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2019年5月17日 (金)

死刑制度 (2) ――国際比較――

前回、死刑についての我が国の世論調査で、賛成支持が85パーセントにも上ることが分りました。では、世界に視野を広げるとどのような状況なのでしょうか。

 《死刑制度の概略》

先ず、世界的にどのくらいの国が死刑制度を廃止しているのか、死刑制度が残っているのはどの国なのかを見てみましょう。アムネスティ・インターナショナル日本による資料です。

 

あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国:98

通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国:7

事実上の死刑廃止国:35

 

法律上、事実上の死刑廃止国の合計:140

存置国:58

 

140対58と、廃止した国の方が圧倒的に多いのですが、日本は存置国の一つです。他の57か国はどんな国なのでしょう。これまたアムネスティの資料です。

アフガニスタン、アンティグアバーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ボツワナ、チャド、中国、コモロ、コンゴ民主共和国、キューバ、ドミニカ、エジプト、赤道ギニア、エチオピア、ガンビア、グアテマラ、ギニア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、日本、ヨルダン、クウェート、レバノン、レソト、リビア、マレーシア、ナイジェリア、朝鮮民主主義人民共和国、オマーン、パキスタン、パレスチナ自治政府、カタール、セントキッツネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シンガポール、ソマリア、南スーダ ン、スーダン、シリア、台湾、タイ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、アラブ首長国連邦、米国、ベトナム、イエメン、ジンバブエ

この中には韓国が入っていません。韓国では法律上、死刑は残っていますが、1997年以来死刑は執行されておらず、アムネスティは、「事実上の廃止国」と位置付けています。またアメリカは、死刑制度についての管轄権は州にあり、16の州が死刑を廃止しています。

特別の意味がありそうにも思えるのは、存置国と人口の関係です。人口の多い順に国を並べると、①中国②インド③アメリカ④インドネシア⑤ブラジル⑥パキスタン⑦ナイジェリア⑧バングラデシュ⑨ロシア⑩日本ですが、ブラジルは、通常犯罪については廃止していますし、ロシアは、チェチェンを除いて執行停止状態ですので、10か国中8か国が存置していることになります。人口の多い国では死刑が行われる理由があるのかもしれません。この点についての考察を探してみましたが、見付かりませんでした。何方か御存知の方に教えて頂ければ幸いです。

もう一点、法務省が千葉景子大臣の時に設置した「死刑制度のあり方についての勉強会」で日弁連の代表がプレゼンに使った地図を見ると、死刑が残っている国々は、東のアメリカから太平洋を越えてアジア、そしてアフリカまで、かなりきれいな形で帯状に続いています。この地域は気候が良くて、人口の多い国々が集まっているためにこのような地理的分布になったのか、それとは別の理由で、帯状の国々には死刑制度が残っているのか、この点についても御存知の方がいらっしゃれば御教示頂きたいと思います。

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[2019/5/17 イライザ]

 

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コメント

死刑制度と宗教は密接な関係があると思います。
死刑制度が残っている国の殆どがイスラム教国ではないでしょうか。
そして北朝鮮や中国のような独裁国。
日本は、悪い人は地獄に落ちてほしいと強く思っているからではないでしょうか。
そして、話題になっているアメリカのアラバマ州の中絶禁止法も、宗教でしょうね。強姦被害者であっても中絶は禁止という女性の人権を無視しているような法も。
死刑を廃止している国でも、魔女の処刑は認めるのではないでしょうか。
死刑で犯罪が少なくなる事はないでしょうね。
犯罪の抑止でなく、死刑になるほどの犯罪を犯した人をどうするかだけだと思います。
二度と社会に復帰させない究極が死刑ですし、他の方法が寿命をはるかに超えた懲役年数や終身刑。
他者の生存権否定する人には、生存権は存在しないと思います。
社会はお互いを認める事で成り立っているのですから。生存権は持って生まれた権利でなく、社会の中で成り立っていると思います。
孤島でたった一人で暮らしている人には、どんな権利も義務も存在しないと思うからです。
ところで、死刑を廃止している国の中には、アメリカのように、司法で判断する前に、行政官の警察官が個人の判断で射殺してます。
見かけは死刑制度を廃止していますが、司法を介さない死刑が実行されているのはどうなんでしょうか。
日本は死刑制度があっても、警察官は簡単には射殺しませんし、自らが犠牲になっても犯罪者を捕獲して司法に任せます。
死刑制度があっても、警察官が簡単に射殺する国よりまともだと思います。
死刑制度も含めて犯罪者をどうするか、単に死刑制度の反対だけでなく考える必要はあると思います。被害者家族を置き去りすることなく。

「やんじ」様

コメント有り難う御座いました。

御指摘のように死刑を考えるに当って、複雑多様な視点からアプローチしないといけないことは、言うまでもありません。

それと、「他人の生存権を否定する人の生存権は認められない」という主張からは、その判断をする人の生存権も認められないのですから、順に辿って行くと、無限連鎖に陥ってしまいます。

前向きの議論にシフトするためには、憲法13条の「すべての国民は個人として尊重される」が出発点になるのではないかと思います。

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