水島朝穂教授講演会 ――独裁者を正確に描くと笑い飛ばすことになってしまう――
水島朝穂教授講演会
――独裁者を正確に描くと笑い飛ばすことになってしまう――
安古市高校の後、11月2日は、アステール・プラザで早稲田大学の水島朝穂教授の講演会がありました。講演の始まる30分前から多くの人が会場に着いていて、先生の来場を待っていました。イギリスのガーディアン紙が報じていた「空席の目立つホールがイヴァンカを歓迎」とはかなり様子が違います。
YouTubeのthe Guardianのページです。中央は安倍総理
水島教授は、かつて広島大学でも教鞭を執っていたことがあります。大変精力的で頭脳明晰、快刀乱麻という言葉がすぐ頭に浮びます。事実、2日の講演も詳しいレジュメがあったのですが、90分の内、1時間ほどはそれに関連した脱線に注ぐ脱線でした。それも「安倍加憲」の本質を詳細な歴史的事実や法文の引用を交えながら、笑い飛ばす痛快なプレゼンテーションでしたので、会場は笑いに包まれつつ、知的な刺激に唸る充実した一時になりました。
7月末にはスタンダップコメディアンの松元ヒロさんの笑い、そして今回の水島教授の笑いを直接経験して、チャップリンの喜劇『独裁者』を思い浮べていました。そして気付いたことは、「独裁者」をできるだけ正確に描こうとすると、それは喜劇になってしまう、という事実です。独裁者の論理は独善的かつ矛盾に満ちています。それをつなぎ合わせて何とか解釈しようとすると、その結果は、私たちの常識とはあまりにも掛け離れた世界になってしまい、しかも、それを独裁者自身が真面目に受け止めているという自己中心性を加味すると、笑わざるを得ない状況になってしまう、ということなのではないかと思います。
と言って、どうしても補っておかなくてはならないのは、その被害を受ける側にすれば、「笑い」とか「喜劇」とかいう言葉を使うことさえ憚られる残酷・悲惨な運命を科されるという事実です。そのこともしっかり踏まえての行動が必要です。
しかし、私たちの多くは「善良」です。矛盾に満ち、大惨事をもたらしてしまうシナリオの中からできるだけ無害なしかも自分に都合の良い部分だけを取り出して、独裁者の意図を中和して解釈する傾向に陥り勝ちです。
水島教授の講演も新聞等のインタビューも、ホームページも、もちろん論文もそんな幻想を粉々にしてくれます。詳細をここで再現するだけの時間がありませんので、まずはホームページ、そして「直言」をお読み下さい。
この「直言」は1997年1月3日に始まり、週一回新たな「直言」が付け加えられて2015年には1000回を迎えています。私もできるだけ毎週目を通すようにしていますが、とても勉強になりますし、水島教授の情熱に触発されて元気になること請け合いです。
超高スピードで話をする水島教授の言葉をメモするのは大変だったので、断片的になりますが、それでも、本質的な「サワリ」を一つ二つ報告しておきましょう。
(A) 四字熟語
① 私たちは四字熟語に弱い。それを上手く使って、為政者たちが政治を劣化させてきた歴史を重く受け止めよう。
② 「国際貢献」とは、自衛隊の海外派遣のことだった。
③ 「政治改革」とは小選挙区比例代表並立制という悪しき選挙制度の導入のことだった。
④ 「規制緩和」の名の下、誰のため、何をどう規制するのかは問われずに、私たちを守ってきた規制が緩められてしまい、何でもありになってしまった。
⑤ 「憲法改正」が一番危険な四字熟語だ。
(B) 安倍総理の「改憲」をどう受け止めるのか、色々な表現の仕方があるが、「お試し改憲」「あら探し改憲」というのもあった。その後、「ねじれ解消」のための「自爆改憲」という可能性もあった。つまり、自らが倒れる傾きと勢いを使った「自爆改憲」だ。この危険性についても要注意。
国会議員の4分の3が改憲賛成だと言われる結果になった総選挙後、国会で改憲の発議をさせないために、世論を高め、議員個人個人にも積極的に働きかける運動がますます重要になっている、という主催者からの呼び掛けが最後にあり、参加者一同新たなエネルギーを補充して貰って帰途に着きました。
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コメント
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独裁政治や憲法問題も心配ですが、国会議員の資質についても懸念があります。
地元の中川元議員を初め去年から今年にかけて色々なスキャンダルが発生して
いる。要するにいいとこ取りと言った安易な発想と思えるが、彼らは政治の重みや
自分に投票してくれた有権者への責任、我が国を取り巻く厳しい国際情勢等の
認識の甘さが一連の騒動に繋がったものと思われる。我々国民も議員選択の為の
大人の目を持つべきです!
投稿: 鯉の応援団 | 2017年11月 7日 (火) 10時07分
水島朝穂さんも松本ヒロさんもファンです。何度かLIVEも。
安倍総理の「改憲」...、色々な表現の仕方...、...。
『熱狂なきファシズム』by想田和弘(河出書房新社2014.8刊)を
思い出しました。
氏が監督の『選挙2』封切初日2013/7/6
ニセ・アベ首相が舞台挨拶を。
(↑ヒロさん古巣のザ・ニュースペーパー は福本ヒデさん)
「私どもの改憲案が通ったらこのような映画は上映されなくなります。
ですから国民のみなさん、今のうちにお楽しみ下さい」
(↑ああこれ太字にしたい)
シンプルで気に入っています。
投稿: されど映画 | 2017年11月 7日 (火) 18時33分
「鯉の応援団」様
コメント有り難う御座いました。
政治家には「選良」としての自覚と矜持を持って欲しいと思います。その上で謙虚に勉強し、それを元にリーダーとしての勇気ある発言と行動があれば素晴らしいと思います。
でもそれを育てるのは、おっしゃる通り私たち有権者です。
そして、政治家を小粒にした、あるいはダメな政治家の温床になったのが、小選挙区制だという声にも耳を傾ける必要がありそうです。
投稿: イライザ | 2017年11月 7日 (火) 21時33分
「されど映画」様
コメント有り難う御座いました。
「私どもの改憲案が通ったらこのような映画は上映されなくなります。
ですから国民のみなさん、今のうちにお楽しみ下さい」--短い言葉に全てが言い尽くされていますね。
その代りに、昨日今日のテレビのようなオベッカ使いの姿ばかり、その挙句、兵器を買わされ戦争に突入する「悲劇」だけしか見られなくなるのでしょうか。
投稿: イライザ | 2017年11月 7日 (火) 21時35分