『きみはサンダーバードを知っているか』 ――豪雨災害からの教訓 (8)――
『きみはサンダーバードを知っているか』
――豪雨災害からの教訓 (8)――
自衛隊を災害救助隊に進化させるというアイデアを聞いて、多くの人が思い浮べるのが、「サンダーバード」だったとしても不思議ではありません。それは、26年前、当時、広島大学で大活躍をしていた、現早稲田大学教授の水島朝穂さんが、「同志」とともに世に問うた、『きみはサンダーバードを知っているか』のお陰です。
この本は、今やこの分野における古典的な存在にまでなっていますが、その理由はハッキリしています。まず、その基本的考え方は誰にでも理解できるストレートさを持ち、しかもテレビの人気番組のコンセプトをそのまま現実世界に移植していることから、子どもたちにも親しみを持って受け入れられたからです。
私と同じように、そもそも「サンダーバード」とはと、聞かなくてはならない人のための解説ですが、ここでも水島先生御自身の言葉で語って頂きましょう。昨年11月、『きみはサンダーバードを知っているか』発刊25周年を迎えて、先生の「直言」というブログにアップされた一文からの引用です。
1964年に英国で制作された連続テレビ人形劇で、2026年の近未来を舞台に、大事故や災害から人命を救い出す国際救助隊の活躍を描いたもの。日本では1966年4月10日(日)18時からNHK総合テレビで初放映された。私は中学1年生だったが、毎日曜、生でみていた。その後、民放でも繰り返し再放送されている。
サンダーバードそのものの説明は、水島ゼミ21期生の菅野仁啓さんによる簡潔な説明が、同じブログ内にありましたので、それを引用させて頂きます。
サンダーバードは、近未来の世界において、大金持ちのトレーシー一家が世界のどこかにある孤島、トレーシー・アイランドを拠点とした「国際救助隊」を組織し、各種のスーパーメカを使って、世界中で起きるさまざまな災害に立ち向かい、世界の人々のために身元を隠して活動するという人形劇である。CGのない時代だったが、最高級の撮影テクニックを駆使しており、半世紀が過ぎたいまみても、不思議なまでのリアリティーを感じる。彼らの使うメカは多種多様で、深海から太陽直近まで活動をするという圧倒的な性能を持ち、また独特なメカニックデザインが光るといったもので、メカ好きの私にとってはたまならなかった。何よりも「国際救助隊」の活動の目的は誰かを「倒す」ことではなく、「救う」ことなのである。この点は、それまで私がみていたテレビ番組とは決定的に違っていた。
このサンダーバードを現実の世界で、日本という国家のイニシャティブにより、しかも平和憲法の目指す方向の具現化として、自衛隊という組織を進化させる形で実現するというのが水島先生たちの考えでした。そこの根底のあったのは、災害救助そのもののあり方の問い直しでした。それを踏まえて、『きみはサンダーバードを知っているか』執筆の目的を水島先生は次のように述べています。
自衛隊の「余技」としての災害派遣ではなく、この国の災害救助組織のあり方を再考することである。
このような「再考」が、1990年代に行われていれば、今回の豪雨災害後の国や自治体の動きが大きく変っていたのではないでしょうか。でも今からでも遅くはありません。私も「サンダーバード」の世界について少し勉強した上で、災害救助隊についての検討を進めたいと思っています。
[2018/7/16 イライザ]
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
コメント
« 土砂災害防止法と予算 ――豪雨災害からの教訓 (7)―― | トップページ | 非武装中立論 ――豪雨災害からの教訓 (9)―― »
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- #教育勅語 と #『はだしのゲン』 ――#朝日新聞デジタル記事 の #松井市長インタビュー が答になっています―― (2024.01.15)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
- ポパイの好きな ほうれん草(2022.06.14)
- 『きみはサンダーバードを知っているか』 ――豪雨災害からの教訓 (8)――(2018.07.17)
- 憲法51条も忘れないで下さい ――大西健介議員、高須克弥院長の言い分は別にして――(2017.05.21)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #災害を #ネタにする? ――#今更ですが シリーズ 2―― (2024.06.28)
- #企業・団体献金禁止 に #反対する #小沢一郎議員 ――文字通り #語るに落ちた―― (2024.05.23)
- #アメリカ の #臨界前核実験 に #抗議の座り込み ―― #これが #G7広島サミットの意味ですよ!―― (2024.05.21)
- #なぜ今 #公費負担 なのか ―― #公私混同 を #止めさせるため―― (2024.05.18)
「平和」カテゴリの記事
- #ハワイ大学での講義 ―― #反戦・反核がテーマです ―― (2025.01.27)
- #内灘闘争の歴史を学ぶ ――#JR総連中国地方協議会第38回定期委員会2部―― (2024.10.06)
- #式典から排除 の #基準は何ですか? ――#誰の基準か #何が目的か―― (2024.09.01)
- #駐日大使 の #式典招待は ――#知って貰うため #友達になって貰うため―― (2024.08.31)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
