明治維新の原動力は藩の多様性 ――安古市高校での講演から――
明治維新の原動力は藩の多様性
――安古市高校での講演から――
多様性が大きな力になった例として、司馬遼太郎は「明治維新」を挙げています。
つまり、明治維新の原動力になったのは、当時300ほどあった藩の多様性だということなのです。今の時代では、人口で考えると、都市といっても良いと思いますが、各藩にそれぞれ特色のあったことは時代劇などにも反映されています。その中で注文すべきなのが、教育制度だというのが司馬の指摘です。(文春文庫『この国のかたち 一』「14 江戸期の多様さ」参照)
例えば、大隈重信の出身地、佐賀藩では、
① 6、7歳で藩校に入校、25, 6歳で卒業。
② 「不出来のため学齢に即した段階に進めない者に対しては役人にしないばかりか、家禄の10分の8を削った」
西郷隆盛を輩出した薩摩藩では、それと対照的な教育をしていたようです。
① 「意識的に学問を軽んじた」
② 藩士の教育など、初等ていど。学問をすると、理屈っぽくなり峻烈果敢な士風が鈍磨する、考えられていた
③ その代り、若衆宿である「郷中(ごじゅう)」を組織し、「郷中頭」が若者を統御・訓練する制度を作っていた
このような教育の結果、藩のリーダーたる人材が特定され、政治や経済の方針を決めたのですが、そのリーダー、今で言えば官僚でしょうが、の登用の仕方が長州藩では一風変っていました。長州藩の出身者で有名なのは伊藤博文ですが、彼はこの制度によって武士になりました。
長州藩で、藩士士分に取り立てて貰う方法
① 「ハグクミ」では家士が誰かを扶養し、弟分とみなすだけで武士
② 家士が「手附き」つまり家来だと届けることで、藩士として扱われる
③ のちの伊藤博文は、こうして藩士として扱われることになった
多様性が現在の世界にどう生きているのかは、フロリダ教授の研究成果を引用して説明しましたが、続いて、政治を考える際、特に選挙のあるべき姿をデザインする上でも最優先されなくてはならないことを、歴史的な事例も含めて説明しました。
一人一票という選挙の大原則は、人権という立場からとても大切なのですが、それを含めて、「多様性」という立場から見直すことも重要です。
多様性を最大限に保障する政治制度は、全員参加制度です。100人の集団で、100人すべてが最終決定に関われば、最も多様な意見が反映されることになるからです。その対極にあるのはその中の「一人」による独裁制であることも分って貰えると思います。
しかし、国という大きな単位で、常に全員参加の決定を行うのは難しいので、選挙で代表を決めることになります。そのためには、何らかの基準を設けて選挙制度を整備する必要がありますが、何のために選挙を行うのかの再確認から始めるべきだと思います。そこで、多様性を生かすことを優先する制度が登場します。
随分長くなりましたので、選挙制度については次回に回します。
最後に、司馬遼太郎の代表作の一つ『坂の上の雲』について、今年の初めに総理大臣談話を分析した一環として取り上げています。多くの司馬ファンの考え方とは違っていますが、こちらも参考のためにお読み頂ければと思います。
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