フォトジャーナリスト・豊崎博光さん ――凄い人シリーズの続きです――
フォトジャーナリスト・豊崎博光さん
――凄い人シリーズの続きです――
傘寿を過ぎ米寿に近い方々が元気で活躍されている姿に大いに刺激を受けて、その報告を何度かさせて頂きましたが、一応「高齢者」の一員ではあってもまだ若い方々の中に、それに負けず劣らずの活動を続けている皆さんが多くいます。
10代、20代そして30代の若い世代の皆さんが素晴らしい活躍をしている姿にも希望を感じていますし、それより上の壮年期の皆さんの力強い活動にはもちろん大いなる期待を持っているのですが、出来れば、私たちの世代が経験し積み重ねてきた土台をしっかりと踏み締めた上でのさらなる高い境地の開拓をして貰えればと、「老爺心」ながら、「凄い人」たちの紹介を続けたいと思います。順不同で、敬称も略す時があると思いますが、尊敬している気持に変りはありません。今回はフォトジャーナリストの豊崎博光さんです。
前に報告した「竹林の八賢」のお一人ですが、私が豊崎さんから学んだ多くのことの内、四つを強調しておきたいと思います。
念のためここでお断りしておきたいのですが、「月旦」をする積りはありません。しかし、限られたスペースでの紹介ですので、失礼な言い回しや説明の行き届かない部分、あるいは不十分な表現等があるかもしれません。その全ては、書き手である私の限界や勉強不足のせいですので、コメント欄で加筆・訂正等して頂ければ幸いです。
「核」は大変複雑なテーマですので、一人の人間が短時間でその全てを理解するのは至難の業です。理解を助けるための一つの手法として、その全体像をある角度から切り取ってその断面から理解することは有効です。医学で使われるCTスキャンで使われている方法でもあります。豊崎さんが強調してきたのは、核被害者という角度です。二つ目は、その被害の総体を問題にしている点です。つまり、「核」の核心をなす核物質の発掘から、加工、使用、廃棄というライフサイクル全ての段階で人間がどう関わりどのような被害が生じ、それに対してどんな対策が講じられているのか(多くの場合放置されているのですが)、そして二次、三次被害がどう絡まってくるのかを検証しています。
三つめは、それらの被害が生じている現場に飛んで、被害者の人間的な次元を捉えていることですし、四つ目は文字だけではなく、その場その場での真実をカメラを通して私たちに視覚的に伝えてくれていることです。
前置きが長くなりましたが、まずは、豊崎さんの略歴を御覧下さい。
1948年1948年1月、神奈川県横浜市生まれ。1968年に東京写真専門学院(現、東京ビジュアルアーツ)報道写真科ニ部を卒業後、フリーとなる。復帰前の沖縄、在日朝鮮人と韓国人、アメリカの先住民族インディアンなどを取材後、1978年にアメリカの核実験場となったマーシャル諸島を取材。以後、ウラン鉱石の採掘場や核実験場、事故を起こした原子力発電所など核兵器の製造開発や原子力発電などによる人間の健康と心への影響、暮らしや環境への被害、反核・非核運動や核被害者大会の取材のために世界各地を訪れる。
取材地は、マーシャル諸島やポナぺ、トラック、パラオ、サイパン、テニアン島などのミクロネシア全域、ハワイ、ジョンストン島、バヌアツ、オーストラリアなどの太平洋からアメリカ、カナダ、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、イタリア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン、ロシアの北極圏にいたる。各地には繰り返し訪れ、とくにマーシャル諸島には1978年から2006年までに20回以上訪れて被害者や被害状況の変遷を取材しつづける。
1992年11月に横浜市で開かれた「第6回国際非核自治体会議」では、会議のコーディネーター兼スピーカーを務める。拓殖大学、中央大学で非常勤講師として「核の時代史」の授業を行う。
私たちにとってラッキーなのは、こうした広範な取材の成果を、まとまった著作として読み、写真として見られるということです。是非、一冊でも手に取ってみて頂ければ幸いです。
著書:
① 『核よ騒るなかれ』(1982年、講談社)
② 『グッドバイ・ロンゲラップ』(1986年、築地書館)
③ 『蝕まれる星・地球』(1995年、平和のアトリエ)
④ 『アトミック・エイジ』(1995年、築地書館)――1995年の第1 回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞(注: この賞については別稿で説明します)
⑤ 『核の影を追って』(1996 年、NTP 出版)
⑥ 『マーシャル諸島 核の世紀』(2005 年、日本図書センター)――2005 年に日本ジャーナリスト会議賞受賞
⑦ 『写真記録 原発・核の時代』(2014年、日本図書センター)
⑧ 共著に、『水爆ブラボー 3月1日ビキニ環礁・第五福竜丸』(草の根出版会)、『核の20 世紀』(平和のアトリエ)、『原発・核』(日本図書センター)など。
長くなりましたので、次回は豊崎さんの大学での講義内容を通して、核時代を振り返ってみたいと思います。
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