選挙権を賢明に行使するには ――マスコミの役割は大切です――
選挙権を賢明に行使するには
――マスコミの役割は大切です――
昨日の続きです。
安古市高校の生徒さんたちの質問は素晴らしかったのに、十分には答えられなかったことも補足しての「回答」です。
質問をしたのは3年生でした。
18歳になったので投票はしたけれど、日常の生活の中で詳しく政治について知ることも考えることもないまま、曖昧な態度で投票をしてしまった。でも、政治について詳しく知っている人と同じ一票だということに違和感を持っている。それをどう考えたら良いのか、また次の機会にはより良い投票をするのにどうしたら良いのだろうか。
講演後、船津校長先生から伺ったのは、3年生は選挙についてグループに分かれてディスカッションをするなど、しっかりと勉強をしていたということでした。政治について詳しく知っている人、あるいは真面目に考えている人は、恐らく少数だと思いますが、安古市高校の3年生は、その少数の中に入っていると言って良いのではないかと思いました。
にもかかわらず、こんなに謙虚に自分の立場を見詰めて考えられること自体素晴らしいと思いますし、一票の価値についての疑問は民主主義の基本であるのと同時に、「多様性」の意味そのものへの問い掛けでもあるのです。
私が十分に答えられなかったと反省している点は、まず、この3年生が「自分なりにしっかり勉強して投票したこと自体、素晴らしい」ときちんと言って上げられなかったことです。そしてもう一つは、仮に、政治のついての知識が十分にないということが本当だとして、それでも投票することには大きな意味があるという点です。全ての人が日常レベルで政治に関心を持ちしかもある程度の時間を使って勉強した上で投票することになればそれは素晴らしいのですが、現実的にはそれほどのことは望めないと思います。
しかし、少数派の、政治に詳しい人だけが投票することによって政治が良くなるとは考えられません。関心を持ちつつも十分には分らない、しかし漠然とした思いだけはあるのが普通でしょう。そんな人々がもっと多く投票することで、つまり投票率が高くなることで、いわば「無意識」の内に、あるいは「意識下」に感じている社会に対する思いが、「多様な」結果として現れることが期待できるからです。
この視点からは、投票を義務化する、つまり、投票に行かない人には罰金を科する制度さえ必要だと主張しても良さそうです。ブラジルやオーストラリアでは義務制が取られていますので、これらの国の先例からも学びつつ、検討しても良いのではないかと思います。
しかし、ここまで述べたことで質問に対して十分に答えたことにはならないのです。私が受け止めた質問の内容は、ある程度の関心があり真面目に取り組んでも、日常的な情報だけでは自信を持って投票できないという現実です。
高校生は学校で勉強できますし、先生の質問することも日常的にできるのですが、それ以上に、そして社会人の場合、最大の情報源はマスコミです。そのマスコミの情報が不十分だという点が問題なのではないか、というのが私の率直な感想でした。その点については再度取り上げたいと思っています。
それを補完できるのがネット情報ですが、それも玉石混交です。しかし、出発点としてお勧めなのが、早稲田大学の水島朝穂教授のホームページです。特にその中の「直言」は必読です。
こうしたネット情報を出発点に、日常的な「自分のためのネットワーク」を作ることで、効率的な勉強を続けるのも一つの可能性です。
最後に、生徒代表からお礼の言葉がありました。講演の中で、「都市の特徴として、多様性を生かすために、市民がお互いの違いに寛容で、上手く折り合って生活していることが重要」だという点に注目したこと、そしてこれは都市だけに限った話ではなく、学校の中でも同級生たちとの間で、自分から積極的に発言するのと同時に、相手の言葉にも耳を傾け、それを自分の考え方に取り入れることでより豊かな内容にできると思った、という感想を述べてくれました。
このような問や感想を貰ったことで、スピーカー冥利に尽きる、という感慨を覚えましたし、改めて若い世代への期待に胸膨らんだ午後になりました。
[お願い]
文章の下にある《広島ブログ》というバナーを一日一度クリックして下さい。
コメント
« 「多様性」を中心に選挙制度を考える ――今の制度では民意が反映されていないと8割の人が考えています―― | トップページ | 水島朝穂教授講演会 ――独裁者を正確に描くと笑い飛ばすことになってしまう―― »
「ニュース」カテゴリの記事
- 「記憶が不確かだから記録を残す」の意味を葬り去った自民党政治 ――それでも過去の記録を忠実に残す努力をし続けよう―― (2023.03.11)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
- 『日刊ゲンダイ』をラジオで聞こう ――RCCラジオの土曜日「松ちゃん・大ちゃんのふくふくサタデー」です―― (2023.02.20)
- 日本が壊れて行く? (x) ――192ページの教科書に1200もの誤り、そして車中閉じ込め事故の新たな事実判明―― (2023.02.19)
- またまた人命軽視? ――3年以上も前に気球が日本の空を飛んでいました―― (2023.02.16)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 新しい顔のビデオです ――ぜひ拡散して下さい―― (2023.03.26)
- 陸軍大将 山下奉文の遺書 ――現在の政治批判としても通用します―― (2023.03.25)
- なぜ「都市」なのか ――必要条件と十分条件、両方あります―― (2023.03.24)
- 「原爆にさわる」 ――映像ジャーナリスト熊谷博子さんの言葉―― (2023.03.23)
