「いじめ」は世界的問題です (2) ――データで国際比較をしよう――
『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』(法政大学出版局刊)の紹介はこれからも続きますが、今回は、昨日に続いて「いじめ」を考えましょう。マスコミの役割に注目します。
イギリスの人気テレビ番組「Britain’s Got Talent (私訳: イギリスの隠れた才能発掘!)」は、「いじめ」について、積極的に関わり、「いじめはいけない」「いじめを受けた子どもたち、受けている子どもたちよ、頑張れ」といったメッセージを出し続けています。
一寸穿った見方をして、仮にこのような姿勢が、「「涙もろい」視聴者の心理に付け込んで視聴率を上げるための商業的な意図」に基づいていたとしても、「いじめ」についての正しい考え方を発信し続けること、特に「いじめ」を受けている子どもたちに寄り添おうとすることには、大きな意義があります。
それは、日本の子どもたちが日常的にテレビからどんなメッセージを受けているのかと比較することで、ハッキリと浮び上ります。その比較をする前に、まずは「いじめ」についての事実を何点か、統計を見ることで確認しておきましょう。
記憶を辿って最近の傾向を振り返ると、「いじめ」が原因で自殺した子どもたちのニュースが如何に多いのかに、改めて愕然とします。でも、これは主観的な感想です。もう少し客観的なデータはないのでしょうか。あります。その一つが、ユニセフ・イノチェンティ研究所(UNICEF Innocenti Research Centre)が2007年2月14日に公表した研究報告書『Child Poverty in Perspective: An Overview of Child Well-being in Rich Countries』です。その中に、「いじめ」についてのデータがあるのです。グラフ化されています。「いじめ」についての調査はWHO(世界保健機構)による、『学齢児童の健康動態調査(Health Behaviour in School-age Children: HBSC) 2001』です。
過去2か月に「いじめ」を受けたと答えた、11歳、13歳、15歳児の割合ですが、多いのは、ポルトガル、オーストリア、スイス等で、40パーセントを超えています。日本の数字はありませんが、国立教育政策研究所が行った追跡調査の結果を見て下さい。
調査の方法も対象も違いますので、一概に比較はできませんが、「仲間はずれ、無視、陰口、」といった項目について、HBSC調査に近い2001年6月を見ると、男子も女子も40パーセントは軽く超えています。となると、世界的にも「いじめ」の多い国だと考えてもあながち不正確だとは言えない数字です。
これらの数字から何が読めるのかを考えたいのですが、その際に、これらの数字がどのように集められたのか、そしてもう一つの問題、「いじめ」の傍観者はどのような行動を取ったのかについても、グラフがありますので、見ておきましょう。
「いじめ発見のきっかけ」は圧倒的に、「アンケートなど学校の取り組み」なのです。「本人からの訴え」と「本人の保護者からの訴え」を合せた数の倍です。つまり、いじめられている本人がそのことを誰かに訴える環境が整っていないということなのです。日常レベルで「いじめ」に気付くべき担任やカウンセラー、養護教諭もほとんど「いじめ」には気付いていないという驚くべき数字です。マスコミの役割と合わせて次回取り上げますが、もう一つ、周りにいる子どもたちはどのような対応をしているのでしょうか。まず、被害者はどのような対応を期待しているのでしょうか。
当然ですが、一番身近にいる友人と学級担任ですよね。では、それらの人たちはどう対応しているのでしょうか。
テレビ番組BGTが「いじめ」を取り上げているイギリスで、仲裁者の出現率が多いのは偶然かも知れませんが、そうでない可能性についても次回考えたいと思います」
[2019/7/14 イライザ]
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