ウクライナ停戦の可能性 (2) ――今回は楽観論にシフトし始めます――
ウクライナ停戦の可能性 (2)
――今回は楽観論にシフトし始めます――
前回は、ルメイ将軍の言葉からの「「戦争犯罪人」にならないためには、「戦争に勝つ」という至上命令を実現しなくてはならないという結論」を出発点にして、そのためにはどんな手段でも使って勝つという方針に固執する可能性が高くなることを論じました。
その先のシナリオを考えるために、ロシア側が「勝った」と宣言し「停戦」に至ったと仮定して、その際にウクライナのどの範囲を支配下におさめている可能性があるのかを、純粋に「可能性」の問題として見てみましょう。つまり、実現可能性や現状を元にした分析とは離れての考察です。
① ウクライナ全域を支配している。(その後併合するかどうか等の可能性は別に考えるとして)
② クリミアと、ドネツク、ルガンスクの一部を支配している。
③ 元々のロシアとウクライナの国境線のロシア側だけを支配している。
ルガンスク州 (ウイキペディアから)
ドネツク州 (ウイキペディアから)
斜線の部分はクリミア
さて、このリストを見ていると、ルメイ将軍の考えていた「勝利」と、ロシアの置かれている状況とには違いのあることに気付きます。それは、元々ロシアの意図していたのは、②だった可能性が高いからですし、停戦協議の中でも、②を基本的な条件にしていることからも分ります。
その違いが大切なのは、ルメイ将軍がこだわっていた「戦争犯罪人」との関係を考えることで分ります。
上の三つのケースどれを取っても、プーチン大統領が拘束され、国際刑事裁判所 (ICC) で戦争犯罪人として裁かれるという可能性がないよう見えるからです。一つには、ロシアはICC条約を批准していませんので、ICCには管轄権がないからです。
また、上の三つの可能性のどれも、ロシアが「勝利宣言」をし、その結果として何らかの協議が行なわれ、停戦に至るという筋書きが有力だからです。太平洋戦争の時のように、一国が全面的に敗北を認めることでもない限り、停戦の時点でプーチン大統領に対する「戦争犯罪」を主張し、それをロシアが認めるということはあり得ないでしょう。(それまでの間にロシアで政変が起こるといったことのない限り)
となると、ルメイ将軍の言葉「もし、この戦争に負けていれば、私は戦争犯罪人として裁かれただろう。幸運なことに、我々は勝利者だ。」の解釈を変更した方が良さそうです。「戦争犯罪人にならないためには、どんな手段を用いても戦争に勝たなくてはならない」という解釈もあり得るでしょう。
しかし、東京その他の都市の空襲の時点では、自分たちが明らかに勝利者であったことを前提にすると、「どうだ、俺たちは、誰が見ても戦争犯罪だとしか考えられない酷いことを日本に対してしているんだ」という、驕りの言葉、日本に対する蔑視の言葉のように聞こえてきてしまいます。
プーチン大統領に戻ると、「戦争犯罪」で裁かれる可能性はほぼないのですから、誰から見ても圧倒的にロシアが「勝っている」のであれば、ルメイ将軍と同じような態度に出てもおかしくはありません。しかし、状況はかなり違います。ここで「楽観論」の登場です。
ウクライナの善戦が一つですが、それとは別に強調したいのは世界の世論です。ロシアの民間人攻撃や、住宅等の民間施設を含む都市への攻撃、その結果、犠牲になった多くの死傷者そして数百万もの避難民について、その非人道性、国際法違反といった視点からのロシア非難が全世界的に広まっていることです。
このブログでも何回か言及していますが、今回のウクライナ戦争の一番大きな影響の一つは、世界の世論の力の大きさに世界が気付いたことなのではないかと思います。核兵器の使用についても核保有国のリーダーたちは考え直さなくてはならない時期に到達したのです。
それとウクライナ戦争の停戦との関係は次回に。
[2022/4/18 イライザ]
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