- 英文毎日 (The Mainichi) への投稿がアップされます ――「核の先制不使用」実現のため、海外に拡散して下さい―― (2023.03.22)
「言葉」カテゴリの記事
- 新しい顔のビデオです ――ぜひ拡散して下さい―― (2023.03.26)
- 陸軍大将 山下奉文の遺書 ――現在の政治批判としても通用します―― (2023.03.25)
- なぜ「都市」なのか ――必要条件と十分条件、両方あります―― (2023.03.24)
- 歴史は生きている ――杉並区のイベントで人生を振り返ることになりました―― (2023.03.21)
- 杉並区の岸本聡子区長にお会いしてきました ――69年前も今も杉並から新たな動きが始まっています―― (2023.03.20)
「教育」カテゴリの記事
- 陸軍大将 山下奉文の遺書 ――現在の政治批判としても通用します―― (2023.03.25)
- 成田発言のおぞましさ検証 ――立ち止まって考え始めたら、怒りで震えが止まらなくなりました―― (2023.02.24)
- 集団自決や集団切腹のリアルな記憶を大切に ――成田悠輔氏の持論への違和感―― (2023.02.23)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
- フルブライト・プログラムへの寄付(2022.10.15)
「若者」カテゴリの記事
- 杉並区の岸本聡子区長にお会いしてきました ――69年前も今も杉並から新たな動きが始まっています―― (2023.03.20)
- アハマディア・ムスリム平和賞を頂きました ――共同通信の植田支局長の記事をお読み下さい―― (2023.03.05)
- 成田発言のおぞましさ検証 ――立ち止まって考え始めたら、怒りで震えが止まらなくなりました―― (2023.02.24)
- 集団自決や集団切腹のリアルな記憶を大切に ――成田悠輔氏の持論への違和感―― (2023.02.23)
- 『はだしのゲン』の何が問題なのか ――本当は松江市の先例と同じ理由?―― (2023.02.22)
「選挙」カテゴリの記事
- この一年(2022年)を振り返る (3) ――思いも寄らぬことの連続でした―― (2022.12.30)
- 皆様と社民党の「明日」が始まりました(2022.07.11)
- 皆様、大変お世話になりました(2022.07.11)
- 最終日、走り切りました。(2022.07.10)
- 桜木町駅前から、ラストスパートです(2022.07.09)
コメント
日本人には昔から性善説があって、人間は生まれながらにして皆善人であるは
最近の事件事故を見ていると当てはまらないのではないか。選挙についても考え
方の修正が必要ではないか。多様性や数の論理と言った言葉が卒業の時期に
来ているといいたい。前回のメールでも書きましたが、欧州の選挙は各政党が
独自の主張(中には極右や極左という怖い政党もある)を展開し、フリーハンドで
戦って民意の結果により一つの政党が過半数を取れなければ連立を模索すると
いった制度です。国民からは解り易いので投票率の上昇は期待出来ます!
「鯉の応援団」様
コメント有り難う御座いました。
自民・公明与党の「数の論理」を振りかざして、何の議論もせず、丁寧に説明すると口では言いながら議会も開かずに解散するようなことは「卒業」すべきだと思いますが、これは性善説ではなく、弱い者いじめの範疇に入るのではないでしょうか。
「多様性」については、LGBTについての理解もようやく広がり始まったばかりですし、多様性の出発点であるはずの女性の地位についても、世界経済フォーラムによる2017年「ジェンダー・ギャップ指数」において、日本は調査対象144カ国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低でした。これで「卒業」はないでしょう。まだ真剣な努力さえ始まっていない、としか考えられません。
« 「多様性」を中心に選挙制度を考える ――今の制度では民意が反映されていないと8割の人が考えています―― | トップページ | 水島朝穂教授講演会 ――独裁者を正確に描くと笑い飛ばすことになってしまう―― »
日本人には昔から性善説があって、人間は生まれながらにして皆善人であるは
最近の事件事故を見ていると当てはまらないのではないか。選挙についても考え
方の修正が必要ではないか。多様性や数の論理と言った言葉が卒業の時期に
来ているといいたい。前回のメールでも書きましたが、欧州の選挙は各政党が
独自の主張(中には極右や極左という怖い政党もある)を展開し、フリーハンドで
戦って民意の結果により一つの政党が過半数を取れなければ連立を模索すると
いった制度です。国民からは解り易いので投票率の上昇は期待出来ます!
投稿: 鯉の応援団 | 2017年11月 6日 (月) 10時51分
「鯉の応援団」様
コメント有り難う御座いました。
自民・公明与党の「数の論理」を振りかざして、何の議論もせず、丁寧に説明すると口では言いながら議会も開かずに解散するようなことは「卒業」すべきだと思いますが、これは性善説ではなく、弱い者いじめの範疇に入るのではないでしょうか。
「多様性」については、LGBTについての理解もようやく広がり始まったばかりですし、多様性の出発点であるはずの女性の地位についても、世界経済フォーラムによる2017年「ジェンダー・ギャップ指数」において、日本は調査対象144カ国のうち、114位と前年より3つ順位を落とし、過去最低でした。これで「卒業」はないでしょう。まだ真剣な努力さえ始まっていない、としか考えられません。
投稿: イライザ | 2017年11月 6日 (月) 19時57分