「明日の法律家講座」で講演しました ――良い質問も沢山頂きました――
「明日の法律家講座」で講演しました
――良い質問も沢山頂きました――
法律の専門家や法律に関心を持っている人以外にはほとんど知られていない存在だと思いますが、「伊藤塾」という司法試験の準備を支援する塾があります。司法試験だけではなく、公務員試験や司法書士等の試験の準備のための講座もあります。
塾長の伊藤真氏は、1995年に発足した塾とは別に2002年には「法学館憲法研究所」設立、民間の憲法研究所として、憲法の研究と憲法に内包されている思想や概念の普及のために粉骨砕身しています。
こうした努力の一環として、伊藤塾の塾生の皆さんを対象にした「明日の法律家講座」が開かれています。時には、塾生だけでなく一般の皆さんに公開されることもあります。実は2月12日に、この「明日の法律家講座」の講師を務めました。このような伝統のある会で話をさせて頂くのは大変光栄です。それも、元々は2020年の3月に渋谷の伊藤塾での対面講演の予定だったのですが、コロナの感染が広まり、二度延期をした結果、今回はオンラインでの講演になりました。
講演の内容は、昨年の10月24日に、「はのねくさのね」という元気一杯のグループから依頼されて東京で対面講演をした内容と、それほどは違っていませんでした。その内容は、「新・ヒロシマの心を世界に」で、昨年10月26日に始まって、全五回(途中他のトピックも取り上げましたので)11月21日まで、1の付く日と6の付く日にアップしました。第一回はこちらです。
今回は法律家を目指す若い人たちが中心ですので、力が入りました。出来れば、Zoomでの講演を全部御覧頂きたいのですが、まだ準備ができていませんので、講演後の質問をお読み下さい。参加された方々の熱心さが良く分ります。時間の都合で10人の方からの質問しか受け付けられませんでした。それでも長くなりますので、私の独断と偏見で三つだけ御披露します。私の回答は、当日のものに加筆・整理しました。
① さいたま市の小学校の教員の方から。
2年前の学校の全国一斉休校では大変混乱したことを思い出しました。さいたま市でももちろん休校し、次の年度の5月末まで子どもたちが学校に来られませんでした。仮定の話なのですが、もし自治体が安部元総理の方針に従わずに休校を行わなかったらどのようなことになったでしょうか。地方自治の本旨である団体自治ということで許されたでしょうか。
(A) 私が市長だったら、インフルエンザ等の場合の対応を参考にして、学校ごとに対応するようにという方針を取ったと思います。つまり、「一斉」休校は行わないということです。全国一斉休校には科学的根拠がありませんでしたので、その点を明確に掲げれば、問題はなかったはずです。
② 都議会議員をしている方から。
政府は長年、死刑もしかりですが、臨時国会召集要求なども無視し続けました。法的義務ということになると、このような違反行為はどのように法律違反状態から回復させるべきなのでしょうか?各種の政府の99条に違反について、どのような効果が生じ、国民はこれに対してどのように対抗していけるのでしょうか?
(A) このような違憲・違法状態について、ほとんどの国民は無知であることが一つ大きな問題です。この点を改善するために、あらゆる手段で違憲・違法状態を広く知ってもらう努力が重要です。その一助にもなりますが、例えば、子どもの権利条約を国内でも守るために、自治体が子どもの権利条例を作るといった、自治体ごとの小さな努力の積み重ねも大切ではないかと思います。また憲法が死刑を禁止しているという事実をもっと多くの人に知って貰うといったことからも道は開けるはずです。
③ 二人の方から同じように趣旨の質問を頂きました。
アメリカの傘の下にいる事実は事実として、日本をあるべき姿勢にするのはどうしたらいいでしょうか。
(A) 核の傘もそうですし日米地位協定もそうですが、日本の立場を憲法を元にして、その通りの発言をすべきです。しかし、例えば日米地位協定の中での、米兵の第一次裁判権が日本側にないのは、日本での裁判の実情がアメリカの基準で見ると著しい人権蹂躙で、それに対して日本側からは言い訳ができないという理由があります。それを正常に戻すには、日本の裁判制度を改革して、人権が尊重されるものに変えなくてはなりません。結局政府が憲法を守るという基本に戻って、政治全体を変えてゆく必要があるのです。
[2022/2/19 イライザ]
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