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2018年7月 7日 (土)

北東アジア非核兵器地帯の創設と市民社会 ――米朝会談後、日本政府が「はぶてる」ことのないように――


北東アジア非核兵器地帯の創設と市民社会

――米朝会談後、日本政府が「はぶてる」ことのないように――

 

数十年に一度の災害が起きている、梅雨前線による大雨で亡くなられた方々にお悔やみを申し上げます。被災者の方々にはお見舞い申し上げます。そして多くの皆さんが影響を受けている今、気象庁や各メディア、自治体等からの情報に最大限の注意を行い、避難指示や勧告に従って身の安全を確保されるよう、祈っています。

 

さて、Jeju Forum for Peace and Prosperity 2018、つまり「平和と繁栄のためのチェジュ・フォーラム2018」で私が参加した分科会の一つは、「朝鮮半島の新たな平和パラダイムの形成と市民社会の役割」(司会は韓国国家統一研究所 (Korea Institute for National Unification) の上級研究員のチョー・ハンブン博士)でした。そこでの、私の発言を以下、簡単に報告させて頂きます。

 

Photo

 

米朝会談後すぐの韓国での会議ですので、当然、米朝会談を取り上げたいと思いました。その際、三つのポイントが実現できるよう内容にしたいと思っていました。

 

 米朝会談について、単なるオブザーバーとしての意見ではなく、会談の結果を生かせるよう積極的な姿勢を示す。

 日本政府がこれ以上「はぶてない」で、かつ孤立しないで済むようなシナリオを描く。

 国と国との関係が中心ではあっても、私たち市民が直接、何らかの形で関われるような具体的な提案を盛り込む。

 

そして、出発点は、米朝会談実現の暁にはこのようなシナリオで進めて下さいと、トランプ大統領に出した手紙、そして会談が実現することになってからトランプ大統領とキム委員長に出した手紙です。以下、箇条書きで、発言の内容の要点です。複数の固有名詞が並ぶところでは、アルファベット順で記します。

 

l キム委員長、トランプ大統領、ムン大統領のリーダーシップによって、南北会談、米韓会談、そして米朝会談が開かれ、朝鮮半島の非核化そして北東アジアの平和に向けた大きな扉が開かれたことを歓迎し、三人に心から敬意を示し感謝する。

l 核保有国のトップが話し合うことで、大きな進展が生れることを期待しても良いことは、1986年のレイキャビックにおけるレーガン・ゴルバチョフ会談の例がハッキリ示している。そこでは、両国が全ての核兵器を廃絶する合意が出来ていたのだ。

l それが実現しなかったのは、軍産複合体、冷戦時代を作り支えていた神職者であるかのような力を持っていたテクノクラートたちだが、もう一つ、世界の注目度が今回とは違っていた。

l 世界が見詰める中でのシンガポール会談の結果は、それほど簡単にはつぶせない。

l さらに、実現はしなかったものの、レイキャビックで両首脳が画期的な合意に至ったのは、世界の世論がそれを望んでいたからだ。それは、世界に存在する核弾頭数や、核実験の回数等の経年グラフを見れば明らかだ。

l この点については、2017年の原水爆禁止世界大会の分科会での発言に詳しいので、是非、お読み頂ければと思います。

l キム委員長、トランプ大統領への手紙で提案したのは、北東アジア非核地帯 (NEA-NWFZ) の創設だ。それは、この地域の中心になる南と北そして日本の三ヵ国は核兵器を持たない、そして米中ロの三ヵ国は、中心に存在する三カ国には核兵器を使わないという条約によって作られる。

l この枠組みこそ、北の非核化を推進する上で一番説得力があり合理的なシナリオだ。

l 昨年の分科会でも、核兵器禁止条約ができた背景には、世界の半分が既に核兵器禁止地帯になっている事実のあることを強調している。

l 米朝会談後の方向として、日本政府がリーダーシップを発揮してNEA-NWFZを主導することで、北東アジアの平和と繁栄に大きな役割を果すことができる。そんな役割に共感する外務省の官僚や保守派の政治家を育てるプログラムも必要かもしれない。

l 日本政府がそのような積極姿勢を持つことで、日本の孤立化、そして最悪の場合にはそれを口実にして日本の核保有にまで及ぶ可能性を回避できる。

l しかし、世界のNWFZの歴史を見ると、どの地域でも実現までには10年以上掛っているのが普通だ。核兵器を持たない国々がNWFZを実現するのに10年掛るのであれば、もう核兵器を持っている北朝鮮も一緒になってのNWFZにはもう少し時間が掛るかもしれない。でも、辛抱強くその実現のために努力することで、必ず目標は達成できる。

l そこで、大切なのが都市の役割だ。スコットランドの独立は、各兵器の廃棄とNATOからの離脱、そしてEUへの参加が目標だと言って良いのだが、核廃絶運動が国民投票という実定法上の制度を使って核廃絶のための意思を確認するまでに成熟しているのは、スコットランドの全都市が非核都市宣言をしていることの延長線上にある。

l それは応用問題として日本にも当てはまる。日本の自治体の多くは「非核自治体宣言」をしている。全ての都市が「非核自治体」になれば、それは核兵器禁止条約に反対している日本政府に対する強力な意思表示になる。既に宣言をしている自治体は再確認の決議を採択することで、運動を盛り上げることが可能だ。

l しかも、これは各自治体の中で、何人かの議員を巻き込めれば比較的、簡単に提案できることだ。選挙で政権をひっくり返す前段としてこのような行動は新たなエネルギー作りのために有効だ。

l さらに、日本の都市と韓国の都市の間には、姉妹都市の提携をしているところが多い。その関係を生かして、「非核兵器姉妹都市」関係を作って行くことで、NWFZへの道筋を作ることも可能だ。

l 朝鮮民主主義人民共和国でも韓国との融和が進み、統一の機運が高まれば、都市の存在が重要になる。そのときには、南北と日本の都市の間で、「非核兵器姉妹都市」関係が可能になる。

l これは、この分科会で他の発言者が予測していた北の都市の位置付けにピッタリ重なる考え方だ。

 

 

[2018/7/6 イライザ]

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