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2017年5月 6日 (土)

憲法解釈の違いは何に由来するのか ――リベラル派は理想の実現が可能だと考えている――

 

憲法解釈の違いは何に由来するのか

――リベラル派は理想の実現が可能だと考えている――

 

日米の憲法について、それぞれどのような点が問題になっているのかを比較して見ることで、立憲政治と民主主義の擁護について何らかの示唆が得られるかもしれないと思っていたのですが、「2020年までに改憲」という安倍発言から頭に浮んだ何点かを先ず文字にすることになりました。

 

そこで書き散らしたことを敷衍しながら整理すると、先ず、我が国では個人の自由を制限する特定秘密保護法や共謀罪の動きがあり、アメリカでも同様に、特定国の国民を入国させないといった方針が示されるなど、個人の基本的人権を狭める動きが顕著になっています。

 

同時に、トランプ大統領の誕生を可能にした条件の一つである2010年の最高裁判所の判断は、企業も表現の自由を持つことを確定しました。この判決も含めて企業の権利を大幅に広げる動きにも注目する必要があります。我が国でも、武器禁輸三原則が反故にされ防衛装備移転三原則が取って代るなど企業の権利をより大きくする方向の施策が取られています。

 

少し乱暴ですが、個人の権利は尊重し企業の権利は制限するという立場をリベラル派と呼ぶなら、正反対の立場、つまり個人の権利を制限し企業の権利を尊重するトランプ・安倍両政権は超保守派、あるいは反動派とでも呼べば良いのでしょうか。

 

リベラル派のもう一つの特徴は、知性を活用することによって人類の生きる環境を変え改善することができると信じていること、特に理想を目指す政治的な立場の持つ価値を重んじていることかもしれません。

 

その立場から、日米の憲法に関わる問題点をもう一度検証して見ましょう。

 

アメリカの最高裁が、「企業が選挙に使う金額には上限を設けてはいけない」と判断した理由は、

  企業にも、個人と同様に「表現の自由」が与えられている。それは「表現」することが可能などのような主体についても、この自由が保障されているからである。

  巨額の資金が使われているという事実だけから、政府がそれを「腐敗」であると断定することはできない。つまり、いくら以上なら腐敗であり、それ未満ならそうではないという客観的な基準を設けることができないからである。

  支出額の制限を加えることは、市民の知る権利を侵害する可能性がある。情報を広げるのにはお金がかかるという理由で作られた規制によって、ある情報が隠されてしまうのは市民の知る権利の侵害になり得る。

だったのですが、仮に、この中の①、つまり、企業も表現の自由を持つことを認めたとしても、それを実現する手段として「企業が選挙に使う金額には上限を設けてはいけない」という結論にはならないのではないかと思います。

 

   1787年のアメリカ憲法署名式

 

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特に、②では、支出金額が多いからと言ってそれを腐敗として認めようとすると、その客観的な「線引き」ができないから、という理由が述べられています。

 

確かに、抽象的な議論をすればそれには一理あるのですが、現実の世の中では利益の追求を最優先する企業あるいはビジネスと、生活する主体としての個人との間には明確な違いがあり、それを対立関係と捉えられる場合の多いことも事実です。

 

そして、選挙の際にビジネス側が使える選挙資金と個人とが支出できる金額には大きな差があります。公正な選挙と表現の自由との間のバランスをどう取るのかの問題になりますが、個人の使える額には当然上限がありますので、それに見合った上限を企業・ビジネスに課すことこそ、民主的な政治を維持する上での重要事項の一つになるのではないでしょうか。

 

つまり、企業の使える金額の条件は抽象的レベルで「客観的」に決めるべき事柄ではなく、公正な選挙により民意ができるだけ忠実に反映されるためにはどの程度の支出なら許されるのかを、これまでの選挙についてのデータや今後の動きの推定を元に、「合理的」に決定すべきことなのではないでしょうか。

 

「自衛隊の明文化」についての考察も続けて行いたいと思います。

 

 

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