海洋プラスチック問題 (2) ――企業レベル・国レベルでの取り組み――
昨日に続いて、マッカーサー財団が、今年の3月に、プラスチック経済についての世界的規模での真剣な取り組み状況をレポートしました。これは、昨年始まったビジョンを具体化するものです。その基本的な考え方は、プラスチックの利用について、循環経済という視点から取り組むということです。その決意をした上で、どのような具体的な活動が始まったか、参加者の決意表明、あるいは宣言と言っても良いと思います。
たとえば、カルフール、コルゲート、マース、ネスレ、ジョンソン、コカ・コーラ、ユニリーバ等の世界的企業の多くが、プラスチック包装の年間使用量を公表することになったという成果が報告されています。さらに、次のような真剣な取り組み (約束) を実行する責任のあることが示され、また報告されています。
- 消費財の生産や小売業者は、包装材中のリサイクルされた材料の量を、現在の世界平均である2%から、2025年までには25%にまで増やす。
- メジャーなビジネスならびに国家は、問題のあるプラスチックや不必要なプラスチックの使用を中止する--その中には、PVC、使い捨てのプラスチックのストローやレジ袋が含まれ、その中の多くのものは今年中に中止することが望まれる。
- 40のブランドと小売業者が、リユースとリフィルの計画を増強している。
これに対して、我が国での対応はどうなのかというと、外務省が「海洋プラスチック対策--日本企業の先進例」として挙げている企業リストが参考になります。
スターバックスやマクドナルドなどの外資系の飲食店が積極的にプラスチック・ストローの廃止に取り組んでいるのに対して、日本企業ではガストくらいしか名前が出て来ないのは残念ですし、国レベルの対応もEUに代表されるヨーロッパとはかなり違っています。
例えば欧州議会では、ストローや綿棒、食器、マドラー、風船に付ける柄など、日常的に使われるプラスチックを禁止する法案が2018年10月に採択されました。それを実施するためには加盟各国での法律が必要になりますが、2021年までに加盟国でこの法律を施行することになりそうです。英国も、EU離脱後の移行期間内にこの法案が成立・施行された場合には、国内法として導入することになるのだそうです。
日本やアメリカは、G7で、署名5か国とは袂を分かち「海洋プラスチック憲章」に署名しませんでしたが、国家と都市は違います。たとえばアメリカのシアトル市は、スターバックスの本社があることで有名ですが、2007年からプラスチックの削減に向けた条例を作り、2018年には、プラスチック・ストローを含むプラスチック製食器類の使用を禁止しました。リユース可能、堆肥化可能等の条件のあるプラスチックは例外です。
こうした都市レベルによるイニシャティブは、アメリカの他の都市でも行われていますし、温暖化防止の努力や核兵器禁止のための努力においても同様に、全米の都市に広がっているのです。
都市レベルでこのような成果が挙っているのは、国レベルでは市民の声が政策に反映され難くても、都市レベルではそれが可能だという現実があるからです。
となると、私たちが取り組むべき具体的な行動が見えてきます。一つには、プラスチックの使用を減らす努力を続けること。レジ袋を使わない、プラスチック・ストローを使わない等、個人レベルですぐできることが沢山あります。そして、市内の清掃活動も大切ですから、続けましょう。明るい社会づくり運動の皆さんが得意としている分野でもありますし、企業ごとに一定の地域を清掃してプラスチックごみも含めて、ごみを回収することも広く行われています。河岸の清掃も多くの都市では定期的な市民活動として続けられています。
こうした実績を元に、プラスチックのストロー使用禁止を含めた、プラスチック製品の使用についての条例を都市単位で実現して行くことは可能です。
我が国でも、未だ条例の制定にまではつながっていなくても、多くの都市で市民が中心になってこのような取り組みは行われています。さらに、ごみの分別等の意識の高いことは、世界的にも評価されています。その結果として、我が国のプラスチック製品の使用後回収率は84%にも上るという数字があるのですが、これをさらに改善しながら、日本政府も同時に変えて行く努力も続けられれば鬼に金棒だと思います。
[2019/5/1 イライザ]
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