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2019年5月10日 (金)

幸せな日本のお金持ち ――世界に冠たる優遇税制――

昨年の8月2日の本ブログでは、立命館大学の大田英明教授の論文を取り上げて、「アベノミクスに騙されるな」そして、「経済成長を促すためには累進課税が効果的だ」という点をお伝えしました。

理論的にはそれで十分なのですが、今回は、もう少し単純に日本のお金持ちが、世界的にも幸せであること、つまり、税金という面で如何に優遇されているかをいくつかの数字でお伝えしておきたいと思います。

アメリカでも同様の長期的な傾向がありますし、それが、トランプ政権を誕生させたという考え方もあるのですが、日本の場合、アメリカ以上の優遇措置があるにもかかわらず、それに対しての市民レベルの反発があまり見られないのが不思議だと思います。

1970年代から80年代にかけて、特に、エズラ・ヴォーゲル著の『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン』でも称賛されたように、日本社会が均質で貧富の差も欧米ほどは酷くないことが、我が国の誇りであった時代がありました。それは数字で理解できます。しかし、現在は、アメリカに追随した結果、アメリカとほぼ同じくらいの貧富の差が生じています。先ずは税率です。

所得が1億円の場合の税率

1980年 所得税75% 住民税13% 合計88%

2015年 所得税45% 住民税10% 合計55%

アメリカの場合ですが、

高額所得者の最高税率は、

1980年代で、              70%

現在は                        40%

です。住民税は入っていませんので、日本とドッコイドッコイです。

しかし、問題なのは、株式譲渡や配当利益に対する課税率です。

日本の場合は、分離課税、つまり他の所得とは別に課税されることになっていて、その税率は20%です。

それに対して欧米の場合はどうなのかというと、

アメリカ          30%

イギリス         28%

ドイツ            26%

フランス         60%

です。日本が一番低いことに注目して下さい。

この点を分り易く示したグラフがあります。東洋経済誌On Lineに『所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実』と題して掲載された梶原一義氏による記事の中のグラフです。

 

Photo_100

 

グラフ中の説明が読めればそれで十分なのですが、青線は、合計所得金額中に株式譲渡等、分離課税で税率が低い所得の割合を示しています。1億円を超えると、指数函数的にその割合が増えています。それと意味はほぼ同じなのですが、一億円を超えると、所得税の負担率が急激に下がっています。

累進性の低いことがこのようにドラマチックに示されているのですが、最後に改めて、何故「累進課税」が正当化され得るのかという理屈をごく単純化された形でまとめておきましょう。

たとえば、月給が10万円の人がいたとして一年では、120万円の所得になるとしましょう。その人に対する税率が10%だとすると、12万円税金を払わなくてはなりませんので、手元に残るお金は108万円です。

一方年収4億円の人がいたとして、仮に、税率は75%だったとしましょう。税金は3億円ですから手元には1億円残ります。

一年間108万円で暮すのが大変なことは、誰にでも分ります。一方、税率が高くても、一年1億円で暮したとしても随分ぜいたくな暮しのできることは、言うまでもありません。すべての人が、それなりに人間的な生活が送れるようなシステムとしては、このように「累進性」が加味されたものが必要であることは理解して頂けたのではないかと思います。

[2019/5/10 イライザ]

 

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コメント

今の資本主義経済では、科学技術の進歩は、生産性の向上を促し、それは所得格差の拡大を招きますが、今後、AIの実用化、普及で、あらゆることの自動化=生産性の向上の加速が予想され、それに伴い、益々所得格差は拡がりますので、富の再分配こそが最も重要な課題になると思います。

ただ、現実をみると、今の政治は、こうした時代の変化に対応できていないばかりか、日本は逆行しているとすら思えます。50種類もある税金のうち、累進性が採用されているのは僅かであり、その他にも、年金や保険、NHK受信料、あるいは有料道路のように、強制的に一律徴収されるものも少なくありません。「社会保障と税の一体改革」では、とても間に合わず、(あくまで例ですが)ベーシック・インカムのような、まるで違うものへの移行しかないように思えますし、かつて民主党政権が主張していたように、捕捉率の低い徴収より、給付によって再分配する方が効率的にも思えます。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

