。

  ⑮ さらに、安保理事会で核保有国に対して同様の働き掛けをして、まずは核の先制不使用宣言を出すよう説得すべきだ。

 

荒っぽい筋書きなのですが、例えば、核のボタンを押す権限が大統領だけに与えられているという現在の政治的現実と核抑止論は表裏一体の関係にありますが、それがいかに危険なシステムなのかは、今回、疑いもなく明らかになりました。トランプ大統領が就任した時よりそれが如実に実感できることになったのは皮肉ですが、それも、元はといえば被爆の実相が世界的に共有されていないからだと考えられます。

日本政府、それを動かすことのできる私たちの責任は重大です。

[2022/4/2 イライザ]

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