銃砲所持の意味すること ――日米差を元に考える――
銃砲所持の意味すること
――日米差を元に考える――
アメリカが銃社会であることは良く知られています。そして殺人件数や、10万人当り何人が被害に遭っているのかという他殺率の高いことも良く知られています。それを関連付けて、「銃」 = 「殺人」という単純な形で銃を考えてきたのですが、問題はもっと複雑、かつその根も深いことが分りました。
数字を見ながら、説明したいのですが、アメリカにどのくらいの銃があるのか、数字を見ると吃驚します。数字は、ProsCons.orgというサイトに引用されているものを主に使いますが、このサイトは社会的に重要な問題についての賛成と反対の意見両方を、数字を中心に比較対照してくれています。まずは、人口100人当り何丁の銃があるか、という数字です。一人一丁とすると、何人が持っているかと同じことになりますが、一人で何丁も持っている場合もありますので、銃の数の統計です。
① 一位はアメリカで、88.8丁――9割に近いのです。
② 二位はイエメンで、54.8.――アメリカの約半分。
③ 三位はスイスで、 45.7
ここまで見ただけでアメリが並外れて銃の所有率の高いことが分りますが、日本はどうなのでしょうか。
日本は164位で、0.6丁です――アメリカの100分の一以下です。
(なお、元々の数字の出典はSource: Small Arms Survey,
"Small Arms Survey 2007," www.smallarmssurvey.org, 2007 です。)
アメリカではこれだけ銃の数が多いのですから、当然、その銃によって犯罪が起き、殺人の被害に遭う人も多いはずです。その統計をグラフで見てみましょう。
(このグラフが掲載されていたのは、「社会実情データ図録」という日本語のサイトで、様々な役立つ情報をまとめてくれています)
10万人当りの他殺者数は、2000年の数字でアメリカが約6人、日本は0.5人ですので、アメリカは日本の約12倍、銃の数の100倍と比較すると、その差は目立たなくなっていますが、それでも大変多いことは事実です。
もう一つ注意しておきたいのは、他殺率が世界で一番高いのはホンデュラスで、10万人当り67.19人で、アメリカの10倍ほどと、とんでもない数字です。しかし、100人当りの銃の数は6.2丁で、世界では88位なのです。これも踏まえて考えると、銃の数が多ければ多いほど、殺人率が高くなる、と簡単に結論してはいけないことが分ります。
それ以上に問題の複雑さを痛感したのは、次のグラフを見たときでした。
1999年から2015年までの間に起きた、アメリカにおける銃による死の内訳
平均すると、一年では約3万3千人以上が銃によって死んでいるのですが、その6割近く、つまり、58.7%は、銃を使っての自殺なのです。これは40年ほど前、「殺人」の内訳は、見ず知らずの人を強盗殺人等する件数より、家族や友人知人を殺す件数の方が多いことを教わった時と同じくらい、虚を突かれた思いで受け止めました。
アメリカの自殺件数は、一年当りで約3万7,800人。その内、銃によるものは51.9%つまり、1万9,600人です。次が窒息死(23.3%)、続いて薬物によるもの(17.0%)、以下は、2%台かそれより小さい数字になっています。
日本における自殺者数は、2016年には22年振りに2万2,000人を下回る2万1,764人でした。アメリカの人口が大雑把に日本の倍だとすると、この数字だけで日本の自殺件数の多いことが分ります。そして自殺手段については、男性では縊死(66.4%)、ガス(13.3%)、飛び降り(7.1%)、薬物(3.3%)と続きます。
さて、日本とアメリカの自殺手段の大きな違いは、銃があるかないかです。仮に、日本でもアメリカと同じように、あるいはそれほどではなくても銃が比較的簡単に手に入り、銃を持つ人がかなり多かったとすると、銃による自殺数も多くなることが推測されます。
国際的な比較で、日本の自殺率が多いことは知られていますが、数字を比較するに当って銃がどの程度簡単に手に入るのか、ということも併せて考えることで、日本社会の置かれている状況が如何に深刻であるのかが、浮き彫りになるような気がします。
政府も多くの自治体も、自殺防止のための対策に取り組んでいますが、さらなる知恵を得る上で、より正確な実態把握がその一助になることを祈っています。
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コメント
日本では銃による自殺は、時々警察官がやってニュースになってますね。
警察官の自殺で、銃によるものがどれくらいの率なのかも気になります。もしかしたらアメリカに近い数字になるのでしょうか。
アメリカが銃社会なのは、人種差別などが多いからだと思います。差別する事は相手を信じないのですから、銃で武装して身を守る意識が強いのだと思います。
ある事柄に影響する因子は多いのが現実で、単純な相関で判断するとポリオの原因がアイスクリームになったりしますし、原因と結果が逆だと思えることもよくあります。
最近は、学者の中に喫煙がこれだけ進んでいるのに肺ガンが増加し続けるということから、副流煙が肺ガンを防いでいると主張する人もいるようです。
事実を知るというのは難しいものだ、と今更ながら思うことがあります。
日本の銃も166人に1丁もあるのですか?
