核兵器禁止条約に至る道 ――世界法廷プロジェクト⑤ 市民によるロビー活動・(2)――
核兵器禁止条約に至る道
――世界法廷プロジェクト⑤ 市民によるロビー活動・(2)――
以下、『数学教室』連載”The Better Angels”2015年4月号から転載
WCPに戻って、国際的なロビー活動の具体的な姿を描いてみたいと思います。まず、ニュージーランドの市民と政府が一体となってICJの勧告的意見を求めようと決意をしたのですが、それを実現するためには、次のステップとして国連あるいは専門機関での決議が必要になります。その決議を実現するためには、当然、世界各国に賛成して貰わなくてはならず、そのためにはICJの勧告的意見が何故必要なのかから始まって、最後には、決議に賛成して貰えるように説得しなくてはなません。
国際社会に働きかけるのは、建前として国が行うことになっています。国としてのニュージーランドが動くという形を取るのですが、その実質を考えると随分難しい仕事でもあります。なにしろ国連加盟国だけでも200近くあるのですから、その一つ一つの国の代表と会い説得をすることにはエネルギーも時間もかかります。
その全てを、人口500万に満たない国の責任で行うだけでも大変です。しかも国の中の外務省というお役所が形式的には全てを仕切るとは言っても、ニュージーランドは小さな国です。ニュージーランドという国の存亡に関わるという問題意識もあったはずですが、それ以上に、世界・人類の存亡に関わる問題でもあります。他の国々の協力があって当然なのですが、それでも政府のお役人という立場で仕事をする人たちが使える「資源」つまり能力がありこの問題に精通している人たち、さらにその人たちを支える環境や資金には限りがあります。
さらに、国の外交の仕事にはWCPの他にも大切な「日常業務」も含まれています。それらを熟しながら、新たに付け加わったWPCの仕事を世界の200か国を相手に精力的に行うには、時間と人手そしてお金が必要だということです。
ニュージーランド外務省のスタッフ数は約1400人--同省ホームページから
そこに登場するのが、国境を越えた集団であり、かつ専門的な知識やノウハウを提供することのできるNGOです。事実、WCPでは、その支援をするためのNGOが誕生し、実質的にこの運動を引っ張って行くことに成功しました。
国際平和ビューロー、核戦争防止国際医師会議、国際反核法律家協会という核廃絶に熱心なNGOが中心になって、ケイト・デュース、ロバート・グリーン、そしてアラン・ウエアというニュージーランドきっての活動家3人が加わった、WPCの国際運営委員会が1992年に作られ、ここから実に効果的に国連大使を含む外交官、各国の外交担当者や議員、マスコミ等に最新の情報と市民からのメッセージを発信する仕事を分担したのです。
最後に何か国かの外務省職員数の比較グラフを掲げておきます。外務省が作成したものです。人口当たりの職員数の少ないことが日本の特徴です。人口一万人当たりの職員数では、日本が0.42であるのに対して、ニュージーランドは、2.8で、約7倍です。ただし、ニュージーランドは貿易の仕事も外務省の管轄ですので、それも考慮すると、数値はかなり下がります。
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