ロシアに核を使わせてはいけません ――岸田総理、すぐモスクワに飛んで下さい――
ロシアに核を使わせてはいけません
――岸田総理、すぐモスクワに飛んで下さい――
ウクライナ情勢が緊迫してきました。中でも特に注目しなくてはならないのが、プーチン大統領の核を使用するぞという脅しです。
例えば、電子版の中日スポーツでは、次のように報じています。
テレビ演説で「外部からの邪魔を試みようとする者は誰であれ、そうすれば歴史上で類を見ないほど大きな結果に直面するだろう」と語り、核兵器の使用も辞さない構えを再び示唆した。
核を使用するという脅しをかけることは、明確に国際法違反です。1996年の国際司法裁判所の勧告的意見でも、次のように述べられています。
以上のことから、核兵器の威嚇または使用は武力紛争に適用される国際法の規則、特に国際人道法上の原則・規則に一般的には違反するであろう。しかし、国際法の現状や裁判所が確認した事実に照らすと、国家の存亡そのものが危険にさらされるような、自衛の極端な状況(extreme circumstance of self-defence)における、核兵器の威嚇または使用が合法であるか違法であるかについて裁判所は最終的な結論を下すことができない。
例外規定としての「自衛の極端な状況」に当てはまらないことは、誰にとっても明らかですから、「国際法違反」は疑う余地がありません。
それ以上に、核兵器禁止条約では、「核を使うぞと脅すこと」は禁止されています。さらに、核戦争を防ぎ、1月3日の、「軍拡競争を避けることについての核保有5か国首脳による共同声明」では、わざわざ「5か国は、それぞれの国の保有する核兵器が相手国に対して、また他のどの国に対しても向けられていないことを再確認した。」とまで言っているのですから、ロシアは自らの言葉を守らなくてはなりません。
しかし、事は急を要しています。いくら国際法違反だからと我々が叫んでも、プーチンが実際、核を使う可能性があるからです。クリミアの侵略も国際法違反だったではありませんか。
となると、今回も核の使用について考える際、「万一」核が使われたらという仮定で今後のことを考えなくてはなりません。
特に、日本政府ならびに日本国民にはその「万一」を前提に対応を考える責任があります。それは、核の被害を最も良く知っているからです。岸田総理のように、ウクライナの一部を独立国として認めるのは国際法違反だとしか述べず、核による脅しが国際法違反だとまで踏み込まないのは、広島選出の国会議員として総理大臣を務めている立場を忘れた無責任な発言です。日本が人類史的な役割を果たさなくてはならない責任についての認識が全くないとしか言いようがありません。
官邸のホームページから
万一核が使われれば、世界中の人が、広島・長崎と同様な生き地獄をインターネットとドローンを通して目の当たりにします。そして世界の目は広島・長崎の被爆者に向くでしょう。被爆者たちは、「こうならないように自分たちが何十年も警告してきたことが起きてしまった。最悪の事態だし、被爆者としての責任を果せなかったことを申し訳なく思う。でも、今こそ、今回の教訓を生かして、核兵器を禁止すべきだ」という趣旨の発言をするでしょう。核廃絶運動を熱心にしてきた人たちも同じような気持ちになるでしょう。
それと同時に、こんな事態を避けられなかったのか、という声も当然生じます。何故、被爆者の声がプーチンに伝わらなかったのか、あるいは、何故アメリカやNATOも被爆者の声に耳を傾けた上で、プーチンを説得しなかったのか、等々の声が上がるでしょう。
それよりも、例えば以前も取り上げましたが、イギリスのメイ首相が議会で明確に、他国に対して核を使うと明言したように、米英仏という核保有国も核の使用には躊躇していないのです。
スコットランド国民党のジョージ・ケレバン議員が次のような質問をしました。「メイ首相は自ら、10万人の罪のない男女や子どもの命を奪う核兵器の使用を許可する覚悟があるのか」でした。それに対してメイ首相は、まず、躊躇することもなく「Yes」と言った後で、「核抑止で重要なのは、敵に我々が核を使用する用意があると知らしめることだ」と述べています。(ニューズウィーク日本語版電子版2016年7月21日)
メイ首相でさえ、「躊躇することなく」「核兵器の使用を許可」するのですから、プーチン大統領が躊躇なく核を使っても不思議ではないのです。このような現実を前に、日本政府がロシアやアメリカ、NATOに対して被爆者の代弁者として、何としても核兵器を使ってはダメだというメッセージを伝えてこなかったのかという、批判が生じて当然です。誰かに責任を被せたいという動機も重なると、その結果、核兵器使用の責任は日本政府にある、という論調さえ出てき兼ねません。
その辺りの予測は他の可能性もあり得るとして、今できることは何かと考えると、被爆の実相を世界のどの政治家より良く知っていて当然の岸田総理が、被爆者のこれまでの警告を元に、すぐモスクワに飛び、プーチンを説得すること、さらにワシントンに飛び、バイデンにも同じメッセージを伝え、最低限、核不使用の約束を取り付けるくらいの努力をしないと、日本は歴史に残る汚名を着ることになり兼ねません。
岸田総理、今こそあなたの出番なのです。それを被爆者は望んでいます。
[2022/2/26 イライザ]
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