被爆二世の援護を求める裁判 第1回公判開廷
被爆二世の援護を求める裁判 第1回公判開廷
=問われる「放射能の影響を過小評価」し、被爆二世を放置した日本政府の姿勢=
去る2月12日に広島地方裁判所に原告22名が提訴した「被爆二世の援護を求める裁判」の第1回公判が、昨日開催されました。この裁判は、長年被爆二世問題を取り組んできた全国被爆二世団体連絡協議会が中心となって広島と長崎で集団提訴したもので、広島県原水禁もこの裁判を全面的に支援することにしています。
今日は、その裁判の模様を報告します。
裁判所に入廷する原告団、弁護団と支援者
今回は初公判ということで、2名の原告と弁護団長から意見陳述が行われました。
最初に陳述に立った原告の平野克博さんは、次のように意見を述べました。
「私の母は20歳の時、当時広島市で働いていた妹を探しに入り、入試被爆。に広島市松原町で入試被爆しました。同じ二世であるいとこは、30代の若さで白血病氏。私は元々、4人兄弟であったのに、今この世の生を受けているのは姉と二人だけ。『もしかしたら、放射線の影響かもしれない。自分もいつかそうなるのでは。』そんな不安が付きまといます。」と被爆二世としての健康不安を陳述。
続いて自らの運動を振り返り「30年近く政府・厚生労働省に不安解消を求めたが、現在行われている被爆二世への施策は、法的根拠のない『被爆二世健康診断』のみ。長年要求し続けて来た『がん検診』もいまだ実現していません。」と政府の無作為ぶりを告発するとともに「政府は、責任をもって、私たち被爆二世に対して不安を解消するための措置を講ずるべきだ」と裁判に求める意味を訴えました。
続いて意見陳述を行った原告は、占部正弘さん。
最初に父の被爆状況を次のように陳述。「父は、原爆を受けた瞬間は熱戦は浴びなかったようですが、被爆後福山に帰ってから背中いっぱいにケロイドのようなものが出た。いったん消えても体調が悪い時には、急に出ることがあって。父の背中に『黒いしみ』や白っぽいシミがあったことを私は覚えています。」
そして自分自身の体調について「私も、生まれた時からのようですが、左腕・右腕に『白い斑点があります』」と右腕の袖をまくって、陳述。さらに「40歳くらいになると顔に父と同じような『黒いしみ』出てくるようになった。」ことや「心臓発作をよく起こす」など健康への影響が出ていることを陳述。
さらに母が体験した「被爆二世」の結婚差別についてふれながら、被爆二世のおかれている遺伝的影響や差別の問題を陳述し、最後に「私と同じような状態に置かれてきた人、そして同じように見られた人は多いと思う。裁判官は、このような現実を十分に理解してほしい」と訴えました。
法廷と同じように腕を見せながら陳述内容を報告する占部さん
最後に弁護団を代表して在間秀和弁護士が
「被爆後70年以上経過したが、それまで人類が経験したことのなかった核兵器の放射能による被害がいかなるものだろうか、についてその真実は国によって明らかにされてきただろうか?」と国の怠慢を指摘。
さらに「核軍拡競争、原子力発電所の推進、という社会状況や国家的施策故に、放射線被害について極めて重要な事実が隠蔽されている。」と厳しく指摘するとともに「研究の積み重ねで遺伝的影響が検証されてきた。まさに被爆二世は『被爆者』として位置付けるべきだ。本来援護の対象として扱われるべき被爆二世が、なぜかその埒外に置かれたことの問題である。」「原告ら被爆二世は、最後の手段として訴訟の道を選んだ。」「本件裁判は、全国に何十万人存在するといわれる被爆二世がその帰趨を見守っている。」とこの裁判の意義を強調する陳述で、今日の公判を終了しました。
弁護団の足立修一弁護士は、公判後に行われた報告記者会見で改めて次のように訴えられました。
「これまでは、被爆者自身の裁判として行われてきたが、今回は遺伝的な影響を問う裁判である。核政策を推進するアメリカや日本政府が、放射能の影響を過小評価する政治的な動きの中で、これに対していかに影響が大きいかを今後の裁判で展開していく。科学的に決着するのかは不明だが、政策的にやるべきことをやってきたのかを問いたい」と。
私も長く被爆二世問題にかかわって来ましたので、この裁判は長い戦いになるだろうと予測せざるを得ません。しかし原告や弁護団の主張で明らかなように、日本政府の核被害者施策や核政策の根本を問うという重要な裁判ですので、今後も勝訴に向けた支援を続けたいと思います。
まお次回公判は、8月22日午後1時30分からです。
今回の被爆二世裁判は、親の被爆地で裁判を行っているため、長崎でも原告25名が提訴しています。長崎の第1回公判は、6月5日です。
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