「パール・ハーバー」⇒ 原爆の意味は? ――暗闇ではなく光を!――
「パール・ハーバー」⇒ 原爆の意味は?
――暗闇ではなく光を!――
ここ数日は、1986年に上梓した『真珠と桜』(「ヒロシマ」から見たアメリカの心) から引用しながら、アメリカ人のパール・ハーバー観を考えてきました。1960年代と1980年代を比べてもあまり変ったようには見えなかったのが、前回までのストーリーです。
Wikiwandから
https://www.wikiwand.com/ja/%E3%83%94%E3%83%83%E3%83%84%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B0
今回は、イランアメリカ大使館人質事件後というタイミングでの、ボストンではなく、より保守的なピッツバーグでの反応です。
その頃、 たまたま訪れたアメリカ鉄鋼業の本拠地ペンシルべニア州ピッツバーグ付近でも、反日感情がむき出しだった。レンタカーのタイヤがパンクしたことを、 ある鉄鋼関係者に話したら、「日本人の車だと思って空気を抜いたやつがいるんだろう」という答が返ってきた。その上、「ピストルで撃たれなかっただけラッキーだったな」と、冗談のつもりだろうが付け足した。別の企業経営者は私を前にして、「ジャップが、ジャップが」と言いながら拳を振り回したし、「いまダットサンに乗っているけれど、周りから冷たい目で見られている。とてもたまらないから、 この次の車は日本製以外のものにする」と打ち明けてくれた。バーテン嬢もいる。
ラジオやテレビ、新聞や書籍でも、第二次大戦中の日本軍の残虐行為に焦点を合せたり、日本人の身体的醜さを嘲笑うようなものが増えた。1981年の12月7日は丁度パール・ハーバー40周年だったこともあって特にパール・ハーバーが話題になった。 たとえば「ボストン・グローブ』紙はその日、数ベージの特集を組んでいる。
(中略)
何故、アメリカ人はこれほどパール・ハーバーにこだわり続け、事あるごとにパール・ハーバーを持ち出すのだろう。
その問に答えてくれたのは、 私の教えた学生の一人K君である。コンピュータ科学を専攻し・現在はIBMで働いているが、線型代数、 それに実験講座「広島と長崎の体験」 の両方のクラスで優等生だった。
「第二次大戦、 その中でもパール・ハーバーの屈辱からアメリカが立ち上り遂に勝利を収めるまでの歴史は、アメリカ200年の歴史中最も輝かしい時代であり、 それに疑義をさしはさむような 教育はなされていない。 だから、私達のように第二次大戦終了後生れた人間でも、日本のパール・ハーバー攻撃は悪の権化だと考えているし、第二次世界大戦中とその直後のアメリカの行動は、それと対照的に、一点の汚れもないと信じ込んでいる人がほとんどである」
簡単にまとめとしまうと、アメリカの世論では、「パール・ハーバー」は核兵器使用の十分条件だということなのです。
それを元に・アメリカ議会向けのゼレンスキー大統領演説を分析すると、今のウクライナ情勢は核兵器の使用も許容されるくらいの非常事態だというアピールだと考えられます。それを聞いて、アメリカが即座に核兵器使用の可能性も踏まえてウクライナへの支援を強めるとは思えません。でもアメリカの「パール・ハーバー」観がそこにあることも含めると、これは戦争を何とか平和的に解決したいという意思表示というよりは、力にはより大きな力で対抗すべきだという姿勢の表明のように聞こえます。
そんな生易しいことではない、ロシア軍はウクライナを侵攻し、多くの女性や子どもたちを含めた市民が殺害されている状況を世界に伝えるためには、ましてやそれを止めさせようとするなら、このくらいの言葉では不十分だという反論もあり得ると思います。
しかしながら、そんな時だからこそ私たちは、「暗闇をなくせるのは暗闇ではなく、光だ」というマーティン・ルーサー・キング牧師の言葉を思い起こすべきなのではないでしょうか。戦争を否定する憲法を持ち、核兵器が絶対悪であることを身をもって経験した被爆者たちの言葉に魂を重ねてきた私たち市民、そして日本政府が、平和的解決のために積極的な行動を取るときなのではないでしょうか。
明日、ゼレンスキー大統領が、国会で演説をするとのことですが、その機会を捉えて、平和的解決を先導するという日本の立場を明確にして欲しいと願っているのは、私だけではないはずです。
[2022/3/23 イライザ]
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