「日本政府」カテゴリの記事
- #先制不使用 #実現のチャレンジ ―― #国連総会までは成功例があります ―― (2025.02.04)
- #日本政府抜きの核廃絶 #全ての自治体が #先頭を走る積りで (2024.12.15)
- #「原爆投下は合法である」と #日本政府は主張 #変えられるのか #変えられないのか (2024.12.14)
- #報道1930を視た方からの #質問に答える ――#「原爆投下は合法である」が #日本政府の一貫した主張―― (2024.12.13)
- #中間目標として採用するための条件 ――#締約国会議へのオブザーバー参加では?―― (2024.12.04)
「若者」カテゴリの記事
- #慰霊の夕べコンサート #成功裡に終了 ――#80周年の趣向は? #皆さんからも御意見を!―― (2024.08.12)
- #徳目 を教えるのに、なぜ #明治時代 の #遺物 だけに限定するのか ――#平安時代 も #日本の歴史 の一部―― (2024.01.14)
- #お年玉 には #安野光雅 ――#表紙 だけでも読んで欲しい―― (2023.12.30)
- 数学を学ぶとは・教えるとは ――「数学人の集い」の楽しみ方―― (2023.06.11)
- 学校でとんでもないことが起きているようです。 ――生徒や学生はどうすれば良いのでしょうか―― (2023.06.08)
「マスコミ」カテゴリの記事
- #詭弁論理学 の #出番です ――#小児型強弁―― (2024.07.14)
- #大本営発表 が #狼少年 に ――#建物の中に避難・地下に避難 と #絶叫―― (2024.05.31)
- #TimWalberg #下院議員の #広島・長崎発言 ―― #事実誤認 を #指摘する のは #私たちの責任―― (2024.04.06)
- #何をしたのか を #特定して下さい ―― #正確さを犠牲にする のは #権力への擦り寄り?―― (2024.03.30)
- #加藤友三郎 #英文冊子 #完成記者会見 を #中国新聞が記事に してくれました ――友三郎を理解する人の輪が広まります―― (2024.02.29)
「憲法」カテゴリの記事
- #袴田巌さん #再審無罪 ――#60年近くの闘い―― (2024.09.26)
- #ヒロシマの使命を #再確認しておこう ――#その時々の流れに押し潰されないように―― (2024.08.29)
- #政府の #愚民化政策が大問題 ――#同級生の投票行動から考える・第13回―― (2024.08.28)
- #原水禁 #国際シンポジウム ――#2045ビジョン と #NoFirstUse #提案しました―― (2024.08.09)
- #伊藤塾の伊藤真塾長にお会いしてきました ――#伊藤塾 #法学館 ともに #未来の司法を担う #若者の育成をしています―― (2024.07.21)
コメント
「hiroseto」様
コメント有り難う御座いました。
「サンダーバード」の歌、聞いてみたいです。
「ふぃーゆパパ」様
コメント有り難う御座いました。
日本には高度の技術があり、お金も人手も十分にある、と思い込まれてしまっているのでしょうか。
「硬い心」様
コメント有り難う御座いました。
自衛隊を評価している人の多くは、災害救助の際の自衛隊の活躍を評価しているようですので、それから「サンダーバード」に思いが発展しても良さそうに思います。
今日、「サンダーバード」ねたをボランティア活動後に行った街頭演説で早速使わせていただきました。「サンダーバード」の歌もちょっと歌いました。はっとしてこっちをご覧になる人が多数・・。
確かに豪雨災害の場面は多かったですね。
未だに国際救助隊が来てくれたらと思う自分の感覚はおかしいのかと思っていたら,あながちそうでもなさそうで安心しました(笑)
あらま、水島朝穂教授のファンでありながら、
先に、サンダーバード構想に言及されていたとは😢😢
片仮名大好き日本人、どうして飛びつかぬ。
« 土砂災害防止法と予算 ――豪雨災害からの教訓 (7)―― | トップページ | 非武装中立論 ――豪雨災害からの教訓 (9)―― »
あらま、水島朝穂教授のファンでありながら、
先に、サンダーバード構想に言及されていたとは😢😢
片仮名大好き日本人、どうして飛びつかぬ。
投稿: 硬い心(’されど映画’改め) | 2018年7月17日 (火) 10時21分
確かに豪雨災害の場面は多かったですね。
未だに国際救助隊が来てくれたらと思う自分の感覚はおかしいのかと思っていたら,あながちそうでもなさそうで安心しました(笑)
投稿: ふぃーゆパパ | 2018年7月17日 (火) 17時49分
今日、「サンダーバード」ねたをボランティア活動後に行った街頭演説で早速使わせていただきました。「サンダーバード」の歌もちょっと歌いました。はっとしてこっちをご覧になる人が多数・・。
投稿: hiroseto | 2018年7月17日 (火) 20時37分
「硬い心」様
コメント有り難う御座いました。
自衛隊を評価している人の多くは、災害救助の際の自衛隊の活躍を評価しているようですので、それから「サンダーバード」に思いが発展しても良さそうに思います。
投稿: イライザ | 2018年7月17日 (火) 23時27分
「ふぃーゆパパ」様
コメント有り難う御座いました。
日本には高度の技術があり、お金も人手も十分にある、と思い込まれてしまっているのでしょうか。
投稿: イライザ | 2018年7月17日 (火) 23時30分
「hiroseto」様
コメント有り難う御座いました。
「サンダーバード」の歌、聞いてみたいです。
投稿: イライザ | 2018年7月17日 (火) 23時31分