暴力は、どこで振るわれても暴力 ――「どんな手段を弄してでも」を許してはいけない――
暴力は、どこで振るわれても暴力
――「どんな手段を弄してでも」を許してはいけない――
アメリカン・フットボールは力と力の激突するスポーツであることがその魅力の一つですので、怪我とは切っても切り離せない宿命にありますが、それでもアメリカでは、怪我を防止するためのルールの変更が行われてきましたし、最新の技術を使って身体の安全を確保する防具が開発され使われています。その中には、無防備のプレーヤーに対するタックルの禁止などが盛り込まれています。
今回の日大のプレーヤーによる、関西学院大学のQB(クォーターバック)への攻撃は、ビデオを見れば誰でも分るように、関学プレーヤーの視野には全く入らない後ろから全力で下半身を狙ってのタックルです。無防備かつボールからははるかに遠い地点でしかも後ろからタックルすることなど、安全性を高めようと努力をしてきたアメフト界が許しているはずがありません。それ以前の問題として、誰が見ても明確に相手を傷付けることを目的とした犯罪です。暴力はフィールドでもバーの中でも家庭でも、どこで振るわれても暴力なのです。
関学大提供の写真をネットからお借りしました
日大に対しての「抗議」等という生温い対応ではなく、傷害事件として関学は被害届を出すべきなのではないでしょうか。
そこで思い出すのが、昨年10月に起きた日馬富士による貴ノ岩関への暴行事件です。貴乃花親方が相撲協会内での「内輪」の話にせずに、警察に被害届を出したことは正しい判断だったのです。しかし、貴乃花親方の弟子貴公俊が弟子への暴力事件を起した事実は、相撲界における暴力体質が如何に深く浸み込んでいるのかを浮き彫りにしました。その教訓が今回生かされていないのは不思議なのですが、スポーツ界の中でも競技毎の縄張り意識が強く、他の競技での経験は生かされないのでしょうか。
伊調薫選手や田名部力コーチへのパワハラなどの不祥事も、「スポーツ」という爽やかなイメージとは裏腹に構造的な陰湿さと縁を切れないことを示しています。パワハラも力による嫌がらせや相手を屈服させる行為ですから暴力の一部として考えると、スポーツ界が暴力に汚染されている事実を再認識しなくてはなりません。確かに、最終的には「勝ちか負け」かの判定が全ての世界だと考えると、「どんな手段を弄してでも」という方向に走ってしまう可能性のあることは否定できません。
しかし、そうではなく、「ルール」を作り守ることを大前提としてのみ、スポーツそのものが存在するという出発点を各競技団体の幹部たち、とくに若い選手たちと日常的に接している監督やコーチが再度確認し、「ルールの遵守」そして「暴力との訣別」を100パーセント徹底することで、長期的な視点から未来に責任を持つ必要があるのではないでしょうか。
[2018/5/16 イライザ]
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コメント
「されど映画」様
コメント有り難う御座いました。
日本はアメリカに10年遅れている、とかつては良く言われていましたが、スポーツと怪我の関係についても、セクハラ・パワハラ等についての最近の状況から、ことによるとそれ以上の差があるのかなとさえ考えてしまいます。
今年2月にウォーター・ゲート事件の内部告発者を
描いた『ザ・シークレットマン』が公開されましたが(原題→本人名が入って長い)、
その監督ピーター・ランデズマンは、
『コンカッション』2015 (原題=邦題) という作品も監督しています。↓
〈 アメリカンフットボールが選手の脳に深刻なダメージを与える危険性を
確信した*医師が、真実を訴え続ける姿を描く 〉(wowow 5月の作品紹介より)
1月放映時→*ウィル・スミスは好みではないのでスルー。
週刊金曜日2/16号→同監督が特集され→前作と知る→運よく5月に
放映されクリア→見といてよかった。(*非白人)
「カチ」様
コメント有り難う御座いました。
こんなに卑怯な行動は許されませんね。仮に、若気の至りで、若い選手の判断が未熟だとしたら、それに気付いて指導するのが監督であり、コーチの役割のはずです。それができなかったことについての責任も問われなくてはなりません。
「60sp」様
コメント有り難う御座いました。
おっしゃるように審判員も問題にしなくてはなりませんね。
大学より上だとかなり違ってくると思いますが、アメリカの高校のアメフトでは、男子ではプレーヤーが、女子ではチアリーダーが花形で、プレーヤーとチアリーダーのカプルが沢山いました。
フェアな試合をするかどうかについて、女性の視点も大きく影響していたように思います。
これは極めて悪質なパワハラですね。
8月1日まで、自粛するとのことですが、即刻クビですね。
選手に同情する声もありますが、
チャンドラーの有名な台詞、
「男は強くなければ生きていけない。
優しくなければ生きる価値がない」
ではありませんが、
少なくとも彼は「アメフトをする価値がない」
のでしょうね。
