法政大学山口ゼミ合宿(1) ――大学生もしっかり勉強しています――
法政大学山口ゼミ合宿(1)
――大学生もしっかり勉強しています――
今の時期にゼミ合宿を行う大学も多いようですが、旧知の山口二郎・法政大学教授からゼミ合宿を広島で開くので協力して欲しいと連絡があってからほぼ二月、山口教授とゼミの学生諸君にお会いしてきました。
ゼミ生が自主的に広島を選んだそうなのですが、その熱意は最初の一時間余りの「講義」の後の質問とコメントとにしっかり反映されていました。準備段階で小著『新版 報復ではなく和解を』(岩波現代文庫)も読み込み、ゼミ生同士でのやり取りのあった上でのものであることを感じられる発言でした。
最初の「講義」の内容は、原水禁の分科会での発言に広島市政の柱をいくつか付け加えたものですで、省略しますが、9人のゼミ生の皆さんの質問・コメントをお読み下さい。日本、そして世界の未来に希望が持てるようになります。少なくとも私はそう感じました。私の回答のポイントも、当日言いたかったことを整理した上で短く付け加えました。
山口教授(右端)とゼミ生たち――写真の掲載は全員からOKを頂いています。
① 日本が今、核兵器を持つ必要はないけれど、将来、持つ必要が生じたときにはそれが可能になるよう、原発等は残して潜在的な核保有能力を保持すべしという議論があるが、どう考えるべきか。
(回答のポイント) 被爆者の結論は、今も将来にわたっても核兵器は必要ないし、当然、日本が持つべきでもないということだ。核保有の潜在能力を云々する人たちは、一つには、原発を続ける意味と核兵器の保有が表裏一体であることを認めていることになるし、経済的な正当化ができなくなった原発の存続を図るための苦しい言い訳にしか過ぎない。
② 片仮名の「ヒロシマ」と今の「広島」の間の違いをどう考えたら良いのだろうか。片仮名の「ヒロシマ」は、1945年を起点にしていることは分るが、そちらに固定化されてしまっているような感じがある。
(ポイント) 広島はとても保守的な地域だ。2009年の総選挙で、各都道府県の一区で民主党ではなく、自民党が当選したのは、福井一区の稲田朋美以外は全て西日本で、中国5県、そして四国の愛媛と高知だ。その保守的な地盤の中で、核兵器についての考え方だけは、進歩的かつ世界的な普遍性を持っているという特徴がある。それは広島市長選挙で、自民党の推した候補がほとんど選ばれていないことに反映されている。そのような環境下、それでも地域としての合意が存在する事実をはっきり表明する目的で生まれたのが、「ヒロシマ」という片仮名表記だという解釈ができる。
③ 東京出身だが、広島とそれ以外の地域で、被爆体験や核兵器のついての温度差を感じている。
(ポイント) 確かに地域差はある。広島から離れた所に住んでいる被爆者が未だに差別を感じていたり、県外の大学に進学した若者が、自分たちの受けた平和教育が全国的には行われていないことに気付く等の例がある。差別に焦点を合わせると、被爆直後の広島で被爆者が差別を受けたという事実を知った時、私は大きな衝撃を受けた。また、外国で、被爆者であることを理由に結婚を許されなかった女性もいる。そして、時間と空間の互換性を視野に入れると、これは時間が経つと被爆体験が風化することと同根だと思う。
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熱が入ってかなり長くなりましたので、二つに分けたいと思います。次回もお読み頂ければ幸いです。
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