NoFirstUseインタビューの和訳第三回目です ――ウクライナ戦争の終結、核兵器の廃絶に役立つ考え方の一歩です――
NoFirstUseインタビューの和訳第三回目です
――ウクライナ戦争の終結、核兵器の廃絶に役立つ考え方の一歩です――
「「ノーファースト・ユース・グローバル」が、ウクライナ紛争で核兵器を使うな、と訴える秋葉前広島市長にインタビューしました。」 というブログ・インタビューの日本語訳第三回目を掲載します。
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AT: トヴィッシュさん
NFUに対して起こった批判の1つは、2番目の核兵器使用なら全くOKという意味になるというのがあります。この批判にどのように応えますか?
TA: 秋葉さん
1番目の使用がない場合、2 番目の使用はありません。数字を数えるとき、234と始めることはありません。1つを数えなければ、2つに達することはできません – 答はそれと同じくらい簡単です。1番目がいなければ、核兵器を使う羽目に陥ることはないのです。
AT: トヴィッシュさん
中国とインドについて考えましょう。彼らはNFU政策を採っていますが、パキスタンと米国は違います。だから、中国とインドはことによると先制攻撃で攻撃され、そうなれば、彼らは、いわば、報復する自由を手に入れることになります。ですから、秋葉さんが話しているのは、NFUが普遍的になった状況ですよね。NFU政策をまだ採っていない核兵器保有国がまだ一部にある時点に、NFU政策の採用が実際に利益になるということを人々に納得させる一方で、私たちはどうやって核保有国9ヵ国の内残りの7ヵ国も説得すべきなのでしょうか?
Wikipediaから
TA: 秋葉さん
トヴィッシュさんが話していることは良く分りません。私たちが焦点を当てるべきなのは、中国とインドです。彼らはかなりの間、NFUを採用し、遵守していますが、彼らに対して核兵器を使用した国はありません。中国とインドの国境はしばしば緊張の源となってきていますが、両国がNFU政策を採用して以来、緊張はかなり緩和しています。
オバマ大統領のような一部の指導者が、NFUを世界化する動きを開始しなければならないでしょう。指導者がすべての関係当事国と協議してプロセスを開始するのが理想的です。世界が今経験しているショックを考えると、交渉のテーブルに座ることを拒否する指導者は、市民の間で人気がありません。
そして、ロシアの懸念の一つが、NATOがウクライナにミサイルを配備することだったことを思い出してください。NFU交渉もその懸念解消に役立つでしょう。そのような交渉が始まれば、世界の世論は、「そもそも、どんな国であっても、核兵器を使うことができるなどという権利を誰に与えられたと言うのだ?」、という疑問を発することになるでしょう。
AT: トヴィッシュさん
あるインタビューで秋葉さんは、2030/40という数字を使っています。それは今あなたが言っていることを反映していますか?
TA: 秋葉さん
はい、かつて平和市長会議による2020年ビジョンキャンペーンがあり、その意味する所は、2015年までに核兵器禁止条約を締結するという中間目標を掲げて、2020年までに全ての核兵器の廃絶を目指すべきであるということでした。そして今、何が起こったのかを見てください。核兵器禁止条約は、私たちの目標からわずか2年後、2017年に現実のものとなりました。世界が複雑で、私たちが市長でしかなかったことを考えると、それほど悪くありません。
しかし、2020年までにすべての核兵器を廃絶するという目標は実現しませんでした。それで今度は、全面廃止の目標を2040年に再設定しようということになりました。「1945年から100年後の2045年はどうか?」、と主張する人もいる。私は5年の違いを強調したいと思います。この「5年」が強調しているのは、核兵器の廃止が、期限を2045年よりも1秒でも早くしようとする、極めて大きな人間の努力の結果であることを、将来の世代に伝える必要があるということです。私たち人類が2040年を目指して誠実な努力をし、それを成し遂げた証しとなります。
しかし、2030年の暫定目標に再度焦点を当てる必要があります。2030年は現実的な目標です。まず第1に、私たちは地球上の多くの人にNFUの考えを広めなければなりません。そのような概念が存在し、実行可能であることを認識している人は多くはありません。今年の残りの期間を、どうにかして大多数の人々の心を動かしましょう。NFU政策が素晴らしく、賢明で、実現可能であることを納得させましょう。
