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2018年7月 3日 (火)

ノルマンディーも頑張っています ――戦場を平和の砦に!――


ノルマンディーも頑張っています

――戦場を平和の砦に!――

 

D-Day」という表現は、欧米では常識の一部になっていますが、日本では日常会話の中で気軽に使われる種類の言葉ではありません。194466日、フランスのノルマンディー地方に連合国軍が上陸、ナチス・ドイツに対する第二の戦線を開き、それが大陸反攻の切っ掛けとなり、第二次世界大戦の勝利に導いた大切な日です。

 

ノルマンディーについても皆さんは良く御存知だと思いますが、モン・サン・ミシェルがあり、大人の街ドーヴィルもノルマンディーにあります。チーズ手も有名で、カマンベールもノルマンディーですし、印象派の名画が描かれたジヴェルニー、そして映画で有名になったシェルブールもここにあります。政治に関心のある人には、ル・アーブルの再処理施設の方がピンとくるかもしれません。

 

しかし、歴史的にはD-Dayの意味は大変大きいので、この地方をユネスコの世界遺産に登録しようという動きがあり、既に登録されている原爆ドームの事例から学べることがあるのではないかと、ノルマンディー地方の担当者が広島までやって来たりしています。

 

そのノルマンディー地方では、2016年から「平和」に力を入れ、かつては戦場として世界史において重要な地域であったノルマンディーを平和を発信する地域として生かして行こうという積極的な事業展開が行われています。

 

Jeju Forumの報告で、突然ノルマンディーが出てくるのは意外かもしれませんが、ノルマンディー地方 (日本の行政制度にはありませんが、「Region」つまり「地方」が県より大きな行政単位になっています) のヨーロッパ・国際局の課長さんが、Jeju Forumに参加していたのです。プログラムの中の講演者リストを見て、「是非会いたい」と連絡をしてきてくれました。

 

彼の名前はNicholas Pavlovic、以下、ニコラスさんと呼びますが、27日の夜、ホテルでお会いして一時間以上、熱心にノルマンディーの取り組みについて語ってくれました。そのサワリの部分です。

 

Photo

ニコラスさんと一緒に

 

元フランスの国防省だった、エルベ・モラン氏が地方の大統領に就任した2016年から、ノルマンディーを平和の地域として世界的に位置付けるための努力が始まった。2016年には、小さい規模の平和フォーラムを開いて、今年の本格的な「平和のための世界フォーラム」の下準備をした。

 

その萌芽となったのは、2014年のD-Day70周年の際に「ノルマンディー・フォーマット」と呼ばれる外交交渉のメカニズムがノルマンディーででき、その後、ロシアとウクライナとの間の問題をドイツとフランスが仲介するような形で平和的解決策を模索してきたことがある。

 

来年は、D-Dayから75周年になり、当時、前線で戦った元兵士たちも少なくなっている。彼らの生きている内に、ノルマンディーが平和を象徴する地域としてしっかりした地歩を固めたい。

 

成功させるためには、政治家や学者だけではなく、スポーツ選手や芸術家、企業の関係者等、あらゆる角度からの参加者に協力して貰った。例えば、今年のフォーラムで配ったメモ帳は、グラフィック・デザイナーによるデザインだけではなく、香水メーカーに依頼して、紙に香水を染み込ませて貰った。良い匂いだろう?

 

Photo_2

 

Photo_3

金の縁取りもしてあってきれいなメモ帳なのですが、香りを伝えられないのが残念です

 

来年のフォーラムでは今年と同じように、大きな全体会議や、考え方や意見の違う人々が冷静に議論する「ディベート」の場、そして教育的プログラムなどを盛り込みたい。特にノルマンディーが力を入れていることは、二つの柱として述べられる。

 

一つは、若者、つまり高校生や大学生に参加して貰い、彼らの創る未来の平和のデザインをする上での助けになりたい。もう一つは、意見の異なった人たちにフォーラムに来てもらい、一つの場で議論をして貰うということだ。

 

そのために、国家レベルではなく、地方自治体としてのノルマンディー地方が効果的な役割を果せると思う。それは、国家とは違う環境を提供することで、reconciliation、つまり和解が可能になるからだ。

 

こんなことが可能になってきたいる理由の一つは、地方や都市が今までより力を持って来ているからだ。その理由の一つは、社会が多様化し、その価値観を生かして行くためには、国家という単一の組織だけでは対応できなくなっていることにある。それを理解した国家が、中央集権的な力を分散するシステム作りを推進しているからだ。

 

平和会議のメモ帳に香水の香りがするなんて如何にもフランスらしい工夫ですが、香水から戦争の発想が起きることはないでしょうから、平和を追求する上でも本質的な関連があるのかもしれません。

 

そしてノルマンディーが目指しているのは、今までヒロシマや被爆者、そして私が主張してきたことそのものであるような気がします。それをノルマンディーがそっくりそのまま実現しようとしているように見えるのですが、来年は6月にノルマンディーに行けたら素晴らしいなと思っています。

 

こんな、前向きのメッセージから始まった、今回のJeju Forum for Peace and Prosperity 2018、つまり「平和と繁栄のためのチェジュ・フォーラム2018」ですが、翌628日にこちらの会議に参加して、感動することばかりの一日になりました。一言でまとめれば、世界は動いています。動いていないのは、日本だけかもしれません。変りつつあるエネルギーに直接触れて、それを増幅したいと強く感じましたが、次回はそれを報告・説明します。

 

[2018/7/1 イライザ]

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