今回のこと、信じられません。アレは、試合中の、プレーでは、ありません。監督の、指示が、あろうと、なかろうと実際に起こした、暴力です。それも、悪質です。倒れたQBを、さらに、ひっくりかえそうとしています。イライザ様と、同感です.日大は、自分のほうから、あの選手をベンチに、戻さなければ、いけません。それなら、多少、関学に対して、言い訳も、できましょうか。それすらしないで、試合参加続行ですから。審判員は、何を、やってるんですか。毅然とした態度を望む方が、おかしいですか。あの選手は、即、退場させなきゃ。彼の地なら、永久追放に、なりますか。アメリカの試合は、いいですね。ルールに、忠実ですから。見ていて、気持ちが、いいです、プロの試合も、大学の試合も。審判員も、独断できない場合には、本部のビデオ判定の結果とか、絶えず、無線連絡を、しています。だから、反則判定は、100パーセント妥当と、思われます。もっとも試合よりも、half time showが、好きです。最近は、ハーフ・タイムショーは、カットです、残念。マーチングバンドとかチアーリーダーを見るのが、好きなのですが。アメリカの試合は、かれこれ、四十数年見ています。今回のこと、イライザ様と、まったくの、同じ思いでいます。競技を逸脱した行動です。
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今回のこと、信じられません。アレは、試合中の、プレーでは、ありません。監督の、指示が、あろうと、なかろうと実際に起こした、暴力です。それも、悪質です。倒れたQBを、さらに、ひっくりかえそうとしています。イライザ様と、同感です.日大は、自分のほうから、あの選手をベンチに、戻さなければ、いけません。それなら、多少、関学に対して、言い訳も、できましょうか。それすらしないで、試合参加続行ですから。審判員は、何を、やってるんですか。毅然とした態度を望む方が、おかしいですか。あの選手は、即、退場させなきゃ。彼の地なら、永久追放に、なりますか。アメリカの試合は、いいですね。ルールに、忠実ですから。見ていて、気持ちが、いいです、プロの試合も、大学の試合も。審判員も、独断できない場合には、本部のビデオ判定の結果とか、絶えず、無線連絡を、しています。だから、反則判定は、100パーセント妥当と、思われます。もっとも試合よりも、half time showが、好きです。最近は、ハーフ・タイムショーは、カットです、残念。マーチングバンドとかチアーリーダーを見るのが、好きなのですが。アメリカの試合は、かれこれ、四十数年見ています。今回のこと、イライザ様と、まったくの、同じ思いでいます。競技を逸脱した行動です。
投稿: 60sp | 2018年5月17日 (木) 01時34分
これは極めて悪質なパワハラですね。
8月1日まで、自粛するとのことですが、即刻クビですね。
選手に同情する声もありますが、
チャンドラーの有名な台詞、
「男は強くなければ生きていけない。
優しくなければ生きる価値がない」
ではありませんが、
少なくとも彼は「アメフトをする価値がない」
のでしょうね。
投稿: カチ | 2018年5月17日 (木) 06時15分
「60sp」様
コメント有り難う御座いました。
おっしゃるように審判員も問題にしなくてはなりませんね。
大学より上だとかなり違ってくると思いますが、アメリカの高校のアメフトでは、男子ではプレーヤーが、女子ではチアリーダーが花形で、プレーヤーとチアリーダーのカプルが沢山いました。
フェアな試合をするかどうかについて、女性の視点も大きく影響していたように思います。
投稿: イライザ | 2018年5月17日 (木) 12時07分
「カチ」様
コメント有り難う御座いました。
こんなに卑怯な行動は許されませんね。仮に、若気の至りで、若い選手の判断が未熟だとしたら、それに気付いて指導するのが監督であり、コーチの役割のはずです。それができなかったことについての責任も問われなくてはなりません。
投稿: イライザ | 2018年5月17日 (木) 12時10分
今年2月にウォーター・ゲート事件の内部告発者を
描いた『ザ・シークレットマン』が公開されましたが(原題→本人名が入って長い)、
その監督ピーター・ランデズマンは、
『コンカッション』2015 (原題=邦題) という作品も監督しています。↓
〈 アメリカンフットボールが選手の脳に深刻なダメージを与える危険性を
確信した*医師が、真実を訴え続ける姿を描く 〉(wowow 5月の作品紹介より)
1月放映時→*ウィル・スミスは好みではないのでスルー。
週刊金曜日2/16号→同監督が特集され→前作と知る→運よく5月に
放映されクリア→見といてよかった。(*非白人)
投稿: されど映画 | 2018年5月17日 (木) 16時22分
「されど映画」様
コメント有り難う御座いました。
日本はアメリカに10年遅れている、とかつては良く言われていましたが、スポーツと怪我の関係についても、セクハラ・パワハラ等についての最近の状況から、ことによるとそれ以上の差があるのかなとさえ考えてしまいます。
投稿: イライザ | 2018年5月17日 (木) 19時20分