「押し付け」嫌いの皆さんへ ――アメリカに堂々と発言した時代を思い出しましょう――
「押し付け」嫌いの皆さんへ
――アメリカに堂々と発言した時代を思い出しましょう――
憲法を変えたいと主張する人たちの決まり文句の一つは、「アメリカに押し付けられた」憲法だからということなのですが、確かに「押し付けられ」て行動するのは、意に染まないですね。もっとも憲法については別の有力な議論がありますので、またの機会にして、ここでは核兵器の違法性についてです。
太平洋戦争中に日本政府のしたこと全てが違法だったり非人間的だったりということではありません。でも素直に自らの過ちを認めない人たちに対して事実を示して抗議し続けている内に、こちらは日本政府の非を指摘しなくてはなりませんので、その舌の根の乾かぬ内に、日本政府の正しさを褒めるのも、感情的には面白くありません。とは言え、歴史は客観的に捉えなくてはなりません。
核兵器禁止条約が発効すれば、核兵器の使用や核兵器による脅しは当然、国際法違反です。しかし、核兵器使用が国際法違反だという主張はもっと前からハッキリと国際舞台で表明されていたのです。
それを最初に指摘したのは、日本政府です。1945 年8 月10 日スイス駐在公使を通じてアメリカ政府に渡された抗議文に核兵器使用が国際法違反だと明確に述べられています。それを引用します。
「…抑々交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものに非ざること及び不必要の苦痛を与うべき兵器、投射物其の他の物質を使用すべからざることは戦時国際法の根本原則にして、それぞれ陸戦の法規慣例に関する条約附属書、陸戦の法規慣例に関する規則第二十二条、及び第二十三条(ホ)号に明定せらるゝところなり。…米国が今回使用したる本件爆弾は、その性能の無差別かつ残虐性において、従来かゝる性能を有するが故に使用を禁止せられおる毒ガスその他の兵器を遥かに凌駕しをれり、米国は国際法および人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたり帝国の諸都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社仏閣学校病院一般民家などを倒壊又は焼失せしめたり、而して今や新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たな罪状なり帝国政府は自らの名においてかつまた全人類及び文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す」
大変立派な文章です。文語調ですので、分り易くするためポイントを要約しておきましょう。
この抗議文で根拠としている法律は1899 年ハーグ「陸戦の法規慣例に関する条約」です。日本政府は、原爆投下がこれに規定されている次の項目に違反していると主張します。
不必要な苦痛を与える兵器の禁止(第23 条)
無防守都市に対する無差別広域爆撃の禁止(第25 条)
軍事目標主義(第27 条)
さらに、原爆投下以前の日本各地での無差別爆撃も国際法違反だと主張しています。
ハーグ陸戦条約が採択された第一回万国平和会議(1899年、ハーグ)
理路整然と、原爆の本質を突いた指摘ですし、今年採択された核兵器禁止条約の内容とも矛盾しないどころか、この日本政府の立場を敷衍したのが、核兵器禁止条約だと言って良いのです。
安倍総理、菅官房長官、河野外相、岸田前外務大臣、その他「押し付け嫌い」の皆さん。「アメリカからの押し付け」が嫌だから、国の基本である憲法さえ変えようという程の嫌悪感なのですから、そろそろ「押し付けられる」状態から脱して、先ずはその直前、つまり1945年8月10日に戻って、核兵器は国際法違反と声高らかに宣言するところから始めて見ませんか。
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コメント
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コメント
何かで読んだのですが、戦争とは、国家(国)間で、軍服を着て階級が兵士が戦うことだと。
そうであれば、民間人を多数巻き込む戦闘は、戦争の定義を外れますから違法なんだと思います。
都市空襲に使った焼夷弾は、堅固な軍事施設を破壊する爆弾でなく、木造建物の民間の家を狙ったものです。つまり、軍人を殺傷するためでなく、民間人を殺傷するために作られた兵器ですから違法でしょうね。
当然に、核兵器は多数の民間人が犠牲になる事を前提にして使われる兵器ですし、地域の壊滅、民族の殲滅、人間を破滅させる兵器ですから、明らかに国際法違反ですね。
被曝者の方達は、寛容さで平和を求めるられていて、とても立派な事ですが、過激に騒がない事を悪用してますね。核保有国や核の傘にある日本国家は。