警察や自衛隊のも入れてでしょうが、この
数字に驚きました。
1000人に1丁くらいかと思っていました。
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
アメリカが銃社会である背景は色々あると思いますが、銃規制を強化すべきかどうかについて明日取り上げますので、宜しくお願いします。
「工場長」様
コメント有り難う御座いました。
私の認識不足だけだったようで、アメリカ社会でも銃と自殺の関係について、色々な研究結果があるようです。その一端は、ProCon.orgの賛成・反対意見に反映されていましたので、その要約を明日のブログで御紹介します。
「⑦パパ」様
コメント有り難う御座いました。
猟銃や競技用の銃等、民間のものの総数です。ここで引用したのは、海外の調査機関の数字ですが、総数は71万という数字でした。
ネットで拾うと、最近の日本での数字は39万くらいらしいです。1970年代後半には100万丁もあったらしいのですが、最近は減少傾向にあるようです。
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日本では銃による自殺は、時々警察官がやってニュースになってますね。
警察官の自殺で、銃によるものがどれくらいの率なのかも気になります。もしかしたらアメリカに近い数字になるのでしょうか。
アメリカが銃社会なのは、人種差別などが多いからだと思います。差別する事は相手を信じないのですから、銃で武装して身を守る意識が強いのだと思います。
投稿: やんじ | 2017年8月26日 (土) 05時29分
ある事柄に影響する因子は多いのが現実で、単純な相関で判断するとポリオの原因がアイスクリームになったりしますし、原因と結果が逆だと思えることもよくあります。
最近は、学者の中に喫煙がこれだけ進んでいるのに肺ガンが増加し続けるということから、副流煙が肺ガンを防いでいると主張する人もいるようです。
事実を知るというのは難しいものだ、と今更ながら思うことがあります。
投稿: 工場長 | 2017年8月26日 (土) 08時29分
日本の銃も166人に1丁もあるのですか?
警察や自衛隊のも入れてでしょうが、この
数字に驚きました。
1000人に1丁くらいかと思っていました。
投稿: ⑦パパ | 2017年8月26日 (土) 09時26分
「やんじ」様
コメント有り難う御座いました。
アメリカが銃社会である背景は色々あると思いますが、銃規制を強化すべきかどうかについて明日取り上げますので、宜しくお願いします。
投稿: イライザ | 2017年8月26日 (土) 22時52分
「工場長」様
コメント有り難う御座いました。
私の認識不足だけだったようで、アメリカ社会でも銃と自殺の関係について、色々な研究結果があるようです。その一端は、ProCon.orgの賛成・反対意見に反映されていましたので、その要約を明日のブログで御紹介します。
投稿: イライザ | 2017年8月26日 (土) 22時55分
「⑦パパ」様
コメント有り難う御座いました。
猟銃や競技用の銃等、民間のものの総数です。ここで引用したのは、海外の調査機関の数字ですが、総数は71万という数字でした。
ネットで拾うと、最近の日本での数字は39万くらいらしいです。1970年代後半には100万丁もあったらしいのですが、最近は減少傾向にあるようです。
投稿: イライザ | 2017年8月26日 (土) 22時58分