AT: トヴィッシュさん
世の中には他の提案があります。中には、多くの段階と多くの方策を踏んで最終目的に到達するというものもあります。ここで話しているのは、基本的に単一の中間ステップしかありません。
明らかに、途中で解決する必要がある他の多くの細目がありますが、NFUについては特別なものがあります。核兵器を先制使用するつもりがないってことを受け入れるなら、それは国防に関しては通常兵器に全面依存し、核兵器には依存しないことになります。一旦その立場をとれば、その後は基本的に、「私たちは核兵器を実際に必要としないので、他国が核兵器を手放す準備のでき次第、私たちは直ちに全ての核兵器を廃棄する」、と言うことになります。ですから、NFUは、廃止という第2段階に進むための弾みを作り出すことになりますね。
TA: 秋葉さん
その通りです。また、NFU政策の採用は新たな雰囲気を生むことを忘れてはなりません。その段階に達すると、国家間の関係は根本的に変化します。例えば、核兵器を発射するボタンを持ち歩く必要はもうありません。そのような装置が存在しないということは、核兵器保有国の国家指導者の考え方を変えるでしょう。実際、お互いがNFUに到達する交渉プロセスを通して、心が通じるコミュニケーションの手段が生まれるでしょう。世界的な問題に対処するうえで、新たに様々な可能性が見え始めるでしょう。
ロシアがウクライナを侵略した時、地球上にいる私たちの殆どが大きな衝撃を受けました。世界的問題の大部分に対処して取り組むのは外交だ、という考えに慣れていたからです。国際的に認められ、重要な役割を担っている国が突然、軍事行動に訴えるなんて?
今回、世界が共有した衝撃は、世界の多数派の意見と感情を表しています。そして今こそ、この考え方が全ての国の指導者に広がる時です。
今回、この危機が再び明らかにしているのは、外交と交渉が国家主義的な違いや問題を解決する段階に、世界が到達したということです。言い換えれば、私たちの語彙から戦争を消す時が来たということです。
AT: トヴィッシュさん
NFUの長所の1つは、責任負担を転嫁することだ、と私は思っています。抑止力が根拠にしている考え方は、攻撃しないのは、うまく行かないからで、攻撃すること自体が悪いことだという理由ではないからです。しかし、NFUを採用した場合は、攻撃すること自体が酷いことだという判断があるからで、その結果、自分にとってどのようなことが起こるのかが問題なのではありません。だから、核戦争を開始したという責めを負うことにならないよう、自らの責任を果たすのです。その方針を示すことで、他の核兵器保有国が、同様の責任を引き受ける必要が生じます。そうすれば私たちは最早、世界を完全破壊すると脅すことで、世界を救うという観念から解放されます。世界を絶滅させるかもしれないという可能性を世界に押し付けるという概念がおぞましいからなのです。秋葉さんがおっしゃっていたように、世界の言動は本当の変化を伴うでしょうね。
TA: 秋葉さん
はいそうです。NFUは論理的に抑止不要論なのです。抑止論は核保有国が核兵器を使用することを前提にしているからです。言い換えれば、抑止論が乗っている前提が無くなるのです。抑止論崇拝者でさえ目覚めなければならないでしょう。
AT: トヴィッシュさん
核兵器不拡散条約は定期的に見直され、直近の再検討会議は、広島・長崎原爆投下75周年、条約50周年(2020年)にあるはずだったのですが、今年8月まで延期されました。世界の国々が一堂に会し、核兵器について具体的に語るのは、7年ぶりのことです。
全ての非核兵器保有国が核兵器保有国に、お互い同士脅しあうことと、核兵器使用に対する前向きな姿勢は、最早受け入れられないことを、どうやったら理解させられるのでしょうか。
TA: 秋葉さん
ウクライナの事態がそれを明らかに示していて、何も追加する必要はないと私は思います。今の危機は、人類の終わりとなる第三次世界大戦になる可能性があるという事実を指し示しています。理性のある人なら、誰もがそれを非常にはっきりと理解ができます。
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今回で終ります。一回目、二回目もお読み頂ければ幸いです。
[2022/4/11 イライザ]
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