小沢一郎の影 ――「政変」の度に劣化してきた政治の質――
小沢一郎の影
――「政変」の度に劣化してきた政治の質――
[この稿では敬称は略します]
小沢一郎がいくつもの「政変」を仕掛けて政治の方向を捻じ曲げてきたことは良く知られていますが、希望の党の出現にも彼の影が垣間見えます。
そもそも、現在のような酷い政治状況ができてしまったのは、1994年に小選挙区制が導入されたからですが、その立役者が小沢一郎だったことは周知の事実です。日本新党を率いていた細川護熙は自民党との連携を考えていましたが、総理大臣にするという小沢の誘いに乗り、その交換条件として小選挙区制の導入に合意したのです。その細川は、最近になって「もともと、自分は中選挙区制が良いと思っていた」と述べているのですから無責任も良いところです。
2009年の第45回衆議院議員選挙で民主党が大勝し、鳩山内閣が成立した背景には、2003年の民主党(鳩山代表)と自由党(小沢党首)との合併による勢力の拡大がありました。2008年には無投票で党の代表として三選されていた小沢が総理大臣になれなかったのは、その後、陸山会事件等のために代表を辞任したからなのですが、念のため書き添えると、この件で小沢は無罪になっています。
非自民内閣の成立という「政変」以上に注目されたのは、普天間基地移設問題、つまりマニフェストに掲げられた「最低限県外」が実現するかどうかでした。これが実現することと日本とアメリカとの関係が正常化することとはほぼ同じことだったのですが、鳩山首相と小沢幹事長の金銭問題もあり、腰砕けしてしまいました。その後も、数だけはあったために民主党政権は菅内閣、野田内閣と政権だけは維持できましたが、東日本大震災と福島の原発事故もあり、消費税の税率アップも追い打ちを掛けて、自民党に取って代られることになりました。
小選挙区制により質的に変ってしまった日本の政治は、鳩山内閣とその後継内閣の失政によって大きく劣化し、その間、小選挙区制の悪しき側面を生かすために自民党が採用した戦略でさらにそのスピードを加えてしまいました。
そして、三度目の「政変」として登場したのが、希望の党ですが、この政変によってさらに劣化するかもしれない可能性を何としても阻止する必要があります。
今回の「政変」のリーダーは、もちろん、小沢一郎の愛弟子だった小池百合子です。政治的な主張は小池の方が小沢より右寄りですが、「政局」そして「政変」の仕掛人としての技量は、「出藍の誉れ」と評しても良いのかもしれません。
となると、前の「政変」で小沢が仕掛けたような大きな政治的な変更は何になるのかを問わなくてはなりませんが、それは当然改憲です。選挙制度の変更は、実質的な意味での憲法改正(改悪)だと主張していたのは、故國弘正雄・元参議院議員ですが、それ以上に大きいことと言えば、憲法の改悪しかありません。
最優先事項は安倍内閣打倒だから、その一点に集中して希望の党との連携をする、という立場も理解できるのですが、自民党・公明党・希望の党・維新、どの党に入れても、それは改憲につながる一票だという点もしっかり自覚しなくてはなりません。
マスコミは、希望の党の動向だけを報道している感があり、かつての小選挙区導入の際の動きと重なります。当時のマスコミは、小選挙区制導入に反対する私たちを「守旧派」と排除し、世論を扇動しました。そのマスコミは、改憲の阻止にはあまり関心がないようにさえ見えるのですが、憲法を遵守し改憲を阻止しようと頑張っている、社民・新社会・共産そして新たに加わる立憲民主が、マスコミ予測を大きく上回る票を獲得することで、次の展望が開けてくることだけは間違いありません。
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