被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議 ――なぜ日本で脱原発が進まないのか?――
被爆72周年原水爆禁止世界大会 国際会議
――なぜ日本で脱原発が進まないのか?――
被爆72周年原水爆禁止世界大会の二日目は分科会と国際会議が開かれました。その他に、「ひろば・ワークショップ」等のイベントもありました。全てについての報告をするには時間がありませんし、スペースも限られていますので、以下、国際会議のホンのさわりだけです。
開会挨拶は世界大会実行委員長の川野浩一さん、その後のキーノートスピーチは事務局長の藤本泰成さんでした。パネル・ディスカッションのメンバーは、壇上の写真の右から、発言順でもありますが、司会の伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)、九州大学教授の吉岡斉さん、台湾大学教授のシュウ・グァンロンさん、そして韓国の環境省中央環境政策委員のイ・ユジンさんです。上の写真でイさんのプレゼンテーションを横で同時通訳しているのは、キム・ポンニョさんです。
パネリストの発言からもそしてフロアからのコメントどちらからも、これまで知らなかった多くのことを学べましたし、テーマの「なぜ日本では脱原発が進まないのか?」という現状認識そのものについても、ちょっぴり修正が必要なのかも知れないとさえ感じるようになりました。
日本・台湾・韓国の大きな違いはそれぞれの国のトップの姿勢です。今年の一月には「全ての原子力発電施設は2025年までに運転を停止する」という法改正を行った台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総督、選挙公約に掲げた脱原発を大統領就任後、公的に宣言した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と比較すると、全く異質なのが、世界に原発を売り歩く安倍晋三首相です。にもかかわらず、脱原発の方向に向かっているという客観情勢を指摘してくれたのが、吉岡さんでした。
① 再稼働される原発の数には上限がある。
まず、2012年5月5日から7月5日にかけての2か月間、稼働していた原発はゼロ、そして2013年9月から2015年9月までの約2年間も、原発ゼロ状態が続いた。2017年8月5日現在、運転中の原子炉は5基。今年中には玄海3・4号機が再稼働する見込みだが、それでも7基。
福島事故前に法的に運転可能な原子炉は54基あったが、福島第一原発の6基を含め、12基が廃止された。つまり、原子力規制委員会の審査をパスすれば運転可能な原子炉は現在42基ある。その中で、5基しか動いていない。大半は停止したままだ。
今後、再稼働する原子炉の基数は少しずつ増えると予想されるが、安全性の難点、立地自治体の反対、電力会社がコスト・リスク回避のため原子炉廃止へ動く可能性などを考えると、2020年ころに最大15基〜20基で、これがピークになるだろう。
新増設がなければ老朽化とともに減少しゼロに向って行く。
② 行政レベルの原子力政策
民主党政権は2012年9月、原発の新設・増設は行わず、2030年代までに原発をゼロにするという目標を掲げた。しかし、2012年12月の衆議院選挙で情勢が変り、安倍内閣は原子力政策の基本を福島原発事故前に戻し、出来るだけ多くの原子炉の再稼働を目指しているが、すでに指摘したように実績は芳しくない。
③ 日本で脱原発を進める根拠――原子力は万人を不幸にしているから
以前は「多くの人を不幸にしている」と言っていたが、今は「万人」に改めたい。一部利益を得ている人々もいるが「原発さえなければ」の思いは、多くの人に共有されている。
[立地地域の住民の損害・被害についても詳しい説明がありましたが、福島のフィールドワークの報告等をお読み頂きたく、今回は省略します。フィールドワーク第一日目、第二日目、三日目。]
都市住民も損失を被っている。過酷事故による生命・健康・財産リスクは都市住民にも及ぶが、過酷事故の後始末コストを含めたコストは火力より高く、その結果、無用の電気料金を払わされている。
電力会社は加害者だが、被害者としての面もある。東京電力は国家資金の投入がなければ存続できない会社になり、東芝は原発輸出に社運を賭けたが、子会社のウェスティングハウス社の巨額債務により存亡の危機にある。
④ 原発なしでも電力供給は問題ない
世論調査によると、国民の多数派が原発の即時または将来の脱原発を支持している。再稼働についても過半数は批判的。
脱原発世論の第一の要因は、福島の原発事故。
第二の要因は、原発の大半が停止していても電力不足に陥らない事実。それは、電力自由化前に過剰気味に発電施設が作られたことと、エネルギー消費の急速な減少による。リーマン前の電力需要のピーク時と比べると2015年には、14.4%の減少になっている。原発が電力需要の3割を賄っていたのだから、残りの約15パーセントの中、約5%は再生可能エネルギーで、残る10%は、人口減・労働力減も含む様々な省エネで圧縮できる。
⑤ 脱原発を進める政治体制作り
国会の衆参両院における多数派により脱原発政権が作られ、数年以上にわたり政権を維持し、粘り強く脱原発に関連する法令体系の整備を進めることが必要。ドイツでの経験から、脱原発が政治的に決定されてから10年くらいは掛ると覚悟した方が良い。
脱原発政権誕生前にも、また脱原発政権を作るためにも有効な手立ては多くある。
(1) 住民投票制度の活用
(2) 裁判による意思表示
(3) 国レベルでの市民の側に立つ専門家集団による政策決定権独占への挑戦
(4) 地方自治体による脱原発のための施策展開
(5) 自治体首長の活用
脱原発が進まない理由は政治の貧困さにある、と言ってしまうとあまりにも陳腐かつ一般的な表現でしかなくなるような気がしますが、それは、安倍政権の醜態にようやく気付いた大多数の市民が、遅かれ早かれ諦めてしまうかも知れまないという、これまで繰り返されたパターンが頭を過ぎるからかもしれません。吉岡教授が描いてくれた鳥瞰図は、流行り廃れの激しい世の中でも、希望の持てる大きな流れのあることを示してくれています。これをもっと多くの人たちに共有して貰うことで、核兵器禁止条約ができたのと同様の成果を挙げることが可能だと確信できました。
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コメント
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日本で脱原発ができないのは、脱原発を受け入れる大きな野党がないからですね。
また、民進党を支えている連合は、ある意味親自民党なようなもの。
電力系の組合は、自分たちが加害者になるなんて思ってもいないのでしょうね。
政府に言われてやっているのだから、自らの行いを他人のせいにするのでしょう。
それと、反原発なんて言えば、会社での出世は無くなるし。
一つ一つのエゴが集まり、組合を動かし、連合も存続のために従う。
もはや組合には、社会的な意義はなく、個の利益のために集まっている集団でしかないのでしょう。
また、その連合の組織票欲しさに集まっている政党には、理念なんてなくてもかまわないのでしょうね。
長州テロ集団の末裔は、先祖が作った世界の復活だけを望んでいるのでしょうからね。
大国が脱原発を掲げているからこそ、原発輸出で外資を稼ぎ、軍の強大化を推し進めるのでしょう。
被爆後72年が、戦前元年ならない事を祈るばかりです。
投稿: やんじ | 2017年8月 7日 (月) 12時00分