アメリカに押し付けられた憲法がダメだというのなら、アメリカに従属する日米安全保障条約や日米地位協定は、その前に破棄すべき条約ですね。
今の日本、沖縄の問題(辺野古)も含め どこへ向いていこうとしているのか…怖いです(◞‸◟;)
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
おっしゃる通り、ジュネーブ条約で、戦闘員と非戦闘員ははっきり区別されています。非戦闘員を戦争に巻き込むことや、その可能性を作ることは禁止されています。しかし、世界的にこのルールは無視され続けてきました。
そして、日本政府に「論理性」や「誠実さ」「知性」等を求めるのは無理だということなのだと思いますが、選挙という手段でそれを変えるためには、私たち一人一人が情報の発信源として、もうちょっとずつ頑張ることが役立つのだと思います。
「 」様
コメント有り難う御座いました。
安倍政治の怖さは大多数の人には分っているようなのですが、何をしたら良いのかというところで、先に進まないきらいがあるようです。
まずは、「怖い」「どうしたら良いの?」、と感じていること自体を共有するのが大切なのではないかと思います。
先程は突然のコメント、しかも無名で失礼しましたm(_ _)m
私、和合 の 「和」といたします。
以前 辺野古へ行き、一国と一戦交えるくらいの大きな空母が付ける軍港ができると聞きました。普天間の移設を理由に、もっと危険な基地ができると感じました。
また、今の平和教育がソフトになりすぎているのではないか、歴史的背景が変わっていのでは?また、広島の平和教育も原爆の恐ろしさを本当に伝え切れているのか?と疑問に思う部分が多々あります。
このままでは、核 平和 基地問題に声を上げていく人々が減っていく。関心がなさすぎる、平和ボケしてしまう。と…
核の傘下にある限り本当の平和とは言えない、日本の戦争はまだ終わっていないとも思います。
今の世に腹の立つことばかりです\\\٩(๑`^´๑)۶////
何かアクションを起こせれば、広島だからこそ県ぐるみでできればと思いながら、今、ブログを過去から読み勉強させてもらっています。
自分にできることの糸口が見つからず情けなさを感じています(◞‸◟;)
皆さんのような立派なコメントはできませんが、これから、思ったことを伝えさせていただきたく思います。よろしくお願いしますm(_ _)m
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何かで読んだのですが、戦争とは、国家(国)間で、軍服を着て階級が兵士が戦うことだと。
そうであれば、民間人を多数巻き込む戦闘は、戦争の定義を外れますから違法なんだと思います。
都市空襲に使った焼夷弾は、堅固な軍事施設を破壊する爆弾でなく、木造建物の民間の家を狙ったものです。つまり、軍人を殺傷するためでなく、民間人を殺傷するために作られた兵器ですから違法でしょうね。
当然に、核兵器は多数の民間人が犠牲になる事を前提にして使われる兵器ですし、地域の壊滅、民族の殲滅、人間を破滅させる兵器ですから、明らかに国際法違反ですね。
被曝者の方達は、寛容さで平和を求めるられていて、とても立派な事ですが、過激に騒がない事を悪用してますね。核保有国や核の傘にある日本国家は。
アメリカに押し付けられた憲法がダメだというのなら、アメリカに従属する日米安全保障条約や日米地位協定は、その前に破棄すべき条約ですね。
投稿: やんじ | 2017年12月13日 (水) 12時35分
今の日本、沖縄の問題(辺野古)も含め どこへ向いていこうとしているのか…怖いです(◞‸◟;)
投稿: | 2017年12月14日 (木) 14時03分
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
おっしゃる通り、ジュネーブ条約で、戦闘員と非戦闘員ははっきり区別されています。非戦闘員を戦争に巻き込むことや、その可能性を作ることは禁止されています。しかし、世界的にこのルールは無視され続けてきました。
そして、日本政府に「論理性」や「誠実さ」「知性」等を求めるのは無理だということなのだと思いますが、選挙という手段でそれを変えるためには、私たち一人一人が情報の発信源として、もうちょっとずつ頑張ることが役立つのだと思います。
投稿: イライザ | 2017年12月14日 (木) 14時23分
「 」様
コメント有り難う御座いました。
安倍政治の怖さは大多数の人には分っているようなのですが、何をしたら良いのかというところで、先に進まないきらいがあるようです。
まずは、「怖い」「どうしたら良いの?」、と感じていること自体を共有するのが大切なのではないかと思います。
投稿: イライザ | 2017年12月14日 (木) 14時27分