あけび書房から労作『テニアン』が発売されます
広島の人なら、「テニアン」と聞いて、「ああ、あの島だ」とすぐ分るはずです。B29爆撃機「エのラ・ゲイ」号が、8月6日の未明に飛び立った島です。そして8時15分に広島に原爆が投下されました。
現在では観光地として人気があるようですが、この「テニアン」にも歴史がありました。歴史とは人間が生きてきた軌跡を様々な形でまとめた結果の総称ですが、私がそうであったように、原爆投下との関係以外の、しかもそれ以前の歴史については知識のない人が多いのではないでしょうか。
共同通信社の記者である吉永直登さんが8年にわたる取材の結果、出版に辿り着いた労作です。まずはチラシと、本の表紙を御覧下さい。「類書のない大労作」は誇張ではないのです。
できるだけ多くの人に読んで頂きたいのですが、この素晴らしい本の内容の「はしがき」から抜粋した文章が裏表紙に載っています。
私たち人類は、今、世界が直面している危機的状況を誰にでも分るような形で表現するだけの能力を持っていません。別の言葉で言えば、激動する社会の動きを正確にかつ誰にでも分るような形で表せる語彙を持っていないのです。それを少しずつでも補い、新たな語彙を増やして行くためには、例えば『テニアン』のような形で、人類全体からすれば小さい地域である一つの島に生活してきた、しかも人数としてもそれほど多くはない日本人の生の姿を胸に刻むことで、より大きな歴史の流れを理解し表現できるようになるのではないでしょうか。
この力作を刊行するのは、あけび書房です。大手の出版社ではありませんが、2015年には「梓会出版文化賞」を受賞しています。「一貫して福祉・貧困をテーマにして、しかも気骨ある出版活動」を31年(当時)続けてきた姿勢が認められたのですが、その姿勢は、あけび書房が誕生したときに採用した「あけび憲章」に盛り込まれています。私たちが、社会と向き合う時の参考にもなりますので、その憲章をここに掲げさせて頂きます。
あけび憲章
- あけび書房の出版活動は、読者・筆者とともに「今日を生きる勇気と明日への夢を広げる共同事業」である。
- 私たちは、「人間の幸福」につながる出版活動のみを追い求める。
- そのために私たちは、ささやかであろうがヒューマニズムに満ちあふれた営みを出版をとおして広め合う。また、非人道的な事象をするどく告発し、同時に告発にとどまることなくその背景を正しく問題提起する本づくりを進める。
- 私たちの出版物は、明るさとのびやかさと骨太な素朴さに満ちあふれた「国民的な読み物」であるように努める。そのために、「手にとりやすく、読みやすく、わかりやすく、おもしろい」出版物を創り出すことに筆者等とともに努める。
- 私たちは「だれのために、何のために出版するのか」を常に自らに問い続ける。そして、私たちは出版物を通じて、幸福と平和と自由のための闘いに参加する。
- 私たちは「読者が主人公」の精神を堅持する。そして、私たちが最も大切にする読者は、「苦悩から歓喜へ(ベートーヴェン)」を希求する人々である。
- 私たちは、その読者の生活の現実と彼らの出版物への必要性のみに依拠し、その他の一切の権威からは自由であり、その他の一切の誘惑からは無縁である。
- 私たちは、私たち自身の良心と出版人としての理想にのみ忠実であり、その他の一切の束縛からは自由である。
- そのためには、私たちは学ばなければならない。生きた現実から、生活する人々から、幸福と平和と自由のための闘いから謙虚に学ばなければならない。
- 私たちの出版理念を阻害する自らの怠惰と自らのうすっぺらな感性と、そして外からの抑圧には、真正面から闘わなければならない。
- 「謙虚に学ぶことと、真正面から闘うこと」に対する私たち自身の確信の拠りどころは、出版人としての理念の原点にもどる以外にない。
- 私たちの合い言葉は、「科学とヒューマニズム」「熱い心と冷めた頭脳」である。
- あけび書房が理念を持ちつづけ、その出版活動を発展させることのできる物質的条件は健全経営である。
- 私たちは「あけび憲章」にかなった出版活動を「アジタート・マ・ノン・トロッポ(激しく、しかし、穏やかに)」で追求する
もう一つ、あけび書房は数学教育協議会が編集している『数学教室』も発行して下さっています。数学の先生方が苦労して編集し、お互いに刺激し合って勉強するため、何よりも数学や算数を学ぶ子どもたちのために作ってきた雑誌です。私も、「the Better Angels」というシリーズを毎号掲載させて頂いています。こちらも応援して頂ければ幸いです。
[2019/7/1 イライザ]
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
« 我が家に咲いている花 ――コスモス、向日葵、トウモロコシ―― | トップページ | 『ファクトチェック最前線』を読んで「ファクトチェッカー」になろう »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- #コロンブス問題 (その5) ――#板坂元氏の #無知論―― (2024.06.20)
- #コロンブス問題 (その4) ――#広い視野から #コロンブスを見よう―― (2024.06.19)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #定説でも #憲法99条 は #法的義務 ではない ――#法の支配 は #空文化 されているのでは?―― (2024.03.02)
- #加藤友三郎 #英文冊子 #完成記者会見 を #中国新聞が記事に してくれました ――友三郎を理解する人の輪が広まります―― (2024.02.29)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #災害を #ネタにする? ――#今更ですが シリーズ 2―― (2024.06.28)
- #企業・団体献金禁止 に #反対する #小沢一郎議員 ――文字通り #語るに落ちた―― (2024.05.23)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
- #なぜ今 #公費負担 なのか ―― #公私混同 を #止めさせるため―― (2024.05.18)
「平和」カテゴリの記事
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #駐日大使 の #式典招待は ――#知って貰うため #友達になって貰うため―― (2024.08.31)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #慰霊の夕べコンサート ――#8月9日18時から #廿日市市のさくらぴあ小ホールで―― (2024.07.30)
「歴史」カテゴリの記事
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #コロンブス問題 #30年前にも取り上げました ――#なぜ #大切な点が #伝わらないのでしょうか―― (2024.06.16)
- #石棺で覆い #100年以上かける覚悟 ――#東電 も #このことは分っているはず―― (2024.06.15)
- #できないことを #できると言うのは #詐欺 ――#廃炉はできません―― (2024.06.14)
「アメリカ」カテゴリの記事
- #トランプ #返り咲き ――#8年前との比較から #何が見えるのか―― (2024.11.07)
- #危機感の違い #世代を超えて共有できるか ――#キューバ危機に比肩する危機的状況―― (2024.10.30)
- #ヒロシマの使命を #再確認しておこう ――#その時々の流れに押し潰されないように―― (2024.08.29)
- #コロンブス問題 (その3) ――#江崎玲於奈学長 #式辞の問題点―― (2024.06.18)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
« 我が家に咲いている花 ――コスモス、向日葵、トウモロコシ―― | トップページ | 『ファクトチェック最前線』を読んで「ファクトチェッカー」になろう »
コメント