「被爆二世集団訴訟の意義と課題」-第5回原水禁学校
「被爆二世集団訴訟の意義と課題」-第5回原水禁学校
2017年度原水禁学校の最終回となる「第5回原水禁学校」が、2月9日自治労会館で開催されました。
今回は、「被爆二世国賠訴訟弁護団」の足立修一弁護士に「被爆二世集団訴訟の意義と課題」をテーマに講演していただきました。足立弁護士と広島県原水禁は、1995年に提訴した三菱広島徴用工裁判以来の長い付き合いがあり、今回の講師をお願いしました。
被爆二世の岸本さん
原水禁学校は、足立弁護士の話に先立ち「被爆二世訴訟団」の原告で広島県原水禁の常任理事でもある岸本伸三さんから「なぜ被爆二世問題の解決が重要なのか?」を提起していただきました。特に強調されたのは「国が一度戦争を始めれば、そのすべての被害に対して、国としての責任を取らなければならないことを知らしめることー国に戦争がいかに高くつくかを身にしみて分からせることによって、戦争を抑止する―ことをはっきりとさせることが、私たち被爆二世の運動である」ということでした。
足立弁護士はまず最初に、自らがかかわってきた「被爆者だけど被爆者として扱われてこなかった人たち」の被爆者裁判に触れながら「在外被爆者、原爆症認定訴訟」など普通では考えられないほどの勝利を勝ち取った。何故か?「被爆の被害は、他の戦争被害と比べて大きな被害である」ことを指摘しながら、「放射能被害は、他の被害と違い元に戻ろうとしても元に戻ることはできない特殊性があり、長く続く被害なのだと」と被爆者問題の特殊性を指摘。さらに被爆二世の問題については「確かに被爆者ほどには、健康被害は顕著でないかもしれない。」しかし被爆二世の人の話を聞くと、「子どものことの健康状態は、普通の人よりも多く病気にかかったりしている」が、「それはたまたまの不運であった」では済まされない問題だと強調。そして今回の裁判は「核戦争の影響は無限に続くということをはっきりさせ、これを証明すること」だとその意義を強調されました。そして「被爆の実相を明らかにさせることを通じて、被爆二世問題の課題を明らかにさせる」と、裁判の課題が提起されました。
今後の裁判は、「①立法不作為の違法性―国が被爆二世に対して法律を作ることを怠ったため、被爆二世が不利益を被ったこと②放射線の遺伝的影響―植物や動物実験においては、放射線の遺伝的影響が証明されている」ことを具体的に証明することを通じて、この裁判を勝訴に持ち込みたいとの思いが語られました。
特に国の「人についての遺伝的影響は現時点で認められない」という主張に対して「被爆二世への遺伝的影響を調査し続けるとしたら、その結果が出るのは被爆二世がいなくなったあと。それでは遅い。その前に解決しなければ何の意味もないことになる」と繰り返し強調されました。
「行政の責任をどの段階で果たさせるのかは、運動の広がりと世論の盛り上がりしかありません。」と参加者への期待を込めた訴えで、講演は終わりました。
足立弁護士、ありがとうございました。
「被爆二世集団訴訟」第4回口頭弁論は、2月13日午後1時30分から広島地裁302号法廷で行われます。一人でも多く傍聴に参加ください。
私は、被爆者問題かかわるときいつも思っていることがあります。まず「どんなに少量であっても放射能被害を受けた人は、被爆者(被害者)として認められる」ことが重要だということです。そして被害者である被爆者は、「放射能被害の恐れがある限り、救済されなければなりません」ということです。それを否定するのであれば、国が個々の被害者に対して「放射能の影響はない」ことを証明すべきです。戦争による原爆投下さえなければ、被爆をすることはなかったのですから。この考え方は、なにも原爆被害の問題だけではありません。原発事故による被害もそうです。そして水俣をはじめとする公害被害者の問題もそうです。「被害者は救済されなければなりません」
今日の講座に参加しながら、改めてそのことを感じました。
2017年原水禁学校は、今回で終了しました。今年の反省を生かしながら、新たなテーマで次年度と言っても今年の秋になりますが、第3回原水禁学校を開校することにしています。
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コメント
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ニュースや紙面で報じていないことを 知る事ができ、参加してよかったです。
知人の被爆二世の方が、歳をとった時に どんな病気が出てくるか不安よ。自分もだけど、子供たちもね。と話をしてくれた事があります。世代を超えると因果関係の立証が難しいと言われましたが、不安は世代を超えて続いてます。
裁判所側の化学的証明がない。と言う判断に腹ただしさを感じましたが、人道的 良心的判断されることを願うばかりです。
参加させていただき、ありがとうございます◡̈⃝︎⋆︎*
投稿: 和 | 2018年2月10日 (土) 20時24分
「和」さん、コメントありがとうございます。
また原水禁学校にも参加していただきありがとうございました。
「和」さんも指摘されていますように、裁判官にも「杓子定規」な判断でなく、人道的、そして良心的な面から向き合って判断してほしいと思います。
「被爆二世」の裁判は、前例のない初めての裁判ですから、二世の人たちの「自らの生活実態」からの声をきちんと聴くところから出発すべきです。
裁判の状況もまたこのブログでお伝えしたいと思います。
投稿: いのちとうとし | 2018年2月10日 (土) 20時54分