御指摘のような傾向のあることを前提にして、大きな未来像を描くといった種類のことは、御指摘のように、現在の日本政府やリーダーたちには無理なような気がします。

もう一つの学習形態である、歴史から教訓を得ることも、世界レベルで放棄してしまったようです。第二次世界大戦後のシステムがうまく機能したのは、ケインズらを中心に、いわゆるブレトンウッズ体制という画期的な青写真が描かれたからですが、その中に盛り込まれた、優れたアイデアを破壊することが、1970年代以降の世界の歴史に他ならないからです。

 

 

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コメント

今の資本主義経済では、科学技術の進歩は、生産性の向上を促し、それは所得格差の拡大を招きますが、今後、AIの実用化、普及で、あらゆることの自動化=生産性の向上の加速が予想され、それに伴い、益々所得格差は拡がりますので、富の再分配こそが最も重要な課題になると思います。

ただ、現実をみると、今の政治は、こうした時代の変化に対応できていないばかりか、日本は逆行しているとすら思えます。50種類もある税金のうち、累進性が採用されているのは僅かであり、その他にも、年金や保険、NHK受信料、あるいは有料道路のように、強制的に一律徴収されるものも少なくありません。「社会保障と税の一体改革」では、とても間に合わず、(あくまで例ですが)ベーシック・インカムのような、まるで違うものへの移行しかないように思えますし、かつて民主党政権が主張していたように、捕捉率の低い徴収より、給付によって再分配する方が効率的にも思えます。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

御指摘のような傾向のあることを前提にして、大きな未来像を描くといった種類のことは、御指摘のように、現在の日本政府やリーダーたちには無理なような気がします。

もう一つの学習形態である、歴史から教訓を得ることも、世界レベルで放棄してしまったようです。第二次世界大戦後のシステムがうまく機能したのは、ケインズらを中心に、いわゆるブレトンウッズ体制という画期的な青写真が描かれたからですが、その中に盛り込まれた、優れたアイデアを破壊することが、1970年代以降の世界の歴史に他ならないからです。

貧困単身シニアの身近な体験。
▸貧困者でも手数料ナシなら何とか→の外国債券→が利子には
(たしか”株”にはもう課せられていない)復興税が。'13年~25年間!?
▸地元信用金庫・懸賞金付定期預金→まれに最下位賞の1000円が
当たる。が...、
実施前⇒20%→ 800円
実施後⇒20%×2.1%→ 797円 (;´д`)
▪5/9朝日朝刊11面 大沢真理 元東京大学教授
...スウェーデンやイタリアには年金額では生活保護相当額より
低い場合、税金で補填する最低保障の仕組みがありますが、
日本にはありません。...
年金額はとっぱらって万人向けに⇔ベーシック・インカム!?

更に厄介なのは、生産性の向上だけにとどまらず、それを遥かに上回る信用創造やデリバティブによって作り出される机上の「価値」によって、ギャンブルと化したグローバル経済ですが、これについては対策が思い付きません。

「硬い心」様

コメント有り難う御座いました。

かつてのアメリカで(そして今も続いているのだろうと思いますが--)、社会福祉制度を改悪するインセンティブになったのは、ごく一部の人たちの不正であり、それ以上に捏造された「贅沢」というイメージでした。

日本社会でも、同じようなことが行われてきているのですが、政府に対する抗議の声が大きくならないのは何故なのでしょうか。

「工場長」様

コメント有り難う御座いました。

経済の「金融化」と、ビッグ・データに象徴される個々の人間の「点化」(造語です)が、処理速度の桁違いの高速化で、とんでもない突然変異を創り出しているような気がしますが、おっしゃるように、短期的に効果のある薬があるかどうかも分りません。

もう一度、マリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読み直すところから始めたら、などと考えています。

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