私流英語の勉強小史 ――ラジオ講座の「基礎英語」がお勧めです――
私流英語の勉強小史
――ラジオ講座の「基礎英語」がお勧めです――
「英語力のキープの仕方」を取り上げましたが、そもそもゼロから始めて、どのように英語力を付けたのかも大切です。中学に入る直前の3月、NHKの「基礎英語」に出会った頃からの道筋を辿ってみました。
月刊の雑誌は、「何月号」と銘打ってあっても、その前の月に発売されます。例えば新年号なら12月初旬か中頃です。子供の頃、何故なのかが話題になったことがありました。自分たちの都合だけ考えていたせいだろうと思いますが、一番納得できた答は、「付録が一番多い新年号がクリスマス前に発売されるように」でした。「正解」を御存知の方、出版社側の考え方を御教示頂ければ幸いです。
「基礎英語」最近のテキスト
理由は何であれ、例えば4月号が3月に発売されることで私は大きな恩恵を受けています。年は、昭和30年、西暦では1955年です。その頃の子どもはほとんど「カム・カム・エブリボディー」の平川唯一、松本亨といった名前は知っていました。4月からは中学で英語の勉強が始まる、ということでNHKの「英会話」講座テキストを手に取って見たのですが、文字通りABCから勉強を始める私には高級過ぎました。幸いなことに隣に柴崎武夫先生の「基礎英語」のテキストがありました。結局、私は毎朝、月曜から土曜までの6時からの15分間、「基礎英語」を一年間、聞きました。まだ、タイマーやクロック・ラジオが簡単に手に入る時代ではなかったので、目覚まし時計を改造して、6時になるとNHKの第二放送が聞こえる装置を作りました。
『聖しこの夜』をはじめ、今でも英語の歌詞で歌える歌の幾つかは「基礎英語」で覚えたものですし、ブラウニングの詩、クリスマスの意味等、英語の勉強をする上で一番役立ったものの一つが「基礎英語講座」だったことに疑問の余地はありません。現在でも同じような番組がありますので、英語の勉強を始める皆さんには先ず「基礎英語」か、それに匹敵する番組を継続して聴くことを薦めています。
今振り返って大切に思えることは、歌だけではなく多くの文章を覚えたことだと思います。当然、そのためには覚えたいと思うような内容や挿絵、覚え易い文章等が必要ですが、柴崎先生のテキスト、そして先生の声には大きな魅力がありました。できれば、この年のテキストを復刻して使うことができれば、と思うほどです。
辞書も大切だったと思い返しています。知らない単語を調べるのが目的で辞書を引く訳ですが、私の持っていた辞書には、単語の意味の後に役立つ例文が沢山載っていました。それも今思うとかなり高級な文章でした。「duty」という言葉だけではなく、ネルソン提督がトラファルガーの海戦で述べた言葉「England expects every man to do his duty.」も一緒に憶えました。後々、役に立つ表現を沢山憶えることができました。
高校二年のときに、AFSという制度によって、イリノイ州のシカゴ近くの町に留学しましたが、この一年近くが英語の勉強に大きく役立ったことは言うまでもありません。英語の勉強だけではありません。若いうちに全く異なった環境・文化・社会で生活することには計り知れない価値があります。私だけではなく、同じ時期に留学した仲間のほとんどは同じ思いですし、また私個人としては、私たち大人が、若者にこのような経験の出来る環境を整える義務を負っていると考えています。
英語の勉強という点から留学時代を振り返ると、幾つか、重要な教訓を得ることができるように思います。一つは、語彙の大切さです。つまり、沢山の単語の意味を知らなければ話になりません。アメリカの高校でも単語を憶える宿題が出るのですから、この点は「ネイティブ」云々の議論を超えています。憶えることも大切です。詩や文章を記憶する宿題も日本より多くありました。毎日英語を使っている人たちでも、意識的に記憶しなくては良い英語が見に付かないのだとすると、外国語として英語、あるいはほかの言葉を勉強する立場にいる人たちにとって、記憶はもっと大切にしなくてはならないはずです。
これと関連がありますが、とにかく一日に何十ページも本を読むことも大切です。アメリカの高校では分厚い教科書の何ページから何ページまでを読んで来なさい、という宿題が毎日のようにありました。その内容を理解できたかどうかは、「クイズ」と呼ばれる簡単なテストで調べられますので、サボれません。読書量が読書力を付けてくれることになりました。これは高校だけではなく、大学や大学院でも全く同じですし、社会人になっても、本を一冊渡されて、それをマスターすることを前提に仕事を与えられ、その成果によって給料やボーナスが決まるということも良くあります。
英語の勉強という点から付け加えると、この時、タイピングを習ってタッチタイピングができるようになったため、コンピュータ時代になった今も重宝しています。もう一つ役立ったのはスピーチの授業でした。良いスピーチをするためには準備をすること、しかし原稿を読み上げるのではなく、メモを基に頭の中にある内容を話す、という訓練を受けました。ディベートの基礎や発声法の基礎なども教わりました。
こうしたことと同じくらい、あるいはそれ以上に役立ったのは、具体的に役立つレベルで図書館の使い方や、レポートの書き方、問題解決の方法等々、一口で言えば「勉強の仕方」あるいは「知的な作業の方法論」の初歩とでも言うべき知識を身に付けられたことかも知れません。英語の授業では、小説の書き方の初歩まで授業の中に入っていましたが、荒筋作りから始まって登場人物の性格付け等、出来の良し悪しは別として、この手順を踏めば一応小説らしき作品ができるまでの手ほどきを受けました。クラス一同大変楽しんだ記憶があります。
(広島市長のメルマガ「春風夏雨」――第39回、2004年12月25日から)
[2022/4/24 イライザ]
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